【3行要約】
・管理職に消極的な若手・中堅社員が増加し、次世代リーダー不足が多くの企業で喫緊の課題となっています。
・株式会社マネジメントパートナーの関教宏氏は「リーダーへの転換は勉強だけでなく、仕事経験の中での気づきから生まれる」と指摘します。
・次世代リーダー育成には、中堅社員が「みんなのために率先して挑戦する」という内的変化を促す環境づくりが重要です。
管理職になりたくない若手・中堅社員を巻き込み型リーダーに変革するためには
関教宏氏:みなさま、こんにちは。株式会社マネジメントパートナーの関と申します。
本日は「『次世代リーダー育成』緊急対策セミナー」第3弾。管理職になりたくない若手、中堅社員が巻き込み型リーダーに変革するためにはどうすればよいかということについてお伝えをいたします。
私どもマネジメントパートナーは、「お客様の夢をかなえるために、人と組織の“変わる“を応援する」を使命として、人材開発および組織開発のコンサルティングサービスを提供している会社でございます。1999年4月に設立をし、これまでに850社の企業さまに1万3,000回を超える研修、コンサルティングサービスを提供させていただいております。今後ともよろしくお願いいたします。

本日は、若手中堅社員をリーダーとして育成する際のポイントおよび具体的にどういう育成プログラムを組んだのか、実例で3つお話をさせていただきます。では、さっそく始めさせていただきます。
「消極的な中堅社員」と「積極的な中堅社員」の差とは
第3弾ということで、このセミナーでは次世代リーダーというものを、近い将来の自社事業を牽引し、組織を支える中核となりうる人材と定義しまして、2025年8月に第1弾の管理職になりたくない問題、2025年10月に第2弾の部長の大課長化問題を取り上げました。今回はそのもっと手前、中堅社員が優れたリーダーへ変革するためのポイントに焦点を当てます。

昨今、こんな声をよくお聞きします。例えば1番の「若手中堅社員が管理職を目指すことに消極的だなと感じる」。2番、「そもそも視野が狭く、組織貢献意識が低いな」。また4番、「時代を担うリーダーが育っていない」。こういった声ですね。
実際に私どもが中堅社員研修で該当の方々の本音を聞いてみると、やはり管理職に消極的な方も実際いらっしゃいます。ちょっと視野が狭い、成長実感がない。そういった声をよくお聞きするんですよね。
一方で、そういう声ばかりかというとそうでもなくて、「なんとか挑戦していきたいんだ」と、挑戦を望む声もあるのがまた事実です。
消極的な中堅社員と、積極的な中堅社員。なぜこのような差が生まれるのか。第1章では、認識の差が生まれる原因ということで整理をしていきたいと思います。
プレイヤーからリーダーへの転換は「気づき」から生まれる
冒頭、そもそもリーダーになるっていうのはどういうことなのかという整理をしてまいりたいと思います。プレイヤーからリーダーへの転換は勉強でなるものではなくて、仕事経験の中での気づきから生まれます。
歴々のビジネスリーダー、いろいろな伝記を見ても、そういったことは証明されていて。例えば元富士フイルムCEOの古森重隆さん。営業をやられてたそうなんですけども、中堅社員時代にお客さまから競合との品質差を指摘された。それに対して、「製造や開発は何をやってるんだろうな」と文句は思いつつも、実際の行動を取ることはしていなかったそうです。
そんな中で、当時の社長に「その解決のために君は何かしたのか」と問われて衝撃を受けたそうです。ここから、「みんなのためにという思いでやっていくのであれば、お客さんの声をしっかりとその部署の人たちに届けて、一緒にお客さんの声を聞いて中身を良くしていこう」と。関係者を巻き込んで一緒に考えて働いていく。そんな「みんなのため」という思いこそが、その人の社会人としての成功を左右するという、高い気づきを得たそうです。
他にも、京セラ創業者の稲盛和夫さんですね。(稲盛さんは)中堅時代、先輩に提案をことごとく却下されるというようなことがあったそうです。そこで悩まれる中で、当時の恩師から「周囲がどうあれ、それは君の情熱が足りない」「周りを理解させるほどの勢い、そしてそのアウトプットの量(が足りない)」といったことを言われて、奮起をされたと。
中堅社員は一番苦しい立場だからこそ、誰よりも熱く負けない努力をすること。さらに動いていただくのは年上の先輩方です。そういったメンバーに動いてもらうために、相手への尊重と感謝を行動で示すことが大事だと。こんな教訓を得られたそうです。
元日立製作所の川村隆さんですね。アメリカ駐在の時に、しばしば意見が割れるということがあったそうです。その時の判断基準として、自分の提案が通らなかったとしても、最終的に全体が勝つほうを選ぶといった行動を徹底されたそうです。個人の正しさより、組織が前に進むことが大事。そんなことを考えながら周囲と協働していったと。
具体的な成長経験があってこそ、仕事ぶりが変わっていく
それぞれのエピソード、いずれもすばらしいわけなんですけども、これらの共通点を私はこうだと思ってます。「みんなのためという思いで率先して行動し、関係者を巻き込む中から、自分の思考・行動習慣を変える挑戦をした」と。このような経験から得られる学びこそが、その人の仕事に対する捉え方を切り替えていくきっかけとなるということです。

このことを、私どもでは成長ステップモデルというかたちでまとめています。特に若手から中堅へのステップアップですね。若手の段階、セルフマネジメントで担当業務を全うするところから、みんなのためという思いで、組織の目指す方向で周囲を巻き込みながら率先垂範する。
ここを乗り越えていくための具体的な成長経験があってこそ、自分優先、目先優先っていう仕事の仕方から、周囲や先を見た仕事ぶりに変わっていくという内容です。
成長経験を持たない社員はどうなるのか
逆にこの転換点において、そうした経験を持たないままでいるとどうなっていきがちか。ありがちな現状をまとめました。ぜひ御社の中堅社員を思い浮かべながらチェックをしてみてください。一つひとつ読み上げていきます。
「目先の仕事をさばくことに終始してこぢんまりしてるなぁ」「自分の仕事に集中しすぎて視野が狭くなってるんじゃないか」「どうも働きぶりを見てると、なんとか自分1人でがんばって乗り切ろうとする。抱え込みがちだ」「あちらから『○○しましょうよ、部署全体のために』とそういった提案をあまりしてくれない」。
「『うちの部署、うちの会社、ここが問題なんですよ』ということを指摘はするものの、実際にじゃあそのために何をやるのか。当事者としての解決行動は起こさない」「個人目標の達成でなんか満足してるんじゃないか」「相談をする際、『自分はこうしていきたい』と言うことなく『どうしましょうか』っていうふうに投げてくることが多い」「そもそも管理職に昇進する、こういったことに対して消極的な声が聞こえる」と。いかがでしょうか。
こういった傾向は昔も今もあると思うんですけども、個人主義的な仕事観とでも言うんですかね。こういった仕事観へのシフトというのは、昨今の若手・中堅世代の意識や行動傾向として、非常に顕著に表れているんですね。