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社長へ捧げます!管理職に求められる7つの能力とは(全2記事)

部下に“委任したつもり”が「丸投げ」になる構造 管理職に欠けがちな7つの能力とは

【3行要約】
・個人の成功体験を会社全体の武器に変えられず、知識が属人化してしまう――そんな組織課題が多くの企業に存在しています。
・管理職に求められる役割が高度化する中、指導スタンスの使い分けや部下の成熟度に応じたマネジメントが重要視されています。
・暗黙知を形式知へ昇華させるプロセスを設計し、指摘・励まし・共感を適切に使い分ける管理職教育を体系的に実施することが必要です。

前回の記事はこちら

個人の“うまくいった方法”を会社の武器に変える仕組み

浅井隆志氏:管理職に求められる7つの能力の3番目は、チームビルディングです。

研修でも扱う内容ですが、まず時間軸で言うと9時の暗黙知、12時の暗黙知、3時の形式知、6時の形式知という流れがあります。暗黙知とは「私だけが知っている情報」です。これを共同化の段階で、机の横の人に「これ提案したらめちゃめちゃ刺さったんだよ」と横に共有する。まだこの時点では暗黙知です。

次が表出化です。課長がA君の報告を聞いて「いいね、それ。B君も成果が出たの? じゃあ部署の雛形にしよう」と、非公式だった情報が公式になっていく。これが暗黙知から形式知への移行です。さらに、営業第1課でうまくいっている方法を第2課にも広げていくと、管理職同士の共有によって、会社全体の形式知に拡張していきます。

つまり、組織が成長するためには、個人が持つ情報を横軸に共有し、上司が吸い上げ、管理職同士で共有し、会社の文化・ルール・制度へと昇華させるプロセスが不可欠です。

情報共有、シェア、言語化、相互指摘、情報交換。こうした取り組みをどう設計し、運用するのかがチームビルディングで非常に重要です。数字の報告だけで終わるような会議はやめて、「情報共有をどうするか」に専念したほうが良いですね。采配や取り決め、情報の選別、浸透のさせ方が管理職に問われてきます。

指摘、戒め、励まし、共感…指導スタンスの4象限

指導能力については、研修でも扱っている現場指導のポイントをお伝えします。横軸が仕事の進め方、縦軸が仕事の成果です。

仕事の進め方が悪く、成果も出ていない場合は指摘が必要です。「給料をもらっている以上、責任を果たしなさい」という指摘ですね。仕事の進め方が悪いのに成果だけ出ている場合も、やはり進め方に難があるので戒めが必要です。

仕事の進め方が良いのに成果が出ていない場合は励ましが大切です。古い体質の営業会社だと「がんばっても成果が出なきゃ意味がない」と言われがちですが、上司の指示どおりにやって成果が出ていないなら、それは部下ではなく上司の責任です。だからこそ励ましが必要になります。

仕事の進め方も良く成果も出ている場合は共感です。昔は「褒める」と説明していましたが、いたずらに褒めるのではなく、共感というかたちで伝えるようにしています。

このような基準で、上手に部下を導けているかどうかが問われます。「ダメなことはダメ」と伝える戒めも必要ですし、時には励ましやモチベーションの提供も必要です。できたことはきちんと伝え、期待も示していく。こうした指導能力や伝え方のスキルは、管理職に当然求められます。これは、その場その場で教える能力、いわゆる機会指導であり、機会教育とも言われます。

なぜ管理職の委任は“丸投げ”になるのか?

5番目は育成能力です。横軸が能力、縦軸が意欲で、部下の成熟度によってマネジメントのアプローチは変わります。

社長の方であれば、業績低迷の時と好調な時で経営判断が違うのはおわかりだと思いますが、それと同じでチームや会社の状況によってリーダーシップやマネジメントのアプローチは当然変わります。部下の状況によっても、対話の仕方や関わり方は変わってきます。

その基準を整理したものがこれです。まず左側。能力が低く意欲が高い、新入社員のような状態です。やる気はあるけれど経験がない。上司はどうアプローチするかというと、徹底的に仕事を教えることが必要です。定期的な勉強会、OJTの計画、同行・同席など、手取り足取りの指導が求められます。

次に、意欲は落ち着いてきてマイナスではないが、いわゆる3〜7年目くらいの一般社員・中堅社員。この層には参加型のマネジメントが必要で、業務に引き入れ、当事者意識を持たせていくことが大事です。

支援型は説明を割愛しますが、最も重要なのは右上の委任型です。能力・体験・経験が十分にあり、意欲も高い部下には仕事を任せて良いということです。

しかし実際には、能力や経験がまだ不十分で本来は指示型や参加型のマネジメントをしなければいけない部下に対して、委任型をしてしまう管理職が多い。「仕事は自分で考えて試行錯誤していかないと成長しない」と丸投げするケースですね。ここに誤解が多く、これが指導能力の問題として現れます。

管理職が7つの能力を身につけることで組織に現れる変化

サッとお話ししましたが、今日はダイジェストです。目標管理、問題解決、チームビルディング、4と5は教育、6が自己成長、そして実践力としてのスキル・知識が求められるという話でした。

このあたりは、会社としてどう教育し能力開発をしていくのかが重要です。感覚が良い方やセンスでできる方もいますが、プレイヤーの仕事とマネジメントの仕事は明らかに違います。本来は会社が体系的に教えるべきで、eラーニングでも研修でも構いません。とにかく管理職の能力を計画的に育てる機会を設ける必要があります。

では、この能力があると何が起きるのか。

ここでは「若手」と書いてありますが、一般社員として捉えてください。一人ひとりが目標を設定し、計画を作り、実践していく。「次はこうしよう」と自分で試行錯誤をする。これは成長や生産性向上、業績向上のために非常に大事です。

その情報を部下が上司に上げ、上司が把握し、必要に応じて介在してアドバイスや指摘、励ましなどのコメントバックを行う。このコミュニケーションが機能していること。そしてチームビルディングでお話ししたように、横軸で情報共有をしながら組織としての知識を積み上げていく。

さらに上司はその上の上司に報告し、またコメントバックを受ける。こうした縦と横の流れが整うと、社内で自然と人が育つようになります。だから私たちは、みなさんの会社にこの仕組みや制度、文化を作っていただくことをゴールにしています。

新人研修、管理職研修、コンサルなどをご依頼いただく企業さまにも、最終的には必ずこのかたちを整えていただいています。この状態ができれば、極端に言えば私たちはもう必要なくなる。それくらい、この仕組みづくりをゴールにしているということです。

「できないなりにがんばってくれている…」と管理職に遠慮する経営層

このかたちを作るために上司に必要な知識や能力は、今日お伝えした7つです。社内・社外の力も使いながら、どう開発していくのかを会社として考えていただきたいと思います。これがきちんとできていないと、社長や幹部、つまり経営者層の方々が管理職に強めに物を言えない状態になります。ここも大きな問題だと感じています。

「できないなりにがんばってくれているからな」「現場も忙しいからな」「今厳しいことを言って辞められたら困るな」といったお気持ちは、僕もよくわかります(笑)。ただ、社長や経営幹部、経営者層がストレスを感じている限り、会社は成長しません。これは明確にお伝えしておきます。

そのストレスの原因は何かというと、管理職にきちんと物が言えないこと。言ったとおりにやってくれないこと。やると約束したことをやらないこと。だいたいこのあたりが原因になっています。ですから、管理職をどう動かすのか、どう教育していくのかは、本当に直近の最重要課題だと感じています。

今日はダイジェストで大変恐縮ですが、まずは今日お伝えした内容が自社で「できているのか、できていないのか」を見極めてみてください。できていない部分があるのであれば、どう補完していくのかをしっかり考えていただきたいと思います。

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