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これでイイのか⁈ 「自分で考えるチカラ」 webセミナー(全3記事)

意見を求めながら“本心では聞くつもりがない”上司 部下が「何を言っても無駄だ」と感じる関わり方

【3行要約】
・部下の考える力を育てたいと思っても思うように伸びない……多くの管理職が直面するこの課題の背景には、考えるための環境が整っていないという問題があります。
・環境変化が大きい現代では不安が強まり思考が止まりやすく、部下が「考える意欲」を失う構造的な要因が組織に潜んでいます。
・上司は「目標設定・進捗管理・振り返り・深める力・意欲」の5つの要素を整え、答えを与えず長期的視点で部下の成長を支援すべきです。

前回の記事はこちら

部下の「考える力」を育む関わり方

髙桑由樹氏:では、3つ目のチャプター「考える力を高める環境作り」に進みます。あらためて、考える力とは“やり方を考える”ことでした。そして、それを促すために上司の5つの関わり方が重要であることも見てきました。

しかし、上司がこれらを実践しても、すぐに部下の考える力が伸びないケースがあります。では、なぜ伸びてこないのか? ここから、その理由を見ていきたいと思います。

では「それでもなぜ、部下が考えられないのか?」について、5つのポイントを紹介します。

左の縦列が「考えるための力」を5要素に分解したものです。

まず1つ目は「目標設定をする力」です。先ほどの計画段階の話ですが、目標は現実的でありつつ、簡単すぎてもいけない。適切な目標を立てるには、そもそも「何が適切なのか」を判断する知識が必要です。ただし、人から聞いただけの知識は、そのまま使えるわけではありません。

実際に体験して初めて「自分のもの」になります。体験が不足すると、結局、自分で目標設定ができない。ここが1つ目のポイントです。

部下ががんばっているのに足りないと感じる上司

2つ目は「進捗管理する力」です。実行フェーズの話ですね。私も日々感じるのですが、部下と進捗確認をすると、本人は「今こういう状況です」と報告する。しかし上司からすると「いや、それはできてないよね」と感じることが多い。これは、部下が考えていないのではなく、上司が求める“考える”のレベルと、部下の“考える”のレベルに差があるということです。

この差の正体は「客観的な視点」です。部下はがんばっている分、どうしても自分に甘く評価してしまいがちです。でも、仕事の出来栄えや進捗を正しく振り返るには、「がんばったかどうか」ではなく、周囲から見た視点や別の視点が必要になります。

では「どうすれば客観的な視点を身につけられるのか?」についてですが、これは実はシンプルで、視点の数を増やすことしかありません。視点が少なければ、主観だけで判断するしかない。客観するためには、複数の視点を知り、取り入れる必要があります。

ただ、この「視点を増やす」というのが、日本企業では意外と難しい。背景には「空気を読む」「同調圧力」があります。違う視点を持っていても遠慮して言わない。結果、意見交換の中で新しい視点が生まれず、みんな同じ見方しかできない。これでは客観視も養われませんし、考える力も伸びません。

だからこそ管理職としては、多様な視点を出し合える場を意図的につくることが重要になります。部下自身が「別の角度から見る」経験を積むことで、初めて“考える力”が育っていきます。

上司がフラットに質問しても部下は身構えてしまう構造

3つ目は「振り返る力」です。これは先ほどの振り返りフェーズの話ですね。「振り返りには何が必要なのか?」という点を考えていきます。

部下の立場で捉えると、振り返りは結果が良ければ苦になりませんが、思ったような成果が出ていない時、振り返りは非常にストレスになります。「上司に何か言われそう……」「どう評価されるんだろう……」という不安が先に来てしまうからです。

上司の多くは、部下を追い詰めたいわけではありませんし、心理的安全性の重要性も理解していると思います。ただ、どうしても上下関係がある以上、上司がフラットに質問したつもりでも、部下側は「どうしよう……」と身構えてしまう。これは避けられない構造です。

さらに、冒頭で触れたVUCAやBANIのように、環境変化が大きい時代は不安を感じやすく、不安が強いと人間は思考が止まり、防衛モードに入ります。そうなると、正しい振り返りができなくなります。

そこで上司に求められるのは、“結果”と“部下についての評価”を切り分けて伝えることです。できなかった点を指摘するのではなく、「結果」と「評価」を混ぜないこと。そして、部下が自分の結果を客観視できるようになるには、一定の自己肯定感が必要です。「自信がない状態」では、事実をまっすぐ見られません。

つまり、振り返りの場では、結果と評価を混同せず、自己肯定感が下がらない関わり方をすることが極めて重要になります。部下が自分の結果を安心して見直せる状態をつくる。これが「振り返る力」を育てるうえで欠かせないポイントです。

部下の「考える力」につながる聞き方

4つ目は「深める力」です。考えを深めるためには、言葉にする力が欠かせません。言葉の使い方には2通りあって、1つは声に出して誰かに情報伝達する時、もう1つは心の中で自分に語りかける時です。

後者はまさに「考えている」状態で、人は言葉なしに思考することはほとんどありません。「今日のお昼は何を食べようかな?」という独り言のような思考ですら、言葉になっています。つまり、考えるには言葉が必要で、考えを深めるには自分の言葉で表現する力や語彙の量が重要になります。

そのため、上司が質問に対してすぐに答えを返してしまうと、部下が自分の言葉で考える機会を奪うことになります。言葉にできない部下がいた場合でも、部下自身が言葉を使えるように促していく必要があります。

もし最初から表現が難しければ、例えば「A・B・Cのパターンのどれが一番近い?」と選ばせるなど、段階的に自分の言葉に変換していけるように環境を整えることが、上司に求められる関わり方です。

部下が「何を言っても無駄だな」と感じる上司の特徴

続いて5つ目が「考える意欲」です。これは、考えることのメリットや目的を部下が理解し、「考えることは大事だ」と共感している状態のことです。

例えば部下が「こう思うんですけど」「こうしたいんですけど」と上司に意見を伝えた際に、上司が悪気なく「それはいいよ」「考えなくていいよ」「前にやってダメだったから」と返してしまう場面があります。

こうした反応が続くと、部下は「この人に何を言っても無駄だな」と感じてしまい、「どうせ前に進まない」と思って意欲を失います。結果として「考えるだけ無駄だ」となり、考える行動そのものが止まってしまいます。

だからこそ、部下が「考えると物事が良い方向に進む」「考える姿勢が評価される」という実感を持てる状態をつくることが大切です。その意義を理解し、メリットに共感できている時に初めて、部下は意欲的に考えるようになります。

今挙げた5つの力が整っていないと、いくら上司が「思考力を高める関わり方」を実践していても、部下自身が考えようとしなかったり、考えられなくなってしまいます。この5つを整えることが、考える力を育てる環境作りとして欠かせません。

部下が考えないのは上司や会社のせい?

最後に、セミナーの参加者のみなさまに「あなたの組織で部下が考えない原因は何ですか?」と質問しました。いただいた内容を紹介します。

まず、「言われたことをやればいい」という価値観が組織に定着してしまっている、という意見がありました。他にも「考える習慣がなく、上司が考える機会を与えていない」という声もありました。

また「部下に意見を求めるものの、本心では聞くつもりがない」という上司側の姿勢を挙げる方もいました。これは先ほど触れた“考える意欲”の部分にも通じます。「この人に言っても無駄だ」と感じさせてしまう状況です。同じ文脈で「上司が部下の意見を受け取れる態勢になっていない」という意見も続きました。

さらに「深く考えるより、とりあえず動いたほうがいい」という価値観が根づいているのではないか、という声もありました。確かに、人は考えるより動くほうが達成感が得られますし、集中して考えていても周囲からは「何もしていないように見える」ということがあります。「ボーッと座っているだけ」に見えることを避けたくて、つい動いてしまうという会社も多いと感じます。

最後に「考えた結果が間違っていた時にお咎めがあるのではないか」という恐怖心が、部下側に無言のプレッシャーとして伝わっているのではないか、という意見もありました。こうした不安があると、人は考える前に身を守ろうとしてしまいます。

ここまでの意見を踏まえると、今回のテーマは「部下に考えてもらうために」だったわけですが、実際にはそのカギを握っているのは上司や会社側の環境なのだと、あらためて考えさせられる内容でした。

なぜ上司は「答えを与えてしまう」のか

最後のまとめになりますが、今日は「考える力とは何か」そして「上司はどう関わればその力が高まるのか」という点を見てきました。

さまざまな関わり方が必要になりますが、部下の考える力は一朝一夕に伸びるものではありません。時間をかけて段階的に伸ばしていくという長い時間軸が、上司側に求められます。ここを理解していないと、つい答えを与えてしまうという関わり方になってしまいます。

部下に求める「考える力」を定義する際、段階を踏んで整理しておくことが大事です。例えば、1段階目では何ができればいいのか、2段階目ではどこまでを求めるのか、3段階目ではどうかといったようにレベルを分け、その段階ごとに上司としてどう関わるかを考えておく必要があります。こうした整理がないと、部下に考えさせる関わりを忍耐強く続けることが難しくなります。

ぜひこの点についても考えてみていただければと思います。以上で今回のセミナーを終わります。ありがとうございました。

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