リーダーが責任を持つのではなく、グループで責任をシェアする
山田:なので、先ほどの意思決定のところ。「トップダウンかそうじゃないかという時に、親として子に聞かせるみたいなことをやっている限りは、どんなモデル、どんな力学、どんな形であろうとも、結局成熟した状態にならないんですよ」ということを言っています。
これを書いているリサ(・ギル)という方が共著で出している、
『MOOSE HEADS ON THE TABLE』という本がありまして、この中に、その中身がすごく書いてあります。というのが、もう1つの補助線としてあります。

さっきは親子関係のことだけを言ったんですが、これの中にあるのは親子関係だけじゃなくて、自律的に動かそうとする時は、ボスが「私が責任を持つ」じゃなくて、グループで責任をシェアするという状態。
親子関係じゃなくて大人同士という関係であり、上司がいるんじゃなくて「みんなで責任を共有するよね」という状態であって、初めてセルフマネジメントはうまくいくよね。ということを、この著者2人が、スウェーデンのコンサルティング会社で25年間、コーチングという言葉もろくに使われていない時代からやってきたことの経験をもとに書いている本です。
この中で書かれていることが、この3つのメッセージ。もう1個は、机の下に隠してしまいそうな触れたくない話題とかもちゃんと触れることによって初めて成り立つよねというのを、この3つのピラーで説明をしています意思決定の仕方の補助線として、これを見ていただくとすごくいいなと思っています。

先ほどのCorporate Rebelsの、「ここの捉え方の上に関係性モデルがあって初めて自律的に人は働けるよね」という言い方をしているので、この2つの補助線から見えるのはすごいなと思っています。
吉田:確かに。前提に親子関係的なものが強烈にあると、何をやっても一番左側の権威モデルにいってしまうということなので。
山田:そうです、そうです。
吉田:他の力学を使おうと思っても、結局左側だよねというふうに、逆に白々しくなっちゃうみたいな感じですよね。
山田:そうです、そうです。パタゴニアも良い成熟モデルになり得るのは、いわゆる強いパーパスのあるいいお父さんのいる会社っぽいんだけど、一人ひとりが大人としてそのパーパスを追求したいと思う集団だから初めて成り立つよねと。そこの質感の違いに目を向けないと、結局この話はどれの話をしたとしても、マチュアな状態で成り立たないよねということをずっと言っている感じですね。
新人と年長者は「親子関係」になりやすい
吉田:ここはめちゃめちゃ難しいなと思いましたね。やはり会社で新人とか年長者がいると、どうしても親子関係的になりやすい。それを今までよしとしてずっとやってきている。なので、新入社員が入ってきたばっかりの時に、役員が対等な相手としてしゃべってくれるかどうか、みたいなことを示しているということですよね?
山田:そうです。いや、おっしゃるとおりで、大人同士じゃん。大人との関係でやるじゃんって全員賛成するじゃないですか。大人扱いするよと思うんですけど、本当にやる、その質感はめちゃくちゃ難しいなと。
2024年にバルセロナに行って、営業と経理のけんかしている場面のファシリテーターをやりますみたいなロールプレイをやらせてもらったんですよ。営業は「経理が数字を出せと言っていて、仕事にならねぇ」と言うし、経理は「営業が出してくれないから正確な数字が出せない」と言うという、なんか文句を言い合っているみたいな状態です。
「それを大人同士の関係としてサポートするファシリテーターをやってくれ」と言われて、「じゃあ、営業はなんでそんなに不安を持つの?」とか、「経理は何に困っているの?」みたいな。「本当は何を要求したいの?」みたいなことでファシリテーター役をやっていて。
そこまではよかったんですけど、だんだん議論が煮詰まってきたので、僕がふと、「言いたいことはあると思うんだけど、ここに今、お互い共通の目標を置けていないから話が進まないんじゃないかな?」と一言ポロッと言ったら、「ストップ!」と言われたんです。
「今あなたは解決策を出すという振る舞いをメンバーがする前に、勝手に解決策を出したよね」「それは、本人たちが自らその議題を出して合意する機会を取っているよね」と言われて。
僕は議論が進んだらいいかなと、よかれと思って言ったんですけど。あえてロールプレイだから極端に彼女は言ってくれたんですが、「踏み越えたよね?」ということを言ってもらったんです。「いや、普通にやっちゃうじゃないですか」みたいなことで。
「それぐらいの質感で、大人として新人だろうが解決する能力がある、意志がある、可能性があることを待って関わるということなんです」と言われたのが、わかるけどわからんっ! てなりました(笑)。
新人に「対等な権限」を与えることで見えるもの
吉田:冒頭から出ているティール組織なんだけど、本当はピラミッドのほうが……みたいな感触も、けっこうそこに関係しているようにも聞こえていて。
結局、経営者の人や社員の大半が信じているのは親子モデルで、できない子には指導をしてあげることが必要であるみたいなことを信じている中で、今みたいに大人として扱うことによって何が引き起こされるか(を考えるの)は怖過ぎるわけですよね。
山田:そうです。
吉田:未熟な者が私と対等な権限を持つことによって何が起こるのか、みたいな怖さ。
山田:まさに、まさに。
吉田:そのあたりがやはりすごく大きな乗り越えるところだし。私が今まで見てきた中でいくと、それを乗り越えている会社はすごくフラットに、普通に乗り越えている感じもあるので、ここの乗り越える部分が、やはり時間もかかる話だなとも思います。
すばらしい経営者がいたら明日できるわけでもなく、時間をかけながら自分たちがそれを信じられる体験を積み重ねていくみたいなことでもあるのかな、なんていうのを感じました。
山田さん、ありがとうございます。