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世界の先端組織から見る トップダウン以外に うまくいく組織はあるのか(全5記事)

日本企業が「ピラミッド型」でうまくいっていた時代から何が変わった? 閉塞感のある組織から脱却するヒント [1/2]

【3行要約】
・中国の電機メーカー・ハイアールは、創業会長が組織形態を柔軟に変え続けることで成長を遂げてきました。
・ハイアールは「顧客価値の最大化」を目指し個人の起業家精神を重視する組織へと進化を遂げました。
・日本企業が閉塞感から脱却するには、組織形態そのものを見直し、個人の価値創造と組織目標の統合という新たな経営モデルへの転換が求められています。

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ピラミッド、逆ピラミッド、マトリクス…1人の創業会長が変え続けた

吉田洋介氏(以下、吉田):ハイアールのユニークなところは、1人の創業会長がいらっしゃるところはベースではあるんですけども、最初はピラミッドにすらなり切っていなかったところをピラミッドにして、そこから逆ピラミッドだったりマトリクス組織だったり、同じ人がいじり続けている。だいたい代替わりとかで組織を変えるとか、ドラスティックなものをやるのはもちろん起こるんですけど、1人の社長がそれを起こし続けている。

会長が追い求めていたのは、世界の中の有効な組織モデルとかやり方を探していて、トヨタの「モノづくり」だったり日本的なモデルをめちゃくちゃ学んでいて、造詣がめっちゃ深いんですよね。なので、途中まではその世界のモデルを追いかけて、それを再現することを自社でやっていたというのが流れです。

山田裕嗣氏(以下、山田):はい、そうです。僕はもう、しゃべらなくてよかったじゃないですか(笑)。

(会場笑)

吉田:いやいやいや(笑)。

山田:おっしゃるとおりで、(スライドの)一番左のブランドを作る時期とか、当時西ドイツだったかな……の社名は忘れたんですけど、世界最先端の技術を持っていたところと就任直後に技術提携をして、品質はとにかくドイツから学んだのが1980年代。

1990年代ぐらいは、おっしゃるように日本のモノづくりをめちゃくちゃ参考にしていて、生産性を上げるみたいなこととかは、トヨタの「モノづくり」をすごく学んでいます。

そこから2012年とか2019年とか、インターネット時代、さらにIoT時代になった時に、もう参考にできるモデルがない状態になったところで自分たちで作り始めましたというのが、まさにこの「人単合一」というものだったということです。

吉田:そうですよね。けっこうここは分かれ目だなと思っています。日本企業は、さらにまねするモデルを探しにいっているケースがすごく多くて、それが見つからなくなっているような気がしているんですが。ハイアールはもう早々に、「ないから自分たちで作るんだ」と意思決定をしてトライをしていったのが、けっこう大きな分かれ目だなと感じました。

日本企業の進化を阻むもの

山田:会長が2025年の8月に日本に来られた時に、個別にインタビューを2時間ぐらいさせていただいたり、一緒にご飯を食べたり、いろいろお話しする機会があったんですけど。

ご自身はそんな言い方をされないんですが、すごく雑に言えば、「日本のモノづくりはもう参考にできない」と言われたと感じました。「進化が止まっちゃったよね」と。もうまねできるものがなくなったということを、「自分たちはさらに先に行ったんだな」みたいにすごくおっしゃっていたような気がして。

良い意味ではすごくリスペクトしてくれて、「モノづくりができたよね」ということを言ってくれていたんですけど。やはり日本の古い働き方が残っているとか、そんなにチャレンジができないみたいなことが、生産性を上げられていないと感じるとすごく言われたのは、じくじたる思いがあるところですね。

吉田:なので、その時その時の最適解というか合理性を持って組織作りをどんどんし続けている中で、もう次の課題を乗り越えるモデルが見当たらないので、そのモデルを自分たちで作り始めるという。

日本企業がどちらかというと選択しがちなのは、良くないところがあっても「そういうもんだよね」と置いてしまっているのが、もしかしたら「進化していないよね」と見られているようなポイント(なのかもしれない)。もちろん改善は起こっているんですけれども、大きなモデルを変えないと、もうその課題は解決しないよねという判断をされたんだなと思いました。

ピラミッド型でうまくいっていた時代から、何が変わった?

山田:この間、明治からの人事の歴史をすごくひもといていたじゃないですか。

吉田:はい。

山田:1980年代以降なので、わりと最近ではあると思うんですけど。その歴史の中で言った時に日本の人事的な取り組みは、この時代はどういう取り組みだった?

吉田:これでいくと、たぶんほとんど同じ感じになっていて。ピラミッド型の時は、やはり日本はずっと海外のモデルを追い求めていたので、日本の高度経済成長期は、そのモデルをとにかく実現していけばうまく伸びていけたりとか。

戦後においてはさらに、「みんなで戦争から復興しよう」というエネルギーをみんな共通して持っていたので、「みんなで国を豊かにしようぜ」というモードで、もう家族経営が一気にできたんですよね。

なのでピラミッドではあるものの、「みんなで世の中をもっと良くしよう」とか、「一人ひとりの生活をもっと良くしようぜ」という力学でグッといったんですけど、バブルが崩壊した時に、何をやったらいいかもわからなくなった。

みんなそこそこ豊かになって、次に何を目指したらいいかもよくわからなくなったし、もうジュリアナとか踊れて、万札を見せてタクシーを止めるみたいな生活になったら、「これ以上、豊かになるの?」みたいなことから問い直しが入る。という状態から見失って、次にどうしたらいいかが置けていないんじゃないかというのが、歴史からの僕らの問いだったんですよね。

なので、すごく近いなと思うのは、今僕らが30年間迷っているのは、結局組織が求めることと個人が求めることと社会が求めること、ここの3つがバラバラになって見えているところなので。じゃあ、個人がどうするかと振り切ったほうが整合性が取れる。

だけれども、日本はピラミッドは維持しているから。ピラミッドを維持したまま、そこの3者がまったく別のことを思っているものを統合しようとしていることに、かなり閉塞感を感じている構造。というのが歴史から見た感覚です。

ハイアールが「パーパス」よりも重視すること

山田:ハイアールの例は今のお話にまさにつながると思うんですけど、いろいろ話を聞いていても、基本出てこないのが1個あって、パーパスなんですよ。「何のためにハイアールってあるの?」という話がほとんど出てこないんですよ。

公には一応あるらしいんですけど、せいぜい「イノベーション」と言っているぐらいなんです。「とにかく起業家としてこの場を使って一番お客さんに価値を出せばいいのである」みたいなことしか言っていないんですよ。

というので、個人が一番働く中で個性を発揮することで、結果、売上も上がり報酬も上がる。結果、それで全体の整合が取れ、結果、それが社会につながるというのを個から見ているんです。というのが、今のお話からすると、すごく流行るモデルな感じがしますね。

吉田:今のお話でいくと、僕らが日本においては見失っている、全員が同じ方向を向くことがなかなかしづらい中での解の出し方が個人にいったんだなというのはすごく腹落ちしました。

逆に、さっきも言ってしまいましたけど閉塞感のところは、それを「会社としては、こう」ということを前提としたピラミッドに置いたまま、「実は、個人は違う方向を向いている」みたいな状態を、ちょっとこっちにふたをしているのに、最近キャリア自律とかでふたを開けようとしている。

山田:(笑)。

吉田:ふたを開けているのに、「具体的にそれってこの中では統合できないんじゃない?」ということをうっすら感じているから、「みんな本当にどこに行くの?」となっているようには見えます。

山田:そこは、ティール組織ということを、ご存じの方も多いのだと思うのですが、あのフレデリック・ラルーさんという方の目線からいくと、この進化の仕方はぜんぜんティールとかじゃないんですよね。なんだったら、オレンジをすごく突き詰めていますねというので、たぶんあのレンズから見ると、一番説明がつくんだと思っています。

今日の、「トップダウン以外ってあるんだっけ?」という冒頭のお話のとおりで、オレンジでもすごく人は幸せに働く形はあるよねというのを示していると思うんです。というのは、捉え方があれだけではないし、いろんなものがあるよねということをすごく示しているんだなという感じはしますね。

吉田:補足すると、オレンジはいわゆる目標達成型組織みたいなところですね。なので、「みんなでこの目標を達成するために合理的な判断をしていこう」だったり、そこに対して工夫をしていくみたいなことがオレンジのイメージなので。

ハイアールは確かに、ゼロ距離にするんだというところからお客さまに最大の価値を提供するという目標のために適切なものを選択し続けていると捉えると、オレンジを徹底的に磨き込んだ形の1つだということですね。

従業員の「個性」が発揮されることが最優先

山田:その突き詰め方が、海外のいろんな方と知り合いになって話をしていた時に、一定「このアプローチ、好きじゃないな」という方がいるんです。

働く個人としての個性が発揮されることをすごく尊重しているやり方なんですけど、「そこだけじゃなくてもっと人間的に良い状態で、チームとしてある種家族みたいな扱いをしながら、私はいい職場を作りたいんだ」という人からすると、その部分がぜんぜん入っていないので、「なんか肌に合わん」みたいな反論というか。自分はこうじゃないという方もいらっしゃるという意味です。

冒頭にすごく丁寧に説明をしながら、これが正解と言いたいわけでもまったくなく、これもあるよねということだなというのが1つの形ですよね。

吉田:そうですよね。起業家と言われた瞬間に「うっ」てなりそうな人は合わなかったりするんでしょうね。

山田:そうです。1万2,000人の中間管理職が「起業家をやるか、去るか」と言われたら、去る人もいるよねというのは、ある種健全だし。

逆に言えば、トップの創業オーナーだからできている、強さによってトランスフォームがちゃんとできたという意味では、すごく稀有な成功事例だと捉えられるんじゃないかなと思いますね。

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