【3行要約】
・管理職は数字管理だけでなくメンバー育成も求められる時代。しかし多忙な日常の中で「成果か人か」のトレードオフに悩む現状があります。
・有山徹氏は、人的資本経営のキーパーソンである管理職が「時間不足」「モチベーション低下」「サポート不足」の3つの課題に直面していると指摘。
・解決策として「データ&対話モデル」を提唱し、管理職自身への適切な支援体制が不可欠だと語ります。
セミナーのテーマと本日の流れ
有山徹氏:それでは「【令和時代のマネジメント】データ&対話モデル」というテーマでスタートさせていただきたいと思います。
本日のアジェンダです。「会社概要」から始まりまして、「ケーススタディ」ですね。簡単に今日のターゲットである管理職の方の心情になっていただくといったところで、少しイントロとして打ち出しています。
「背景」「そもそも令和時代の管理職の役割とは」「管理職を支援し組織パフォーマンスを高めるデータ&対話モデル」。「事例」2つ。「弊社のサービス」「質疑応答」「クロージング」という流れのご案内をさせていただければなと思っています。よろしくお願いします。
登壇者プロフィールと団体・会社紹介
では、あらためて自己紹介をさせていただきます。有山徹と申します。一般社団法人のプロティアン・キャリア協会代表理事、そして4designsの代表でもございます。
(スライドを示して)私の経歴を簡単にご紹介させていただきます。42歳の時に起業したのですが、そこまでは、主に事業会社で経営企画という職種を長く経験させていただいたという経歴です。起業後からは、人的資本経営、組織開発、キャリアの領域を中心に、取り組ませていただいています。

会社概要に入らせていただきたいと思います。4designs株式会社は、プロティアン・キャリア理論をベースにしたサービスが中心となっておりますので、一般社団法人のプロティアン・キャリア協会とも非常に密接な関係にあり、唯一認定を受けている企業です。

プロティアン・キャリア協会は、プロティアン・キャリアを広げるという思想を持って立ち上がっていますが、その中でも法人向けということで、組織開発コンサルや研修を提供させていただいているのが、4designsという会社です。
プロティアン・キャリア協会は、田中研之輔法政大学キャリアデザイン学部教授が提唱された、現代版のプロティアン・キャリア理論を広げるという目的で、立ち上げました。田中研之輔教授と私が共同代表の体制になっており、最高顧問に、「人材版伊藤レポート」の伊藤(邦雄)先生をはじめ、人事の有識者の方に顧問として入っていただいている団体です。簡単ですが、弊社の団体の説明をさせていただきました。

では、最初に質問となりますが、今日のセミナーに対する期待について、チャットにちょっと記載をしていただいてもよろしいですか? 今日セミナーでどのようなことを期待されているのかを、ぜひ記載をしていただきたいなと思っています。
(チャットを見て)はい、ありがとうございます。やはり管理職についての支援をどういったふうにやったらいいかについて悩まれている方もいらっしゃいますね。
ケーススタディ:営業マネージャー佐藤さんの1日
では、ケーススタディに入っていきたいと思います。現代の管理職のリアルってどんな感じなんだろうというところを、ちょっと触れたいと思っています。
営業マネージャーのある現実です。佐藤さんの1日の現実ですね。42歳。部下5名の営業マネージャーです。企業からの期待は、数字の達成。営業のマネージャーなので当たり前ですよね。そして、メンバー育成、1on1、キャリア支援、離職防止もやってねという期待が佐藤課長にはされています。
ある1日です。9時、10時。クレーム対応の緊急会議。顧客トラブルによって急ぎの対応が必要になってしまった。「今日は1on1の予定が9時から入っていたんだけど、もうしょうがない。後ろ倒しにしよう」。
10時から12時。部下の商談レビューとメール処理。部下の資料のチェック。お客さんへの返信。売上進捗レポートの作成。「キャリアの話より、今日の数字をまとめないと。まず今日の数字を作らないと」というところですね。
昼食を取り、1時から3時。上司との定例ミーティングです。「1on1の質をもっと上げて、メンバーのモチベーションをもっと上げてもらいたい」と言われてしまいました。
そうこうしていると突然、部下から「相談があります」と言われます。「業務量に不満があります。ちょっと忙し過ぎます」「キャリアの方向性もちょっと迷っているんですよね」という頭出しをされます。
佐藤課長は、じっくり話さなきゃならないとわかっているのですが、次のミーティングも詰まっているので、ちょっと中途半端な状態で、「ごめん、次のミーティングに行くわ」と、その場を離れます。
営業会議の緊急ミーティングが入ってしまった。今日予定していた1on1がまた延期。「メールの返答と事務作業に追われて、結局メンバーに向き合う時間が取れなかったな」「これでまたタレントマネジメントシステムに1on1を入力していないから、人事からまた何か言われるかもしれない」「困ったな」と。
「人事として何ができるか」という問い
さて、みなさんがこの企業の人事として営業課長の佐藤さんにできることは何でしょうか? こういうケースってよくありそうですよね。どうなんでしょうね。何ができるんでしょうね。
(コメントを観て)「非常にリアルだ」みたいな声も出ていますけれども(笑)、どうですかね?
みなさん、こういう管理職の方のイメージはよくつくと思いますが、私が助けたいのはこういう管理職の人なんですよね。こういった中で、今の話にも出てきましたが、やはり1on1などをちゃんとやってもらいたいという、最近の流れがあります。
競争環境の変化とメンバー支援ニーズの高まり
競争環境の変化によってメンバー支援の必要性が高まっている。個々に応じて伴走することが求められる時代に突入して、競争環境の変化、採用難・人材流動化、キャリア自律の時代、非定型業務・創造的業務が増加している、不確実な市場ということですね。

やはりこういう環境変化の背景があって、上司に求められる役割が増えているのかなと。離職防止、信頼関係構築、エンゲージメント向上。そして、自己理解、キャリア支援、内発的動機付け。対話による課題解決、支援型のマネジメント。自ら考え、学び行動できる人材の必要性……自律型人材ですね。まさにキャリア自律を推進するということが、求められてきています。
そんな中で、人的資本経営のキーパーソンは、やはり経営と現場の結節点である管理職です。ここの現状はどうなのかというところなんですけど。
公募制とか、リスキリングで学びの環境とか、副業とか越境とか、こういったものがそろってきている大企業が増えている。制度はある。ただ、支援するリソースがないという深刻なジレンマに陥っているのが今の現状ではないでしょうか。
多忙・孤立する管理職とサポート不在の現実
管理職は多忙です。HRBP(HRビジネスパートナー)は採用メイン。メンバーに向き合えているHRBPというのもあまり私も聞きません。そして、キャリア支援の経験がそもそもない。自分たちもされてきていない中で、キャリア支援をしてもらいたいと(いう要望がある)。
モチベーションがない。そもそも管理職のエンゲージメントは、一般の方より低いというデータがあります。どうしても忙しい。会社の上からと下からと板挟みに遭う、なんとかハラスメントというのもあって、メンバーにも気を使いながらやっていく中で、上司からは数字などを求められる。ということで非常に困っている。エンゲージメントが高まりにくい環境にあります。
そして、助けてもらえない。やはり管理職は、どうしても自己解決、自分自身でなんとかしなければならないんだという思考が非常に強くなってしまっているところがあるのではないでしょうか。
メンバーも「キャリアに向き合え、自律しろ」と言われますが、今まで会社にキャリアを預けてきたのに、いきなりそんなことを言われたってどうやったらいいのかよくわからない、という状況になってしまっている。
役割拡大と「成果か人か」のトレードオフ構造
管理職の課題は、人と向き合う重要性は理解している。さっきの佐藤さんもそうですよね。やらなきゃならないことはわかっている。でも突発的な業務が入ってきたりする。マネージャーも、70パーセントから80パーセントぐらいが現場業務というデータもあります。

現場のこともやりながら人のマネジメントをする。ピープルマネジメントをするための時間がなかなか取れない。なので、管理職の課題は、役割が拡大していっているというところと、マネジメント教育です。ただ、対話、キャリア支援、コーチングを一応学んでいる管理職は多いものの、1on1は単なる目標の進捗確認だけに終わってしまっている。
プレイヤー業務が多く、成果を出せと言われている。先ほどの営業の例で言うと、お客さんと向き合う時間を減らしてメンバーとの時間を増やすと、自分自身もプレイングで予算を持っている中で売上が上がらない。じゃあ、成果を取るのか人を取るのかというと、もう成果を取るしかないよねというところ。
成果を出してその立ち位置になってきているマネージャーが多い中、どうしても成果のほうに自分自身も寄っていってしまっている傾向があります。成果か人のトレードオフ構造になってしまっているというところですね。