【3行要約】
・部下への対応で「優しさ」と「甘さ」を混同していませんか? この違いは部下の成長と自立に大きく影響する重要なポイントです。
・研修トレーナーの伊庭正康氏によれば、現代の職場では「過保護」「甘やかし」「過干渉」という3つの罠に陥りやすく、これが部下の成長を阻害しています。
・真の優しさとは相手の成長に責任を持つこと。部下を信じて任せ、失敗から学べる環境を整え、自立性を担保できる判断力を育てることが上司の役割です。
「甘い上司」になっていないかのチェックポイント
伊庭正康氏:研修トレーナーの伊庭です。今回のテーマは優しい上司なのか、甘い上司なのか。この違いを3つの観点でチェックできるようにしてきました。ぜひ参考にしてみてください。
以前に
「優しいのに尊敬されない上司4選」という動画をアップしました。するとご好評をいただきました。それの第2弾です。

メニューはこちらです。その行動が過保護になっていないか。甘やかしになっていないか。過干渉になっていないか。この3つの観点をぜひチェックしてみてください。
私が見る限り、意外と多いです。そして部下の育ちが悪い。これ、よくありますので、ぜひ3つをチェックしてみてください。
このチャンネルは年200回登壇する研修講師の伊庭だからこそ……いろいろと見てまいりました。(紹介できる)本物のティップスを紹介します。
部下の失態を先回りするのは優しさか?
では、いきましょう。「過保護になっていないか」の2つの観点。あなたはどう考えるかを見ていきましょう。
まず1つ。会議の資料を忘れそうな部下がいる。その会議は重要な会議です。忘れてしまったらダメなので、彼か彼女が動く前に私が資料を用意をしておこう。これはどうなんでしょうね。これは先回りなのでしょうか? 気配りなのでしょうか?
2つ目。要求に応えがちかどうかをチェックしてみてください。
研修で「1時間以内に1回ずつ休憩を取ってもらえませんか」と講師に相談をしたとしましょう。
講師が尋ねます。「どうしたんですか?」「いや、実は受講者から『タバコを吸いたいので50分くらいに1回ぐらい休憩が欲しい』というリクエストがあるんですよ」。「あ、リクエストがね」。はい。ここであなたはどう考えますか? それは要求に応えがちな行動なのでしょうか? それとも正当な要求なんでしょうか?
甘やかしと優しさを判断するポイント
ここで過保護かどうか、パッと区別がつかないんですよね。答えは考えてみてください。ただ私、大きな切り口を紹介します。
判断の切り口は、優しいというのは個別に応えるのではなく、自立性を担保できるかどうか。その部下の自立性でやるんだという気持ちを担保できるのか。そしてその目的が担保できるのか。
例えば研修で、学習効果を上げるためにそれをやっているんでしょうか。それとも資料を先回りして作るのは何を目的としているんでしょうね、ということもあるんですよね。
あとは集団ダイナミクス。これはめちゃくちゃ重要な観点です。それを許したら他はどうなるの? 今後どうなるの? 他の人から見てどう思うの? この観点が抜けていないかどうかで見た時に、今の「資料の先回り」「タバコを吸いたいので休憩を早くしてくれ、たくさん取ってくれ」。応えるべきなんでしょうか?
私の持論ですよ。私の持論は、資料も作りません。ちゃんと「大丈夫? 大丈夫じゃなかったら早めに相談してね」と言って観察する。必要であれば支援はする。
要求にいちいち応えないのも優しさ
2つ目、研修でタバコ。正解不正解はわかりませんが、私は応えません。「それをやることで研修の学習効果は上がりそうですか?」と、リクエストをもらった人に確認します。
目が泳ぐようであれば、「講師が一番考えているので、講師に任せましょう」と言い切ると思うんですよね。というようなことが上司になれば必要です。これが同僚と上司の違いなんですね。
過保護になってはいけない。親だってそうですよね。親もこんなリクエストに応えないですよね。応えちゃダメなんですよ。それが優しさにつながる。自立性を担保できる人材に育てる。目的に叶う判断を取らせることができ、判断ができる人材を育てるってことですよね。あと、集団ダイナミクスのなかで判断できるか。これが優しさなんですよ。
相手の成長に責任を持つ
2つ目、甘やかしになっていないかどうかチェックしていきましょう。
例えば部下が、今日1日の時間内に終わらない。どう考えるかですよね。「おお、俺がやったるよ。私がやってあげるよ」。最高のスタンスですが、果たしてそれは正解なのでしょうか? これもちょっと考えていきましょう。
(スライドを示して)2つ目。明らかに良くないことをやっているのにガツンと叱れない。ハラスメントへのケアが必要。叱るのが苦手。当然あるでしょうね。
例えば(部下が)研修に遅刻しました。どうしましょう? 私は研修トレーナーでございます。こんな光景を数えられないくらい見ています。途中で席に座られます。さあ、どう考えるんでしょうか? 判断してみてください。
ではいきましょう。甘やかしというのは相手の都合に合わせること。優しさというのは相手の成長に責任を持つこと。と言うとわかるでしょうね。
答えは何通りもありますよ。私が上司であれば、手を差し伸べがちというところで考えますと、時間内に終わらない。相手がバタバタしているから手伝ってあげるね。もちろんこれはいいスタンスなんですけども、やることがあるんですよね。本人に考えさせるということもやる必要があります。
あえて考えさせる教育機会を作ることも
「どう? 大丈夫そう?」大丈夫って答えても大丈夫そうじゃないんですよね。「何々の件大丈夫? もしこうなっても大丈夫?」「それはちょっと困ります」。「じゃあどうしよっか。手伝うと思ったら手伝えるけど」喜んで手伝うけど、判断は相手にさせるんですよ。
「いや、けっこうです」となったら、「じゃあ、もし難しいようであれば遅れるわけにいかないので、必ず声をかけてもらっていい?」と厳しめに言います。だって「あなたが大丈夫って言ったんだよね」というような判断軸も持っています。「あなたが大丈夫って言ったんだよね。じゃあ大丈夫。いつでも手を差し伸べるって私は言っているよ。じゃ、声早くかけろよ。なんでかけなかったの?」ということも含めて教育なんですよ。
「あ、そうか。こういう場合は自分で責任を持たないといけないのか」。相手の成長に責任を持たせるんですよね。1回、2回遅れても、それが教育になるようであれば、その機会を作っちゃうことも計算でやったりします。ということなんですよね。
要望は下げずに、コミュニケーションを優しく
次、遅刻。研修に遅刻してもしれーっとそのまま受けていらっしゃる場合も当然ありますが、私が上司であればまず、休憩時間に別室に呼びますね。もしくはあとで角っこに呼んで事情を聞きます。で、「今後はどうしていきましょうかね」なんてことを考えます。
だいたい遅れてくる人って周りが見えてないんです。例えば遅れてきたことによって、チームに迷惑をかけたという観点がない人が多いんですよ。グループワークを4人でやるところが3人でしかできないんですよね。そういったことに気づかせないといけないんですよ。別に講師に謝らなくていいと思いますよ。あまり迷惑をかけてないんじゃないかなという観点の方が多いなと思います。「あ、悪いことした。恥ずかしい」で終わっちゃっている。迷惑をかけたという観点がない。
それって成長が足りていないですよね。そうやって教えるないとダメなんですと思っています。これ、人それぞれですよ。私はどちらかというと厳しいほうだと思います。ただ、コミュニケーションはめちゃくちゃ優しいですよ。これね、上に立つ者にめちゃくちゃ必要だと思います。
基準は下げず、要望は下げず、コミュニケーションは優しく。要望まで下げているようであれば、相手は成長しないからです。上に立つ者は厳しい基準を持ちながら、相手を尊重する。これがキーワードです。
部下の失敗を怖がる上司のリスク
さあ、3つ目にいきましょう。過干渉になっていないか。これ、意外とあるんですよね。
その前にお知らせを入れさせてください。書籍も書いています。
『リーダーの「任せ方」の順番 部下を持ったら知りたい3つのセオリー』。(2025年)9月に出して、おかげさまで増刷も決まっております。ありがとうございます。こちらで任せていく、成長させるための会議なんてことも載せておりますので、ぜひご興味あれば(動画の)概要欄をご覧ください。

さあ、では3つ目にいきましょう。過干渉になってないでしょうか。干渉しすぎですね。
例えば(その)1。失敗させないようにすることが上司の仕事なんです、と思っているでしょうか?
部下の失敗を怖がる上司っていますね。失敗から学べる環境を作るのが上司と言われます。もう一度言いますね。部下の失敗を恐れる。部下のミスを恐れる。恐れるのが、そこから部下が学べる環境を作れているかどうかが本当のあり方になってきます。
過干渉は相手の成長を奪うこともある
2つ目。いちいち確認し、自分が安心をする。「伊庭君、あれどうなった? これどうなった? あれこうしてそうして、ああしてどうだった?」。過干渉でございます。
私は過干渉と支援の違いを知っておくといいかなと考えています。過干渉というのは、相手の成長の機会を奪っていないかどうかをチェックするといいでしょうね。
失敗させないこと。これは大事なんですよ。失敗させないことは大事なんだけれども、必要以上に失敗を恐れすぎていると成長の機会を失っちゃうということですね。部下が自分で考えて、やる機会を失うからですよね。
支援は、相手を信じて任せること。 先ほど任せるという本がありましたが、私、感じていることがありましす。部下に任せるというのは、信じる力がないとなかなかできないんですよ。で、何を信じるの? 部下はきっと失敗してもそこから必ず学んでくれる。私はそのための支援をする。部下は必ず成長する。部下は必ず機会があれば変わる。これを信じていることですね。
「部下は必ず変わる」と信じられているか
あなたの職場にいらっしゃる部下や従業員。5人だとしましょう。「5人とも機会を与えれば変わると信じられますか?」というところなんですよね。
「いやあ、こいつはダメ」ということでは過干渉になってしまう可能性もあります。これはこちらのスタンスの問題です。そのようなスタンスをもう公言しちゃってもいいかと思います。公言することで、自分がまさにそういう人間であると律することができるからですね。
これ、従業員に対してリーダーはよくやってます。「人は必ず変わる。人は必ず成長する。なのでここで成長する機会を私は与えたいと思っています。いろいろと難易度の高いことをお伝えしていきますけれども、ぜひトライしてください。必ず私誰もが成長していけると思ってます」みたいな感じですよね。
もう言い切るんですよ。そのようなリーダーになる人は、言ったからには任せないといけないので、「任せていきましょう」でございます。
さあ、今日の内容はどうでしたでしょうか? ぜひ次回の動画でお会いしましょう。