【3行要約】
・組織のバリューを掲げても実践されないジレンマを抱える企業は多いですが、Amazonはどのように一貫した組織文化を維持しているのでしょうか。
・元Amazonの田中氏と金子氏は「16の原則が評価の50パーセントを占め、時代や組織の成長に合わせて進化している」と、その実態を明かします。
・日本企業も理念を具体的な行動指針として落とし込み、評価制度と連動させることで、組織文化の本質的な浸透が可能になるでしょう。
Amazonはリーダーシップ・プリンシプルをどのように浸透させているのか
八木徹氏(以下、八木):司会進行を務めさせていただきます、Aun Communicationの八木と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
今日は「〜組織にリーダーシップを根づかせる〜アマゾンに学ぶカルチャー浸透と日本企業への示唆」というテーマで進めていきたいと思うんですが、始める前に、まずこのウェビナーを企画しようと思った背景を、簡単に私のほうからご説明をさせていただければと思っています。
理由は2つありまして、私は日本を飛び出して海外に出て、海外在住10年目になるんですけれども、これまで海外で活躍する多くの日本人の方と接してきました。
その中でも、グローバル企業の本社や、リージョナルヘッドクォーターで働いている日本人の方って、本当にタレントフルだなと感じておりまして、その方々の生の声をもっと聞いてみたいと思ったのが1つ。
もう1つが、やはりAmazonですね。私は起業して7年目ということで、日本企業のグローバル化支援とか変革支援に携わっているんですけれども、そうなってくると、やはりAmazonから学ぶことが非常に多いなと常日頃から思っていまして。
Amazonと言えば、「リーダーシップ・プリンシプル」という世界的に有名なプリンシプルがあると思うんですけれども、多種多様な人が集まる組織の中で、しかもターンオーバーが非常に高い環境の中で、どのようにこのリーダーシップ・プリンシプルを浸透させているのかに非常に興味があって、このウェビナーを企画しております。
浸透方法の深掘りと、日本企業への適用
八木:ということで、今日のアジェンダはシンプルです。まずヒロさん(田中宏明氏)とシュンさん(金子俊介氏)……。今日はヒロさん、シュンさんと、いつもどおり呼ばせていただきますけれども。
自己紹介をいただいた上で、リーダーシップ・プリンシプル、LP(Leadership Principles)とは何か。そしてそれをどのように浸透させているのかを深堀りしていきたいなと思っております。
なお、今回は「日本企業への示唆」というサブテーマも設けさせていただいているので、私が伝統的日本企業出身者としてお二人の話を聞いていく中で、「何か日本企業に適用できるところはないかな」みたいな視点で進行させていただければと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
Amazonに通算で13年在籍していた田中氏
八木:さっそくではございますけれども、まずはヒロさんから自己紹介をお願いしたいなと思っております。今日はシアトルからご参加いただいていて、シアトルは朝の4時ということで、朝早くからありがとうございます。よろしくお願いいたします。
田中宏明氏(以下、田中):はい、ありがとうございます。ご参加のみなさん、おはようございます、こんばんは。田中宏明と申します。私はAmazonに通算で13年在籍しておりまして、2025年に独立して起業しました。
今でもシアトルにおりまして、ここから先はシアトルと日本を行ったり来たりしながらやっていきたいと思っているところです。
直近の9年間、担当したビジネス部門はいくつかにまたがるんですが、本社の人事部で人材開発、タレントデベロップメントとかタレントマネジメントを、いくつか異なる部署で担当してきました。
具体的に、直近でいうと「Amazon Music」とか「Prime Video」とかのエンターテインメントの事業部。その前はeコマースのエンジニア組織をサポートして、コロナ禍ではタレントデベロップメントやエンゲージメントの取り組みをやっていました。
その前はインターナショナル・エクスパンションという、eコマース事業の海外事業の展開を支援するということで、南米やアジアの組織に対するAmazonの文化の浸透とか、マネジメントのスキルとかノウハウの伝達みたいなことをプロジェクトとしてやっていました。
さらに戻ると、私のAmazonのキャリアは最初アマゾンジャパンからスタートしています。当時のジャパンもすでに大きくなっていましたが、まだまだ組織開発とか人材開発の機能が存在していなかったので、それを立ち上げたりするようなことを3年、4年ぐらいかけてしていました。
もっとさかのぼると、もともと私は人材開発とか人事とかの世界の人間ではぜんぜんなくて、宮崎の「シーガイア」という大きなターンアラウンド(事業再生)のプロジェクトがあったんですけれども、もともとはあちらのホテル業界にいた人間です。
今ではだいぶ一般的になりましたが、アメリカのファンドがやってきて、ターンアラウンドするみたいなことをプロジェクトとして携わっていました。そこが自分が組織とか人材開発に切り替わるきっかけで、そこからずっと通算20年以上やっています。アメリカ在住は20年ぐらいで今はシアトルにいます。
Amazonに13年在籍している方はなかなかいない
八木:ありがとうございます。Amazonに13年いる方ってなかなかいないですよね。平均的なAmazonの在籍期間って、勝手なイメージですけど3年とか4年とか、そのぐらいなのかなと思うんですけれども。13年はなかなかいないですよね。
田中:平均はたぶん3、4年よりももうちょっと長いと思います。ただ当時は自分がどのくらい古株かがパーセントでわかるものが社内のツールであるのですが、成長期で後からどんどん人が入ってきたので、私が辞めた時点では、グローバルで言うと1パーセント未満の古い人間ということになっていました。
八木:いやぁ、すばらしいです。なので、Amazonのことを聞くならもうヒロさんかなと思って。今日はいろいろ楽しみにしていますので、よろしくお願いいたします。
田中:はい、こちらこそありがとうございます。
Amazonのリーダーシップ開発の専門チームに所属していた金子氏
八木:じゃあ続きましてシュンさん。今日はシンガポールからご参加いただいています。よろしくお願いいたします。
金子俊介氏(以下、金子):はい、みなさんこんばんは。シンガポールに在住しています、シュンと申します。よろしくお願いします。
僕は最初はアマゾンジャパンに入って、Amazonでは4年10ヶ月ですかね。ちょうど2025年12月に退職をして、シンガポールで起業しているというかたちです。実はヒロさんは在籍している時に、僕のメンターとして月1でいろいろ相談に乗っていただいていたんですけれども。
僕はAmazonの中のeコマースの部分、しかもその中のセラー(Amazonセラー)さまのサポートに特化しているLeadership Institute、(つまり)シニアリーダー向けのリーダーシップ開発の専門チームのグローバルチームのところにいました。
日本でだいたい1年4ヶ月働いて、シンガポールのほうにリロケーションしてきて、シンガポールを拠点にオーストラリア、中国、日本、韓国、フィリピン、そしてシンガポールの6ヶ国にいるシニアリーダー層の方たち約1,500人の方たちに対して、リーダーシップのサポート、トレーニングの実施であったり、ニーズの分析であったり、資料の作成をして実際にデリバリーまでしていく仕事をしていました。
僕のLinkedInにも書いていますが、Amazonが今過渡期である中で、私のロールがエリミネーションされるかたちになりまして。シンガポールに残って、こちらで今までの学びを還元していきたいと考えて、シンガポールで会社を設立して、ちょうど昨日ビザのカードが届いて、ここを拠点にしばらくやっていこうと思っている者です。今日はみなさん、よろしくお願いします。
八木:ありがとうございます。シュンさんはリーダーシップ開発ということにおいては、本当に最先端というか第一人者だと思いますので、今日はお話を楽しみにしております。よろしくお願いいたします。