PR2025.11.27
数理最適化のエキスパートが断言「AIブームで見落とされがちな重要技術」 1,300社が導入した「演繹的AI」が意思決定を変える
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小室淑恵氏:私が特におもしろいと思ったものを(スライドに)2個貼っておきましたが、アメリカの企業を対象に、平均睡眠時間と特許出願数などのイノベーション指標を比較したら、平均睡眠時間が少ない地域の企業では特許出願数が顕著に低くなるというデータが出ました。
また、睡眠不足の状態でプログラミングのタスクをさせた時、睡眠不足グループは実装の品質が約50パーセント下がるというデータが出ました。ソースも書いておきましたので、エビデンスが必要だよと言われたらこのあたりを示していただければと思います。
自戒のためにも人に説明するためにも、主なメカニズムとしてこの4点をぜひみなさんも持っておかれるといいかなと思います。
成果を出すハードワーク、勝てるための成果を出す時に重要になるのが1つ目なんですが、記憶の整理と定着です。睡眠中には、学習した不要な情報の除去や重要な情報の固定化が起きて、アイデア同士の関連付けや過去の経験との結びつきが強化され、新しい発明や発想の土台になる。
これはどういうことかというと、ギューッと考えて電球が出るみたいにポンッと発明するというイメージがあると思うんですが、ギューッと考えて睡眠を取り、もう1回次にギューッと考えた時にポンッと発明が出ているんですね。
なので、実は「考える、睡眠、考える」というふうに間に睡眠が入っていないと発明が出てこないので、実は睡眠こそが重要だった。睡眠を削ってギューッと考え続けたら、ポン(発明)は出てこなかったということなんですよね。
こういった部分のメカニズムを知らないと、がむしゃらにただただ考え続ける。「企画を明日の朝までに100個」みたいになるわけですが、それじゃあ(アイデアは)出てこないよということです。
そして2つ目が拡散的思考です。特に眠り始めの浅い睡眠段階の時に、通常の覚醒時とは違う思考パターンが訪れて、それがひらめきになる。3つ目が、創造性を支える注意力・集中力は睡眠によってもたらされるということ。
そして4つ目が、感情の調整とストレス軽減。ネガティブな感情が睡眠によって軽減されていく。これは後ほどしっかりお話ししたいと思いますが、この4つが主なメカニズムなんだよということを知っておいてください。
私が睡眠に関して検証をやっているデータもいくつか貼っておきました。人間の脳は朝起きてからたった13時間しか集中力がもたず、緑の点線のところが酒気帯び運転ラインなんですが、これを超えると酒酔い運転と同じ集中力しかないことがわかっている。
朝起きて13時間ということは、だいたい5時から6時に起きた人は、夕方6時から7時になったら酒を飲みに行ったほうがいい時間ということなんですよね。
そして慢性疲労研究センターの佐々木司センター長によると、睡眠は寝始めてから6時間目までが体の疲れを取りますが、ほとんどの方は6時間目以降はラスト・ワンアワーだと思います。この1時間が脳のストレス解消をしていくので、メンタルタフネスを保つためには7時間以上寝ることが非常に重要です。
重要な仕事をする人はメンタルが非常に重要になってきますから、7時間の睡眠をキープすることこそが重要なんだよということです。
そして、脳の真ん中の部分にあるところを「扁桃体」と言うんですけれども、ここは怒りの発生源です。睡眠不足になるとここが肥大化して、怒りやすく、キレやすくなってしまうので、パワハラ、セクハラ、不祥事等、モラル崩壊の引き金となってきます。
これは『ウォール・ストリート・ジャーナル』に掲載された論文データですけれども、睡眠不足の上司ほど部下に侮辱的な言葉を使うというデータが出ています。
夜間の睡眠不足は「自我消耗」と言って、自分をコントロールできなくなる状態が起きます。「部下の一定の口癖が気になり過ぎて怒鳴りつける」みたいな行動が起きてしまい、最終的には日常的な部下のワーク・エンゲージメントの低下をもたらしてしまう。
よく見せかけの働き方改革をやる企業があるんですが、従業員の残業時間を減らすために上司が巻き取るっていうのがよくありますよね。それをしてしまうと上司がより怒って、より部下のワーク・エンゲージメントが下がり、また優秀な人が離職して上司の仕事が増える。こんな悪循環になってしまうよということです。
また、成長して上位の職位に就いていきたいビジネスパーソンの方ほど睡眠を大事にし、自分が自我消耗状態に陥らないようにすること、どんな時にも部下と安定的なコミュニケーションをしっかりとしていくことが重要になっていきます。
そして現役時代に6時間以下の睡眠を続けた方は、定年後に認知症になるリスクがなんと1.3倍です。ちなみに私が役員クラスのみなさんに「あなたも寝ないとダメだよ」と言う時には、このデータを使っています。そう言うと、「俺は最近もう寝られないからいいんだ」みたいに言っていた人も、「寝なきゃ!」って言い始めます。どの世代も睡眠が大事です。
また、アメリカのカリフォルニア大学のマシュー・ウォーカー氏の研究によると、睡眠不足の人の脳では(スライド左側の)青い部分が動かなくなっていました。
この青い部分は、他人がどんな助けを求めているのかを察知して助けに動くという、他者支援行動に動く部分なんですけれども、睡眠が少ない職場ほど他者支援行動が少なかったことがわかっています。
アメリカではサマータイムに睡眠時間が1時間減る週があります。その週に、なんと寄付額が10パーセント減るということがわかっていたんですね。最大の他者支援行動である寄付額が1割減るぐらい、心が狭くなるのが睡眠不足なんです。
例えばみなさんがスタートアップ企業の幹部といった場合には、上場の直前にはこんなことになってしまって、お互いがお互いを責め合うみたいな大変なことになります。なので、どんな時にもお互いの睡眠時間がキープできているかどうかをシビアに見ながら、運営していくことが重要ではないかなと思います。
慶應義塾大学の山本勲教授が700社の上場企業を調べたデータによると、睡眠が短い企業よりも長い企業のほうがROS(売上高経常利益率)が高く、それは1年後も2年後も継続していて、2年後はもっと差が開いていたということです。
また、私が一番驚いたのがこれだったんですが、縦軸が国民の平均睡眠時間で、横軸が国民1人当たりが稼ぎ出しているGDPです。各国と比較したところ、なんと相関関係にあったということです。ただの相関なんですけれども興味深いですね。日本はこんな異常値みたいなところにありますが、寝ていないわりにはがんばっているということですね(笑)。
寝ないでがんばれる体質とも言えるんですが、そんな日本があと1時間寝たらもしかしてここ(グラフ中央の小さい赤丸)なのかなと思うと、GDP倍増計画だねというふうになります。
睡眠をシビアに調べている他国では、実は睡眠って国家戦略なんですね。ワーク・エンゲージメントやメンタル疾患の低下、過労死・過労自殺を防止していく。こういったことを含めて、いかに全国民が持続可能に生産性を上げていく国を作るかということが、睡眠で非常に図られているんです。
そして最後の項目です。「人生の幸福度やお金だけではない報酬、成功って何か?」ということを考える時に、必ずしも妻・夫だけではないさまざまなパートナーがいると思いますが、自分1人単位だけではなくてパートナー単位で見ていくことが大事かなと思います。
「あの時の無茶が成功の土台を作った」の陰に、「あの時の無茶で多くを失った」説があります。もしくは「あの時の無茶で自分はたまたま死ななかったから役員にいます」というだけの、いわゆる生存者バイアスみたいなものがあることにも気づいていけたらなと思って、いくつかのデータを示してみました。
今日は若い方にたくさん受講していただいているので、まさに今、その局面にいらっしゃるかなと思うんですが、産後の妻の死因の1位はなんと自殺であることをご存じでしょうか。出血死でも病死でもなく自殺です。そして、自殺の要因の背景にあるのが産後うつと言われています。
産後うつは、妊娠中に出ていた女性ホルモンが出産を機に一気に出なくなってしまい、短期間にホルモンバランスが狂うことによって、メンタル疾患が引き起こされます。「赤ちゃんがかわいいと思えない」「自分がすごくダメな母親だと思う」「夫を激しく攻撃してしまう」というような現象が起きてきます。
ただ、これは産後2週間から1ヶ月半がピークであり、その時期にまとまった7時間睡眠を取ることができるとホルモンバランスが整ってくる。それによって、自分でもコントロールできないようなものすごく強い怒りで苦しくなっていたのが軽減されてくるということです。
ただ、産後に7時間の睡眠を取れるというのはどういう状況ですか? だって、産後は2時間置きの授乳がありますよね。ですから、たった1人で育児をしていたら絶対に7時間の睡眠を取れないわけです。それを可能にするのが、夜に交代で育児をする夫の存在があるかどうかです。
でも、明日は仕事があるという夫に夜中の育児を代わってもらって、もし明日何か大きなミスが起きたらいけないと思うので、なかなか頼めません。そこで、「明日も仕事は休みだよ」というふうに、男性がまとまった単位で育児休業を取ってくれることによって、初めて交代交代で一緒になって育児をすることができるわけです。
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