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鉄道ダイヤの最適化に学ぶ、生成AI活用 複雑なビジネス課題をチャットボットで前に進めるポイント
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高橋浩一氏:よくマネージャーから、失敗を恐れてなかなかチャレンジしないメンバーについての悩みを聞かれるわけです。「いやぁ、高橋さん。武器を増やすって私も大事だと思うんです。実際の商談でやっていかないと身に付かないですよね。でも、失敗を恐れて新しいことに挑戦しないメンバーには、どうやって教えてあげたらいいんですか?」と。
いくつかポイントを挙げていきます。まず1つが、失敗の正当性を明確化することですね。一概に「失敗」とか「成功」というラベルを貼ること自体もどうかというのはありますが、やはりメンバーとしては、失敗という受け取り方をしてしまう方ってどうしてもいらっしゃいますよね。
そういった場合、「失敗は次の成功への一歩だ」と、むしろそれをポジティブに転換してあげることがポイントです。エジソンの有名な格言で、実験がうまくいかなかったことに対して「このやり方ではダメだということが発見できたことが収穫だ」みたいなセリフがありますが、要するに「うまくいかないこと自体がマイナスの現象ではないですよ」という意味付けをしてあげます。
あるいはスモールステップを作ってあげることがポイントです。小さな挑戦を段階的に設定するとか、フィードバックの頻度を上げる。メンバーが「いきなり大きな挑戦だ」と感じてしまうと、躊躇してしまうわけですから、細かい挑戦にしてあげるということです。
さらには、結果ではなくプロセスを評価する。努力や挑戦そのものを褒めるとか、教訓を一緒に探します。例えば私も会社の中でやっているのは、大型受注を褒めることは意図的にしないようにしています。なぜかというと、結果に焦点が当たって新たなるチャレンジをするのが怖くなることのほうが、損失として怖いからです。
あとは、大型受注を再現性高くやってくるような人って、ちょっと変な言い方になってしまいますが、大きく賞賛されてもされなくても別にやるんですよね。
私が組織マネジメント上、特に焦点を当てたいのは、なかなか浮かび上がらない人とか、うまくいくまでなかなかコツをつかみ切れない人、成長への取っ掛かりを探している人です。そちら側の人に浮上してほしいなというふうに、組織運営上は思います。
とすると、(結果ではなく)プロセス評価です。大型受注よりも「この案件が一歩前進したね」というほうを派手に褒める。「こういうトライをした。ナイストライ!」というふうに、プロセスを評価することも1つの土壌作りです。
このようなやり方を応用していくと、案件単位で関わり方を変えるというのは、実はけっこういい指導法なんじゃないかと思っております。例えばここに魚釣りに例えたプロセスがありますが、どこでどう釣るかは任せる、釣れるポイントを教えてあげる、上手な釣り方を教えてあげる、セッティングまでやってあげる、代わりに釣るという5つがあります。
営業に置き換えると、どんなお客さまにどうアプローチするかは任せるのか、アプローチすべきお客さまを教えるけどやり方は任せるのか、具体的なアプローチ方法を教えるけど同行はしないのか、同行してお膳立てはするけど重要なポイントは任せるのか、同行して代わりに提案してクロージングするのか。
右側は(メンバーの)代わりにほぼ上司がやってしまっているわけですが、逆に左側はほとんど支援しない。これを、案件ごとに関わり方を変えてあげるということです。
ここでのポイントは、人によってレベル感を変えるだけだと、きめ細かさが足りないんじゃないかということです。「この案件はけっこう深く関わるよ」「この案件は触りだけ」とか、案件単位で変えていきます。
その中では「“補助輪”を外していく介入の方法」にもうちょっとヒントがありますので、このあたりを少し解説していきます。例えば関わり方を調整する際に、「部分的な同行」というものがあります。
当然マネージャーは忙しいので、「全部は参加できないんです。前半だけ参加とさせていただきます」とか、あるいは逆に「後半だけ参加とさせていただきます」というふうにすることによって、マネージャーが最初から最後まで全部やってあげるという状況ではなくなりますよね。メンバーが自分の力でなんとかしなくてはいけないことになります。
さらには「リアルタイム待機」といって、(商談に)同席はしないんだけれども、電話やチャットができる状態でマネージャーが控えておくというのもあります。あとは「リアルタイムでチーム作戦会議」です。複数人数対複数人数の商談で私はよくやるんですが、途中でブレイクアウトルームを作って、こちら側もお客さま側も作戦会議をします。
いろいろなお膳立てや部分的な介入の話をしてきました。ただ、このようにいろんなやり方を考えてあげたとしても、それでも自分の頭で考えようとしないメンバーがいると、いくらマネージャーが関わり方を変えていたとしても、なかなか進まないということも起こります。
考えようとしない人に対しては、まずは考える理由を実感させる。それは、考えることにどんな意味があるのかを教えてあげることもありますし、考えやすい仕組みを用意する。よく言われるのが、「マネージャーがすぐに答えを言わない」とか「全部を依存させない」ということです。
あるいは、具体的に考え方を教える。私はこのアプローチを取ることがけっこう多いんですが、サンプルやフレームワークを提供するとか、実際のやり方についてヒントを与えるということです。「自分の頭で考えろ」って言うだけではなくて、このように具体的な方法が必要かなと私は思います。
そして、考える力を強化したいという時におすすめなのがケーススタディ練習です。これは私も、自分の会社で定例ミーティングにちょこちょこ入れて実施するんですが、例えばこんな感じでお題を設定します。
「こんな状況、みなさんだったらどうしますか?」と、各人が答えを考えて、それを各々が発表し、お互いに見比べて対応力を上げていくというものです。実力がけっこう如実に出ますので、ベテランにふんぞり返らせないという意味でもいいかと思います。
ということで、型を確立するには、正解がない難しさに対して妥当な解を探す力を磨いていきましょう。選択肢を増やして、試して競わせる仮説検証ゲームをマスターしましょう。そして、一定水準以上の基本動作が束になっている状態を目指しましょう。
型を確立すると言っても、1個のことがテンプレ的にできるだけでは、正直営業で通用しないわけです。なので、ちゃんと選択肢を増やせる仮説検証ゲームをマスターさせましょう。
次に考えるべきなのは、ある程度は型ができてきても、それができないリスクがあります。まず、型の習得ってすごく地道なんですよね。反復、フィードバック、改善が必要だったりしますし、一度に伸ばせるのは1つというふうに、そんなにいきなり実力が引き上がるわけではありません。ということは、うまくいくまでに時間がかかるということです。
ですので、マネージャーが対策を立てるべきは心が折れないようにすることです。心が折れる状態を心理学の用語では「学習性無力感」というふうに言います。無力感を学習してしまっているということですよね。
行動しても数字が伸びない、お客さまと距離が縮まらない、いつまで経っても目標の達成見込みがなかったら、なんかもうだんだんと「難しいな」って思ってきます。そこに対して「今こそがんばれ!」って言うと、心が折れてしまったりするわけです。
この「心が折れる」というのがまさに怖いわけですよね。いろいろ試そうとしても、心が折れてしまったら、もうそれ以上はいけないわけじゃないですか。
実は、学習性無力感になりやすい条件や環境があります。それは、「もういくらやってもダメだ」と思ってしまうような繰り返される失敗や、コントロール不能な状況です。よくモチベーションの問題で言われるのが、長時間労働よりも、裁量とかコントロール可能な変数が狭められているほうが深刻であるということです。
あとは長期的な否定的フィードバックということで、「君なんかダメだよ」とずっと言われ続けると、これも心が折れる要因になり得ます。
次が個人の認知スタイルです。上司が「君、いいよ。伸びるよ」というふうに丁寧に見てあげたとしても、本人の性格の問題として落ち込みやすい人っているわけです。さらには社会的孤立や支援不足です。特に新人を受け入れる時に「リモート環境だと相談しにくい」みたいなことは、しばしば言われたりします。
どうやって学習性無力感を避けていったらいいのか? ということで、4つほど挙げさせていただきたいと思います。縦軸が、インパクトの範囲として根本なのか対処なのか。横軸が、実行の時間軸として単発なのか継続なのかというものです。
1つ目は、左上の認知や行動への働きかけです。「単発」かつ「根本」なんですが、例えば期待のメッセージや目標の再設定、原因やアイデアへの気づきといったものは、一発でまあまあなインパクトになります。
2つ目は、右上の環境の構築です。根本に働きかける継続的なアクションとしては、健全な競争意識やロールモデルの存在とか、一緒に仕事する人からの刺激。こういうものは持続性があるんですけれども、条件をそろえるのはちょっと難しかったりします。
3つ目は、左下にあるように「対処」かつ「単発」なので、いわゆる気晴らしやストレス発散のための気分転換です。休むとか、気心の知れた相手との食事とか、趣味や遊びみたいにリフレッシュできるものです。
そしてちょっとまずいのは、4つ目の「対処」かつ「継続」というものです。我慢し続けるとか、特定の仲間でいつも愚痴を言い合うとか、インターネットに匿名で投稿する。よくSNSとかでもいらっしゃいませんか? 匿名のアカウントで会社の愚痴をずっと書く、みたいな。あれは心理的にはものすごく良くないわけです。
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