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マネジメントの型とは?『急成長を導くマネージャーの型』著者とマネジメントを語る(全6記事)

マネジメントの型はなぜ今必要なのか 不確実な時代に効く「現場フレーム」の作り方 [1/2]

【3行要約】
・マネジメントは「型」で再現性を持たせられるが、多くの企業では抽象的な概念や具体的すぎるスクリプトに偏りがちで、実務に活かせない課題があります。
・EVeM創業者の長村氏は「不確実な時代だからこそ型が必要」と指摘し、 ベンチャー発の型はカオスな環境から生まれたからこそ実用的だと語ります。
・マネジメントの型は「AIとの相性も良い」とし、問題の本質を見抜く眼鏡として機能させることで、具体的なアクションに落とし込む橋渡しになると提言します。

前回の記事はこちら

なぜ今「マネジメントの型」が必要になったのか

吉田洋介氏(以下、吉田):逆に、今までなかったものを、なんで長村さんが生み出していけるんだろうかみたいなところもおうかがいしたいなと思うんですけども。

長村禎庸氏(以下、長村):そうですね。1つは、ひょっとしたらですけど、そもそも必要なかったのかもしれない、って正直思うんです。「これさえやっていれば業績は伸びる」みたいに、答えがほぼ決まっている時代って、マネジメントの型なんていらなくて、「いいからやりなさい」で済んだわけですよね。作るべきものを作っていればOK、っていう世界。

でも今はどんどん不確実な時代になっている。「これさえやっていればOK」というマネジメントはもう通用しない。だからこそ、なぜそれをやるのかをきちんと見いだして、理由とセットで指示を出すという話になってくるんだと思います。

「これさえやってりゃOKだろ」みたいな答えが見えない状態になってきたから、「それをしておけ」みたいなものだけだと人は動かないという感じなんですよね。「それをしておけ」と言われても、「本当にそれで成功するのかよ?」みたいな感じで人は疑い出すと思うので、やはりきちんと人を動かすという、この技術が必要だったかなと思うんです。

うちの会社のマネジメントの型は、今だと大手企業のみなさんにもすごく使っていただいているんですけど、やはり発祥はベンチャーなんですよね。

スタートアップではこれさえやってりゃ絶対成功するみたいなことは絶対あり得なくて、やはり今何が重要かとか、どうしてそれをやる必要があるのかというのをいちいち言語化して見いだすマネジメントじゃないと通用しないなって思ったので、そういう不確実な環境から生まれてきたというのもあるんじゃないかなと思います。

ベンチャー発の「型」はカオスだからこそ生まれた

吉田:いやぁ、そうですよね。確かに今のお話をうかがって、まさにスタート地点のベンチャーって、めちゃくちゃ型がないと思われていたはずなんですよね。もっとカオスで、マネジメントも毎日変わるから、型や理論なんて使えないみたいな言説、けっこう多かったと思います。

その中で「ベンチャーのマネジメントにも型はある」って言い切った長村さん、これはかなり衝撃でした。その確信って、やはりいろんな現場でマネジメントをやってきた蓄積から、「自分の中に共通する型がある」と手触りを持てたから、という理解で合っていますか?

長村:そうなんですよ。なんかね、人に見えていないものが見えていた感はちょっとあって。

吉田:やはりそうなんですね。

長村:いや、これはね。吉田さんが今ベンチャーのマネージャーで、「やることが変わるから型なんて言っていられない」。確かにわかります。でも、逆に言うと、「やることがコロコロ変わるなら、型がないと絶対ムリだろ」と思ったんですよ。

「やることが変わらない」「これだけ作っていればいい」みたいな短絡的なマネジメントでOKなら、型はむしろ要らない。でも、本当に毎日やることが変わるなら、型がないと誰も再現できない。だから、型は絶対必要だと考えています。

「説明だけのフレーム」と「現場で使える型」の違い

長村:あとは、スタートアップに入って、マネジメントが肝だというのがよくわかったんですよ。いいサービスがあったとしてもマネジメントができなかったらぜんぜん駄目なので、マネジメントってけっこう大事なんだなというのもわかって。型の作り方には、コツがあります。みなさんにぜひお伝えしたいと思います。

普通、型みたいなフレームワークを作る時って、Aさん・Bさん・Cさん・Dさん・Eさんの5人にインタビューして、共通項を抽出してまとめますよね。でもそのやり方だと、AさんもBさんもCさんもDさんもEさんも使ったことがないフレームワークが生まれがちなんです。だって、5人を抽象化しただけなので、まだ誰のものでもないから。

それはつまり、「なぜその5人にできているのか」を説明するフレームワークにはなるけど、「じゃあ自分は何をすべきか」というアクションを生み出すフレームワークにはならない、ってことなんですよね。ここは、本当に微妙な差なんですけど、世の中をきれいに説明することは得意でも、自分のアクションを見いだすには役に立たないフレームワークって、いっぱいあると思います。

世の中で起こっていることを説明するフレームワークを作りたいんだったらそのやり方でいいんですが、業務で使えるフレームワークを作りたかったら、こんな感じですね。

吉田さんという人に出会いました。吉田さんにちょっとラベルを付けてみましょう。いろんなラベルが付くと思います。例えば、「吉田さんは『自分がどうしたい?』みたいな目的よりもチームの目的をとても重視している人だな」というのと、「吉田さんは自分のことを自分で評価する自分評価軸をちゃんと持っている人だな。他人評価に甘えないな」という、この2つが特徴だったとします。

じゃあ、自分評価と逆の軸を作ってみてください。チーム目的、自分目的、自己評価、他者評価という、これで4象限ができるわけですね。

吉田さんという、私が出会った1人の人間から、この4象限ができるわけです。その4象限の他の人もプロットしてみたら、「吉田さんと違って、あの人は他人評価だけどチーム思いだよね」とか、「あの人、なんか他人評価軸で、かつ自分のことしか考えていないから、めちゃくちゃインセンティブにけっこう敏感だな」とか。「あの人は自分で自分のことはちゃんと評価しているんだけど、その上でチームに貢献することがない自分目的だから一匹狼みたいだな」みたいな感じで、吉田さんをキーにして違う3タイプが出てくるわけです。

4タイプのアサインメントの型で人を活かす

長村:EVeMの中でアサインメントの型というのがあるんですが、誰かに仕事を任せようとする時に、軸で切って、その人を4タイプに分けるんですね。チーム目的志向で、かつ自分評価軸がちゃんと強い人は、他人に頼らない、しかもチームの目的が、チームの達成が自分のことのようにうれしいと感じられるからマネージャーに向いている。

あと、他人評価軸で、かつ自分目的志向の人は、他人評価によって得られる自分のメリットに敏感だから、インセンティブを付与するとすごく成果を出したりする。

自分目的志向は、自分がやりたいことに興味がある人で、かつ自分評価軸。自分で自分のことをよくわかった上で、チームの達成に興味がなくて自分のやりたいことを追求する一匹狼だから、会社の中でチームを組ませるのは良くない。その人が本当に興味を追求できる仕事に一点張りでアサインしたほうがいいとか。

あと、チーム目的志向で、かつ他人評価軸の人は、チームに貢献したいんだけれども、他人がいいと言ってくれないと自信が持てないタイプなので、成果が出やすくて、かつ周りから賞賛されやすい仕事にアサインしたら一気にパワーを出すという感じで、この人に何の仕事を任せたら活躍するかという軸ができます。

これは、誰かを抽象化したわけじゃなくて、吉田さんと対話しながら吉田さんの特徴を抽出して、その対極で軸を置き、そこに他の人を当てはめてみたらうまくハマった、ただそれだけの話なんです。

型の作り方って、こういう感じで、すごくコンテンツづくりに近い。だから、みなさんが業務で使うフレームワークを自分なりに作る時は、このやり方をおすすめします。

自分が見たことや自分でやったことを少し抽象化してみる。あるいは、自分がやったことの対極を取ってみて、それが他の人にも通用するかを確かめる。こうやって作ったフレームワークは、誰かが実際に使っていた型を進化させたものだから、現場で使えるんですよね。

一方で、いろんな物事をきれいに抽象化しただけのフレームワークは、どうしても説明的で使いにくい感じがします。だから、LLMにフレームワークを作らせると、たいていこちら側(きれいだけど実務で使いにくい型)になる。LLMは整ったフレームは作れるけれど、さっき話したような使える型は、なかなか作れない印象ですね。

型とAIの相性 「どこが課題か」を見抜く眼鏡になる

吉田:いやぁ、やはりめちゃくちゃここの勘所がすごく大事になってくるとも思いますし、そこがEVeMの型として磨かれていく中で、どの軸は有効に機能しているとか、こっちはやはりちょっと違ったなみたいなことも、このあたりの妙もめちゃくちゃおもしろいなと思っていまして。

ただ、テクニックは今の考え方の延長で自分たちでもいけそうだなって。最初の一歩がやさしいというか(笑)。そんな感じがしますね。

長村:本当に、自分が見た現実であることがとても大事で、「吉田さんってものすごくチームメンバーに信頼されているんだけど、何なんだっけ?」みたいな。逆もありますよね。「あの人、やることやっているように見えて、ぜんぜん人の信頼が付いてこないのなんでなんだろう?」みたいなの、ありますよね(笑)。

吉田:はい(笑)。

長村:そういうものを1個1個観察して、「それをもうちょっと拡張すると」とか、その人をキーに他の人のことを説明していろいろとやってみるとけっこういいかもしれないですね。

吉田:そうですよね。あと1つ、2つ、みなさんからのご質問をぜひ受けていきたいなと思います。

あらためて非常にマネジメントって、今までブラックボックスになっていたり、あえて抽象的なコンセプチュアルな概念ですと置かれる研修も多かったり、インプットとしても多かったりしたところを、相当型として落としていかれていると感じました。

やはり最近のAIの捉え方だったり、「活用」みたいなところとめちゃくちゃ相性がいいように感じるんですが、ここの「型とAI」の掛け合わせで何か今お話しいただけるところもあれば。

長村:これは本当にありまして、例えば「吉田さんがチームに不満がありそうだから、面談をしようと思うんだけれども、その面談方法を教えてくれ」とAIに聞いたら、ブワーッていっぱいやり方を出してくれます。

でも、その時点で間違っているんですよ。吉田さんが不満を覚えている要因は、私とのコミュニケーション不足だって決めつけていますよね。実は何が欠けているからその問題が起こっているのか、マネジメント全体を見る目が型なんですよ。

例えば権限設計の型というのがあります。誰が何を決めるのかをはっきりさせましょう、というものです。つまり誰が何を決めるかがはっきりしていないからそれができていないんだということがわかる。マネジメントの型には認識の眼鏡という効果があって、権限設計の型を知っていれば、権限設計ができていないことが問題だとわかるということですね。

何が問題かがわかる、課題設定や問題設定の観点。さっきの基準の話もそうですね。基準の話がない状態でAIに相談する時は、「目標達成するための戦略を教えてくれ」という質問をすると思うんですよ。

でも、そこじゃないだろうという話ですね。そもそもメンバーが活用できていなくてリソース・意欲・能力をフル活用していないからどんどん人が辞めていくのが問題なので、「執行」の問題じゃないはずです。

「執行」「活用」「伸張」「連携」という4つがあると考えたらAIに相談ができるんですけど、それがないと、原因を決めつけて相談したりするわけです。

マネジメントの型があると、まずAIに対して何を投げかけたらいいかとか、どこに問題があるとか、何の相談をしたらいいかという観点があるので、型が観点ですね。

プロンプトに近いかもしれません。今何を聞きたいのかとか、何を解決すべきなのかという目が養われるのが型の効果かなと思います。

「型」はAIにも上司にも相談する前提を整える

吉田:ありがとうございます。今の、めちゃくちゃ大きいインパクトだなと思います。ビジネススクールに通っていた方や、ケーススタディを作っている方と話した時に感じたのは、ケーススタディにはある種の簡単さがあるということです。現実を文字化してくれているので、その情報から読み取れば良い側面があるんですよね。

一方で現実は、そもそも文字化されていないし、どこに着目するか、現状をどう捉えるかという認識そのものが歪んでいることもある。結果として、ケーススタディで学んだはずなのに、「実は同じケースだ」と気づけない自分がいるわけです。

そこで型という眼鏡をかけると、現実を変に歪まずに見ることができる。「この眼鏡を通すと、適切な見え方ができるようになるよ」というガイドとして、型はめちゃくちゃパワフルなんだなと感じました。

長村:そうですね。あとはもう1つあって、相談に対する答えですね。例えばChatGPTとかに聞くと、むちゃくちゃ具体的なセリフベースで返してくれるじゃないですか。

それはそれですばらしいんですが、具体的過ぎるが故に、ちょっとでも外していたら「あっ、ぜんぜん違う話をしている……」みたいになって見る気がなくなるじゃないですか。

「このスクリプトで話せばいいですよ」とか、「この表を使えばいいですよ」って言われるのと、「権限設計の型というものがあります。この型では権限設計はこういうやり方が書かれています。この型を使ってあなたはこうすればいいんじゃないですか?」とサジェストされるのって、ぜんぜん違うと思うんですよ。

最後の「こうすればいいんじゃないですか?」という具体的なところを外していたとしても、権限設計の型は自分で認識できて自分で使えるので、「このセリフを言ってください」じゃなくて、「この型がいいんじゃないですか?」という勧められ方の粒度のほうがこっちも使えるわけですよね。

吉田:そうですね。AIだけじゃなくて上長から言われても一緒ですよね。「できていないのはこの4つの中でいくとここだよね」と上司と一緒に握って、「だからこういうふうにアプローチは必要だよね。最後どうやって言うかはちょっと一緒に考えよう」みたいな感じになっていくと良いと思います。

長村:そうなんですよ。我々もマネジメントのパートナーとしてユーザーと接する時に、「最後にこのセリフを言いましょう」までは言わないですね。それってやはりわからないので。

どういう状況にあるのかがわからないので、「このマネジメントの型がここで使えると思います。吉田さんはこれは使えますか?」「使えます」「じゃあ、吉田さんはこれをどう使いますか?」というラストワンマイルは決めてもらいますね。そうじゃないと危ないというか。

吉田:いやぁ、そうですね。

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