【3行要約】 ・部下育成は多くの企業で課題になっていますが、令和時代には「量」より「質」を重視した育成が必要とされています。
・株式会社O:(オー)の谷本氏は、若手社員が求める成長と、マネージャーの育成手法の間にミスマッチが生じていると指摘します。
・効果的な部下育成には経験学習サイクルを回し、特に振り返りを促す質問で部下自身に考えさせることが重要だと提言しています。
前回の記事はこちら 令和時代に求められる育成の考え方とは
司会者:相川さま、貴重なお話をいただきまして、ありがとうございました。では次に株式会社O:(オー)の谷本より発表させていただきます。
谷本潤哉氏(以下、谷本):私の話は今の相川さまの「ゴールとリバーという分け方」という、非常に興味深いお話と通じますが、それに箸休め程度の補足がつくようなイメージでお聴きいただければと思います(笑)。
私からはまさに「目標」というところと、「成果創出を阻む3つの落とし穴」という観点でお話しできればと思います。
簡単に私の自己紹介となりますが、前職は当時日本一のブラック企業ということで名をはせておりました広告代理店におりました(笑)。目標というものに対しては非常に……ちょっとここでは言えないような(笑)、わりと目標を意識して業務をする文化で、それを吸収してきた人間となっております。
そういった仕事をしながら、私自身、業務としてもまさに目標の達成や人事的な組織開発のご支援をしてきました。余談ですが、今「HRzine」というメディアで、1on1やマネジメントというところで連載をさせていただいております。
目標管理を改善する3つのポイント
谷本:簡単な弊社のご紹介で恐縮ですが、先ほどのお話で広告代理店から独立しまして、今は株式会社O:(オー)というマネジメント支援の会社を立ち上げております。
ざっくりとしたご紹介になりますが、今はマネジメント支援のサービス、(スライドを示して)これはWebのサービスですね。あとは人的支援というかたちで、今日テーマになっている目標の達成支援や人事評価制度の運用を支援している人間です。

今日のテーマに入ってまいりますが、「3つの落とし穴から、目標管理と成果を出すための行動改善」のお話をできればと思っています。
ポイントはこの3つになります。「部下育成の理屈がわからない」が1つ目ですね。2つ目が「行動目標の明確化」ですね。3つ目が「無駄な業務をやめる」。3つ目が強い意志を感じる言葉で恐縮なんですけれども(笑)、この3点からお話しできればと思います。
個人と組織の関係性における課題
谷本:この3点を企業の活動に当てはめると、(スライドを示して)こういった図になるかなと思っております。これはあくまで弊社の考え方にはなるんですけども、まさにこの令和時代において、個人と組織の関係性が、昭和や平成と比較してすごく変わってきています。
その中で、令和時代にマッチする考え方というのが(この図です)。これは左上からスタートなんですけど、組織の目標や目的があって、横文字で言うとKGIやKPIで目標が数値化されていく。
おそらくそれが、ほとんどの会社さんでは評価制度というかたちで個人目標に細分化されて、その成果や行動状況を基に右側に書いてある人事評価が行われて、そこから報酬が決まる。そういうモデルになっています。
理想で言うと、目標を達成できた人が正しく評価されて報酬に反映されるというモチベートの仕方がベーシックであるかなと思っておりますが、これは非常に機能しにくいですね。そういうところがまさに、平成から日本が差しかかっている課題かなと思っています。
若手社員の成長への期待と、マネージャーの悩み
谷本:(スライドを示して)ここの①、②、③が先ほどの①、②、③に対応しているんですけども、まずは1on1。1on1だけの話ではぜんぜんないんですけども、上司と部下のコミュニケーションのところからお話しできればと思います。
1つ目は部下育成の理屈に関する落とし穴となります。ちょっと統計的なお話からスタートしますと、「若手の新入社員の方が会社に何を求めていますか?」というアンケートはいろいろとあるのですが、だいたい同じ結果になっています。
一番は断トツで「成長」ですね。どんな統計でもだいたいこれが社会期待として非常に強い結果になっています。
今度は別の観点で、マネージャーの方の悩みとして見た時にもこういった統計がございますが、これもほぼ同じ結果です。マネージャーが一番悩んでいるのは「部下育成」ですね。これが一番課題感としてあるようでして、ここはまさに「(部下は)成長を求めているけど、それに応えられていない」というところです。
この部分について、今日ご参加いただいている方も昨今はAIを使い始めていらっしゃると思いますので、そこにお役立ちできそうなお話ができればと思います。
“とにかく仕事量をこなす育成”が通用しない時代
谷本:先ほど、私もブラックな会社にいたという話をしました。当時はとりあえず「ぶっ倒れるまでやれ」みたいな(笑)。「仕事の量をこなしていれば、そのうち成長するわ」といった教育を受けて……教育と言っていいかはアレなんですけども。
そういったやり方を伝授されてきた世代なんですけども、やはり令和時代にはもうできない。量でカバーすることができない時代において、質を伴う部下成長の方法ができるかは、今日のテーマの目標達成に関わる非常に大きなところです。
みなさん、今の時代において、人を育てるメカニズムに最適なものは何だと思われますか? これには答えがあるんです。もしかしたら聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、「経験学習サイクル」というものですね。非常におすすめの方法論でございます。
リバータイプの人は振り返り以降が欠けていることが多い
谷本:難しい言い方をしているんですけど、内容はぜんぜん大したことはないです。(スライドの図の)左からスタートするんですけど、とりあえず仕事をすると。仕事をして経験して、そもそもその仕事がうまくいったか、うまくいっていないかをジャッジする。
うまくいった場合は何がポイントだったか、うまくいかなかった場合は何が改善点かを自分の中で考えて、次に同じような仕事があった時に前の仕事を活かすというサイクルですね。これが成長の根幹となりまして、最も科学的に人を育成する方法として推奨されているものなんです。
まさに
先ほどの相川さまのお話にもありましたけど、実はリバータイプの方は非常に高確率でこのサイクルを回せていないということが統計的にわかっております。これはどこに問題があるんでしょうか? なんとなく勘でおわかりいただけるかもしれませんが、リバータイプは右下の「振り返る」以降がないケースが多いんです。
ゴールタイプはゴールから逆算して仕事をしているので、そのゴールに近づいているかいないかが思考回路に組み込まれている。それに対してリバータイプの方は、現状改善の先にゴールがある。
つまり、現状改善をしていけばたどり着きたいところに行くことができるんじゃないかという考え方なんです。なので、何に対してうまくいったか、うまくいっていないかという、いわゆる北極星みたいなものがないケースが非常に多いです。
「やったけど、うまくいっていない」を見落としていないか
谷本:振り返りを人に促すためには、この①から③のような問いかけが重要と言われています。けれども特にリバータイプの方に対しては、このプロセスに入る前に「そもそも、仕事はうまくいったの? うまくいかなかったの?」という質問をするのがすごく大事でございます。けっこう、これがない状態なんですね。
要は、「やったか、やっていないか」とか「できたか、できていないか」という基準はあるんですけども、「うまくいったのか、いっていないのか」がない。「やったけど、うまくいっていない」というケースもぜんぜんあるにもかかわらず、そういった観点がないというところですね。
そこから、「うまくいった、うまくいっていないポイントは何だったのか?」「理由は何だったのか?」「じゃあ、次に同じような仕事があった時にどこを変えるか?」を考えるということですね。
アドバイスを控え部下に考えさせる
谷本:マネージャーという生き物は、わりと「こうしたらいいんじゃないの?」とか「こうでしょう」って言いたくなるんですけども、そこを言わないのが大事です。相手が頭を使って、今後どうしていくかを考えていただくのが非常におすすめとなっております。
ここで、マネージャーの方がけっこう頭を悩ませるポイントがあります。これはコーチングの話なんですけども、「こうやりたいです」というアクション案が出てきたとしても、「うーん、それはちょっと微妙だな。もっとレベルの高い仕事ができるんじゃないか?」みたいに思ったとします。
でも、そこからどうしていいかがわからない。微妙だなと思っても「じゃあ、それでやってみようか」と促すケースがあるんです。けれども、そこを妥協せずに、3回までは「いや、○○君だったらもっといけるんじゃないの?」と、よりポジティブな引き出しをしていくことで、相手の方に頭を使ってもらうということですね。
まず1つ目(として)、私はここが一丁目一番地だと思っています。コミュニケーションにおいて目標達成を考える上で、これはほぼマストなんじゃないかというところでお伝えさせていただきました。
AIを活用した部下育成の手法
谷本:(スライドを示して)これは、AIをマネジメントに活用する方法です。(スライドは)左と右に分かれていまして、左は振り返り事前シートで、質問は基本、2問です。これを部下の方に書いていただきます。
その内容と右にあるスクリプトを、AIサービスであればだいたい何でもかまいませんので、こうやって打っていただきます。すると、「育成につなげるために相手の方とどういう会話をすればいいか」や「こういう業務を促していったらいいんじゃないか」がけっこう高精度でわかる。
ということで、ネクストアクションを相手の方に頭を使って考えてもらって、実行することを促す。AIを使うと、本質的な部下育成が非常にやりやすくなるのでおすすめです。もしご関心をお持ちいただけそうでしたら、ぜひお声がけいただけますと幸いです。