【3行要約】・「最近どう?」という一見何気ない声かけが、実はチームのモチベーション低下を引き起こす最悪のフレーズだと判明。多くのビジネスパーソンが上司の適当な声かけに不信感を抱いています。
・越川慎司氏によると、トップ5パーセントのリーダーは週に4.5回「今ちょっといいですか?」と声をかけられており、これが信頼関係構築の鍵になります。
・優秀なリーダーは「返報性の原理」を活用し、まず自分から話すことで相手の心を開き、他部門との連携を強化することでイノベーションを生み出しています。
前回の記事はこちら 上司に言われてモチベーションが下がる言葉ダントツ1位
越川慎司氏:(トップ5パーセントのリーダーは)うなずきが深いのは何でだろう? という中で、さらに今度はAIを使わずにアンケートに答えてもらいました。今、日本で働く2万3,000人の20代、30代に、「どういう声掛けを上司からされたらモチベーションが下がりますか?」というアンケートを採ったんです。匿名ですので、おそらく本音でしゃべってくれていると思います。
これは使ってはいけない言葉です。何だと思いますか? 僕はわからなかったので、日本マイクロソフトのオフィスで毎日間違って使っていました。
答えは、「最近どう?」ですね。駄目な理由は2つあります。関係性ができていない人に「最近どう?」と言うと、何について聞かれているかがわからないんですよ。「プライベートのことかな? 体調かな? 仕事かな?」と、答え方がわからない。これが1つ目。

2つ目は、「何のことなのかな?」と考えている時に、20代、30代はこう思うそうです。「あっ、この上司は適当に声をかけているな」と。そうなんですよ。モチベーションというのはチームマネジメントを組成する上で重要なエネルギー源。モチベーションというのは、ボーナスでもなく給料でもなく内発的動機付けなんですよ。自分に対して興味関心を持ってくれているかどうかがすべてなんですよ。
だから「最近どう?」だとわからないので、例えばトップ5パーセントのリーダーはこう声をかけます。「僕は土日にさ、ちょっと疲れちゃったからオンラインの『DAZN』でサッカーを見ていたんだけど、君はどう?」と聞くんですよ。答え方はわかりますよね。
自分の腹を割ってしゃべるじゃないですか。そうするとチームメンバーが、「あぁ、なんだ、土日も家にいたのか」みたいな。じゃあ、「僕は漫画を読んでいました」と言い合えますよね。
この返報性の原理というのが、実は日本の中では非常に効果的であることがわかったんです。もしみなさんが感情を共有するために腹を割ってほしいんだったら、みなさんが腹を割らないと相手が腹を割ってくれないということですね。
これが駄目なパターンです。だから、「最近どう?」は来週から禁止にしてください。
トップ5パーセントがやっている声かけ
それから、良いパターンにいきましょう。これも手を挙げてもらいます。トップ5パーセントの、3年以上成果を出し続けているチームの声かけ。メンバー同士で、この声掛けを使っていたらうまくいっている確率が極めて高いです。
ちなみに、うまくいっていないチームのメンバー同士の7.5倍使っています。例えば、Backlogとかのチャットを使って声をかけるとか、あとは出社した時にちょっと声をかけるとか、そういうイメージです。

さて、1番から4番。うまくいっている、成果を出しているチームが使っていた声掛け。これはテキストマイニングしています。では、どこかに手を挙げてください。
「困っていない?」だと思う方。
(会場挙手)
おっ、多い。ありがとうございます。2番、「元気ですか?」。
(会場挙手)
あっ、少ない。「元気ですか?」が毎回多いんですよね。これはアントニオ猪木方式なんですけど。3番、「今ちょっといいですか?」。
(会場挙手)
まぁ、2番目に多いですかね。4番、「大丈夫ですか?」。
(会場挙手)
あっ、「大丈夫ですか?」は少ない。「Voicy」リスナーはいないの? 僕は毎朝「大丈夫?」と言っているのに。ありがとうございます。
「今ちょっといいですか」と言われた時のひと言
じゃあ、答えにいきます。これね、17万3,000人に「どれが一番いいと思いますか?」と言うと、1番に手を挙げる方が圧倒的に多いんですね。僕も1番だと思っていました。
答え。「今ちょっといいですか?」です。これ、みなさんが声をかけられたらどうですか? 97.5パーセントの人が忙しくて大変なんですよ。勉強する暇もないし、セミナーに来る時間もないんですよ。でもみなさんは(時間を)こじ開けて来てくださった。
そんな方々が「今ちょっといいですか?」と言われたら面倒くさいですよね。正直、面倒くさい。でも、成果を出し続けるチームメンバーは、「今ちょっといいですか?」と言われたら、一言しか言わないんですよ。「もちろんです」と。「もちろんです」。
いや、忙しいんですよ。この後トラブル対応をしなきゃいけないんですよ。優秀なチームというのは、反応と決定を分けます。反応はいつも「もちろんです」なんですよ。意見を出してくれたら反対意見でもうなずくんですよ。でもそれを採用するかどうかは別。
「今ちょっといいですか?」と言われて、忙しくて、もうトラブル対応で大変だと思ったら、「2時間後でもいい?」「ヤマダさんに聞いてもらってもいい?」「あそこのポータルで調べてもらってもいい?」と言えばいいだけなんですよ。
トラブル発生から“2時間以内の対応”が分かれ道
わかります? もう1回言いますよ。エンゲージメント、それからモチベーションというのは、自分に対する興味関心だから、「忙しいからちょっと無理」と言われたら、そりゃあ、声をかけないですよ。
今日はテクノロジー業界の方が多いと思うんですけど、今トラブル対応がすごく多いじゃないですか。僕(がやっている)マイクロソフトで品質責任者というのは、要は謝罪訪問の担当なんですけど、585件行きましたからね。もうコーヒーとか3杯飛んできましたし、ペンは18本飛んできました。
そんな現場で大変なのは、実はトラブルが起きてから2時間ですよ。エンジニアの方はわかりますよね。トラブルが起きてから2時間で正しい対応を取らないと、トラブル対応時間は3倍以上になりますからね。最初の2時間で「今ちょっといいですか?」という煙の状態で相談が来ないと、火柱が上がり、炎上します。
火柱が上がった状態の対応は、そりゃあ、プライベートがあるとか、ワークライフバランスとか言っている場合じゃないことはわかりますよね。つまり煙の段階でちゃんとキャッチするような状態を作っておかなきゃいけないんですよ。だから、「今ちょっといいですか?」と言われてください。
本(
『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』)にも入れていますが、トップ5パーセントのリーダーは実際に、1週間で平均4.5回、5日間働いているうちの4.5回、「今ちょっといいですか?」と言われているんですよ。
ちなみにボトム20パーセント、うまくいっていないローパフォーマーの20パーセントの管理職、リーダーの方々は、「今ちょっといいですか?」と言われている(回数は)……1週間で0.25回。だからこれだけの差が出てくるということじゃないですか。
ということは、みなさんのアクションで言うと、気持ちを変えることじゃなくて、アクション、行動を変えることじゃないですか。みなさんが来週、「今ちょっといいですか?」と2回以上言われるためには、どうしたらいいかを考えないと駄目なんですよ。
例えば口角を上げるとか、さっきのうなずきを大きくするとか、コーヒーを持って職場でゆっくり歩くとか。対面した時こそ、「今ちょっといいですか?」と言われるようにするのが重要なんです。