空港の朝の2分が「チームと同期する時間」だった
でも、本当にレベルアップが起きるのは、「上に重ねる」のをやめて、「土台を強くする」と決めた時です。もしあなたの「基本」がグラグラしているなら、その上に新しいタスクをのせるたびに、その揺れに重さを加えていることになります。簡単な例を挙げましょう。
昔、と言っても、急に「俺が若い頃はさ」とか言うつもりはないですが、空港でリーダーをしていた頃の話です。当時の私は、朝のチェックインをいつも急いで済ませていました。さっとやって、「大丈夫? OKね」みたいに、ほんの一瞬で終わらせていたんです。頭の中では、「もっと大きな火消しをしなければいけないことがたくさんある」と思い込んでいました。
でも、あの2分間こそが、チームが私と「同期」する時間だったんです。「沈むほうのsinkじゃなくて、足並みをそろえるsyncのほう」ですよ。みんなの足並みをそろえる時間。一度リセットして、「今日はこういう一日だ」と空気を整える時間。
その時間を私が雑に扱った時、その日は一日中バラバラな感じになります。チェックイン自体が魔法みたいな時間だったというよりも、「毎日同じように行われること」が重要だったんです。そして、その一貫性を崩していたのは、他でもない私自身でした。
小さなことだけれど、インパクトは大きい。でも私は、それに気づきませんでした。ちゃんと向き合わざるを得ないくらい、カオスが大きくなるまで。
ちなみに、この「ルーティンを締めて、ちゃんとリズムを作る」という話は、来月のBetter Boss Clubのテーマそのものです。1月は「1年を自分で握り直す」月です。マインドセットを整え、方向性をセットし、これからの12ヶ月を本当に支える土台をつくる。
もし「数週間ごとにリスタートしている感覚」にうんざりしていて、「リーダーとしてちゃんと安定していたい」と思っているなら、ウェイトリストに登録しておいてください。かなりのストレス軽減になるはずです。
複雑さではなく「一貫性のなさ」がチームを壊す
さて、ここからもう少し深掘りしていきましょう。一貫性は「つまらないもの」ではなく、「安定させるもの」なんだと腹落ちすると、人を「量」で圧倒しようとするのをやめて、「明確さ」でリードしようとするようになります。
ミニマムスタンダードは、コントロールのためのものです。ガチガチにするためでも、ルールまみれにするためでもありません。本当に大事なところにだけ、「予測可能性」をつくるためのものです。
基本が整っていると、チームはいつも「上司の機嫌」や「今日の優先順位」を探り続けなくて済みます。みんなで共有している共通言語があるから、仕事が「推理ゲーム」ではなくなるんです。
ここで、多くの新米リーダーはつまずきます。チームが苦戦しているのは、「仕事が複雑だからだ」と思い込む。でも、ほとんどのチームが本当に崩れる原因は、「複雑さ」そのものではありません。「一貫性のなさ」です。
チームは、難しいプロジェクトにも耐えられます。高い期待値にも耐えられます。でも、「あなたが部屋に入ってくるたびに空気が変わる感じ」には耐えられない。そこが限界なんです。
では、「基本を強くする」とは、現実にはどういう行動になるのでしょうか。例えば、毎日同じように、同じ時間に、同じレベルの注意を払ってチェックインすること。自分が部下に求めるプロセスを、まず自分自身がちゃんと守ること。
どれだけ疲れている日でも、「一番小さな基準」を曲げないこと。「言ったことはやる」「意味していることだけを言う」を、今日も明日も同じように続けること。
地味な習慣が「静かな信頼」と目に見えない安定をつくる
どれも派手ではありません。これをやったからといって、誰かが大きな拍手をくれるわけでもない。だからこそ効くんです。静かな信頼をつくるから。「ここがどういう場所なのか、もうわかっている」という、目に見えない安定感をつくるから。そのおかげで、人は感情のジェットコースターに乗らずに、仕事に集中できるようになります。
もう少し耳の痛い話をすると、もしあなたの習慣が一貫していないと、チームはあなた専用の「迂回ルート」をつくり始めます。「期待値」に合わせるのではなく、「あなたの読めなさ」に合わせて動くようになる。
そうなると、人はショートカットを覚えたり、ある話題を避けるようになったり、「今日は機嫌がよさそうなタイミングまで待とう」と様子を見たりします。それは「パフォーマンスの問題」ではありません。「安定性の問題」です。
スピーチではなくルーティンが安定性を取り戻す
そして安定性は、スピーチではなく、ルーティンで直すものなんです。基本をちゃんと大事にし続けていると、ある瞬間から何かが変わります。チームが、あなたを試すのをやめます。あなたのリアクションを二度三度と確認するのをやめます。「今日はどのバージョンの上司が来るんだろう」とドキドキするのをやめます。
その分の脳のリソースが、ようやく「仕事そのもの」のために空く。そして、その「自由さ」を感じた時、パフォーマンスは自然と跳ね上がります。新しいタスクを足したからではなく、「余計なカオスを足すのをやめた」から。
だからこそ、ベテランのリーダーは、いつも落ち着いているように見えるんです。あれは「悟り」ではなく、「リズム」です。
土台ができたチームは、新しい負荷にも崩れずに耐えられる
何が本当に大事で、何がそうでもないのかを知っている。どの習慣が、全体をつなぎ止めているのかを知っている。リーダーシップとは、「すごく見えること」ではなく、「頼りになること」だと知っている。
そして一見、直感に反するようですが、基本がちゃんとしている時に初めて、新しいタスクを足しても崩れなくなります。なぜなら、今度は「土台」がその重さを受け止めてくれるからです。しっかりしたものをつくっているから、次のチャレンジが「雪崩」のようには感じなくなる。ただの「また来た火曜日」くらいにしか感じなくなる。
ミニマムスタンダードを締め直すところから本当の権威が生まれる
もし今、「全部がちょっとヘトヘト」「ちょっと予測不能すぎる」「なんでいつもこうなるんだろう」と感じているなら、新しいものを足す前に、いったん削ぎ落としてみてください。
ミニマムスタンダードを締め直す。ルーティンを強くする。基本を、飽きるくらい当たり前にできるところまで大事にする。そこから、本当の「権威」が生まれます。そこから、「信頼」が築かれていきます。そこで初めて、リーダーシップが「サバイバル」ではなく、本当に「リードしている感覚」に変わっていきます。
そして、もしその土台づくりを一緒に進めたいなら、「Manager’s Playbook」を手に取ってみてください。中には、スクリプトや習慣、何度でも使えるプロセスが詰まっています。
あなた自身にとっても、チームにとっても、「安定したリーダーシップ」をつくるためのものです。人が自然と信頼したくなるような一貫性をつくる手助けになるはずです。そうなれば、残りの仕事がようやく楽になっていきます。また次の動画で会いましょう。チャオ。