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マネジメントの型とは?『急成長を導くマネージャーの型』著者とマネジメントを語る(全6記事)

「ちゃんと指示したのに」が通じないのはなぜか マネージャーに求められる最低ラインと“指示の深度”

【3行要約】
・マネジメント評価のCラインは「最低限これはできるべき」という厳しさと、課題発見を促すメッセージが込められています。
・長村氏は「Cレベル未満はクリティカル」と指摘し、特に「連携」の欠如は組織にとって致命的だと語ります。
・マネージャーは過去の経験を「型」で棚卸しし、感情に左右されない論理的な指示の深度を身につけるべきです。

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C評価ラインに込めた「厳しさとメッセージ」

吉田洋介氏(以下、吉田):ありがとうございます。いやぁ、採点をしてみたら、49.9点でした。ちょっとここからは長村さんとお話をしていきたいなと思います。

Cのところ、できるというところからスタートしてくれているじゃないですか。ここのCのところ、少なくともこれはできるよねというのを、最低限に置いているのは逆に厳しさでもあるなみたいな感覚が出てきました。

長村禎庸氏(以下、長村):みなさんがやってもらうこととしてはハードルが高いと思いませんでしたか? ハードルが高くていいんです。高い点数を取ることが目的じゃなくて、対処すべき課題に気づくことが重要なので、わざとハードルを上げています。

C、ハードルが高くないですか? 「日々の業務指示を行い、チームの成果に向けた活動を推進することができる」って、これすらままならない人はいると思います。採点基準を高めに置くから課題に気づけて対策が打てるという感じのからくりなので、点数が低くてもそれは気になさらず課題が見つかればいいなという感じです。

吉田:いやぁ、そうですよね。本当はCにも至っていないんだけどなってちょっとドキドキしながら付けていたところがあって、でもまさにそういったメッセージですよね。

少なくともマネージャーとしてマネジメントを担う以上、この基準・水準は最低でもCレベルに達していないといけない。そこに届いていなければ、土俵に立てていない、外されてもおかしくないラインに入るというメッセージでもあるのかなと思います。

長村:そうですね、あとは、とりあえずCにいこうよというメッセージでもありますね。Cができたらとりあえずはその場に立っていられるという状態なので。

「C未満」はクリティカル 連携Cが欠ける怖さ

吉田:そうですね。先ほどの長村さんの話でいえば、特に上位者が「この人にマネジメントを任せると、組織にむしろ悪影響が大きい」と判断するかどうかは、その人がCレベルに達しているかどうか、という感覚に近いのだと思いました。

長村:やはりそうですよね。Cに満たないところがあると、やはりクリティカルな要因になりますよね。Cにいると、最低限はできているなとか、別にすごいわけじゃないけど、別に悪くもないなという感じになるんですけど。

例えば「連携」のCとかはそうですよね。僕は「連携」のCができていなかったからクリティカルだと判断されて外されたと思うんですが、「他部署・上司が自部署の状況を把握できる状態にできる」って、できていなかったらブラックボックスということですよね。これは外されますよね。

吉田:本当に、このあたりは身につまされるというか……過去の自分も大失敗をいろいろしているので(笑)、超ドキドキしながらやっていたんですけれども、一方で湧いてくる疑問だったり、「このあたりどうなのかな?」という話をぜひおうかがいしていきたいと思います。

先ほどチラッとおっしゃっていましたが、やはり人間、自分が受けてきたマネジメントを再現してしまったり、1つだけある成功パターンをもう1回やってしまうという、力学がすごく強いなと思っているんですよね。

長村:そうですよね。

過去のマネジメント体験を「型」で棚卸しする

吉田:一方で、この4つを同時に満たすマネジメントを実際に受けたことがある人は、説明を聞けば「確かにそうですね」と具体的な記憶が立ち上がるはずです。

ただ、この体験の有無は人によって大きく違っていて、だからこそ、こうした学びに触れた時にイメージできるかどうかという度合いが、その後実行に移せるかどうかにけっこう影響するのかな、と感じています。この点についての捉え方について、長村さんはどう考えますか?

長村:まさにおっしゃるとおりですね。そのためのマネジメントの型なんじゃないかなと思うんですが、実は自分がされてきたことの影響を受けないために作った型でもあるんですよね。

されたことはしちゃいますよねという感じでして、自分がされたことや見てきたこと、あるいはなぜうまくいったのかわからないけれども経験上うまくいったこととかを、自分のノウハウとしてずっとストックをしておくと、さっきの基準の話の時に、「この状況だと外します」みたいな状況が生まれてくるわけです。

なので、そういうのをスパッと断ち切って、自分が過去やってきたこととか、見てきたこととか、されたこととかを、全部論理で整理できる経験を経ないと駄目だと思うんですよ。

つまり、過去の経験をもう一度棚卸しするということですね。例えば、うちにはマネジメントトレーナーと呼んでいる人たち向けのトレーナートレーニングがあるんですが、そのカリキュラムの1つに、こんな課題があります。マネジメントの「型」っていろいろありますよね。その型ごとに「自分が見た/された/やった」体験を、ぜんぶ書き出してください、というものです。

この基準の型についても同じで、「あ、確かにあの人があの時やっていたやつだな」「自分がされたことあるな」「自分で試してうまくいったな」みたいに、した/された/見たは全部経験なんですよね。だから各型ごとに、自分がした・された・見たをぜんぶ書き出してもらう、というやり方にしています。

そうすると、自分が過去見てきたことも、この論理の中の一部だということがわかるようになって、過去の経験を客観視できるんですね。客観視して、この箱の中のここの話だったねというふうに整理できれば、それはリソースにもなるし、引き出す必要がないんだったら引き出さなくてもいいしという感じで整理できます。

この基準の型も、学んで「なるほど」ではなくて、そこからさらに発展して、自分がされたこととか、見たこととか、自分がやってみたことを書き出してみると、「あっ、自分の過去の経験ってこういうことだったな」と、使えるリソースになる感じですかね。

マネジメントには必ず「感情」が乗る

吉田:このあたりって、マネージャーをやる以上、自分と向き合わなきゃいけないというメッセージが強いなと思っていて。過去の経験の中には、正直フタをしておきたいものもけっこうありますよね。

長村:やはりありますね。

吉田:自分がやってしまったなというのもありますし、あの人からされたもう思い出したくないみたいなものを、リソースに変えることがマネージャーにとっては大きな武器になるというところですよね。

長村:そうですね。あと、マネジメントってどうしても感情が乗っかると思うんですよ。例えば吉田さんも過去、メンバーに「これをしてください」と指示をしたけれど、なぜかその指示が実行されませんでしたという状況を経験をしたことが1回はきっとありますよね。

吉田:いや、毎日そんな状況はありますね。

長村:それってどういう気持ちになりますか? うれしいとはならないですよね?

吉田:そうですね。腹が立ったりすることもありますし、なんか悲しいみたいな、「指示を大事に思っていないのかな?」というのもあります。

長村:そうですね。

吉田:「あれ、言ったよね?」って、ちょっと僕は自分自身の記憶すら怪しいなと疑い始めたり、そんな気持ちになったりします。

「指示の深度」という4段階の型

長村:ありますよね。マネジメントの型には指示の深度というのがあります。そもそも指示というのは4段階で構成されているんですね。

目的、「それ、何のためにやるんですか?」「競合、力を付けてきた方をウォッチしたい」、これが目的ですね。その次、指示内容ですね。「競合と自社を比較するような表を作ってくれないか?」。

その次、業務要件ですね。「その表には、この項目、この項目、この項目を入れてほしい」。最後に参考情報ですね。「昔こういう表を作ったので参考にしてください」という感じで、目的、業務内容、業務要件、参考情報という、この4つで指示は構成されています。

目的から参考情報まで、一番深い情報だと参考情報までですね。相手によって目的と業務内容だけを伝えるパターンもあれば、深く参考情報まで伝えるというのを使い分けましょうというのが指示の深度という型です。

これがわかっていれば、自分の指示が実行されないのは目的がわからないのか、業務内容がわからないのか、業務要件が足りなかったのか、参考情報が足りなかったのかというふうにロジカルに判断できるんですね。

そうすると、「あっ、確かに、目的をちゃんと伝えていなかったな」「だからたぶん途中で行き詰まってしまって進められなかったんだな」とか、「目的と業務内容は伝えたけれども、それだけじゃ足りなかったんだな」「業務の要件や参考情報を伝えなければならなかったんだな」というふうに論理で整理できます。

少なくとも「自分のことを軽視しているんじゃないか?」とか、「自分のことを馬鹿にしているんじゃないか?」みたいな、変な感情的なことにはなりません。

ちゃんと目的も伝えたし、やり方も伝えたんだけど、なぜか実行されないという時は、「もうキャパがないだけでしょ」という。

こんな感じで、これも論理で整理できます。目的がわからない、やり方がわからない、キャパがないという、この3つしかやらない理由はないというのが型で、これがインプットされているとイラッともしないわけです。少なくともイラッとした気持ちを抑えられるに近いですね。これも型の効用です。

型があると「ちゃんと指示して」の中身が分解される

吉田:本当ですよね。みなさんも聴かれている中で感じていると思うんですが、何をするにもマネジメントは型であるということが、まさにこういったところに表れてくるんですよね。

たぶん、これまでによくあるマネジメントだと、「それ、指示が甘いです」「ちゃんと指示してください」というやりとりになるんですよね。でも、その「ちゃんと」の中身とか、何が足りないのかが1つずつ明確にならないと、結局同じことの再生産しかできません。

「じゃあ、もうちょっとネチネチ言いますね」とか言って、よくわからないまま指摘の時間だけ倍に増やす。でも、まったく届いていない。そういうことが起きていて、それがこれまでのマネジメント育成の難しさにつながっていたんだと思います。

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