【3行要約】
・株式会社PDCAの学校が「織田信長たちから学ぶ、限られた戦力で勝ち続ける人材育成の極意」をテーマに人材育成のヒントを学ぶセミナーを開催しました。
・中小企業の人材育成は「リソース不足」が常に壁となりますが、戦国武将たちはこの問題をどう乗り越えたのでしょうか。
・宮地尚貴氏は「戦国時代の武将も現代企業と同じく限られた資源で戦わなければならなかった」と述べ、織田信長の手法に着目します。
織田信長から評価制度のヒントを学ぶ
宮地尚貴氏:宮地と申します。いつも登壇させていただいておりますが、本日も、どうぞよろしくお願いいたします。
ではあらためて、今回は「戦国武将から学ぶ 限られた戦力で勝ち続ける人材育成の極意」ということで、織田信長から学ぶ評価制度と、武田信玄から学ぶ組織作りと、徳川家康から学ぶ育成の分野をお伝えできればなと思っております。
この評価、組織作り、個々の育成は、今、けっこう中小企業の課題と言われているかなと思っております。どれも難しい分野だと思うんですよね。しかも、昨今はかなり横文字が飛び交っていて、よくわからないところもあるかなと。歴史がお好きな方も多いのかなと思いますので、昔の身近な事例から、「やっぱりこういう対策が求められているな」という納得、腹落ちみたいな機会につなげていただければなと思っております。
中小企業と戦国大名が抱える共通課題
初めて戦国武将との掛け合わせのセミナーをやらせていただく中で、なぜ取り上げさせていただいたのかをあらためて言いますと、(スライドを示して)こちらですね。意外に、(経営と)通ずる部分が多くあるなと思っています。限られた資源の中で戦わないといけない。待っていれば人が集まる状態でもない。いろいろな分野でのリソースも限られています。要は、十分な人材が集まらないというところ。
なので、戦国時代も限られた兵力で戦わないといけなかったり、大手に比べると資金が限られていたり、そもそも大手と市場を争わないといけない部分があったりとか、信頼していた人材が離職してしまうこともあったりとか。
企業の中でもよくあると思うんですよね。限られた人材でなんとか売上を作っていかないといけない。予算が限られている中で新しい戦略を打っていかないといけない。限られた予算の中で育成をしていかないといけない。大手と戦わないといけない。
あとは人材ですね。ようやく育った人材が離職してしまう。生き残りの条件としては、今いる人材でいかに勝っていくかという部分なのかなと思っております。
「背中を見て学べ」では人は育たない
なので中小企業の人材育成でいうと、とりあえずOJT(On-the-Job Training)とか、入社後の育成フローみたいなところがなかなか固まっていないケースが多いのかなと思います。「とりあえず先輩につけておこう」とか、「育成か~。そんな時間、ないなあ」「自分でやったほうが早い」というので、管理職の方がいつまでもプレイヤーから脱却できないとか。
「今のトレンドはこれだから、とりあえず大手がやっているこの研修を真似してやってみよう」みたいな。「とりあえず、この動画を流しておこう」とか。基本的にはOJTがメインになるのは仕方ない。いや、もしくはOJTがメインであるべきなのかなと思ってはいるんですけども。
OJTは、「とりあえず背中を見て学びなさい」というのが多いと思うんですよね。それではなかなか人は育たない。制度がかたちだけで形骸化してしまうところが多く、新人側からすると「何がわからないのかもわからない」状態から抜け出せない。
忙しすぎて部下と話さない上司の悲劇
例えば入社して3ヶ月ぐらい勤務したからこれぐらいわかるだろうと思って聞いてみると、「いや、わかりません」とか。放任していたら、結果的に戦力にならないというのがやっぱりもったいないなと思うんですよね。
今日は管理職の方にもご視聴いただいているかと思うんですけども、例えば「1日で部下とどれぐらい会話していますか」と、ちょっと回想してみてほしいなと思っています。やっぱり大忙しの方が多いので、1日5分あるかないかみたいな。「いや、あっても10分ぐらいかな」とか、「出ずっぱりだから、なんなら1日会話しないこともあるよな」とか。そういった管理職の方々が非常に多いのかなと思っております。
そうなるとやっぱり(部下から)相談も来ないので。結果でしか部下の状態を判断できず、育っているか育っていないかがわからない。もしくは、やっぱり結果が出ていないので、育っていないという評価をせざるを得ないと。
部下側からしても、「ただの忙しい人」みたいな、上司という認識にならなくなってしまうんですよね。「やっぱり忙しそうだな」「あんなふうにはなりたくないな」ということで、なかなか育たないみたいなところもあったりします。
信長に学ぶ革新的な評価制度
ですので、中小企業だからこそできる教育の体制を戦国武将から学んでいこうと。織田信長、武田信玄、徳川家康も、最初は領地が少ないところから天下統一の目前までいったり、人質生活から(始まって)、何年も名前が引き継がれるような、誰もが知っている状態になっている。
なので今の大手の会社さまも、やっぱり最初は小さいところからスタートされて、限られたリソースから戦われている部分があるのかなと思っております。それぞれの戦国武将の特徴から、どんな取り組みが求められるのかをお伝えできればなと思っております。

戦国武将の極意×現代の実践法という部分ですね。では、まず織田信長からいきたいなと思います。「革新的」というのが一言で言える部分かなと思っています。既存の常識をすべて壊した革命家だと。有名なところだと、この(スライドの)真ん中の部分なのかなと思っております。鉄砲の大量導入とかですね。
あとは、いち早く身分を問わない人材登用(をした)みたいなところで。昔だとやっぱり名前、家柄が重要視されていたとは思うんですけども、農民を大名にするみたいな、当時だとあり得ないと言われるような試みをやってきました。
年功序列よりも明確な評価基準を
今でいうと、実力主義、スピード、革新、非常識に挑戦していく。イノベーションをどんどん起こしていくのが特徴なのかなと思っております。
年功序列的なかたちで「これまでの積み重ねにお給料を払っているんだ」という場合だと、どうしても若手が伸びていかないのかなと思っています。
若手に成長の機会がなく、伸び盛りの人材が流出してしまう。昔だと終身雇用があったので、「20年、30年待てば自分も安泰になれるだろう」みたいな考え方が(今は)終わってきている。
そう考えると、この間も企業訪問させていただいた時に、人材育成に課題があって育たないと(先方がおっしゃっていた)。「じゃあ、ちょっと管理職から見直すべきなんじゃないですか」というような話をして。
評価基準は常にブラッシュアップする
「じゃあ管理職の役割責任をもっと明確にして、極端な話、管理職が引っ張っていくところを見せていかないと難しいですよ」「管理職の評価の基準とか、もうちょっといじったほうがいいんじゃないですか」というようなお話をした時に、「いや、そこはやっぱりなかなかいじれないですよ」と。
「今のがんばりに給料を払っているというより、この20年がんばってくれたところにお給料を払っているからなぁ」みたいな考え方も一定数は見受けられるなと思いました。
完全否定するわけではないんですけども、育成の課題を脱却するところでいうと、そのあたりの考え方も見直さないといけない部分があるとか。やっぱり評価基準みたいなところが、今の会社側から求めているものと合っているのか合ってないのかは、見ないといけないポイントなのかなと思っています。
なので、すごく伸びている会社さまを見ると、それこそ年ごとに評価の基準が変わっている。その時々で会社側が求めることをきちんと評価しようとしている。そこが曖昧だと、例えば上司の好き嫌いが評価になる余白がかなり多くなってしまう。そもそもの評価基準がブラッシュアップされていないと、がんばっても評価されなくなるのが一番もったいないのかなと思っております。
信長流「スキルマップ」で力量を明確化
なので、織田信長の場合だと、能力があれば即登用した。そして、何をどれだけがんばればどうなれるのか、明確な評価基準を設けた。そこで最強の家臣を形成していったという事例もあります。今の時代で、何をがんばればどうなれるのかを明確化する観点でいうと、やっぱりスキルマップとかが求められていくのかなと思っています。
製造業の企業さまとかは力量表があったりもすると思うんですけども。よくあるのが、この力量表の評価基準が曖昧なんですよね。もしくは、「力量表の評価基準はそれでいいのか?」みたいな。「人の手を借りながらできる・1人でできる・教えられる」とか。
もしかしたら項目によっては教える必要がない、教えるシーンがないところもあると思うので。ここで今、一例として出させていただいておりますが、評価基準はスキルマップみたいなところ……厳密に言うと、やっぱり項目によって評価基準を変えないといけないのかなと思っております。
管理職にもOJTは必要
可能であればもう5段階はなくしたいですね。基本的には、もうできたかできていないかが一目瞭然でわかるように、せめて4段階評価で実施するのがおすすめかなと思っております。
運用していく中で、評価基準と評価項目も充実させないといけなかったり、どうしても見直しが必要になるところがありますので、業務力を高めるためにはスキルマップが必要です。
あとは管理職の方にも指導のチェックリストみたいなものがあるといいなと思います。やっぱり管理職の育成が一番放任になりやすいと思うんですよね。「もう管理職になったから、そこは任せるよ」ということかなと思うんですけども。
やっぱり今、管理職の責任の幅もかなり広がっている。管理職が一番「何をすればいいんだ」「とりあえず、わかりやすい目の前の売上を追っておくか」というところにとどまりがちだと思うんですよね。そこだけではなくて、例えば会社の3年先、5年先を考えた問題解決をしてほしいなとか。
管理職へのサポートを忘れていないか
その問題解決の1つの分野に人材育成や仕組み作り、制度構築やシステム化など、いろいろな分野が入っていると思います。どんなジャンルをどう着手すべきかは、何かチェック項目があると管理職に対してOJTもしやすくなるのかなと。
責任範囲が広がっているので、管理職の方に対しても何らかのサポート施策がないと、なかなか対応できないと考えられます。
一般社員の力量、スキルを数値で見せていくのももちろんなんですけども、管理職に対してもOJTを支援できるようなツール(を作る)みたいなことも、今非常に求められているのかなと思います。