【3行要約】
・マネジメントの理想状態が曖昧で、多くのマネージャーが勘と感覚で対策を打っているという課題があります。
・EVeM代表の長村禎庸氏は、専門性がなくてもマネジメントはできると学んだ経験を持ちます。
・同氏は「執行・活用・伸張・連携」の4つの基準でマネジメントを評価する「基準の型」を提唱し、論理的なマネジメントを実践すべきだと語りました。
セッションの導入と今日のテーマ
長村禎庸氏(以下、長村):みなさんあらためまして、よろしくお願いします。今日は、みなさんとインタラクティブに進めていける感じかなと思いましたので、あえて自分も時間に縛られずに話していきたいなと思います。
今日はマネジメントの型の中でも一番、私が大事だと思っている「基準の型」をご紹介したいなと思います。
実は、この『
急成長を導くマネージャーの型( ~地位・権力が通用しない時代の“イーブン”なマネジメント)』という本を書いた時には、存在していなかった型です。新しい型なんですが一番大事だなと思って作った型です。今はうちのマネジメントの型の中でも最も大事なものということで紹介しているので、ぜひ今日はみなさんと一緒に味わっていきたいと思います。
リクルートからDeNAへ キャリアの原点
長村:私の簡単な自己紹介です。大阪生まれ大阪育ちで、最初に入った会社はリクルートで、『ゼクシィ』という結婚情報誌の広告の営業をしていました。
その後にディー・エヌ・エーという会社に行きました。私が入った時のディー・エヌ・エーはまだ300人ぐらいの小さな会社でした。ちょっと古い話ですが、みなさん『怪盗ロワイヤル』というゲームをご存じですか?
ソーシャルゲームと言われるものなんですが、それがとんでもなく大ヒットして、入った時は社員が300人だったはずなのに、1年後には1,000人になって、その次は2,000人になったという、なかなか見られない急成長の渦中を9年間ディー・エヌ・エーでは過ごさせていただきました。
事業部門のマネージャーもやりましたし、子会社の役員とか、本体の、いろいろな部署のマネージャーを転々としていました。1年に1回ぐらい部署が変わるんですね。
いつの間にか社内では、いわゆるプロっぽいマネージャーを任されるようになっていました。例えば、経営企画のマネージャーを務めた時期もありますが、コーポレートの経験はゼロ。知識のないまま現場に入っていったんです。
経営企画部には有価証券報告書を作成する業務があり、僕も「それ、僕にも書かせてください」と手を挙げたところ、「絶対に書けないと思います」と言われました。そこで「何を言っているんですか。去年と同じことを書くんでしょう? 1ページだけでも書かせてください」と食い下がって書いてみると、メンバーからは「こんなの絶対に出せない」と真っ赤な修正が入る。そんなことの繰り返しでした。
要するに、自分がその仕事を完璧にできなくても、チームをまとめ、重要なことを前に進める。それがマネージャーの仕事だと、その時に自覚しました。どっちかというと、自分がプロっぽいマネージャーとして、未経験の仕事であったとしても、あるいはその仕事ができなかったとしてもマネジメントはできるという、そういう過ごし方を学んだ9年間だったんじゃないかなと思います。
「自分には何ができるのか」専門性の悩み
長村:それはいいことだったとも思うのですが、裏を返せば、「何ができる人なんですか?」と聞かれた時に、特に答えられるものもないっちゃないんです。
「営業ができるんですか?」と言われたら、やったことはありますけど、その道の営業のプロに比べたらぜんぜん素人ですし、さっきの「有価証券報告書を書けますか?」と聞かれてもほとんど書けないですし、(スライドを示して)ここに採用マネージャーとありますけど、自分でスカウトとかを打ったことないですし、やはりわからないんですよね。
何もできないので、キャリアにけっこう悩んだことがあったんです。その時にハウテレビジョンという会社に出会いました。「外資就活ドットコム」という、すばらしいサービスを運営されていて、私はそのサービスが昔から好きでした。
ハウテレビジョンとの出会いと組織の課題
長村:いいサイトなんですが、このサイトは昔からぜんぜん変わっていないから、会社がなくなっちゃたのかなと思っていたんです。たまたまハウテレビジョンの社長に会う機会がありました。もちろんその会社は存在していてきちんと運営されていたんですよね。「でも、すみません。大変申し訳ないんですけど、昔からあまりこのサービスは変わっていないと思っていました」と言ったら、「それはそうですね」ということで事情をお話ししてくださいました。
お話を聞いてみると、毎年、人が辞めては入り、辞めては入り……という状態を3年ほど繰り返していました。しかも毎年、社員の半数が辞めて半数が入るという、かなり激しい入れ替わりを毎年味わっている会社でした。
こうなると、せっかく利益が出ても採用エージェント費で消えてしまいます。組織がこれだけゴタついていれば、社長の時間もサービスづくりに割けません。お金も時間も使えないのだから、サービスは発展しない。結果として、サービスは変わらないままでした。
それを聞いて、すごく悲しい気持ちになりました。いいサービスを生むことは、絶対に型化はできないと思うんです。けれども、生まれたサービスを育てるためのマネジメントは型化できるのではないかと考えていました。だからこそ、型化できる領域でつまずいているのはもったいない。そこは自分にやらせてください、と申し出たんです。
COO就任からEVeM創業へ
長村:私は特定の専門業務に強いわけではありませんが、マネジメントならできるキャリアでした。そこで「ぜひ組みましょう」という話になり、私がCOOに就任しました。結果として、この時の自分なりの仮説は当たったと思います。もともと非常に優れたサービスがあったので、そこにマネジメントの力を加えれば、退職は止まり、人が活躍し始め、業績も伸びる。実際にそうなり、最終的にはマザーズに上場しました。
上場後も1年間はハウテレビジョンの取締役を務めましたが、せっかくいいサービスがあるのに、マネジメント不在のせいで会社が消えてしまうという悲しい事態をなくしたい。そう思って、EVeMという会社を立ち上げました。
EVeMという会社はE、V、e、Mと書きます。ちょっと文字列が変わっていると思いますが、「Empower Venture Manager」を略してEVeMです。ベンチャーで戦う経営者さん、マネージャーさんを応援しようと思って作った会社です。
「マネジメントの型」を広げる活動
長村:今日お話しするマネジメントの型と言われるものは、実はたくさんのところで発信しています。動画メディアの「PIVOT」さんだったりとか、ブログとか、書籍も出しています。「マネジメントの型」と検索していただいたら、わーっとEVeMのものが出てくるんですが、ご興味ある方はぜひ見ていただければと思います。
ということで、今日はみなさんに問いかけたいことがあります。私たちは普通、理想に対して現状を認識し、そこに生じたギャップの理由を突き詰め、対策を打つ。仕事はだいたいこの流れですよね。

どんな業務でも基本はこのサイクルで回しているはずですが、マネジメントは少し特殊だと思います。マネジメントにおける「理想」は、とても曖昧になりがちだからです。