【3行要約】・リーダーは一律のマネジメントではなく、メンバー個別の対応が重要だとわかっていても実践できない「見えているのに一律対応」のギャップが多くのマネージャーに存在しています。
・筒井千晶氏は「気づく→問いを立てる→一手を選ぶ」の3ステップを提案し、現場の違和感を言語化して適切な行動を選ぶことで個別対応が可能になると説明します。
・リーダーは指揮者ではなく場を整える存在であり、問い・フィードバック・指示を使い分け、メンバーのタイプに合わせた関わり方を試行錯誤し続けることが求められています。
前回の記事はこちら 実践のヒント「明日からできる3ステップ」
筒井千晶氏:じゃあ最後のセクションになります。実践のヒント、明日からできる3ステップというお話です。まず大前提として、一律のマネジメントは機能しません。(スライドを示して)左側の絵は顔が書いていないですが、みんな同じような人になっています。右側はそれぞれ表情がしっかりある感じです。

左側のような一律ではなく、しっかりと個人を見ながら個別の対応を心がけることが大切かと思います。メンバーの状況やタイプによって最適な関わり方は異なります。画一的な対応ではなく、相手を観察して柔軟に関わり方を調整することが大切だと思っています。これはあえて言うことでもなく、おそらくみなさんしっかり捉えられてるんじゃないかなとすごく思います。
「見えているのに一律対応してしまう」ギャップ
実際にサポートのお仕事をさせていただいている時に、リーダー・マネージャーと話をしていると、それぞれしっかりメンバーのみなさんのことを見ているんですよね。「○○さんはこうで、○○さんはこういう時こうで」というのを聞く中で「あ、やっぱりちゃんと把握されてるんだな」と思うことのほうが多いです。
ですが「じゃあこういう場合にどういうふうに対応していこうか」となると、なぜか左側の一律の対応をしてしまいがちという、傍から見ると、非常にもったいない状況になります。ぜひみなさんが見ていらっしゃることをそのまま捉えていただいて、その上でどういうふうに関わっていくかを決めていっていただけるといいんじゃないかと思います。
実践に移すための3ステップの概要
そこを前提に置きながら、実践に移すためのステップということで、3つのステップをご紹介します。
1点目。ステップ1が「気づく」です。現場の違和感、兆しを言語化する。実際みなさんがしっかり見ている中で、気づいていることはいっぱいあると思いますので、そのあたりをまず言語化していただく。
次に「問いを立てる」。その状況やメンバーに合わせての問いかけを工夫するといった点です。
ステップ3が「一手を選ぶ」。問いに対して、今できる行動を決めて実践していく。先ほどの問い・フィードバック・指示のアプローチ。今の状況だったらどういう手を打てるかなと考える上で参考にしていただけるかと思います。
「気づき・問い・一手カード」という考え方
この3ステップを考える上でカードという名前をつけていますが、こんな考え方をしていくとサポートしやすいんじゃないかというところでご紹介です。気づき・問い・一手を通じて、現場での状況理解と行動選択を促すためのものです。
まず、気づき事項ですね。気づきは3つぐらい挙げていただけるといいんじゃないかなと思います。現場で感じた違和感・変化・兆しなど。複数の気づきを並べると、共通する背景だったり、「なんかこれは繰り返し起きているな」みたいなものに気づきやすくなります。3つとは書いてありますが、気づきは多いほうがよいかなと思います。
例えば、「チームのミーティングだったり、いろいろな場でメンバーが自分の意見を言わなくなってるなぁ」とか「最近会議で沈黙がやたら続いている」とか。あとは「自分が話しすぎている気がする」。この流れでいくと他にもいっぱいあるかもしれませんが、こんな感じで気づきを列挙していく。
表面的な問いから一段深い問いへ
次に問いです。問いに関しては2つ以上あるとよいかなと思います。2つ以上あるといい理由ですが、最初、気づきを見て浮かんでくる問いというのはちょっと表面的になりやすかったりするので、もう1つ踏み込んで問いを立てることで、本質に近づく、問いを生み出しやすくなります。
なのでこの上の気づきに対して、問い。「この沈黙は何を意味してるんだろう」とか、あとはもしかして「自分が何かをコントロールしようとしているのかな」という、そんな問いが浮かんでくる中で、問いを言語化をしていただきます。
このあたりができたら「じゃあ、この状況に対してどうしようか」という一手を考えていく。この問いに対して、今、自分が選びたい行動を決める感じです。「ここはこんな問いを持ったから、この問いを共有してみよう」という、そんな手を選んで、実際にやってみる。やってみた結果どうだったか、そこでまた考えていく、そんなループに入っていけるといいかなと思います。
「一手」を正解探しにしない重要性
このケースでそれ以外に考えられる手は、例えば沈黙を破らず待ってみるというのも1つのやり方です。あとは「みんなの場だと沈黙しちゃうから、1on1の時間を取って目的を共有する時間を作ってみようかな」とか。ほかには「この場で今こういう状況のように見えます」というフィードバックの言葉を準備をしておいて、それを伝えるとか。
他にもいろいろ一手があるんじゃないかなと思います。やってみたい行動をいろいろ書いていただけるといいかなと思います。
重要なのは、最後の一手は正解を追求するのではなく、ご自身で試してみたい行動から発想することです。やってみないとわからないことのほうが多いと思うのと、正解を探そうとなればなるほど窮屈になってしまうと思いますので、そのぐらいのトーンで発想していただけるといいかなと思います。