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『人事・HRフレームワーク大全』出版記念セミナー:組織の「見えない問題」を言語化する(全4記事)

課題解決のフレームワークを日常業務で使いこなすポイント 理論を「現場で実践」する時の注意点 [1/2]

【3行要約】
・組織内の部門間対立は感情的な問題ではなく、文化的価値観の違いから生じる構造的な課題です。
・競合価値モデルを活用すると、各部門が持つ異なる文化が見えてきます。
・対立を解消するには「統合」アプローチが有効であり、両部門の価値観を尊重した解決策を見出すことで、対立を組織改善のエネルギーへと転換できます。

前回の記事はこちら

部門間で対立が生じているケースの対処法

伊達洋駆氏:少しイメージが湧いてきたでしょうか? このようなかたちで、ある特定の現象に対してフレームワークを用いていくことによって解釈の切り口を提供することで、その現象に対する理解が深まり、対策を考えていくことができるようになる。というのが、フレームワークの基本的な機能になっています。

もう1つだけケースを挙げて、みなさんにフレームワークの意義をお伝えできればと思います。

今度は部門間で対立が生じているというケースを考えてみたいと思います。例えば部門間で意見が衝突してしまったり不和が起きて業務が停滞してしまう。あるいは一体感が欠如してしまうということがあると、組織全体で見るとあまり良くない状況につながっていきかねません。

こうした問題も単純に「感情的な対立である」と捉えるのではなくて、「何か構造的な課題があるのではないか」と考えていくために、フレームワークが役に立ちます。

例えば、このような事象を読み解いていく上で有用なフレームワークの1つとして、組織文化に関する「競合価値モデル」と呼ばれるフレームワークがあります。これは、組織文化を4つのパターン、2軸で4象限に分けるという考え方です。

組織文化は「4つのパターン」に分けられる

1つ目の軸は「柔軟性を重視するか、安定性を重視するか」というものです。そして2つ目の軸は、「内部志向か、外部志向か」という軸です。これら2つの軸を組み合わせると4つの文化の種類が生まれてくるというのが、この競合価値モデルの基本的な考え方です。

ざっくりと解説しますと、例えば内的志向と柔軟性が組み合わさると、「クラン文化」といって、いわゆる家族主義的な文化が生まれます。家族的な一体感を重視していて、例えば人材育成やチームワークを大切にするような社風になっていく。というのが、クラン文化です。

他方で、外部志向で柔軟性が高い場合には「アドホクラシー文化」といって、イノベーションやクリエイティビティなどを重んじるような文化になります。リスクを取って変化に対応する、プロアクティブな文化になります。

さらには、内的志向で安定性が高い文化。もしかすると日本の少なくない企業で、こうした文化があるかもしれないのですが、「ヒエラルキー文化」と呼ばれるものです。こちらは規則や効率性を大事にして、安定した組織を目指していくような文化になります。

最後に、外部志向で安定性が高い文化。これら2つが組み合わさると、「マーケット文化」と呼ばれるものになります。マーケット文化は、市場での競争や成果を上げることを優先します。そして目標達成にこだわる側面があります。

対立が起きる原因を読み解くには

この競合価値モデルというフレームワークを使って、部門間の対立を読み解いていくことができます。例えば、「それぞれの部門が持っている文化的な価値観が違うのかもしれない」という問いを立てることができます。営業部門と管理部門が対立しているという構造があったとして、営業部門はマーケット文化が強く、成果の達成を第一に考えて、スピードや結果を求めている。

他方で、管理部門はヒエラルキー文化が強い。具体的には、例えば規則や手続きをきちんと守り、安定性や正確性を重視しているのではないか。こうなると、営業部門と管理部門とでは、物事の優先順位づけや意思決定の基準が違ってくるわけですよね。

文化的な価値観が違うと、やはり日常業務における対立も発生しやすくなる。このように「原因がここにあるのではないか」と考えることが、このフレームワークを知っているとできるわけです。

例えば、営業部門が「とにかく、お客さんの対応を迅速にしたい」「これを例外的に承認してほしい」と思っている場面で、管理部門が「いやいや、ダメですよ」「規則に基づいて、きちんと手続きを遵守してくださいね」と対立が起こってしまっているケース。もしかしたら、みなさんの会社でもあるかもしれません。これは、どちらが悪いということではないんですよね。それぞれが文化的な価値観に基づいて合理的に行動しているわけです。

それぞれ文化的な背景が違って異なる役割を担っているので、それぞれきちんと責任を全うしようとしているわけです。だからこそ、ぶつかってしまうという問題が出ていると読み解くことができます。このようにフレームワークを使うと、対立が起きている原因を深く読み解いていくことができるわけですね。

対立への対処法を分類した「コンフリクトマネジメント」

対立の構造が理解できたとします。そのあとに「それでは、その対立をどうしていくのか」を考えていく時にもフレームワークが使えます。例えば「コンフリクトマネジメント」についてのフレームワークがあります。コンフリクトマネジメントは対立に対していくつかの対処方法があるということを示したフレームワークです。

まず「支配」といって、自分の主張を押し通すような解決の方法です。それを解決と呼ぶのかは怪しいところではありますが、そのような方法もないわけではありません。あるいは「譲歩」と呼ばれる、相手の主張を受け入れるという方法もあります。両者の中間点で手を打つといった、「妥協」という方法もあります。さらには、両者の利益を最大化して、新たな解決策を見出していこうとするような、「統合」と呼ばれる方法もあります。

こうしたフレームワークがすでに提案されているわけです。そして、いいことに、このフレームワークのそれぞれの要素に対して、利点もあれば欠点もあるということもわかっています。

例えば、こちらの要望を飲み込んでもらう支配という方法を使うと、迅速に決定することができます。ただ、やはり相手が不満を覚えてしまって、結局長期的には関係悪化になってしまうということが起こり得ますよね。

あるいは妥協という「だいたいのところで手を打ちますか」という方法は、手軽に解決策に向かっていくことができそうな気がしますが、やはり根本的な問題は解決されないまま放置されてしまうので、また同じようなコンフリクトが起こってしまう恐れがあるわけですね。

一方で、「それでは両者にとって利益があるような、新たな解決策を考えていきましょう」という統合について。これは非常に建設的に見えていい方法です。ただ、やはり時間と、そもそもそのような解決策を思いつくようなクリエイティビティが必要です。

また、お互いの信頼関係がないと、そのようなことはなかなか話し合っていけないですよね。かつ、お互いの立場をきちんとわかっている必要もあります。お互いがどういうことを利益と見ているのか。あるいは、関心事が何なのかをきちんと理解していないと、統合は進んでいきません。

こうしたフレームワークに基づくと、今コンフリクトが起きている中で「どのようなコンフリクトマネジメントの種類を選び取っていけばいいのか」ということが考えられる。切り口を得られるわけですね。

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