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マネジメントの型とは?『急成長を導くマネージャーの型』著者とマネジメントを語る(全6記事)

誰をマネージャーにしてはいけないのか Will×評価軸の4タイプで考える、任せ方と活かし方 [2/2]

ネガティブフィードバックの型を知りたい

吉田:オンラインからも質問をいただいています。「ネガティブなフィードバックをする場合の型をお聞きしたいです」と。「他のメンバーにネガティブな指摘をした際に、すごく落ち込むか、他責のどちらかになってしまい、難しさを感じております」と来ています。

長村:ありがとうございます。ネガティブなフィードバックをする時ですね。まず、メンバーにフィードバックをする時は、スタンスを整えるところから始めます。(スライドを示して)相手を心から気に掛ける、相手を気に掛けない、はっきり伝える、はっきり伝えない。

例えば心から気に掛けていて、何にも伝えないのだと、忖度ですね。はっきり伝えない、相手を気に掛けないという、左下は無関心です。はっきり伝えるけれども気に掛けないんだったら、それは攻撃です。

フィードバックのスタンス4象限と「誠実ゾーン」

長村:みなさん、忖度、無関心、攻撃って、自分が入りやすいゾーンはありますか? 僕はけっこう攻撃がやはり入っちゃいますね。むっちゃ腹が立つみたいな感じで「くそっ!」となっちゃう。

普通は「あなた、これができていませんよ」というネガティブなフィードバックをするんですけれども、もし攻撃のスタンスだったらこんな感じです。「あなた、これ、まったくできていませんよ」。「まったく」という言葉は要りますか? 要らないですね。

でも、この「まったく」という言葉が入るだけで、もう相手からしたら何も受け止めてくれないという印象ですね。無意味な攻撃が入っているので、相手はご質問者の方がおっしゃったように「ネガティブなフィードバックを受けても何にも動いてくれない」ということにもなっちゃいます。

まずはこれは心掛けですが、常に、自分が誠実ゾーンに入っているかを目をつぶって確認してほしいです。はっきり伝える、相手を心から気に掛ける。つまり、「今からけっこう厳しいことを伝えるんだけど、それは相手のためだから」というのを、ちゃんと自分の中で確認する。

僕も厳しいことを言わなきゃいけない時は、30秒ぐらい目をつぶって、「今からこの人に厳しいことを言わなきゃいけないんだけど、この人のためになっているのか?」を一応気にします。

実はその人のためになっていないことも多いんですよ。言いたかっただけだなというのがけっこうあるので、その時は言わないようにしています。それって相手に伝わるので、まずは本当に誠実ゾーンに入ります。

耳の痛い事実→一度クールダウン→再対話の型

長村:その上で、順番があります。自分が誠実ポジションに入っていることを確認して、耳が痛い事実を伝えます。メンバーは耳が痛い事実を伝えられると、どれだけちゃんと伝えたとしても、基本的には取り乱すはずです。その内容が厳しければ厳しいほど取り乱します。

特に厳しいフィードバックって、「自分では気づいていなかったけど、実はそうだったんだ」という話なんですよね。例えば「あなた、商談に同席して見ていたけど、お客さまにすごく失礼な態度を取っていましたよ。理由はこの発言、この発言、この発言です」と指摘されたとします。事実としては「なるほど、わかった」と思えても、心の中では「もうええやん!」ってなる。

「なんで、がんばっているのにそんなこと言われなきゃいけないんですか?」と感情的になるのは織り込み済みにすべきです。つまり、そうなる前提で伝えるのが大事。

この時、相手が「なんでそんなこと言われなきゃいけないんですか。おかしくないですか?」と反論してきたら、そこで「じゃあもう一回言います。これとこれとこれができていません。わかりましたか?」と押し返してしまう人がいます。

相手は泣きながら「だから、なんでそんなこと言われなきゃいけないんですか?」と言っている。そこに「いやいや、泣かれても困る。これとこれとこれができていないから」と重ねても、それって本当に伝わっていますか?

もう相手を追い込んでいるだけですね。自分が言っていることが正しくても伝わらないんですよ。感情のボルテージの限界を超えると、何も言葉が入ってこない状態なので、ミーティングはスッと終わるっていうのが大事です。イメージ、30分で時間を押さえたとしても、5分で終わるぐらいがちょうどいいです。

もうやり方としては、「ここを改善してください。ここを改善してください。ここを改善してください。私から言いたかったことは以上です。さようなら」という感じ。「今は急に言われて、戸惑っていると思うので、ちょっと時間を空けて話そうね」という感じで、「1週間後にまた話しましょう」と時間を空けます。

厳しいフィードバックは「内省する時間」まで含めて設計する

長村:そうすると、こっちの言っていることが事実であれば、それが理にかなっていれば相手はちゃんと内省します。

事実無根なのは良くないですよ。「ぜんぜんあなた、仕事やる気ないですよね」と、何の根拠もなく言うのは、良くないです。

ちゃんと、「この点、この点、この点を考慮すると、やはりあなたは仕事に対するスタンスが間違っていると思う」という感じで事実をもとにフィードバックをします。

1、2週間ほど時間を空けると、相手は、その時に何がまずかったかを内省して、その後に立て直します。「この1週間どんなことを考えましたか?」と聞くと、それなりの回答が返ってきます。

例えば「あなたの会議中の目つきや態度のせいで周りが発言しにくくなっていますよ」というフィードバックですね。

相手が取り乱しました。でもその人は反省して、「確かに会議中に黙ってタイピングしたり、貧乏揺すりとかしたり、たまに『チッ』と舌打ちをしたり、相手に威圧感を与えているのは事実だと思いました。反省します」と相手が言ってくれたら、「この1週間考えてくれて、本当にありがとう」という感じで、抱擁せんばかりに承認します。そうすると、相手も一緒にがんばっていこうという気持ちになるというのが、一連の型です。

これ、手練れの人事担当の方だったらこのとおりやっていると思いますが、その人事担当の方は別にセンスでやっているわけじゃなくて、その人のやっていることは、こうやって形式知化できます。

私は思うんです。厳しいことを言わなきゃいけないっていう場面は、本人にとっては本当に人生のビッグイベント級で、「うわ、こんなケースあるのか」と感じるかもしれない。でも、一歩引いて見れば、世界のどこかで今日も必ず起きていることなんですよね。だから型化できるはずなんです。私たちは実際、こんな感じで型化しています、という話です。

つまり、フィードバックの型がひとつある。そのプロセスをきちんと踏むだけでも、相手がちゃんと動けるとか、納得できるとか、そういう効果は十分にあるんじゃないかな、と思います。

吉田:ありがとうございます。どうですか? こういうのを見ると、なんか、マネジメントっておもしろいなって思いませんか? なんとなくのマネジメントのイケている、イケていないというのと、ちょっと質感が違いませんか?

なんか、「これ、科学でけっこういけるんじゃない?」とか、「この場面って要するにここがこうだよね」って説明されると、「あ、ほとんどここかも」と気づくケースが、ほんとに次々出てくるんですよ。

なので、まだ書籍(『急成長を導くマネージャーの型( ~地位・権力が通用しない時代の“イーブン”なマネジメント)』)を読んでいない方はぜひ。おすすめの内容がたっぷり詰まっていますし、長村さんの発信もぜひウォッチしてみてください(笑)。この語りがいろいろな場面で展開されていくので、ぜひ味わっていただきたいなと思います。

最後に1つぐらい、ちょっとお聞きできればと思います。

(会場挙手)

未経験マネージャーをどう育てるか

参加者6:これまでマネジメント未経験の人が「マネジメントに挑戦したい」となった時は、まず達成度でいうCを目指していく、ここが大事だと感じました。

いきなり「執行」で、チームの成果を強力に推進するとか、メンバー一人ひとりを細かく動かす、みたいなところから入るのは、正直ハードルが高い感じがしていて、どう階段をつくって段階的に上がっていってもらうのか、そこについて教えてください。

長村:「執行」「活用」「伸張」「連携」、すべての基準に効くものがあるんですよ。例えば典型的なものは評価です。メンバーに対して正しく目標設定をして、四半期で評価するんだったら四半期のこの期間、相手の行動事実を記録して、最後、その事実をきちんと心を込めて評価フィードバックをしますという、一連の行為はまず「執行」に効きます。

メンバーからしたら、きちんと目標設定をされて、そのフィードバックを受けているので、きちんと業務をするようになります。

これは、「活用」にも効きます。評価はモチベーションが上がる行為でもあるんですね。「そうか、そういうふうに見てくれているんだ」とか、「そういうふうなことをやれば自分は成長できるんだ」と思うと、意欲が上がってきます。なので、評価は効きます。

あと「伸張」にも効きます。評価とは「ここが足りないの」というのをフィードバックする機会なので、成長できるなという感じになります。

すべてに効くようなマネジメントの型はいくつかあるので、それをやることが大事です。典型的なものは評価。あとは目標に対してきちんと方針を考えるとか、こういうのもけっこう効きます。

方針があればみんなのモチベーションが上がるから「活用」になるし、方針があれば「執行」は進むし、方針があれば、他部署はその部署が何をしているのかが見える化できるので「連携」にも役に立ちます。

あとは例えば、ミーティングマネジメントとかもあります。ミーティングする時は目的、目標、アジェンダ、参加者、頻度、時間の6つを整えましょうという話もありますが、これができると上司とのミーティングもスムーズになるので「連携」に効きます。また、ミーティングの時間がものすごく短くて済むから「執行」にも役に立ちます。そういうのがいっぱいあります。

ビギナーのマネージャーさんには「とりあえずこのセットをやったほうがいいんじゃないですか?」というビギナーズセットみたいなものがありますので、それをやっていただくと、まずは「執行」「活用」「伸張」「連携」のスタートラインには立てるんじゃないかなと思います。

吉田:ありがとうございます。まだまだ聞きたいこともたくさんあると思いますが、お時間の関係がありますので、ここらへんで区切っていきたいと思います。

人事こそ「矜持」を持ってマネージャーに向き合うべき

吉田:長村さん、最後によろしければ会場のみなさんとオンラインのみなさんにも一言いただけたらなと思います。

長村:人事の方々がマネージャーさんを変えていくのはとても難しいんじゃないかなと思うんですよね。僕も人事だった経験は長いのでわかるのですが、人事の方が横から指摘すると、「事業の現状もわかっていないくせにごちゃごちゃ言うな」みたいな。

吉田:言われそうですね。

長村:言われそうですよね。でも、そういうのも含めてずばっと言えるのが人事という立場なんじゃないかなとも思っていて、僕、人事の仕事をしている時に一番後悔していたことがあるんです。

例えば、ゲームの事業本部長に対して、「面接をお願いします」って言いに行くわけです。「本部長、今ちょっといいですか?」「何だよ?」みたいな。「これ、今日の面接リストでして」と言うと「うわっ、忙しいのにさぁ」「もう、また面接かよ」とか言われるわけですよ。こちらはそれに対して「すみません、なんとかお願いします」みたいな。

面接が終わって、「どうでした? ぜひ、ここに評価、入れてもらっていいですか?」とお願いすると「なんで今入れなきゃいけないんだよ、忙しいのに」「いや、エージェントさんがどうしてもフィードバック知りたがっていました。お願いします、お願いします」みたいな。

なんで、お前のための採用をしてやっている自分がこんな下手に出なきゃいけないんだって、常に思うわけです。

吉田:(笑)。

長村:「あなたのためにやっていることだし、そんなこと言うんだったら採用しません。自分でやれよ」っていう話じゃないですか。

なので、人事は人事の矜持があると思っているし、事業部の人よりも下だとかわかっていないとか思うのは間違っていると思うんですよ。人事にしか見えないことっていくらでもあると思うんですね。

「そうやって『執行』が忙しいとおっしゃっていますけど、まったく『活用』ができていませんよね」「そんなことしているからどんどんどんどん人が辞めるんじゃないですか?」っていうふうに、そういう事業部長には思いっ切り攻撃的に言ってやってもいい。許せないと。

「ぜんぜん『伸張』していませんよ」「『伸張』していなくて誰も輩出できないからぜんぜん人がそろっていないじゃないですか。」「こっちが異動調整する時に、自分の部署から人が抜けないって言っているのってあなたの部署だけですよ。」みたいな。

「他の部署では人がそろっていますが、あなたの部署ではぜんぜん人がそろっていません。抜かれたら困るじゃなくて、抜けるような体制を作っていないのが間違いなんじゃないですか?」とか、ずばっと言ってやればいいと思うんですね。

いわば人事って客観的な立場だと思うんですね。「なんだよ、じゃあ、ゲーム作れるのか?」と言われたら、「作れないですよ」「私、そんな仕事じゃないですもん」と言い切ればいいですし、僕は、人事の時にそういう人間でありたかったなととても後悔しているんですよね。

つい事業部長を前にすると、「売上を作っていただいてありがとうございます。こっちはもう間接部門なんで」みたいな感じになっちゃうんですけれども、やはりずばっと切り込むべき。

特にマネジメントに関して切り込む時は、この「執行」「活用」「伸張」「連携」っていう、この4つの武器が、やはりすごく効くんですね。

「(人手が)足りない」は「執行」しかやっていないので、「『活用』とか『伸張』ができていませんよ」と客観的に見て言ってあげられるのは人事の方なんじゃないかなと思うんですね。「活用」とか「伸張」のプロフェッショナルでもありますし。

やはり「活用」と「伸張」ができていないんだったら、結局その部署の人材は使い捨てになっているので、人的資本経営とはまったく別ですよね。「人的消費経営」ですよね。

人を消費財のように使い込んで、捨てて、また入れて、捨てて、また入れてという感じで、一向にその部署のケイパビリティやできることが伸びない、一向に意欲が上がらないチームになっちゃいます。

そうさせないための人事なんじゃないかなと思うので、人事としての矜持を持って、ぜひこの4つの基準をもとに事業部に切り込んでいただきたいなと私は思いました。

吉田:ありがとうございます。

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