【3行要約】 ・目標への取り組み方には「ゴールタイプ」と「リバータイプ」の2つがあり、どちらも有効ですが、個人の特性によって適したアプローチが異なります。
・コーチングフォワード代表の相川貴志氏が、熱量と目標タイプを組み合わせた4象限で人材のタイプを分類する手法を解説します。
・部下のやる気を引き出すためには、個人の強みや価値観に合わせたコーチングや、モチベーションを3段階に分解する工夫も効果的だと提言します。
前回の記事はこちら 目標を細分化するタイプか、紆余曲折を楽しむタイプか
相川貴志氏:(目標への取り組み方は2つのタイプに分類できるという話を受けて)わかりやすく「どっちも大事だよ」という話の例をお持ちしました。

1つは、大谷翔平選手は何タイプでしょう? もう1つは『ONE PIECE』のルフィ。ここまで聞いたら、みなさんも想像がつくと思うんですよね。「ゴールとリバー、どっちがどっちだっけ?」ということです。
言わずもがなですが、(スライドを示して)このマンダラチャートは有名なのでみなさんもご存じかなと思います。「大谷翔平選手 マンダラチャート」とか「大谷翔平選手 目標管理」とかでググると一発で出てきます。大谷翔平さんはゴールタイプですね。目指すべき目標が明確にあって、ここで言うと真ん中の「ドラフト1位 8球団」ですよね。これを高校時代に作ったという。本当に伝説ですよね。
真ん中を達成するために、目標をさらに中間目標に分解して、その中間点をさらにアクションまで落とす。そうするとこれだけマスができるので、これを計画的に「今年はここと、ここと、ここを潰す」と1個ずつ潰していったんですよ。そして、全部埋まったら真ん中が達成されると。めちゃくちゃストイックで計画的。これは逆算思考をしているのでゴールタイプですよね。
いかに熱中状態を作るかが重要
一方、『ONE PIECE』のルフィはどうでしょう? 「海賊王になる」と。でも、その過程ってすごい遠回りしかしていないですよね。計画的ではない気がします。ただ、絶対にぶれない目標があって、そこに至る道のりは紆余曲折があり、目の前の大事なことや興味のあることにバンバン飛び込んでいく。
まだ続いているので結末はわからないんですが、結果的に目標に近づいていくわけですよね。だとすると、やはり目標はどんな人にも非常に重要だと思います。
「いやいや、大谷翔平さんもルフィもコミットメントが高すぎるよ。あんな人はなかなかいないです」。確かにそうなんですよね。でも、熱中する状態、つまりゾーンの状態になると生産性が飛躍するというのはご理解いただけていると思います。じゃあ、いかに熱中状態に入ってもらうかですよね。
(スライドを示して)もともと熱量の高い人と、これからの人を、4象限で分けてみました。熱量の高い人は、すでにゴールとリバーに分けてもらっていいです。ゴールタイプの人は再現性や強みにフォーカスをしていくのがおすすめです。これは後で少し種明かしをしますが、ゴールタイプの人は比較的、再現性や強みにフォーカスをすると目標へのアクションに追い風を吹かせることができます。
リバータイプの人はどちらかというと、意義や価値観にフォーカスをしてあげてください。これはグラデーションなので、どちらかだけではないです。必ずどっちも必要なんですが、どちらかというとこっち(右側)に軸足を置いてあげてくださいという話ですね。
熱量の低い人を引き上げるにはコーチングの技術が有効
これは会社の中での「どこに投資をするか」という意思決定の話なので、みなさんの会社の中で大事な人材がどこか、という話で考えてもらって大丈夫です。「熱量の高い人に、より高くなってもらう」という話でもいいです。
あるいは、こっち(の熱量の低い人)はボリュームゾーンです。なので、「どっちのタイプかまだよくわからないけど、このボリュームゾーンをすごく引き上げていかないと」という話であれば、やはりここの目標を引き出して、上に向けてあげる必要があるんですよね。ここでコーチングの技術を使ってほしいなと思っています。
実は、コーチングを使って自己理解をしようとする場合に不可欠な自己分析の観点として、「強み」と「価値観」という2つの軸があります。強みは、その仕事の中での再現性につながってきます。価値観は、この会社で働く意味や自分が大事にしていることなど、自分のモチベーションの源泉ですよね。そういった価値観を引き出してあげる。
本来であればここで、どうやって(強みや価値観を)引き出すのかを1個1個丁寧に共有していきたいところではあります。けれども、やはりさまざまなスキルやコーチングの技術の全部をお伝えできないので、1個だけ大事なことをお伝えするとしたら、「その人らしさを見つけること」ですね。
「その人らしさ」から勝ちパターンが見つかる
やはり強みにしろ価値観にしろ、その人ならではの強みや価値観を見つけるのが最も大事ですね。そうすると、その人が再現性高く強みを発揮して、いわゆる勝ちパターンが見えてくるわけですね。そこまでいけると、熱量が高い状態に移行しやすくなってくるんですよね。
今、熱量が低い人を熱中状態にするために、コーチングの力を使って強みと価値観を引き出し、(スライドを示して)この、上の熱中状態に引き上げていく。これが1つ目の「目標」の話になります。

さぁ、2つ目ですね。もう1つの要因は、「プロセスにわくわくしない」。先ほどの「目標」で熱中状態に入りやすい目標を作れたとして、そのプロセスもやはり大事なんですね。

なんでかというと、イソップ童話で有名なレンガ職人の話があります。
ご存じだと思いますが、(スライドを示して)左から「ただ目の前のレンガを積んでいるんです」という方、「自分は家族を養うためにレンガを積んでいます」という方、そして「歴史的な大聖堂を作るために」という方です。結果的に、恐らく右にいる人ほどモチベーションや仕事に感じる意義が上がっていくんじゃないかなと思います。
ですが、モチベーションの持続性ってぶっちゃけ、どうですか? これは「大聖堂を作っている人も、それだけで何年間もモチベーションを持続できますか?」という話ですよね。なので、モチベーションを具体化していくことも大事です。原動力になる部分をもう少し分解して明らかにしていく。
モチベーションを3段階に分解してみる
ここで1つ、おもしろい例をお伝えしたいです。ある経営者の方がゴルフスクールに通った時の話です。その経営者の方は、ゴルフのスコアで80を切るという目標があります。あるいは経営者仲間で気後れなく仕事の話をしたいなという、いろいろな目的があるわけですね。
モチベーションをすごく分解して考えていらっしゃる方で、実はそのためにファーストモチベーション、セカンドモチベーションと分解して考えていらっしゃいました。ファーストモチベーションは、「ゴルフを継続することで健康を維持できる」。セカンドモチベーションは、「スクールのコミュニティが刺激的でおもしろい」。ありますよね。サードモチベーションは、「スクールの美人コーチに叱られたい」。
サードになるにつれて、完全に利己的ですよね。これでいいと思うんですよ。ちょっとした階段を上るようなモチベーションを設定しておくことで、モチベーションを持続させていく。最終的に大聖堂を作ればいいわけですよね。原動力になるファースト、セカント、サードを設定してあげると、目標に向かうモチベーションを持続できる。
自分のモチベーションに気づくことが重要
最後にまとめになります。大きく2つありました。まずは目標のところ。「目標にわくわくしないな」という部分については、熱量の低い人を高くするためにコーチングの力を使って、ゾーン、熱中状態に入るための真の目標を引き出してあげてください。

ただ、それだけだとゾーンに一瞬は入れても1年間持続させるのはなかなか難しいです。なので、持続させるためにプロセスの部分をファースト、セカンド、サードに分解してあげます。サードにいくにつれて利己的でいいので、ありのままの自分が欲求するようなモチベーションに分解してあげて、そこに気づきをぜひ差し込んでいってください。
「自分はこの仕事を通して、実はこういうモチベーションがあったのか」という気づきが発見できるといいですよね。まずは目標が大事です。形骸化しないように目標設定をしていく。この2点をぜひ、今日は持って帰っていただきたいと思い、お話しさせていただきました。私からは以上とさせていただきます。