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〜組織にリーダーシップを根づかせる〜 アマゾンに学ぶ カルチャー浸透と日本企業への示唆(全2記事)

Amazonは“社員に求める行動指針”をどのように設定しているか 元社員が語る制定の歴史と運用方法 [2/2]

リーダーシップ・プリンシプルとは何か

八木:それではさっそく本題に入っていきたいと思います。リーダーシップ・プリンシプルはご存じの方も多いかなとは思うんですけれども、実際本社にいた立場、リージョナルヘッドクォーターにいた立場として、それぞれいろいろな解釈があるかなと思います。

ざっくりとした質問で恐縮ですが、リーダーシップ・プリンシプルとは何か、ヒロさんから教えてもらってもいいですか?

田中:似たようなものは、いろいろな組織でどこにでもあったりするものだと思いますが、テキストブック的な回答を言いますと、社員一人ひとりが取るべき行動でAmazonの中で社員全員がスタンダードとして取っていく大事な行動指針ということで掲げられているものです。今の段階で16個に分かれています。

一つひとつの定義はご覧いただければわかりますが、「Customer Obsession」、つまり常に顧客中心に物事を考えたりそれに対する行動を取る、というところから始まって、最終的には「Deliver Results」、つまりしっかりと結果で出すというところまであるんです。

八木:ありがとうございます。

16個を常に実施することが全グローバルで統一されていた

八木:シュンさんはどういう解釈をされていますか?

金子:そうですね。僕が入った時は14個だったんですけども、今16個に増えたんですね。

これは16個に優劣がついているわけでもなくて、その16個全部を、年間通して日々の仕事の中でデモンストレーションすることが期待されているというかたちになります。

なので、評価制度でも50パーセントは業務のKPIの部分や、進捗プロジェクトの達成度合いで、残りの50パーセントの評価は、このリーダーシップ・プリンシプルをどれぐらい実践できているのか(で評価されます)。

通常は「スーパーパワー」と言われて、その16個のうちの(自分で特にできたと考えているものの)トップ3と、あとは「オポチュニティ」と言って、(自分で特にできなかったと考えているものの)ボトム3を自己申告。プラス、あとは360度で評価をいただいて、「周りの人たちはこう思っています」と見える化して、「あなた自身はこう思っていますね。どんなギャップがありますか?」と振り返っていくものになります。

なのでまとめると、優劣はなくて、16個全部がイコールで大切。16個を常に実施するということが全グローバルで統一されているので、(そういう意味で)みんな同じ言語で話ができるっていうのが、1つユニークなところかなと思います。

八木:なるほど、ありがとうございます。すごいですね。原則を言語化して、それを行動レベルまで落とし込んでいるっていうことですよね。そこがすばらしいなと思って。

日本企業でもミッション・ビジョン・バリューとか、最近だとパーパスを策定したりとかいろいろあるとは思うんですけど、それにも近い概念かなっていう気もしました。

リーダーシップ・プリンシプルは変わっていくもの

八木:ちょっと興味深かったのが、シュンさんが入社された4年10ヶ月前はリーダーシップ・プリンシプルが14個だったんだけれども、今は16個になっているということで。時代の変遷とともに環境に応じて変えているということですか?

そもそもの歴史がちょっと気になりまして。このあたり、ヒロさんはかなりお詳しいのかなと思っていて、ちょっと教えていただきたいなと。

金子:ヒロさんは確か(リーダーシップ・プリンシプルを)作る時にも少し関わられていたとお話をうかがっています。僕の理解では、リーダーシップ・プリンシプルはカチカチっと固まっているものではなくて、徹さんがおっしゃられたように、変わっていくもの。

例えば「Earn Trust」、つまり「信頼を得ていく」っていうものがあるんですけど、昔は「Vocally Self Critical」、要は自分を批判して内省してということが求めらるものが独立してあったんですけども、それがなくなって「Earn Trust」の中に組み込まれた。

これはAmazonのドキュメント文化の中でもあるんですけど、各チームでも「Tenets」、存在意義を作るんですが、それも1回作ったら終わりではなくて、常に変わっていっているんですよね。

なのでドキュメントの最後には、「unless you know better ones」と、要は少しバッファが残されていて、変わっていくことが前提で作られているっていう理解でいますが、ヒロさん、さらに昔のところから見ていくといかがでしょう?

リーダーシップ・プリンシプルが設定された背景

田中:そうですね。おっしゃるとおり、シュンさんが入った時は14個。僕が入った時は13個目がちょうど足されたとか改変された時のタイミングでした。もっとさかのぼると、僕はいませんでしたが、創業された1995年の当時は存在しなかったと聞きます。

ジェフ・ベゾスとその直属のリーダーシップチームが、「そろそろたくさん社員も増えてくるし、会社と社員一人ひとりに求めるものを定義したほうがいいんじゃないか」というような話があったようです。

当時それに直接関わっていたメンバーとも一緒に仕事をしたこともありますが、最初は懐疑的だったと聞きます。そのうちやはり必要なんだろうということで、本当にシンプルな「Customer Obsession」から始まったものでした。

だんだん組織が大きくなるにつれて、例えば「Hire and Develop the Best」です。すばらしい人材を採用して育てることが一人ひとりに求められるものだということで、とにかくすばらしい人材を採ってくるんだということが目指すところとしてあったので「Hire the Best」でした。しかし、やはり成長もさせなきゃ駄目だということになって「Hire and Develop the Best」に変更されました。

その直後ぐらいのタイミングで僕は入社していて、人材育成というものをもっと会社の中でもしっかりと仕組みとしてやろうというように変わってきています。

リーダーシップ・プリンシプルを変えることを誰が決めているのか

田中:あと、これは質問でよく聞かれるので先に答えますが、誰がそれを変えようと言いだすのか。したりまた、変えるとなった時にどうやって決められたり、足されていくのかということです。

正直に言いますと、HRはあくまでも補佐的な役割しか取らなくて、当時であればジェフ・ベゾス、今であればアンディ・ジャシー直下のリーダーたちがまず、「そろそろこういうものも明確にしたほうがいい」とか「ここの言葉を変えたほうがいい」などをを決めます。

HRがそれを言語化するのを手伝うとか、それを浸透させるようなプログラムを組んだりとかします。採用や人材育成、あとは評価の仕組みにどうやってそれを入れていくのかをHRが実現していくっていうかたちです。

シュンさんも話された言い回しになりますけれども、リーダーシッププリンシプルは石に書き刻まれていない、と言われています。もう刻まれてしまって2度と変わらないものではない、ということを前文に書いています。

時代の変化や組織の規模などが変わってきたらどんどん改変されていきます。

八木:ありがとうございます。

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