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基調講演(全5記事)

時間外労働を“強制終了”したら生産性が驚くほどアップ “起業から20年間残業ゼロ”の社長が語る働き方改革

【3行要約】
・長時間労働が“勝ちパターン”とされていた時代は終わり、人口減少社会において従来の働き方では限界があります。
・3,000社の働き方改革を支援してきた小室淑恵氏は、日本が人口ボーナス期から人口オーナス期に移行し、不眠不休で成功した時代は終わったと分析。
・企業は個人の時間外労働への依存から脱却し、チーム全体で時間内に成果を上げる仕組み作りと人材育成に注力する必要があります。

高市総理の発言でも話題となった「ワーク・ライフ・バランス」

大畑愼護氏(以下、大畑):「もう睡眠不足自慢はカッコわるい! “がむしゃら”から“戦略的情熱”へシフトする『持続可能なハードワーク』とは?」というテーマで無料オンラインセミナーを開催いたします。よろしくお願いします。

今日は大きく2本立てになっております。「“がむしゃら”から“戦略的情熱”へシフトする『持続可能なハードワーク』とは?」というのを、弊社の代表の小室からお話ししていただきます。

その後はパネルディスカッションがあり、株式会社TAZ 代表取締役社長、株式会社ジーンクエスト取締役ファウンダーの高橋祥子さん、株式会社Cradle 執行役員CROの留目広志さんを招きます。ベンチャーの最前線で活躍してくださっているお二方なので、「持続可能なハードワークとは何なのか?」を徹底的に議論していただく時間を設けております。

新総理が決まって、「ワーク・ライフ・バランス」というキーワードが奇しくもトレンド入りし、SNSの中でも働き方について語ったり、非常に考えていく週末になったんじゃないかなと思っております。そこからのイベント開催なので、なんとタイミングのいいシンポジウムなんでしょう、というところでしょうか。

今日、全体の進行とモデレーターを務めさせていただくのは、株式会社ワーク・ライフバランスの大畑慎護と申します。どうぞよろしくお願いいたします。ワーク・ライフバランス社では組織や企業に対して、労働時間を短くして以前より成果を上げていく、生産性向上の支援をしています。

これまでは製造業や金融であったり、あとは「2024年問題」のところで言うと、建設現場に伺ったり病院の先生の働き方にも携わっております。幅広い業種でたくさんの働き方を見てきており、そんなコンサルの仕事をしております。

そしてもう1つの軸としては、男性の育児休業や育児と仕事の両立というところで、厚生労働省の「共育プロジェクト」で推進委員をして、職場の脱ワンオペを推進し始めたりしています。あとは和歌山県庁の非常勤職員として、和歌山県内でも中小企業に対して同じようなテーマでやっております。

男性の育休取得をもっと当たり前に

大畑:そして(自己紹介文の)一番下に「企業型プレパパセミナー」と書いてあるんですけれども、男性の育児休業の取得率が40.5パーセントになりましたね。(男性の育児休業の取得を)より当たり前の選択肢にするということで、企業内で「父親学級」というものをやっているんです。

立ち上げ当初は70名ぐらいしか集まらなかったんですが、今では各回に400名から600名が参加してくれるような、企業型のプレパパセミナーの講師もやっております。回を重ねるごとに社会の変化も非常に感じているところです。

プライベートのところで言うと、3人の子どもの父親です。第三子の時は1年間の育児休業を取得して、家族5人でフィジーという国に移住して子育てをして、子どもと向き合っていたことがありました。そこで父親が家庭に関わることの重要さを非常にじっくりと考えてきましたし、今思えば、ここから「持続可能なハードワークとは?」というテーマが自分の中では始まったんじゃないかなと思っております。

まだまだ家庭を大切にしながらも挑戦したい、そしてスキルを得て社会に還元していきたいと、いちビジネスパーソンとしてみなさまと一緒に学んでいけたらと思っております。今日はどうぞよろしくお願いします。

それではお待たせしました。まずは基調講演ですね。弊社代表の小室からの講演をお願いします。小室さん、お願いします。

小室淑恵氏(以下、小室):みなさん、こんにちは。今日はどうぞよろしくお願いいたします。紹介いただきました、今日の時間を企画したワーク・ライフバランスの小室です。

(高市総理の話題で)ちょっとタイムリーな動きがありましたけれども、今日は若手の方たちのお申し込みがふだんよりも大変多いんですが、マネジメントクラスの方や経営層の方にもたくさんお申し込みをいただいています。

「時間外(労働)をもっとやりたいと言っている部下にはどうしたらいい?」というご質問をすごくいただきます。それから、私は直接は聞いたことはないんですが、「もっと成長したいのに、時間外(労働)ができないと成長ができない」というお悩みが多いんだという話なんですね。それって構造上ではどういう解説ができるんだろうか? というところが今日の大きなテーマになっております。

時間外労働を“強制終了”してから生産性がアップ

小室:今日は初めてうちのセミナーに参加していただく方がとっても多いので、私自身の自己紹介もさせていただきます。2006年に起業しまして、今までの20年間で3,000社の企業の働き方改革の支援をしてきた者です。前職は資生堂に7年半勤めておりました。

子どもが生まれる前は自分も長時間労働の経験があります。ですが、私の場合は強制的にというか、(右上の写真の)いが栗坊主君が長男で今は19歳なんですけれども、この長男を出産をした3週間後に起業しました。「なんでそのタイミングで?」というのは、話すとちょっと長くなっちゃうもんですから(笑)、ぜひ本か何かを読んでいただければと思います。

起業した時から時間制約付き社長です。年間200回の講演のご依頼をいただくんですが、秋田で講演しようと青森で講演しようと、18時15分には保育園の前に帰ってきていなければならない。人の命がかかっているので、1日8時間一本勝負で仕事をして今日までやってきております。

時間外労働をけっこうやっていた独身の頃、資生堂ってすごくいい会社なので、「帰れ、帰れ」と言ってくれる上司がいたんです。

ただ、そうするとパソコンを小脇に抱えて近くのカフェに移動して、眠くなるまでずっと(仕事を)やっているので、気づくと寝ちゃっていたみたいでした。横にレモン水をコンッて置かれるという経験を、1回や2回じゃなくいっぱいしていたんです。

そんな自分が時間外はもう仕事ができないと強制終了されてから、「自分の頭が良くなったのかな?」って思うぐらい、時間内での生産性が自分でびっくりするぐらい本当に上がりました。これってどういうことなのかな? なんていうのも、今日はお話ができればと思います。

時間内で成果を上げるには人材育成が肝

小室:34冊の書籍を出版をしているんですけれども、これも全部飛行機や新幹線の中で書いて、残業なしでやってきました。また、時間の中で成果を上げようとするなら、自分ができることをいかに徹底的に他のメンバーにできるように育成するか、人の育成が一番の肝だなということも感じました。

政府の委員は、今数えるとだいたいトータルで50回ぐらい就任しているかなと思います。私たちの会社はコンサルで儲けるのが目的ではなくて、その利益をもってして、政府とかなかなかコンサルが入れないような教員業界や病院に私たちのノウハウを提供して、社会をどうやって変えるかということが一番の目的の会社なんです。

そうやって全体を見る自分の考え方を社員にも徹底的にシェアしていって、今はうちの多くのコンサルタントが政府の委員に就任して、一緒になってやっております。

また、プレゼンテーションでは「TED 小室淑恵」で検索していただけたらと思うんですけれども、2012年頃にTEDに出演させていただいたものが、今も国内の再生回数トップ10に入っているそうです。

こんなふうにいろんな側面から知っていただければと思って、スライドもちょっと詳しめですが、また時間のある時にでも見ていただければと思います。企業の働き方改革を一筋でやってきた人間だということを自己紹介させていただきました。

世界の「ハードワーク」の概念はとっくに変化している

小室:本日はこの5つをお話ししようと思います。ちょっと細かめに文字で書いておいたのは、これを読んでいくだけでだいたい最短3分で今日の趣旨が語れるようにスライドを作っておいたつもりです。

1つ目に、世界のハードワークの概念はとっくに変わっていたということを知りましょう。そして2つ目に、体力的なハードワークではなく思考のハードワークはどうやってやるのか、その重要なカギは何か。また、家事労働や育児について思考を広げていきましょう。

よく「あの時の無茶が自分の今の成功の土台を作ったんだ」って言う人がいるんですが、あの時の無茶で多くを失っているのに気づいていないということもけっこうあります。気づかないから今は「成功している」って思っているわけなんですが、そんな話をします。

まずは1つ目から3つ目までをお話しして、ディスカッションパートに入っていきたいと思いますが、最後に少しまだ時間があれば4つ目と5つ目もお話しします。

4つ目は、全員が時間内で成果を上げるようにするには、チームでどういうふうに仕事をしていったらいいのか。ディスカッションパートの高橋さんと留目さんのお話で聞けるかなとは思うんですが、少し補足ができればというところです。

5つ目です。この人口減の国で、今よく言われるような「時間外労働がしたい」とか「もっと稼ぎたい」と言う人に、「もっと働けるような労働基準法に変えたらいいんじゃない?」と言うのは何が危ないのか。こういったところを少しご紹介できればなと思っております。

「寝ずに働く企業が勝つ時代」からの変遷

小室:では、最初のパートの「世界のハードワークの概念はどうして変わってきているんだろうか?」というところを解説してまいりたいと思います。まずはみなさんに、日本にも寝ずに働く企業が勝つ時代が確かにあったんです、ということをご紹介しておきたいと思います。

そういうものを「人口ボーナス期」というふうに言うんですけれども、日本で言うと1960年代から1990年代です。何が特徴なのかというと、若者がたっぷりいて、高齢者はちょっとしかいない。この人口の構造がその国にボーナスをくれるような、大変おいしい時期を人口ボーナス期と言います。

とにかくたくさんの人口で、ちょっとの高齢者を背負うんですね。働く側がたくさんいるわけです。言い方はあれですが、こういう社会は誰がやっても成功するみたいな感じで、経済成長して当たり前の時期が1つの国に一度だけ来ます。逆に言うと、一度終わった国には二度と来ないんです。

日本では、この若者たっぷり人口時代が1960年代から1990年代でした。みなさん、もうちょっと気づきましたよね。日本が高度経済成長した時期とバチッとはまるんです。

日本は、団塊世代が朝早くから夜遅くまで不眠不休に耐えてがんばってくれたから経済成長した、というメンタリティが今の日本社会にはすごくあるんですけれども、「ごめんなさい。人口比率のせいです」というのが非常にシンプルな答えです。

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