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【人材研究所 曽和利光氏登壇!】”グレイナーモデル”から学ぶ、組織の成長過程で陥りやすい罠と対策(全4記事)

採用する人材は「素直な良い子」から「野望系」へ 元リクルート人事が語る、企業成長に応じた人材像の変化

【3行要約】
・株式会社マネジメントスキャンが曽和利光氏をゲストに迎え、組織成長理論「グレイナーモデル」を解説するウェビナーを開催しました。
・企業の成長には過去の成功体験を壊す勇気が必要ですが、多くの組織は現状維持に安住してしまい、変革の機会を逃してしまいます。
・曽和氏はリクルートについて「成功しているものを平気で壊してきた会社」と評し、組織の成長フェーズに合わせた人材戦略の重要性を指摘しています。

前回の記事はこちら

成功体験を壊すことで企業として成長する

芳賀勇稀氏(以下、芳賀):曽和さん、ありがとうございます。お話を聞いていて、正直、こんなにも教科書どおりの企業がいらっしゃるのかと思わざるを得ないくらいの事例でした(笑)。本当にありがとうございます。

曽和利光氏(以下、曽和):先ほど芳賀さんが何て言っていましたっけ。勇気?

芳賀:はい。「成功を壊す勇気」ですかね。

曽和:僕も今日初めてこれを見たんですけど。リクルートは先ほどのカニバリゼーションみたいなものかもしれませんが、今までの成功しているものを平気で……と言ったらちょっと語弊があるかもしれませんけど。まあ、ぶっちゃけ平気で壊してきた会社かなと。だから新しい脱皮ができて、成長することができた、生き残ることができたという感じがあるんですよね。

別にグレイナーを意識していたわけではないですし、リクルートにいた時はグレイナーの話は一切聞いたことがなかったんですね。ですけど、おっしゃっていたことを体現してきたので、今の成功があるのかなとは感じました。

成功を壊す勇気が競争力の源

芳賀:ありがとうございます。おそらく今日、ご参加いただいているみなさんの視点ですと、「とはいえ、言うは易く行うは難しなところもあるんじゃないか」という、けっこう深いところが気になる方もいらっしゃるんじゃないかなと思いますので、ここからまたQ&Aのお時間に移らせていただけたらなと思いますが、すみません、先に僕からも質問をさせていただけたらなと思います。

曽和さん、こういう段階ごとに今までのものをいい意味で壊して、また新しいフェーズに進んできたのがリクルートさんだと、私もあらためて理解したんですが。

段階が変わるにつれて、たぶんリクルートさんの中で、ある種のマネジメントのやり方というかスタイルの変化。ないしは採用的な文脈で、どういう人を入れ続けるのか、みたいなところは連動して裏で動いていたんじゃないかなと思うんです。曽和さんが知っている範囲で、「こういう意識はけっこうあったよ」みたいなところがあればおうかがいしてみたいです。

組織が若いまま変化できる体質

曽和:まず、これはグレイナーモデルとはあんまり関係ないかもしれませんが、こういう変化に対して、第1期、第2期、第3期、第4期、第5期って、振り子のように入れ替わるじゃないですか。だから求める人物像も、微妙に変わってくるんですよね。共通する部分もあったりすると思うんですけど。

それをリストラとかでやるんじゃなくて、じわじわと人が流動していくことによってやっている。例えば退職率8パーセントを維持していこうというのがあってですね。それぐらいでいけば組織が若いまま、だいたい35〜36ぐらいの人が頂点の1つの部ができる、みたいな感じがあったんですよね。

それが前提にあったので、徐々に辞めていくのであれば、第1期は第1期の求める人物像を採って、第2期は第2期の求める人物像、第3期は第3期の求める人物像を採っていけば、自然にじわじわと変わっている状態が作れたんです。

第1期は僕の知らなかったことで、先輩から聞いている時なんですけど。もっともっと細かいことを言っていたんですが、簡単に言うと「良い子、強い子、元気な子」と言っていたんですよ。

芳賀:(笑)。

組織のフェーズによって求める人物像が変わっていく

曽和:だから、江副さんという稀有なリーダーシップを持った方が、しかも創造性も高い方が、「これをやれ!」と言うのをみんなで(やる)。良い子というのは、要は素直ですよね。強い子は徹底的にやりきる。元気な子は言葉の通りかな。「良い子、強い子、元気な子」でやってきたのは、これが目的だったんですけど。

僕が入ったのが第2期なんですけど、第2期は「良い子、強い子、賢い子」にしろとなったんですよ。

芳賀:(笑)。

曽和:なので、やっぱりBPRとか、効率性を求めるとか、そういう余分な部分はやめるとか。言われたことを徹底的にやるのではなくて、もう少し批判的にものを見ろみたいなことだったりするので、「良い子、強い子、賢い子」という感じ。

第3期は、僕が採用責任者をやっていた頃です。その頃はどういうのかと言ったら、まさに”事業家”を採れと。「リクルートはよく事業家が出る企業」みたいなイメージがついたのは、その頃じゃないかなと思います。

実際、この頃に採った人は、本当に事業家になって外に出ていったりとか。まだ中でやっている人もいるんですけれども。今のCEOの出木場(久征)さんとか瀬名波(文野)さんとかもこの時期に採用した人たちですよね。

第3期は「野望系」の事業家タイプを積極的に採用

曽和:要はどんな仕組みがあったとしても、事業家タイプの人を採るとボトムアップで、もう関係なくバンバン上に突き上げてくるわけですよね。それによって、インターネットみたいな新しいものに対応できたと。だから第3期は、僕らは「野望系」とか言っていました。一般的な言い方で言うと、まさに「事業家人材を採れ」と言っていたんですね。

第4期からは僕は当事者ではなくなったというか、僕のメンバーが人事部長をやっていたりしたので(話を)聞いていたんですけども。第4期になると、徐々に専門家であったりとか(が必要になる)。やっぱり経営戦略というかリバランスするためには、事業を俯瞰的に見てやっていかなきゃいけない。

事業というよりもその上の経営など抽象度の高いところからポートフォリオを変えていくみたいなことが、このあたりに必要だったと思います。そういう専門家人材というか、MBAを取っているような人も増えたと思いますし、外コンから来た人も増えていました。それを中でなんと呼んでいたかは僕はわからないんですけど、人材が入れ替わってきているなという気がしますね。

つまり、大きく分けると、第1期、第3期、第5期は、どちらかというと起業家人材っぽい感じ。第2期、第4期は経営参謀っぽい感じに分かれると思います。そういうふうに採用を入れ替える。さらに先ほど言った流動性を保っておけば、自然に対応していける。こんな感じだったんじゃないかなと思います。

リクルートを倒すような事業を作れ

芳賀:ありがとうございます。今のお話を踏まえると、やっぱりリクルートさんにいらっしゃるみなさんは、やっぱり一定数は意図してやっていたのが裏の目的としてあったのかなと思います。そこは人事でも事業サイドでも、そういう会話はよくされるものだったんですか。

曽和:グレイナーのモデルというかフレームワークは使っていませんでしたが、役員の方が「リクルートを倒すような事業を作れ」みたいなことを聞いたりとかはしていましたね。

芳賀:おぉ……(笑)。

曽和:だから本当にグレイナーの根本の考え方は普遍的なものだから、自然と違うかたちで両方に現れたのかもしれません。そんな感じで実際に言葉として聞かれていました。

事業部ごとのフェーズは独立して管理する

芳賀:ありがとうございます。大変参考になります。ここで、Q&Aを1ついただいておりますので、ここだけ回答させていただきたいと思います。

「1つの会社の中でも、本社やコーポレートと新規事業、ベンチャー部門などで、このグレイナーモデルのフェーズは違うように感じることがあります。組織内で複数の発展段階が混在している場合に、マネジメントチームや人事の担当としては、どういう単位でフェーズを捉えて打ち手を考えていくとよいか」。

ありがとうございます。こちらは私から回答させていただきたいと思います。各事業部が新規事業なりベンチャー部門かはさておき、まず結論としては、各事業部ごとのフェーズは独立して管理したほうがよいと思います。

一方で、会社そのものは1つなので、会社全体としてどこのフェーズにいるかは別の論点でしっかりと考えたほうがよいかなと思います。なので、どちらの視点も大事だということにはなるのですが、ここで大事にしていただきたいのは、全社としての統一感をどこで担保しておくのか。あとは各事業部、ないしは会社全体が、そもそもどういう立ち位置にいるのかという共通認識を、各事業部の責任者と、本社の責任者間で合わせておくことが一番大事かなと思います。

言い方は悪いですけれども、ここの認識がずれた状態では何をやっても、おそらく新しい部門に対しては金食い虫のように見られることもありますし、逆に言うと、本社やコーポレートに対して融通が効かない、頭でっかちだなと喧嘩が生まれることになるかなと思います。そもそも各々がどういう立ち位置で考えているかの認識を合わせることが非常に重要じゃないかなと思います。ご質問いただきありがとうございます。

危機は過去の成功要因に根ざしている

芳賀:では、最後のまとめに移らせていただきたいと思います。最後のまとめと事務連絡です。まず本日のまとめは、大きく5つあります。

1点目が、組織は成長していく中で進化と革命をそれぞれ繰り返しながら、組織規模が大きくなっていくというお話でした。

2つ目が、進化をしていく中で危機が訪れるというお話をさせていただきました。その危機は、実は過去の成功要因に根ざしているものが大きいんですというお話です。

3つ目として、危機と聞くと、どうしても悲観的な言葉に見えると思います。ですが、決して悲観的になりすぎることはなく、事前に予見して対策していくことはもちろん可能なんですよ、というところもグレイナーの理論では説明されています。つまり、危機を予見することは可能なんですというのが3つ目になります。

4つ目として、まさにこのマネジメントに関わる方々、もしくはそのマネジメントの本質は、これまでの過去の成功を壊すことに勇気を持てるかどうかなのかもしれませんというお話でした。

5つ目ですね、曽和さんに解説いただきましたが、リクルートさんの組織としての強さは、まさに危機を恐れずに、個人も組織も常に自らを変えることができる点にあったのではないかというところです。

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