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優秀なマネージャーが育たない理由と解決策(全3記事)

「マネージャーになりたくない時代」を超える仕組み 出世意欲に頼らない管理職育成の設計図

【3行要約】
・プレイヤー気質の社員をマネージャーに登用する課題に対し、企業はさまざまな工夫を行っていますが、マネジメント意欲の低さや役割認識の誤りなど多くの問題が存在します。
・滝澤亮太氏は「企業には必ず『らしさ』がある」と指摘し、人材会社やコンサル企業の事例を通じてキャリアパスの二分化やプロジェクト単位の組織構築などの解決策を紹介。
・マネージャー育成には、スキルだけでなくマインド教育が重要であり、パーパスの浸透やマネージャーDOJOなどの取り組みを通じて本質的な役割理解を促進すべきと語ります。

前回の記事はこちら

5つの課題に対する具体的な企業事例をひも解く

滝澤亮太氏:今、課題と解決策を簡単にお話しさせていただいたので、これを実際に「どうやっているのか?」、事例でご紹介できればなと思います。3つ目のお題は「事例のご紹介」です。

まずは、1つ目。Aのところ。「プレイヤー気質の社員をマネージャーにしている」という課題に対してです。これは、とある人材会社さんの例で、先ほどもお話ししたとおりではありますが、大きく2つのコースに分けています。

アカウントマネージャーとして稼ぐところ。要はプレイヤーとして一流の結果を出すことに特化をしていて、基本的には部下を持たない。ただ、レベル感として、給与レンジや数字的な話はマネージャー格の数字になってきます。

(もう1つは)マネージングマネージャーということで、まさに人材育成や部署の業績管理を行っていきます。自身は数字を持たない、いわゆるみなさんが、よくイメージしているマネージャー職ですね。



プレイングマネージャーの方もいるかもしれませんが、このように分けながら、実際に実施しています。(スライドを示して)特に左側にいくような方に対して、制度がなかなか設けられていない会社さんはけっこう多いので、まずはそこを設けてみたり、「そこになりたい人が、本当にいるのか?」みたいなところを、先ほど言ったようなストレングスファインダーやマインド調査でしっかりと理解をしていくということが重要かなと思っています。

プロジェクト単位の組織と「取り扱い説明書」で個性を生かす

では続いてBですね。これはコンサル会社の事例ですが、「一様のマネジメント手法が通用しない」というところですね。これは先ほど言ったように、いろいろな特性の方がいらっしゃるので起きています。

基本的には部署ごとにマネジメントの組織があることが多いと思いますが、この会社はプロジェクトごとに組織を持たせています。(スライドを示して)例えばこの左側の図でいくと田中さんという方。この赤い方ですね。(田中さん)が、いわゆるプロジェクトマネージャーで、その部下として鈴木さんがいるんですが。別のプロジェクトで鈴木さんがマネージャーになっているというかたちです。そうすることで、いろいろな方とコミュニケーションが取れる仕組みになっています。マネジメントの対象の特性が把握しやすくなっています。



あとは、この会社さんの取り組みとしては、(スライドに)「取り扱い説明書」と書いているんですが、実際360度評価みたいに「実際にお仕事をしてみて、(その人に)どういう特性があるのか?」というのをお互いに書き込みしています。



メンバーとメンバー、メンバーから上司へもやります。例えば、こんな構造です。マネージャーから本人だったり、あとはメンバーから本人だったり、同僚だったり、後輩からだったり。さまざまな書き込みが行われて「この方はどういう人なのか?」という、取り扱い説明書みたいなものが、どんどんブラッシュアップしていくという仕組みがあります。それが社内の誰でも閲覧ができるようになっているので「この人とタッグを組んで次に仕事をする時に、どうすればいいのか?」がわかるようになっています。



単純に「初めまして」だとしても、やりやすさが変わってくるので、こういうやり方をするのも、1つの方法かなと思っています。

プロジェクト単位の管理職経験でプレイヤーにマネジメント視点を育てる

続いて、Cの課題ということで、これもコンサル会社の事例です。これは先ほどお伝えしたとおり、以前は基本的には部署ごとに固定をしながら、そこにマネージャーがいて部下がいてという構造になっていました。



改定後は、プロジェクトごとに管理職が変動していくようにしました。卒業方式というよりは、いろいろな経験を踏ませながら、それができるようになったら管理職になっていくので入学方式に少し近いと思います。マネージャーのプチ体験が、少しずつできる仕組みになっています。



そうすると、プレイヤーの方もマネージャー的な視点を持ちやすい組織になっていきます。マネージャーとして突然、バーンと登用されるわけじゃなくて、いくつかの経験をした上で、マネージャーになっていくので、マネジメントになっても失敗がしづらかったりなど、ポジティブな結果が出ています。


パーパスとビジョンを徹底的に落とし込んで管理職の意欲を引き出す

次にDの事例、「意欲が低い」ということで、マネージャーになりたがらないところですね。これは実際に私たちの会社の事例をご紹介します。



ポートに関しては、「社会的負債を、次世代の可能性に。」というパーパスを徹底的に浸透させています。これをまずやっています。単純にそのパーパスを語るだけじゃなくて、それをより浸透させるために、各部署の単体のビジョンとバリュー、行動指針がパーパスからどう落とし込まれているのか、というところが非常にわかりやすくなっています。

具体的に言うと、私は就職支援事業部という一番大きな部署のコンサルティングの組織を束ねているのですが、「このコンサルティングの組織が実現する、解決する社会的負債って何だろうか?」という問いが、明確に言語化されています。



じゃあ「それを解決するために、どんな行動を取っていけばいいのか?」ということも明確に言語化されています。さらにここから評価が連動していて、その行動をすればするほど、実際に評価が上がっていくという仕組みになっているので、非常に浸透しやすい構造になっています。それを踏まえて、マネジメントの仕事としては、やはり仕事の意義を都度メンバーに伝えています。



冒頭でも申し上げたとおり「企業には、必ず『らしさ』がある」と思っています。ただ、残念ながら、中にいればいるほど、外との比較が難しい。中にいればいるほど意外と「企業らしさ」はわかりづらいと、僕らは思っています。

私たちコンサルティングDivは「正しいらしさ」を作ることができると思っているので、その「らしさ」を人事戦略、事業戦略に落とし込んでいくプロであると考えています。採用のミスマッチを防いだり、組織の活性化を行っていくことが私たちの価値であるという話をしています。

例えば、私たちはインターンシップを作ったりもするのですが、単純にインターンシップを作るのではなく、もっと言うとインターンシップも「おもしろければいい」とか、そういうのではありません。

その企業の「らしさ」が体現できるインターンシップでなければ、私たちは意味がないと思っているので「とにかく、おもしろいインターンを作ってください」と言われたら、提案を辞退します。そのぐらい、僕らは「らしさ」を伝えることにこだわっています。徹底的に「その会社らしいインターンシップを作るためには、どうすればいいのか?」というところを教育しています。

「ただ売上を上げればいい」ではなく企業らしさに共感する顧客を選ぶ

あとは営業活動をするにしても、やはり「単純に売上が上がればいい」と、いろいろなニーズがあるところにバンバン行って受注すればいいというわけではありません。先ほどお伝えしたとおり、「もし僕らの考え方と違うと思うのであれば、ご提案はすみません。できません」ということで、この「らしさ」を作っていって、それを説明会やインターンシップ、組織活性、定着、育成などに落とし込んでいくことに共感してくれる企業さまにご提案をしていきます。闇雲に「ただ、開拓すればいいわけじゃない」ということが、非常に(会社の)中に浸透しています。

(スライドを示して)実際に、これは策定しているアウトプットです。私たちのコンサルティング事業におけるビジョン、そしてバリューです。「提供価値は何なのか?」というところですね。こういったものが実際に社内のポータルにも格納されていて、実際に作った時は、全社発表会で、全社向けに話をさせていただいています。



単純にパーパスや理念を掲げるだけじゃなくて、それを事業部単位やグループ単位でもしっかりと落としていく。私たちはこの理念達成のために「何のために存在するのか?」というのが、少なくともここに書いてあるので、非常に浸透がさせやすくなるんじゃないかなと思っています。

マネージャーDOJOでマインドとスキルをセットで鍛える

では最後にEですね。5つ目の紹介ということで、これも当社の事例の紹介です。「マネージャーの役割を正しく認識していない」ということで、スキルアップだけをやっていちゃダメですよというお話ですね。

まず、私たちはマネージャーになる上で、マネージャーDOJOというのを置いています。(スライドに)DOJO資料の表紙を貼っています。これは、(2024年)4月から登用されたマネジメントメンバーは、全員受けています。このDOJOに合格しないと(マネージャーには)なれません。



ぶっちゃけて言うと、マネージャー候補だったのに、DOJOに不合格になってプレイヤーのまま、13期目から14期目を迎えた方も何名かいる状況です。その中では、もちろんスキルアップみたいなところもお伝えしていくんですが、「そもそもマネジメントって何のために存在するのか?」というところをしっかりと伝えています。

それは先ほどお伝えしたパーパスや「そもそも管理職としてどういう考え方でやっていけばいいのか?」というところですね。(スライドを示して)ここに書いてあるとおり、例えば「部下を愛する努力をするのは、上司のマナーである」という考え方や「人の成長を楽しもう」。要は、結果が出て成長したら、妬んでしまったりということもあるんですけども。それを「むしろ楽しむ」というかたちで、スキルよりはまずマインドのところを徹底的に理解をさせていくということを、DOJOの中でも徹底しています。



「私たちはパーパスを達成するために、どういうマネジメント像が必要なのか?」。「そもそもマネージャーって何をすることなのか?」。こういったところを落とし込んでいくことでエンゲージメントを高めるようなアプローチができているので、弊社の場合だと、すぐに離脱する方は、なかなかいません。というのが、実際の事例です。

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