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『次世代リーダー育成』緊急対策セミナー③~ 「管理職になりたくない」若手・ 中堅社員を“巻き込み型リーダー”へ ~(全3記事)

「リーダーになるための気づき」が生まれにくい構造への具体的なアプローチ 組織の戦略と中堅社員の意識を連動させた3つの事例 [2/2]

育成の具体的な進め方

(スライドを示して)その進め方がこちらですね。最初の2日間で部署方針への関わりと、あるべき役割とのギャップ。深く向き合って、自分が変わるポイントを明確にします。その後は、実践と振り返りです。

特に振り返りでは、周囲に対する思い込みはなかったか、どうせ変わらないと諦めてなかったかを自分自身の内面を深く掘り下げて、成果につながる変革行動を探していきます。この繰り返しによって、自分自身、そしてチーム両面の変化につなげて高い視座で組織に向き合える人を増やして、次代のマネジメント人材のストックにつなげていった。これがB社さまの事例でございます。

人材戦略の連動を意図した教育が手薄という事例

最後にC社さまです。こちらは社員数700名のSIerです。もともとテクニカルスキルの教育は、業界の中でも非常に充実した内容を社員に対して行ってきた会社さんなんですけれども、「組織のビジネスモデルや経営の方向性を理解し、その方向で役割を体現できる人材を育てたい」という事業戦略と、人材戦略の連動を意図した教育が手薄だという問題意識がありました。

というのは、C社さまはシステム・ライフサイクルのうち、運用とか保守を中心にこれまで事業拡大をしてきました。経営陣としては、そこで得られた監視データや障害パターンを分析して、コンサルティング、企画から入る。IT環境全体の課題をお客さんに情報提供することで、もっと全体に貢献していきたい。そうやって領域を広げていきたい。こんな戦略がありました。

そのためには、これまでの社内の連携の仕方や業務をどう革新しなきゃいけないかという発想を持てる人材がいないとまずいなと。こんな人材を育てる必要性を強く感じていたんです。

現場を仕切るチーフ層に対してアプローチ

この戦略の一番のカギは、現場を仕切るチーフ層です。お客さまとの人脈形成の中から課題を把握して、こちらから改善提案の機会を得る。そのためにも、上司であるマネジメント層の空き容量を作るために、彼らの仕事を一部引き取っていく。その実現のために、他のメンバーにも1段難度の高い仕事をやっていただいて、みんなで1段上がるチャレンジをしていき、その中心に立つ。

さらには、そのメンバーがちゃんと意味を感じて、そして没頭していけるように、その過程で成長していけるようなケアをするということ。これが必須だったんですね。

そもそも(C社さまの)人事制度では、チーフの期待役割として「職場の中核として率先垂範」「メンバーへの助言指導」「チームタスクの牽引や新しいことへの挑戦」と明記されてるんですね。こうしたことをお題目じゃなくて体現する人物を育成しようということです。

そのためには組織の戦略方針を手掛かりに、それを自分ごと化し、チーフとしての自分の存在意義を明確な行動成果として再認識することが必須でした。

研修の具体的な進め方

研修に関しては、まず本研修の2日間で自己革新の課題にこう深く向き合いましょうと。

仕事の関わり図を使って、本来の自分の役割・責任は何か。これを全うするために自分の何を変えるか、誰を巻き込むか、こういう計画を策定し、実際の組織の戦略方針を手掛かりに進めたということです。

(スライドを示して)こちらはあるチーフの方が研修開始時に書いてきた仕事の関わり図です。当初は、常駐先の顧客企業の一員みたいな立ち位置しかほとんど認識してない関わり図だったんですね。自分がC社の一員で、この方針に自分がどう関わってるかをほとんど考えられていなかった。

ただ、研修の中での気づきや、現場実践における上司との議論、周りの動きを通じてお客さんのシステム・ライフサイクルに貢献しようと思ったら、目の前の顧客だけじゃなくて、その顧客の先にいる親会社がどういう背景を持っているのかに目を向ける必要があるぞと。それを知るには、親会社とつながりのあるシステム開発会社と連携していきながら協働で進めていく共通目標が必要だと。

こういったところの情報を得ながら、向こうにも価値があると感じてもらうためには、マネジャー層にどう動いてもらう必要があるのか。そのためには、自分が率先して情報を提供して、他部署、後輩をどう巻き込むのか。(それらを考えた結果)こういう(行動をする)必要があるなということに気づいていきます。

もちろんそうやって気づいて動きを変えたところで、思ったように後輩に仕事を振れない、うまくいかない。そもそも自分の工数が取れないといった壁に直面します。

そして、じゃあなんでうまくいったのか。この行動をやっていって、何がうまくいかなくて、どうやって壁を乗り越えていけばいいか。こんなふうに経験を振り返ることによって、本当に自分が変えるべき課題への解像度が高まっていくんです。

このように、会社の方針、戦略、計画を自分ごととして理解し、巻き込み行動を起こす振り返りの中でこそ、リーダーへの質的転換が促進されていくんです。

ハード面とソフト面を1つのつながりの問題として捉え直す

以上、3つの事例をお伝えしました。A社さまの事例のポイントは、未来像という組織全体の課題を全社で共有した上で次世代リーダーを供給し続ける仕組み。リーダーシップ・パイプラインを研修とMBOとの連動で実現するという、経営陣を含めた組織全体の問題意識を意図的に喚起し、組織の取り組みとして中堅を育成するということです。

B社のポイントは、中堅社員の視座を意図的に引き上げ、部分最適発想から抜け出していくためのプレ・マネジメント経験の意図的なアサインを補完する上司の関わり、育成施策の展開。

C社のポイントは、人事制度における等級定義をお題目で終わらせずに、自分ごととして向き合うこと。これを机上の空論ではなくて、実際の組織の戦略、方針、計画に向き合うことで行う。その上で戦略推進、中堅の育成、マネジャーの空き容量作りの一石三鳥を狙うと。こんなポイントでした。

すべてに共通して言えるのは、組織の戦略、方針、計画や制度、体制というような組織のハード面の問題と、中堅社員の意識、行動改革というようなソフト面の問題をバラバラではなく、1つのつながりの問題として捉え直すことです。

人手が足りない、個業化して周囲との関わりが薄い。その中でリーダーとしての気づきが生まれづらいという構造的な問題に、どういうひと工夫を加えれば、彼らにリーダーへの成長、向き合ってそれを促すきっかけとなり得るのか。今回のセミナーがそのきっかけを考えるヒントとなれば幸いでございます。

では最後に全体のまとめです。この度、3回にわたって次世代リーダー育成についてお伝えをしてきました。

8月の1回目では、管理職手前層の「管理職になりたくない」問題。「本当にそうですかね」という切り口で捉え直して、意図的に次期管理職を育成するという取り組みについて。

10月は経営幹部候補部長の大課長化問題。なぜ起こるのかという考察から、サクセッション・プラン、部長育成、課長育成のポイントをお話ししました。

今回は、そもそも頭が柔らかい中堅社員のうちに、リーダーとしての質的転換を自らの経験から図る、そのきっかけをどんなポイントでつかんでいくかというお話をさせていただきました。

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