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目標はなぜ形骸化するのか?〜成果創出を阻む3つの「落とし穴」~(全4記事)

スキルマップを使った効率的な目標設定術 管理職は“部下に求めるスキルと行動”を定義する

【3行要約】
・目標設定は組織の生産性向上に不可欠ですが、メンバー個人の成長と行動目標の明確化が今日の課題です。
・株式会社O:(オー)の谷本潤哉氏は「人口減少やDX化の時代には、マネージャー個人に依存しない体系的な人材育成が重要」と指摘します。
・同氏は「スキルプロセスマップ」を活用し、適切な難易度の行動目標を設定することがおすすめだと提言します。

前回の記事はこちら

生産性向上を達成する3つの要素

谷本潤哉氏:次に、2つ目の落とし穴は「行動目標の明確化」です。ちょっと(先ほどまでと)違う視点からのお話になります。

今回は「目標」というテーマでお話ししています。けれども、そもそも目標というのは組織の生産性を高めたり、個人のモチベーションを向上させたりするところが重要な意味合いを占めているかと認識しています。

この「組織の生産性を上げる」という観点で見た時に、これを達成するための手段は、原理原則として3つしかないと言われています。(スライドを示して)それがこの3つになります。

日本企業はこれまで、けっこう3番目の「採用」に頼ってきました。その中で、先ほどの「育成」のお話につながるんですけども、1番目の「メンバー個人の成長」の重要性は非常に上がってきています。

人口減少やDX化・マネジメント(による効率化)が進みつつある状態においては、1番が注目されていると。もしかするとお聞きになられたことがあるかもしれませんが、スキルマップという取り組みが非常に有用となります。

体系的な人材育成に役立つスキルマップの活用

スキルマップとはどういうものかを簡単にご解説します。(スライドを示して)これは厚生労働省のサイトからもダウンロードできます。いろいろな仕事や職種が世の中にあると思うんですけども、すごくニッチではない限り、だいたいの職種……例えばこういった職業ですと、実は厚労省が必要なスキルを公開しているんですよ。

そこを見ると右下に、こういう業務があって、こういったスキルが必要ですと書いてあります。ちょっと申し訳ないんですけど、この厚労省が出しているものは正直、あまり使えません(笑)。

というのは、「これがクリアできたらこのスキルは達成できている」とか「じゃあ、こうしたらそのスキルを獲得できますよ」という基準値がない。なので現場が非常に解釈をしないといけないものになっている。なのでなかなか使えないという。

それに対して、やろうとしている目的自体はすばらしいなと思っています。こういったかたちでスキルプロセスマップを作るというのが、まさに2つ目のコアの部分なんです。

日常業務の中でスキルを獲得する仕組み

一例で法人営業のスキルプロセスマップの一部を切り出しています。イメージとしましては、例えば「法人営業をしている時に、これまでの成功事例を1分間で商談時に話す」みたいなスキルを獲得するプロセスです。

こういうのを必要スキルと定義されている会社さんは多いんです。けれども、家に帰って勉強するとか研修を受けるとかではなくて、日常のルーティンとして業務の中で特定の習慣や行動をひたすら繰り返すことで、その業務をやれるようにするということですね。

この教育法はPBL(プロジェクトベースド・ラーニング)と呼ばれています。わりと先進的な教育をしている教育機関ではものすごく効果があるということで採り入れられていて、これはすごくおすすめです。

要は、そもそもマネージャーのスキルに頼らずに、「こういったスキルが組織として必要である。それを獲得するためにはこういったことをしたほうがいい」と定義しておく。すると、仮に今、マネージャーの方の力量がまだあまりなかったとしても、部下やメンバー育成が組織の仕組みとしてできるようになります。これがおすすめの取り組みとなっております。

成果目標に対する「行動目標」を明確にする

少しディープにお話ししますと、この後に「シートを作る」という話をさらっとしますが、これを作るのがポイントで、力量が要るところになります。

まさに目標というもので、成果目標ですね。例えば「売上がいくら」とかは特徴として、自分ではコントロールができない。達成する確率を上げるための行動はできても、絶対に(成果が)上がるか、達成できるかというと、やはりそうではないものが成果目標と呼ばれています。

ここに着目するとけっこう自分を見失う原因になることがあるので、成果目標を達成するための行動目標があるかないかはすごく大事です。

これが先ほどのスキルプロセスマップでお伝えした、(スキルを)獲得プロセスをどこまでできているかを行動目標にする。そうすると、それは自分の意志でできる行動目標なので、要は自分を見失いにくい。

自分でコントロール可能な行動目標が重要

例えば「週あたり10件の商談をします」といった、自分でコントロールがしやすく、かつ、それをこなしていると成果目標に達しやすくなるもの。それを上司と部下でちゃんと合意して、そこに対して定期的にやり取りしていくということですね。これは非常におすすめとなっております。

ちょっと限られた時間ですみません。けっこう奥深いテーマなので、概要のみで恐縮です。みなさんご存じキーエンスさんが非常に高収益ということで、日本で一番(平均)年収が高い会社とも言われたりしますけども、その秘訣はここでお話ししたスキルプロセスマップの運用にあると言われています。

キーエンスさんだと職種ごとに108個の必要なスキルがございます。まさにこの仕組みで、マネージャーに頼らず会社として定義をしていくところが秘訣だと言われています。

作り方については、ちょっとすっ飛ばすかたちで恐縮です(笑)。もしご関心をお持ちいただけそうであれば、これもアンケートにご回答いただけますとお答えしますので、ぜひ後ほどよろしくお願いいたします。

高すぎる目標は効果を発揮しにくいことも

最後に、私のテーマである「3つの落とし穴」の3つ目になるんですけども、「無駄な業務をやめる」というところについてお話しできればと思います。

先ほどまさに、行動目標という考え方についてお話ししました。行動指標、難しく言えばKPIで、例えば「週あたりにどういったことを、どれぐらいやるのか」をだいたい定量的にマネジメントされている会社さんが多いかと思います。

そのイメージ図が(スライドを示して)こちらに記載しているようなものです。1つ目のポイントは、あまり知られていなかったりするんですけども、これも理屈的に答えが出ているもので、目標難易度という観点でございます。

要は、目標を立てたことによってメンバーのパフォーマンスが明らかに良くなるような、しきい値みたいなものです。(適切な)目標の条件については答えが出ています。

端的に言うと「高すぎず低すぎず」が大事です。明らかに「これって、これぐらい行動しなきゃいけないから、その行動目標って無理だよね」みたいなものとか。やる前から「それはもう無理」ということが見えている目標は、立てる意味がほぼないということですね。そういうことがわかっていますので、まずは高すぎず低すぎずという、この目標設定をどうするかが非常にポイントということですね。

なので、これはちょっと厳しいというか僭越な物言いになると「無駄」ということになるかもしれません。けれども、そうなんです。高すぎる目標は、非常に効果を発揮しにくいというところが1つ目です。

KPIの解像度を高めて目標達成の精度を上げる

もう1つはKPI、まさに行動目標自体の解像度の話になります。ちょっと字が多くて恐縮なんですけども、例えば(スライドを示して)この左側のKPI項目として、「新規コンタクト企業数」とか「有効リード率」とかをいろいろと書いておりますが、ここの解像度を上げるのもすごくポイントです。

例えば(単なる)商談化率だけじゃなくて、右にあるような、年商100億円以上の会社で、かつ、うちのサービスに関心があると明示をしている企業との商談化率(を指標にするということです)。要は、ちょっと幅を狭くするかたちですね。より制約して解像度を上げたKPIをいかにセットできるかがすごく大事なところです。

例えば「営業メンバーだったら、商談数が目標です」という時に、商談数はひたすら達成しているにもかかわらず成果目標が達成できないようなケースをよくお聞きします。けれども、まさにここが原因であることが非常に多いです。

こうやって解像度を高めていくと、けっこう商談数が減ってしまいます。理想としては、ちゃんと商談がセットできるようなスキルも、先ほどお伝えしたスキルプロセスマップの行動目標に含めてトレーニングしていくというのがすごくおすすめです。

やらなくていいことを決めるのも戦略

最近話題の成田悠輔氏が半年ぐらい前にテレビで語っていて、この人は東大を首席で卒業されたんですけども、「なんでそんなことができたんですか?」と聞かれた時に、「僕は勉強する内容を絞ったから成績が良かったんです」とおっしゃっていました。

(スライドを示して)「センスが9割」って書いてあるんですけど、実際にセンスというよりかは「やらなくていいことを決めた」みたいな話に着地されていました。

ちょっと営業っぽい話で恐縮なんですけども、「会ってくれる人、会いやすい人」ではなくて「ちゃんと会うと効果が出る、会いづらいけども会うべき人」にフォーカスをするのはなかなか難しいです。

こういったところにちゃんとフォーカスをして、先ほどお話ししたようにKPIの解像度を絞って「この人たちに会うのが有効なんじゃないか?」というところにお話をしていくことは、目標において非常に重要です。

今まで営業という観点でお話ししました。けれども、これは別に開発であってもマーケティングであってもコーポレートであっても、何に対しても同じように言えるかたちになっております。

スキルベース型の育成で目標を達成できる組織へ

これが最後のまとめのスライドになりますが、基本的にはこういったスキルベース型の組織が、令和時代には非常にマッチするんじゃないかなと思っています。

その中で、目標をどう達成するかに課題を持たれている会社さんのお話をよくお聞きします。「1on1」と書いていますが、先ほどお話ししたように、ちゃんと部下育成の理屈を伴って、組織的に育成を行っていく。これはやはり目標を達成するための一丁目一番地ですね。

そこをマネージャーに頼らずに、先ほどお話ししたように「この会社における成長はこういうもので、こういうトレーニングをしたら成長できまっせ」というスキルプロセスマップを作成する。そして、それを目標自体に組み込んでいくかたちが非常におすすめなんじゃないかということです。

長々と失礼いたしましたが、私のパートは以上となります。ありがとうございました。

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