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経営者・人事労務担当者向け 企業労務セミナー「『採用ミスマッチの解消のポイント』-問題社員を生み出す根本原因と対処法とは?-」(全4記事)

「問題社員」を生み出す根本原因と対処法 経営者が勘違いしている「解雇」の法的リスク

【3行要約】
・労働法は従業員を手厚く守り、訴訟では労働者が有利に判断されることが多いにも関わらず、多くの経営者は労働法制の複雑化に対応できていません。
・弁護士の松村武志氏は「経営者層が昔の感覚のままでアップデートしていない」と指摘し、解雇問題の深刻さを警告。
・問題社員対応には「事案検討と証拠化」「対応案件の選別」「専門家サポートの活用」の3ステップが必要で、早期の適切な対応が「問題社員」を生まない鍵となります。

前回の記事はこちら


「問題社員」を生み出さないために

松村武志氏:さて、前置きが長いなとは思いますけれども、もう一度、繰り返しになるんですが、出口から考えるということです。

「問題社員」と言っているけれども、問題社員にしちゃっているんだよというところが大事ですよね。実際問題として、本来我々が推奨するような専門家に適切に相談するとか早期対応をしていたら、そもそも問題社員にならない。問題社員という言い方にならなかったんじゃないかという気もするんですよね。

ですから最近は、やはり問題社員対応という言い方よりも、採用のミスマッチとか状況変化、社会変化に伴う対処方法というかたちで考えていただくことが必要です。繰り返しになりますが、出口から考えるよということで、解決事例をしっかりと知ってほしいというのが今回の趣旨になりますね。

そもそも「従業員」は非常に守られている存在


さて、そもそも論として、もう答えを書いちゃっていますけどね。そもそもなんで問題対応……要するに、なんで出口からそんなに慎重にいろいろ考えなきゃいけないのかということなんですけれども。

これは当たり前なんですが、みなさん労働法の基本として、従業員はめちゃくちゃ守られているんですよ。これはやはり労使関係の……ここは後でしゃべりますけど、実際はいろいろ変わってきていて、最近はある程度、労働者に有利な判断が裁判実務でもされたりもしますけれども。

本来的にはやはり労働法、労働関連法規というのはたくさんありまして、基本的には使用者と労働者のパワーバランスを修正する法律なので、労働者を守る法律がめちゃくちゃたくさんあるよというところなんですよね。いいですかね。

これは参考までに、「D1-Law」という判例検索サイトで「労働」と入れて法令の数を調べたら、法律14件、政令14件、省令12件、告示12件とかですね。ウィキペディアにも労働に関する法令の一覧みたいなものがあるんですが、法律だけで50件以上ある。

何が難しいかというと、結局先ほど言いました、社会の変化に伴って、そういう基準法みたいなものは大きく変革できない場合には告示とか政令というものもありますし、あるいは特別法によって変えたり、いろいろしているんですね。なので、とりあえず先ほど言ったように、社会や働き方、あるいは業務も複雑化しているんですけれども、法制度自体もめちゃくちゃ複雑化しているよということなんですね。

どうなるかというと、結局のところ専門家のスキルがぜんぜん違うよねということなので。今回だけでなく、みなさんも当然いろんな方に聞かれているかもしれませんが、「じゃあ、それにアップデートしている人たちはどれだけいるの?」という話なんですね。

証拠がなかったら「労働者」が勝つ

これは労働者側であれば、立証責任である程度守られている時代が長かった。今でもそうなんですが、最近ちょっと違うというのは後で出てきますけれども。

なので逆に言うと、とりあえず文句を言っている、主張を強く言っているだけで裁判所が助けてくれるパターンはけっこう多かったなという印象もあります。もちろん我々の事務所でも労働者からの事件も一定程度あるわけですけれども。そういうのも含めて、私の感覚で言っても、やはりもう労働者は非常に守られているということで、そのへんがなかなか難しいという話ですね。

ここに書きましたけど、要するに労働者のパワーバランス、裁判実務での運用です。「真偽不明の場合は労働者の利益に」ということなんですよ。つまり証拠がなかったら、どっちも主張が真っ向から違っていたら、とりあえずよくわからんから労働者が勝つ。そういう話なんですよね。

経営者層の感覚のズレ

ですから、何をしなきゃいけないかというと証拠化なんですよね。いかに文書化しておくか、それから、いかに労働の関連法令が定める手続きを具体的に履践したという証拠を整備しておくか。これが会社において、あるいは法人において大事なことなんですね。このへんはもうみなさんに口酸っぱく言っているのでわかるよという話なんですけど、これが意外と経営者層との感覚のズレが大きいんですよ。

それから先ほど言ったように、社会状況が変化してきているので、さまざまなガイドラインも作成されていて、解釈基準なんかも増えているわけです。それにアップデートしていないので、昔の感覚で、あるいは経営者にとっての組織が拡大する前の感覚で話されている方、あるいは管理されている方はけっこう多いんですよね。

これはもう私見で「予告手当の話」と書いたんですけど、解雇、整理解雇の事案。整理解雇ってわかりますかね。部署を閉鎖するとか、売上が落ちたので規模を縮小しなきゃいけない時に、やむを得ず「あなた、辞めてくださいね」という整理解雇の事案だったんですけれども。

それが解雇予告手当と一緒で相場観を無視して、「解雇予告手当はひと月分だから、ひと月分でいいんじゃねぇか?」みたいな。「ひと月分払いますよ」と言っていたパターンがあるわけですね。部門整理とか整理解雇をする場合には、それなりの金額を提示するのが一般的なわけです。

ただ、そもそも整理解雇であって懲戒解雇でもないわけですし、解雇事由が認められるかどうかわからない状況においてお願いする立場であるのに、予告手当、つまり普通解雇の解雇事由がある場合と同じ金額でいいという感覚が、その業界ではわりとよくある話だったんですけども、私はちょっと衝撃だったんですよね。

「一発解雇」をした時の法的リスク

そういうことはけっこうあるので、みなさんも自分たちの業界で当たり前のように言われているようなことが本当にそうなのかというところは、まず労働者は守られているんだよということで意識してほしいなと思います。

それで、(スライドの)真ん中に書きました。要するに、一発解雇はけっこう難しいよという話ですよね。解雇を強行した場合には大変です。「その法的リスクって何なの?」って、結局裁判で争っている間はずっとバックペイ、つまり解雇が有効になった時の賃料を働いていない人に払うとかですね。

あるいは1年、2年と訴訟になった場合、解雇無効の場合はかかる場合もありますから、その間の弁護士にかかる訴訟費用であるとか、もっと言うと、とことん争うとすればやはり一発解雇なんかしちゃった場合は金額も大きいですから。

経営陣とか決裁権者の対応リスク。つまり弁護士にお願いしたとしても、個別具体的な聞き取り内容について対応すると、その時間、経営や営業に従事したほうがずっといいんじゃないかと思うような話で、それも取られちゃいますよという話なんですね。

なので、もう繰り返しになります。ここらへんは一般的な話なんですけども早期対応です。ただ、「この早期対応って何なの?」というと、事案の検討と方針決定と証拠化です。いいですか。事案の検討と方針決定と証拠化です。

早期対応を始めるのはいいんだけども、「じゃあ、これってどんな事案なの?」というのを出口から考えて、これはやはり解雇は難しいよねとなると、「次、何をする?」というのが方針で決まるわけです。実際に自分の中の所内事例であるとかそういう話で、じゃあ、その方針に従って、文書化、証拠化をしていこうねという話になります。

問題社員対応の具体的手順

それが進んだら、次の段階になるような気もしますけども、ここは後で見ればわかるんですが、相談対象事件の選別です。ここまでは所内でやるのもいいですし、最近は我々の事務所にはこの(スライドの)青い段階から相談される顧問の方とか、あるいは初めてご相談に来る方も多いと思いますけれども。

この相談対象事件の選別です。これも「解決事例から考える」。結局、(スライドの)右に出てきた「個別対応可能な専門家サポートを利用するかどうか」。つまり弁護士が出ていって何か対応……例えば通知書を打つとかの他に、弁護士に(スライドの)左側で集めた資料を渡して、ある程度検討していただく。それで、もう相手も弁護士を付ける可能性が高いから、法的なサポートに移行しようねというのを決める。

つまり自分たちでやれない物事の、法的に移行するものを早めに選別して準備をする。早めに弁護士とかに関与してもらうという、そういう話だったりするわけですね。

ですから、この3つ。この(スライドの)左側をしていないと選別はできないし、選別ができていないと全部を全部弁護士に相談しても、「いや、それは今回ぜんぜん問題ないですよね」ということはあるわけですから、有効な弁護士さんの活用にならないという資金の問題もあるわけですね。ですから、この3つはセットなんですけれども、この3つを意識的にちゃんとやれているところは、極めて少ないんじゃないかなという印象です。

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