お知らせ
お知らせ
CLOSE

逆パワハラを防ぐ!上司のための ”逆パワハラ対策” 徹底解説!(全2記事)

部下から上司への「逆パワハラ」が起きる職場の構造 “指導を恐れる上司”と“過剰反応する部下”が招く危機

【3行要約】
・ハラスメント意識の高まりは歓迎すべきですが、逆に上司が萎縮して部下育成が停滞する「逆パワハラ」問題が深刻化しています。
・叱責された経験の少ない若手の増加や、上司と部下の“ITスキル逆転現象”など、上司・部下・組織環境の3要因が複雑に絡み合っている状況です。
・就業規則の整備と相談窓口の機能化、そして全社員へのハラスメント研修の実施などで、健全な職場環境を構築することが重要です。

前回の記事はこちら

“部下が嫌がったらハラスメント”と感じる上司側の意識過剰

宮地尚貴氏:では、課長職の約4割が経験しているという逆パワハラがなぜ起きるのかについてお話しします。

働く方々の価値観の変化や、都合のいい部分だけがSNSで切り取られて拡散される環境など、社会的な背景もあります。ただ、あえて外部要因を置いて、上司・部下・組織環境の3つに分類するならば、主にこうした点が要因になると考えています。

何事もまず自責で考えるという前提に立つと、大きな要因は部下側にあるケースが多いとは感じています。しかし上司側が振り返るなら、1つめは管理職としての指導力やマネジメント力の欠如です。

最近はマネジメントの守備範囲が広く、売上向上だけでなく、人材育成、仕組み化、メンタルヘルス、新規事業開発など、多くの役割が求められています。プレイヤーとして優秀で昇格してきたものの、新しい領域に対応しきれていない管理職も増えており、その象徴の1つがハラスメント領域ではないかと感じています。自分の時代は許容されたことが、今は許されない。この変化にうまく適応できていないという点です。

2つめは過剰なハラスメント意識です。「相手が嫌がったらハラスメントだと思う」という方は、管理職研修でも毎回半分近くいらっしゃいます。

講師側から「毎日遅刻する部下に指摘し、相手が嫌がった場合、それはハラスメントですか」とうかがうと、多くの方が「それはハラスメントではない」と答えます。冷静に考えれば業務上必要な指導ですが、必要以上に敏感になりすぎて言うべきことを言えない。これも逆パワハラにつながる一因です。

適切な指導が行われないと「上司が何もしてくれない」といらぬ反発が生まれ、「この上司は頼りにならない」と認識されます。逆に、必要な指導を適切に行い、信頼関係さえ築ければ、厳しい指摘をしてもハラスメントとは受け取られにくくなります。管理・指導に真正面から向き合うことが前提になります。

「これってハラスメントなのでは」と受け取る部下の存在

次に、部下側の要因としては、ハラスメントに関する知識不足があると感じています。

社会人1年目の方々は、SNSで見かけるハラスメント情報が気になる方も多いと思います。「うちの会社は大丈夫なのか」と不安になったり、過剰に「これってハラスメントなのでは」と受け取ってしまうケースもあります。断片的なニュースや投稿から誤った認識を持ってしまう方が少なくない印象です。

適切な業務指導の範囲や、どこからがパワハラなのかを理解できていない。そして価値観や時代の変化の中で注意される経験が少なく、注意されることへの耐性がついていない。結果として、必要な指摘であっても「パワハラだ」と過剰に反応してしまうことがあります。

さらに、逆パワハラという概念自体を知らず、自分の言動が周囲に与える影響を想像できていない方が多いのではないかと感じています。

1つめと通じますが、叱責や失敗、挫折の経験不足も大きいです。褒めて伸ばす教育が主流で、小学校や中学校でも強く注意される場面がほとんどありません。「廊下に立っておきなさい」と言えば体罰だと問題になるような時代で、先生方も厳しい指導がしづらい環境です。

そのため、注意や失敗の経験をした時に、自分の問題として正当に受け止められず、どうしても反発してしまう。「みんなの前で怒られてプライドが傷ついた」と感じ、感情的に返してしまう方が多い印象です。

部下側の要因はまだあります。まず経験値や能力値の逆転です。

若い方のほうがITスキルを使いこなせており、適応能力も高い。AI活用やシステム活用に関しては、一般社員や若手のほうが上司より扱える場合も多いと思います。その結果、年齢の高い上司に対してのリスペクトが薄れるケースもあるのではないかと感じています。

「下からの突き上げ」が起きやすいという今の環境

次に社会の価値観の変化です。

ハラスメント概念が浸透し、年功序列型の雇用システムが弱まり、「下からの突き上げ」が起きやすい環境になっている。この空気感も逆パワハラの背景にあるのではないでしょうか。

最後に組織環境側の要因です。管理職層を育成している会社は依然少ないと言われています。社内教育の不足はパワハラ全般に影響しており、ハラスメントに対する教育は本来社内でしっかり行う必要があります。

厚生労働省もガイドラインの作成を推奨しており、フォーマットはホームページから入手できますが、それだけでは不十分です。会社ごとに事例ベースで具体的なガイドラインを作成する必要があります。

また、ハラスメント相談窓口は多くの企業で整備されていますが、実際には機能していないケースが多い。この仕組みが機能しないと上司が孤立しやすく、パワハラ被害もお互いに訴えにくい状況になる。従業員が50名を超える規模になると、相談窓口の整備は確実に必要だと思います。

良い労働環境を作るためには、この社内教育とガイドライン整備の2つは特に対応すべきテーマだと感じています。

企業に求められる4つの対策

ここからは、明日から実践できる内容についてお伝えします。今、企業に求められているのは大きく4つだと思っています。

まず就業規則です。パワハラ、逆パワハラ、セクハラなどに関する規定を明記しておくことが重要です。最近のニュースでも「〇〇ちゃん」と呼び続けたことがセクハラと判断され、損害賠償が命じられた事例がありました。パワハラ、セクハラ、マタハラについて、どんな行為が問題になるのかを事例化しておく必要があります。

次に相談窓口の設置と機能化です。多くの企業で相談窓口が整備されていますが、「使われない」という悩みをよくうかがいます。相談先を1人に限定せず、複数人を窓口として配置するほうが相談しやすい環境になります。

「部署のAさん、Bさん、Cさんのいずれかに相談してください」という体制です。また、窓口を機能させるためには、ハラスメントだけでなくキャリア相談なども受けられるようにし、窓口の間口を広げる工夫が必要です。

さらに、相談窓口を起点とした勉強会を開催するのも効果的です。育休やキャリアデザインなど、従業員の人生に関わるテーマを扱う勉強会を実施している企業もあります。窓口を実質的に機能させたい企業は、こうしたプロジェクトを設けても良いと思います。

そして、ハラスメント研修は管理職だけでなく一般社員にも必ず実施すべきです。どこからがハラスメントに該当するのか理解していないケースが多く、基礎研修でビジネスマナーや報連相は学ぶものの、ハラスメントは扱われないことがほとんどです。

一般層には、パワハラに該当する言動、働くうえで起こり得る危険、ミスが与える影響、上司が声を荒げる場面の背景などを理解してもらう必要があります。例えば危険と隣り合わせの現場や、多額の損害賠償につながる職種であれば、緊急時に強い口調になることもあります。しかしそれは個人攻撃ではなく、業務上必要な指導であるという意図を理解してもらうことが重要です。

特に新人層や一般層には、ハラスメントとは何か、適切な指導とは何か、仕事とはどういうものかを正しく理解してもらう教育機会を設けておく必要があると考えています。

ハラスメントが起きやすい職場の共通点

あとは管理職のマネジメント強化です。守備範囲が広くなっているのが前提としてありますので、対応できるようにインプットの機会がないと選択肢が増えず、どうしたらいいのか立ち止まってしまいます。

プレイヤー業務で忙しく、学びの時間が取れないという管理職のお悩みは、どの企業でも共通しています。目の前の業務、評価、部下育成、そのほかの業務で手一杯になり、新しい知識を自発的に取りにいく方は限られます。会社側から最低限の管理職教育は用意しておく必要があると感じています。

上司に求められるのは、やはり部下とのコミュニケーションです。

怒られた時に「なぜ怒られているのか」を本人が理解しようとするかは、信頼関係が築けているかどうかで変わります。

ハラスメントが起きやすい職場に共通するのは、コミュニケーションの頻度が少ない、信頼関係が築けていないという点です。これはパワハラやセクハラを含むさまざまなハラスメントが発生しやすい要因になるとされています。

そのため、上司と部下のコミュニケーション頻度は意識的に確保する必要があります。特に「ちゃんと面倒を見てもらえている」と感じてもらうことが重要で、最低でも月1回は1on1を行うことが望ましいです。理想は週1回の棚卸しや、毎日しっかり会話できる状態です。

定期的な1on1、日常的なコミュニケーションが取れていないと、部下は良くない相談を持ってきません。普段の会話が積み重なってこそ、報連相や相談が自然にできるようになります。日常的なコミュニケーションが、やはり重要だと感じています。

ハラスメントを防ぐための上司側の注意点

逆パワハラ、あるいはハラスメントそのものを防ぐために、上司側が注意すべき点は主に3つあります。

まず1つめは、事実ベースで指摘し、人格や価値観に触れないことです。

「使えない」「だからだめなんだ」といった表現はNGで、淡々と事実に触れるのが基本です。「今回の報告書は期限を2日過ぎています。次回はどう進めればよいと思いますか?」というように、事実と次のアクションを明確にする指導が求められます。

2つめが、必ず個別の場で指導することです。プライドが高い、あるいは怒られた経験が少ない方も多く、大人数の前で叱責すると反発や感情的な反応が生まれやすく、指導が入っていかなくなります。個別で向き合い、冷静に話す環境を整えることが重要です。

3つめが、感情的にならないことです。アンガーマネジメントで言われるような「6秒待つ」というのも一案ですが、声を荒げる、机を叩く、威圧的な態度を取ると、継続した場合はパワハラに該当していくとよく指摘されます。ここは特に注意が必要です。

また、改善策を一緒に考える・指導記録を残すといった対応は、自分を守る意味でも有効です。

実際、大事になった際に指導記録が残っていることで「これはハラスメントとは言い難い」という判断につながるケースもあります。必須ではありませんが、余裕のある企業では取り入れられている施策です。

部下と組織の成長を邪魔するハラスメントを回避する

結論として、パワハラを恐れて必要な指導を避けると、部下の成長が止まり、組織全体の成長も停滞します。上司は言うべきことを言わなければならない。ただし、その際は今回挙げたように「言い方」に十分配慮することが欠かせません。この言い方を磨くこと自体が、日常のマネジメント能力を高める機会にもなります。

意識して丁寧に会話しながら指導する上司は、まだ多いとは言えません。その結果、乱暴な伝え方になり、パワハラと受け取られたり、部下が辞めてしまったり、上司になりたがらない風潮につながることもあります。管理職に求められる役割が増えている今は、特にさまざまな点に気を配りながら動く必要がある、難しいタイミングだと感じています。

今回の内容が少しでも参考になれば幸いです。管理職の負担を減らすには、全社員がハラスメントを正しく理解することが不可欠ですので、一般層向けのハラスメント研修も非常に有効です。弊社でも資料をご用意していますので、よろしければダウンロード資料からご覧いただければと思います。ありがとうございました。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
スピーカーフォローや記事のブックマークなど、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

すでに会員の方はこちらからログイン

または

名刺アプリ「Eightをご利用中の方は
こちらを読み込むだけで、すぐに記事が読めます!

スマホで読み込んで
ログインまたは登録作業をスキップ

名刺アプリ「Eight」をご利用中の方は

デジタル名刺で
ログインまたは会員登録

ボタンをタップするだけで

すぐに記事が読めます!

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

この記事をブックマークすると、同じログの新着記事をマイページでお知らせします

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

人気の記事

    新着イベント

      ログミーBusinessに
      記事掲載しませんか?

      イベント・インタビュー・対談 etc.

      “編集しない編集”で、
      スピーカーの「意図をそのまま」お届け!