「まずやってみる」ことで見える変化
実際これぐらいのスタンスで、じゃあ問いを共有してみようとか、目的をもう1回共有し直してみようかなと手を打ってみる。
よくある事例としては「こういった場で1つ問いかけてみたら、意外と沈黙してたメンバーが本音を話し始めてくれました」とか。「もう何回も言ってるし、ぜんぜん効果ないのかな」と思っていたけど、目的を共有してみたら、メンバーから「ただただ仕事をしているだけだったので、あらためて目的が聞けてよかったです」という反応が返ってきたりとか。意外とそういうことがあったりはするので。
「そこまで効果があるのだろうか」と考え込んでしまう前に、ぜひ何かしらから試してもらえるとよいんじゃないかなと思っています。
現場で迷ったときに使える「問い」の例
ちょっとこれは参考までにですが、問いという、自分の頭の中にあるものを言語化するというのは、なかなか癖がつかないとできなかったりはするので、問いの参考情報として記載をしております。例えば現場で迷った時に、こういう問いを通じて選択肢を広げていただけるといいんじゃないかな、という内容です。
先ほどの「メンバーが沈黙している」に対しては「何か言いづらくなっているのかな。沈黙の中にある声は何かな?」という問いがあったりします。あとは意見が対立する。これもよくあると思いますが、「意見が対立している状態の中のどこに共通の目的があるのかな」と見てみたり。
ほかには「お互い何を守ろうとして、こんなふうに言い合ってるんだろう」というような目線で見るのも一つかなと思います。あとは物事の進行が停滞している場合も、「誰が何を待っているんだろうか」とか、「今何を止めると動き出すのか」。やることを増やすんじゃなくて、実はここの部分がボトルネックになっているから実際止めてみたら動き出すんじゃないかという視点を持ってみるのもおもしろいんじゃないかなと思います。
リーダー自身の問いと「任せる」ための発想転換
リーダーが抱え込んでいる。自分自身でもそうですし、チームの中には他のリーダーもいるかもしれませんが、この状況の時にも「誰と一緒に考えるといいんだろうか」とか、「何を手放すと任せられるのか」とか。
いろんなことを守らなければいけないという観点から、任せられないといったこともあると思いますので、そんな時は「自分は何を守りたいんだろう。何を手放すとすんなり任せられるんだろう」という発想もなかなか効果的かなと思います。
メンバーが指示待ちになっている。こんな時は、「この場で自分が導くとはどういうことか」とか、「問いを立てる余白はあるのか」。つまりは、問いを投げてみて指示待ちは解消されるんだろうかということを1回ちょっと立ち止まって考えてみたりするのもいいかなと思います。
厳しさが伝わらないといった状態には、「この厳しさって実際は誰のためのものになっているのだろうか」。もしくはそういうふうに伝わってしまっているだろうかと反芻してみる。「信頼とセットになっているのか」というのも、一つの観点かなと思います。
「気づき」に対して問いを持つことで見えるもの
この状況や気づきに対して、何か問いを持ってみると、けっこう客観的になれたり、物事を俯瞰して見やすくなれたりしますので、ぜひ気づきや対しての問いを言語化していただくとよいかなと思います。けっこうそれで状況が見えてくるんじゃないかなと思います。
あともう1つ。これも参考までにですが、先ほど状況やメンバーのタイプによって関わり方は変わりますとお伝えをしました。ここに書いてあることは、こういうメンバーにはこれが有効ですよというよりも、アプローチの例として受け取っていただければと思います。
メンバータイプごとのアプローチ例
当然みなさまの中にも、バイネームで「○○さんにはきっとこういうアプローチがよさそうだな」というのを浮かんでくると思いますので、ぜひそこはご自分のチームやメンバーにあった問いかけ・アクションを試してみていただけるといいんじゃないかなと思います。
一例までにちょっとご紹介をすると、例えば自信がないメンバーにはちょっと伴走をしてあげるのと、意識してしっかり承認のプロセスを入れてあげる。そうすることで本人がなかなか気づいていない、でも本来できていることに対して自信が持てるようになるかもしれません。そういう関わり方もいいかなというところです。
あとは挑戦意欲が高いメンバーですね。そういうメンバーには、挑戦課題をやってもらう。あえて厳しめのフィードバックをして、ストレッチしてもらうというアプローチもあるかと思います。
経験豊富なメンバーに対しては、リーダーシップ発揮を促してみる。それでどうなるかを、観察してみるのもいいと思いますし、指示待ち傾向のメンバーに関しては、しつこいぐらい目的を共有してみるとか、問いをけっこう投げてみる。そんな中でも、もし動かないのであれば、必要な指示はしっかりしてあげるといった、アプローチもあるかと思います。
判断に迷うメンバーに関しては、選択肢を提示をしてあげる。あとは意思決定をしっかりサポートしてあげる。一緒に判断に迷いながら「こういう場合だったらこうだよね、こういう場合だったらこうだよね」というかたちの意思決定をしっかり支えてあげる。そんなかたちも取れるかなと思いますので、ぜひこのあたりも、メンバータイプごとにいろいろ試してみたいアプローチを取っていただけるといいかなと思います。
最適な関わり方を試行錯誤する
このセクションのまとめですが、いろいろこういうやり方やこういう関わり方をお伝えをしましたが、正しい答えを与えるのではなくて最適な関わり方を常に試行錯誤し続けることが実践においてはすごく大切かなと思っています。
そういう意味では、最適な関わり方を試行錯誤するために、徹底的な観察ということで、メンバーの今を見つめる。今日と明日の状況が違って当たり前だと思いますので、今の状況を客観的に見極める。
あとは関わり方の仮説を立てるということですかね。気づきから問いを立てて、その問いに対してやってみたいことを、試してみたいことを考える。観察結果から最適な導き方を設計して、またそれを試して、そこからまた観察をして、という動き方になっていけるとよいかなと思います。
それがまさに迷い方を鍛えるということにつながっていくんじゃないかなと思っております。
セミナー全体のまとめとリーダー像の再定義
セミナーの最後のまとめに移らせていただければと思います。いろいろお話をさせていただきましたが、リーダーはすべてをコントロールする指揮者ではなくて、目的に向かって共に奏でる、場を整えるっていう存在かなと思っています。
問い・フィードバック・指示を使い分けて、正しい厳しさも意識しながら導いていく。それが今、求められるリーダーシップなんじゃないかなと私個人は考えています。現場は本当に迷いの連続ですし、うまくいかないことばかりだと思います。ただ、そういった状況を力に変えていくために、明日からまず何をやめるとあなたのチームの何が始まるのでしょうか。
ぜひそこを、重くならずに発想をしていただけるとよいんじゃないかなと思っております。すみません、一方的にお話を続けてしまいましたが、本日のセミナーの内容としては以上となります。