不動産業における労働問題の顕在化

それからもう1つ、不動産業のお話をさせていただきますけれども、ここはどちらかというと、不動産市場の活性化のほうですね。今不動産はいろんなかたちで高価格になっている。それから買う側も、昔は不動産は極めて専門性が高いので個人投資にみんな参入はなかったんですけれども、個人の方を含めた金融資産としての積極投資なんていう話がけっこう多くなっていますよね。
某成田のほうに個人投資していたけれども成田の開発が止まってしまって困ったみたいな話を聞いたかもしれませんが。例えば港区の浜松町にある、本来は20億円を要するような大きくて極めて高いものに投資できませんが、それを1,000万円に金融資産化して、そこに個人投資して利回り保証みたいな話が出てきているわけですよね。ということで、不動産業は特に都市部で非常に活性化しているよということです。
地方で聴いている方がいらっしゃるかもしれませんが。例えば今まで広い範囲に住んでいたんだけれども、結局インフラの関係で県庁所在地の中心部にみんな集まるようにしているよ、みたいな話があるわけですから。実は不動産市場は活性化しているのが現状ではありますね。
そうすると、そもそも先ほど言ったように、労働者人口が減少している中ですから、もともとは不動産は極めて特殊なかたちでナレッジみたいなのがあるわけですけれども。実際に他業種で参入する会社さんもありますし、他業種の人材もどんどん入ってきているよということなんですね。なので、これはもうまさに採用ミスマッチという話なんですけれども、経歴と経験のズレは大きいんじゃないかなという気がしています。
高学歴でも実務に対応できない「採用のミスマッチ」
そこに書きましたけれども高学歴。例えばMARCHを出ています、早慶を出ていますとか。東京であったらそういうかたちだったりとか、いわゆる高学歴、国立大を出ていますみたいな方なんだけれども、実はぜんぜん不動産の特殊性には対応できていないよみたいな人とか。
前歴が、いわゆるコンサルティング会社さんですね。同じような話で高学歴ですが、コンサルティング会社で高収入だった。同じような高収入が得られるだろうという期待をして不動産の新規業種に入ってきたみたいなやつですね。
ところが、業界の特殊性に対する社員の対応力の問題で、不動産というのは、そもそも従業員教育はOJT中心なんですよね。極めて関連法規……先ほどの労働法にも似ていますけれども、関連する法律がたくさんあるし、解決方法もたくさんありますから。
それから報酬体系も成果主義だったり、いわゆるインセンティブ報酬だったりするので、入ってきたのはいいけれど、期待とズレている。コンサルさんでもインセンティブ報酬みたいな話はあるわけですが、ある程度客が付いてくれば経歴に含めて、それなりにインセンティブが付くわけですけれども。
不動産の場合は、そもそも論としてコンサル以上に取引の頻度が少ない。1個1個の金額は大きいけど取引頻度は少ないですから、相当実力差が出てインセンティブがもらえないなんていうことがあって期待とズレる。これが採用のミスマッチになって問題が顕在化することになるわけですね。
OJT中心、バックオフィスの体制整備がかなり弱い
これは小規模な事業者さんが多いよということで、教育体制はOJTだけどなかなか難しいよ、なんていう資料だったりします。他の業種よりも取引金額や売上は大きいんですけれども、人数が少なかったりするよ、なんていう話ですね。

ということで、不動産業において問題は、(従業員数が)少ない事業者が多くて継続的信頼関係を重視しているよという話ですし、他業種と比べて……ここはさっきの医療機関と似ていますけれども、そもそも論として就業規則は少人数なのでない、みたいな話が多かったりするわけですよね。

それから、明らかに雇用なのに業務委託契約書にしている場合とかもけっこう多いですよね。それから、人事労務の担当者が不在。先ほど言いましたけれど、取引頻度が少ない。そもそも論として製造業とかと比べると従業員の数が少ないということで、いわゆるバックオフィスの体制整備がかなり弱い印象なんですよね。
そうすると、OJT中心の教育体制になりますし、トラブルが起きた時には経営者層や決裁権者が対応するわけですが、実際何が起きているかの調査も証拠化されていなくて、従業員に聞き取りしてもよくわからないみたいな話で、時間とコストが大幅増加するよということです。ここも医療機関と同じで、他業種以上に早期対応の必要性大なんじゃないかなと。
ただ今回、「他業種以上に」と書いていますが、医療機関とか不動産業だけが特殊ではなくて、各業種において早期対応の理由は違うけれど、今まで以上に必要なんじゃないかというのが今回の私の話なんですね。