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『人事・HRフレームワーク大全』出版記念セミナー:組織の「見えない問題」を言語化する(全4記事)

現場でフレームワークを使う時の落とし穴 フレームワーク選定のポイントと「頼り過ぎ」のリスク [1/2]

【3行要約】
・組織の同質化やトップダウン型意思決定は多くの企業が抱える課題ですが、フレームワーク思考を活用した解決法があります。
・『人事・HRフレームワーク大全』著者の伊達氏によれば、フレームワークは課題解決の道具箱であり、組織の普遍的な原理を捉えています。
・フレームワークは答えではなく思考ツールであり、現場との対話を通じて活用し、単純化のリスクに注意しながら組織変革に役立てるべきです。

前回の記事はこちら

同質化・トップダウンの組織から脱却するには

伊達洋駆氏:では、私の講演は以上とさせていただいて、ここからは、いただいているご質問に回答していきたいと思います。「本日はありがとうございます。『人事・HRフレームワーク大全』も購入させていただきました」。ありがとうございます。まだの方はぜひよろしくお願いします。

「弊社は生え抜きの管理職のみで、昭和な同質化とトップダウンの組織から脱却できません。また、キャリア採用や若手の意見を聞かない・取り入れようとしないため、共通言語もなく組織が進化しません。この課題解決に適したフレームワークをご教授いただけるとうれしいです」ということなんですが。

まず、いろんな問題が挙げられていますね。例えば、同質化とトップダウンということ。「組織がなぜ同質化してしまうのか」ということについてのフレームワークは実はあって、それは(本に)収録されていますので、ぜひそちらを見ていただくといいかなと思います。

また、トップダウンについても、意思決定の方法についてのフレームワークがあります。その中で、実はトップダウンも1つの方法なんですよね。だから、そういうものも参考にしていただくと、他にどのような意思決定の方法があるのか。

そして、それぞれの意思決定のメリット・デメリットはどういうものなのかを理解することができます。そして少し戻ると、同質化ひとつ取っても「なぜ起きているのか」、そして「それをどう防いでいくことができるのか」ということも理解できます。

このように、一つひとつ取り上げていくと長くなってしまうのですが、一つひとつの事象に対応するかたちでフレームワークがありますから、どんな課題に適応できるかといったセクションを見ていただくと、今私が申し上げたようなことが書かれています。ぜひそちらを見ながら、さまざまなフレームワークを参考にしていただけるとうれしいです。

人から言われたことは「わかっている」と思いやすい

では、他にいただいているご質問に移らせていただきます。「思考の道具で解のヒントが得られたとしても、『そうは言っても……』『わかってはいるが……』という反応に対して、どう働きかけていけばよいでしょう?」という質問をいただいています。まず1つ、「一緒に考える」というのも大事だと思いますね。人から言われたことは「わかっている」と思いやすい傾向があるので。

つまりその解に対する当事者意識というか、自分ごと化ができていないわけですよね。一緒に考える機会を設けていくと、同じ解のヒントが得られたとしても、そのヒントに対して前向きになりやすい。自分が考えた解でもありますので、「やっていこう」という気持ちになりやすいという傾向があります。ですので、考えるプロセスそのものに巻き込んでいくという方法が、1つあるのかなと思います。

2つ目が、「なぜ『そうは言っても……』と思うのか」ということ自体が、1つの問いになり得るかと思います。今度はその課題を読み解いていくために、フレームワークを使って考えてみる方法もあり得るのかなと思いました。ありがとうございます。

フレームワークは全部使おうとしなくていい

他ですね。「83個のフレームワークが収められているということで、ぜひ読んでみたいと思います」といただいています。ありがとうございます。他方で、「83個のフレームワーク全部を学ぶのは大変そうでもあります。フレームワーク思考を組織に浸透させる、いい方法はありますか?」という質問をいただいています。

私も先ほど少し申し上げたんですが、確かに、すべてを一度に学んで記憶して、全部をうまく使うのはなかなか現実的ではないというか(笑)、大変だと思うんですよね。そこでおすすめなのが、まずこの書籍『人事・HRフレームワーク大全』という道具箱があるんだと理解していただく。そして、それを周知されるといいですよね。

「ここに訪れれば、なにかしらあるかもしれない」と思うと、だいぶ違いますよね。「ここに書かれているかもしれない」と、道具箱があるんだということを理解していただく。その上で、例えば組織全体の共通した課題に絞り込んでいく。

例えば、「1on1を行っているんだけれども、その質がイマイチである」という課題があったとします。その時に「じゃあ、どういうフレームワークが使えるだろうか」ということを優先的に取り上げていく。

例えば、先ほどのような基本的欲求理論とか、目標設定理論とかは使えるかもしれません。そうすると、使えそうなフレームワークから集中的に学んで使っていくという発想が取れるのではないかなと思いました。

「今、Amazonで書籍を購入させていただきました」といただきました。わざわざご報告いただきまして(笑)、ありがとうございます。

フレームワークを選定するためのステップ

他にいただいているご質問ですね。「書籍には83個のフレームワークが紹介されているとのことですが、どれを使えばいいか迷ってしまうのではないか?と思いました。フレームワークを選定するための基準やプロセスがあれば教えてください」ということです。

これについては、実は本の末尾に書いていますので、そちらを見ていただければなと思います。ただ、それだと不親切ですので、少しだけ回答させていただきます。まず、講演の中でも少しお話したかもしれないんですが、解決したい具体的な課題・症状を挙げるということは、最初のステップになってくるかなと思います。

その症状が、例えば個人の意欲に関することなのか。それともチームや集団、つまり職場に関するものなのか。あるいは、組織全体に関連するものなのかを見極めていくといいのかなと思います。実は、今回の『人事・HRフレームワーク大全』の構成自体も、そのように、個人のことなのか、チームのことなのか、組織のことなのかといったようにテーマ別になっているんですよね。なので、「どの章に近いかな?」と見ていただくと、フレームワークを少し絞れるかと思います。

ただし、フレームワークは結局のところ「使ってみないと、使えるかどうかわからない」という性質のものでもあります。まずは、少し絞り込んで使ってみることをおすすめします。使ってみると「これは合っている」「これは使える」「今回は使えない」と見えてくるかと思いますので、まずはぜひ使ってみていただけるといいのかなと思いました。

古典的なフレームワークは今でも有効なのか?

他にいただいた質問です。「講演で紹介していただいた理論、目標設定理論などは比較的古くからあるものも含まれていると思います」と。そうですね。

講演だけではなくて、この83個のフレームワークの中には古典的なフレームワークもあります。それについて質問をいただいています。「現代のように変化が激しい時代において、古典的なフレームワークは今でも有効なのでしょうか?」ということですね。

古典的なフレームワークの中には、現在までに実証的に棄却されてしまった、つまり「これは、あまり当てはまらない」となってしまったフレームワークが、ないわけではないんですね。しかし今回、83個のフレームワークを挙げる時に気をつけたのが、現代でもある程度使われているフレームワーク。つまり、適用できるようなものを挙げたということです。

というのも、確かに、例えば1960年代頃に提案されたフレームワークも含まれているんですね。1960年代と現代だと、だいぶ違いますよね。もう相当昔なわけです。一方で、時代が変わったとしても、人間が基本的に持っている、例えば心理的なメカニズムは共通しているわけですね。ある種、普遍性があるわけです。

「目標があれば、がんばれる」「他の人に認められたい」など。そういった傾向は、1960年代に生きている人でも、2020年代に生きている人でも当てはまるわけですね。古典的なフレームワークで現代でも使われているものは、そうしたある種の人間や組織の原理をうまく捉えているんですね。なので、長く使われ続けているところがあります。

その意味では理論の鮮度みたいなものも、もちろん重要ではあるんですが。そのフレームワークを使って、今直面している課題をどれだけうまく分析できるのかを、むしろ重視していただくのがいいのかなと思います。本の中では、ある程度厳選して集めて紹介しています。

実際には、目の前の課題に対してフレームワークを当てはめて考えてみながら、「これは、今回は有効だ」「いや、今回は有効じゃない」と見ていただくのがいいかなと思います。

もちろん、新しい研究知見をキャッチアップすることは非常に重要です。かつ、今回83個のフレームワークを挙げているんですが、さらにそれを拡充していくことも重要だと思うんですね。ただ、83個もありますので、まずはそちらの中からフレームワークを理解して使いこなしていただくといいかと思います。

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