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マネジメントの型とは?『急成長を導くマネージャーの型』著者とマネジメントを語る(全6記事)

マネジメントの型はなぜ今必要なのか 不確実な時代に効く「現場フレーム」の作り方 [2/2]

「抽象すぎる研修」と「具体すぎるスクリプト」の間を埋めるもの

長村:逆に、「こういうふうに言えばいいんじゃないですか?」って言われても、人と人との間のことで、最後はわからないので、やはり事故になりますね。

吉田:そうですね。これまでのマネジメント研修や一般的な教材って、抽象に寄り過ぎるか、逆に具体に寄り過ぎるか、どちらかに振れがちだったと思うんです。 「とにかく褒めればいい」といった過剰な具体でも困るし、「育成をすればいい」といったふわっとした抽象でも結局よくわからない。その間をつないでくれるのが型なんだな、とあらためて感じました。ありがとうございます。

後はちょっと会場のみなさんと、オンラインのみなさんからも直接長村さんに聞きたいというところを、ぜひバンバンと出していただけたらなと思っております。

(会場挙手)

メンバーの「やりたくない」は変えられるか

参加者1:すごく枝葉の質問になっているかもしれません。指示の深度という話があったかと思います。目的、業務内容、業務要件、参考情報を伝えて明確に指示を出すことでメンバーは動ける。アウトプットを出すというお話だったかなと思います。

それで期待するものが出なかった場合は、キャパがないだけであるとおっしゃっていたと思うんですけど、すごくマネジメントを必死にやっていて、4つは使えるんだけれどもアウトプットが出てこないケースがけっこうあって。「言われたことはわかるんだけれども、やりたくない」という、別の感情が入ってしまうみたいな。

長村:そうですよね。

参加者1:マネジメントの型を使って、ある程度絞り込んで確率を上げるというところまではすごく納得感があるんですけども、万能ではないのかなという感覚があります。やはりそういったものなのか、それともやりたくないみたいなところも封じ込めるマネジメントの型があるのかをおうかがいしたいです。

Willへの向き合い方と「やりたくない仕事」

長村:やりたくないという気持ちをやりたくさせる型はないかなと思います。やはりやりたくないものはやりたくないんだろうなと思うんですが、そこは、マネジメントの型以前の話かもしれません。

やはり、「こういった業務の上での命令なのでやりましょう」というのが最終的には解かないと思っています。ただ、ふだんから参考にできる型が1つありまして。

Willへの向き合い方という型があります「何がしたい? 何がしたくない?」って、ふだんみなさんも面談とかで聞かれると思いますが、なんでWillを聞きますかという話ですね。

こっちが業務の命令しかしないんだったら別にWillを聞く必要はないと思うんですが、そのわりにはみなさん聞いている。「なんで聞いていますか?」って聞くと、ほとんどは「会社から聞けと言われているから」みたいな話になるんですけれども(笑)、明確な理由があります。

これも当たり前の話かもしれないですが、その人が生む成果は、Will×Canだと思うんですね。やりたい気持ちと、できるかどうかが掛け合わされたら成果になると思います。

Canはけっこうみなさんも把握されますよね。「その人は何ができるんでしょうか?」という感じで、タレントマネジメントの世界でも、よくその人のスキルセットみたいなものを見る、という話はあると思います。

何がしたいかもそれと同じぐらい大事ということですね。WillとCanの扱いってまったく一緒です。成果を生むためのアセットとして、能力とやる気を見ているという話なので、Willというのは成果を残すためのアセットを把握しているという、それだけなんです。

Canを把握したらCanに合った仕事を当てるのと一緒で、Willを把握したらそのWillができるだけフィットする仕事にアサインしましょうというのが、その人を活かすための方法ではあるので、Willはそのために聞いています。

Willを聞く時のセリフの型

長村:「あなたは何がしたいですか?」と聞かれたら、相手は「考えてくれるのか?」ってやはり思いますよね。だからその聞き方だとちょっとまずいと思うんです。

聞き方のセリフの典型的な型があって、こんな感じです。「あなたがやりたい業務は最終的には私が決めます。ですが、あなたが何がしたいかというのは、あなたの仕事がうまくいくためにとても大事な要素だと思っているので、参考までに聞かせてください」。

その人に、したいとかしたくないとかという気持ちがあったとしても、あなたが何をするかというのは私が決めますという、このスタンスがすごく大事だと思うんですね。

そのスタンスを崩さない前提で、ふだんからやりたいことを聞くというコミュニケーションが成立していれば、いざ何かをしようとなった時に、「ごめんなさい、やりたくないからやりません」にはならないかなと思います。
 だから、ふだんのコミュニケーションにヒントがあるのかなとも思いました。

吉田:ありがとうございます。

長村:さっきのご質問にも「型は万能なんですか?」ってあったと思います。僕も本当はそんなことないと思います。型という漢字を見た時に想起するものって一人ひとりちょっと違うと思うんですけど、ひょっとしたら「型ということは、要はあなたは何も考えずにこれさえしてあげるとすべて解決するよ」ということではないか、と捉える人もいるかもしれません。型という漢字から、ちょっと支配的とか万能感みたいなものを感じるんですけれども。

私たちが考えている型のイメージはどっちかというと、みなさんの足元にある感じです。型を参考にしたら自分がやるべきことが見つけやすいという感じですね。アクションのための参考情報だと捉えていただければなと思います。

吉田:いやぁ、そうですね。他のみなさん、いかがでしょうか?

(会場挙手)

ふだんの雑談とマネジメントは別物か

参加者2:ふだんのコミュニケーションというのは、マネジメントの型の部分と別物というニュアンスに聞こえたんですが、私の中ではマネジメントと、ふだんのコミュニケーションは一体です。別物に捉えるのかどうか?

長村:ひょっとしたら別物かもしれないですね。やはりマネジメントの意図がない時間があると思います。雑談とか、何かのマネジメントの意図がない時間であればマネジメントではないと思います。

例えば、廊下ですれ違って一緒にコーヒーを飲みながら話す時間を、その人との信頼関係構築の時間だと思っているなら、それはきっとマネジメントだと思います。

その人に対して何かの業務指示をしたいなと思うんだったらマネジメントの時間だと思うんですが、特に何の意図もないんだったら、それはマネジメントじゃなくて、ただ人と人との会話かなと思います。

さっき私が、「じゃあ、ふだんの会話で」と言った、この「ふだんの会話」は、マネジメントの意図がある会話ですね。例えば「定期的な面談で」とか「その人の業務アサインを伝える時は」というイメージで使いました。

つまりマネジメントは、営業や経理や開発と同じ業務だと思っていますので、その業務をしていない時間があるという感覚ですかね。

参加者2:「大谷翔平がうんぬんかんぬん」という会話があったとしても、結果的にコミュニケーションが密になったり円滑になったりするかもしれないけども、その人たち同士がマネジメントと思っていなければそれは仕事ではないというふうに……。

長村:はい、そうですね。

吉田:ありがとうございます。では、その他のみなさんはいかがでしょうか?

(会場挙手)

4つの基準を人事評価にどう組み込むか

参加者3:今日うかがっている中で、マネジメントをする方の人事評価をどうやってしていけばいいのかなと思いました。

ベースによって「執行」と「活用」と「伸張」と「連携」のパーセンテージを使い分けていきましょうというお話だったと思います。それを会社としてあるマネジメントの人に任せる時は、人事評価の基準もやはりフェーズによって柔軟に変えていく必要があるのでしょうか?

長村:そうですね。私たちは、この「執行」「活用」「伸張」「連携」の基準をマネージャーの評価基準だと言い切っているところもありますので、マネージャーを評価する時の基準として使っていただいていいかなと思います。

一方で、実際の運用としては、マネージャーに限らず、典型的な人事制度では全社員の等級別評価基準があると思うんですよね。等級ごとに職務要件が定義されていて、例えば「等級5なら、これができていなければいけません」という要件がある。それで、それができているかどうかを見ます。できていれば役割にミートしているということで基本給が上がる。ミートしていなければ上がらない、という仕組み。

それとは別に、目標達成を基準にした成果給があります。成果給は、会社によっては基本給に上乗せするところもあれば、賞与として支給するところもあります。

こういう制度が確立している中で、この4つの基準を評価基準にマネージャーだけ盛り込みましょうというのは、運用としてはやはりかなり複雑で難しいと思います。

なので、私たちはこれを、マネージャーの評価基準として使えばいいなというのは思いつつも、実際の評価の運用に組み込むのはけっこう手間がかかったりはするので、実際はこれを評価する基準というよりも、そのマネージャーを指導したり、そのマネージャーと経営で認識をそろえるための基準として活用するのが実運用かなと思いました。

この「執行」「活用」「伸張」「連携」を使って、「マネージャーとしてここが足りていませんよ」とか、「マネージャーとしてここをもっとがんばったほうがいいですよ」という助言は、人事や上司からがんがんすべきだと思うんですけれども。

それを、「何かができているから評価に反映します」までやり出すとけっこう複雑だから、そこは既存の人事制度で評価する時の意識として持っておけばいいぐらいの付き合い方でいいかなとは思います。

参加者3:経営陣とマネジメントで、「今、この『執行』の割合って本当にこれぐらいでいいのかな?」とかをすり合わせしていくのが大事?

長村:はい、そうですね。その認識を本当に2週間に1回とか月に1回すり合わせるのがすごくいいと思うんです。

例えば、役員の方はある事業部長に対して、「今はどう考えても急拡大だから『採用』をがんばってほしいな」と思っていたとしても、事業部長は「とにかく業績を上げなきゃ」と思って「採用」をやらずに、ずっと、業績を上げることばかりを考えているというずれがずっと続くと、事業部長さんは「外れてください」となると思います。

外された事業部長の方はもちろん悲しいと思いますし、役員の方も、事業部長人材が少ない中、せっかく見つけた事業部長を外したくはないじゃないですか。だからやはり「いや、ごめん。今はもっと『伸張』をがんばってほしいんだ」「あぁ、そうでしたか。すみません」みたいな、認識のすり合わせができるといいですよね。

参加者3:ありがとうございます。

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