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【レポート返却で終わりにしない】360度フィードバックを行動につなげる3つのステップ ~質問設計・事前ガイダンス・結果共有の実践方法~(全3記事)

360度フィードバックは“育成支援にのみ”使うべき 人事評価に使うと起こるデメリット

【3行要約】
・360度フィードバックは多角的な視点から行動評価を得られる手法ですが、適切な運用がなければ職場の軋轢を生む恐れもあります。
・組織開発を行うWillMap株式会社代表の柿沼氏は、360度フィードバックは人事評価と切り離した育成目的の活用が有効だと提言します。
・マネジメント行動の効果を可視化するために、設問設計から結果共有まで一貫したプロセスで実施し、具体的なアクションプランに落とし込みましょう。

360度フィードバックを行動につなげる3つのステップ

柿沼昌吾氏:今回は「360度フィードバックの効果的運用法」を3つのステップで解説します。主には質問設計と事前ガイダンス、本人への結果共有について進めていきたいと思っています。

本日の内容は4つです。そもそも360度フィードバックとは何か。2番目としてその効果。3番目が事前準備の仕方で、設問設計、事前ガイダンスについて主にご説明します。4番目が成長支援として、結果をどう共有していくかをご説明します。

私、WillMapの代表を務めております、柿沼と申します。キャリアとしては、1995年にソニー系の半導体の商社に入社しまして、人事担当を10年間やっておりました。その後、外資系のコンサルティングファームに移って組織開発を17年支援してきたというところになります。

私は360度フィードバックにけっこう思い入れがあります。人事担当だった20代の時、360度の担当者になりました。あるベンダーさんを使って管理職向けに実施したんですよね。ある管理職の方が、部下1人だけ、すごく低いレートをつけたということで、かなり憤りを感じられていました。

その管理職が何を思ったか、低い点数をつけた部下を探し始めたんですね。それが私の同期でして、結局バレてしまいました。その後、その管理職からけっこう当たりがきつくなってきたそうで、同期から「あれって育成のためにやっているんだよね。でもぜんぜんそうなっていないじゃん。自分が問い詰められるような状況でいいの?」と、かなり私自身が責め立てられました。

内面や能力ではなく、行動を計測する

その時から、360度をより効果的にやっていくにはどうしたらいいか、ずっと問題意識を持ってきました。その後、外資系コンサルティングファームに移って、360度をやる機会がよくあり、ノウハウが溜まってきたので、今日はそれをご紹介します。

最初に、360度フィードバックとは何か。定義としては、上司と部下と同僚、複数人から対象者、主に管理職になると思いますが、内面とか能力ではなく、あくまでもふだんの行動について定量的・定性的に回答してもらい、結果をまとめてレポート化します。それを対象者と共有するというものです。

レポートの例として、よく私と連携させていただくベンダーさんがいるんですが、そのレポートを使わせていただいています。効果としては、本人の成長はもちろんのこと、組織内の関係性の向上につなげていくものと考えております。

本セミナーでの用語の定義を抑えさせていただきます。360度フィードバックは、先ほど申し上げた通りの定義になるかなと思います。(次に)対象者は被評価者、360度フィードバックにおける評価される側ですね。今回は主に管理職を想定しております。回答者は評価者ですね。同僚とか部下とか上司。周りにいる関係者になります。結果レポートは対象者向けのレポートを、結果レポートという風に呼ばさせていただきます。

人事評価ではなく育成に特化して活用する

360度フィードバックは人事評価で使うべきか、育成支援かという議論もあると思います。ツールの機能としてはどちらでも使えるんですよね。ただ私は、360度フィードバックはあくまでも育成支援に特化して使うべきだと考えております。

その理由として、360度を人事評価とか報酬・処遇に結びつけてしまうと、こんなデメリットがあります。問題点としては、結果が報酬や給与に結びつくと考えた時に、対象者はやはりその結果を受け入れがたくなってしまうことが往々にしてあります。素直に自己内省に向かなくなるんですよね。

「この結果に本当に信憑性があるのか」とか、先ほどの管理職の例じゃないですけれども、部下に対して厳しい当たりになるなど、そういった行動に出るケースがけっこうあったりします。素直に受け入れてもらうという観点で言うと、やはり育成支援で使うべきかなと思います。

もう1つあって、ルールを破って自己評価を上げようとするケースも出てきます。報酬に結びつくので、対象者同士で結託して、お互いに良い評価をつけようとか。あと、部下に事前にアプローチして「ちょっと良い評価つけてね」と言っておくとか。なので処遇には関係なく、今回は育成支援でやりますよと謳ったほうが、データも信頼性が上がりますし、その結果も対象者にとって受け入れやすいものになってきます。

事前・事後のフォローで大きく意識が変わる

もう1つお伝えしたいところで、ある360度のコンサルティングファームが調査した結果をご紹介します。2023年に管理職の方々723名にアンケートを取ったものです。設問としては、対象者として360度フィードバックに意義を感じるかどうか。

全体としては51パーセント、半分の人は360度をやって良かったと感じていらっしゃるのかなと思います。ただ、事前・事後で何らかの施策を受けた人、例えばアンケートや研修、コーチング、結果の読み解きフォローなどですね。

そういった施策を受けている方で言うと、意義を感じている人はぐっと上がって75パーセントです。(逆に)何にも施策を受けていない人は、結果レポートをもらってもやはり意義を感じにくいんですね。これが25パーセントです。そういったところで、360度フィードバックは事前・事後のフォローアップ、何らかの施策が非常に重要になってくるのかなと感じております。

理想としてはどういう流れがいいのか。まず事前準備としては、設問設計をきちっとしていく。ここは後で詳しく説明します。そして事前ガイダンスをやって、その上で360度を実施します。結果が出た時に、外部支援者でも人事担当でもいいと思うんですけれども、1対1もしくは集合研修で結果を読み解く機会を設ける。

そこでアクションプラン、今後どうしていきたいかというのを作って、その後進捗フォロー。ここは職場支援でもいいですし、コーチングをやってもいいかなと思っております。進捗フォローがあった上で、成長確認ということで360度の2回目を実施し、1回目と2回目でどう変わったかを見ていくというのが理想かなと思います。

“気づいていない自分”を理解できる

では、360度の効果についてお話に入ります。効果は3つあります。「職場関係性の向上」と「マネジメント力の強化」、そして「部下のフォロワーシップの醸成」です。

まず、職場関係性の向上から。みなさん、見たことがある方も多いと思うんですけど、「ジョハリの窓」というフレームがあります。自分自身を理解して、人間関係やコミュニケーションを円滑にするために考案されたフレームワークですよね。この四角の中が自分の内面だとした時に、4つに分けられます。

自分が知っている領域か、自分が知らない領域か。他人が知っているのか、他人が知らないのか。この(左上の)、自分が知っていて他人も知っている「開放の領域」ですね。「自分はこういう性格です」とか「まわりからもそう思われていますよ」とかが「開放の領域」になるんですけども。これをどんどん広げていくことが、人間関係を良くする上で非常に重要です。

どう広げていくかというと、まずは他人は知っているけれども自分は知らない領域ってあると思うんですよね。言われてみないとわからないとか。

その「盲点の領域」を開放の領域にしていきます。あるいは、自分は知っているけど他人にはあまり言っていない「秘密の領域」。そういうのはどんどん自己開示して広げていくことで、お互いの関係性が深まっていくと言われています。これを360度を使ってやっていきましょうというのが今日のお話です。

職場関係性の向上効果

もうちょっと具体的に言うと、対象者にとって「ジョハリの窓」を使ってどういう風に「開放の領域」が広がるかなんですけども、主には「盲点の領域」に向かって拡大していきます。

360度フィードバックをもらうことによって、自分は知らなかったけど「こんなふうに思われていたのか」「こんな行動を発揮していたのか」という気づきになります。回答者にとっては、対象者について知っているけど伝えられていない「秘密の領域」を、評価によって伝えられます。あとは定性コメントで「この機会にふだん感じていることを書いてみようか」と、あらためて感謝の気持ちを伝えるのもいいでしょう。そういったことによって、お互いの関係性が深まるきっかけになると思います。それが「職場関係性の向上」での、360度の効果になります。

もう1つはマネジメント力強化ですね。図をお見せします。いろんな会社にある機能は、(業務の)レベル向上のために、アウトプット先からのフィードバックが非常に重要になってきます。例えば会計であれば、いろいろな事業活動があって売上利益が生まれて、経理からその結果のフィードバックもらって、今後の事業戦略をどうするかを考えていきます。

品質分野で言えば、歩留まり率とかですね。マーケティングで言えばコンバージョン率とか色々あると思うんですよね。そういった結果指標があって、自分たちの機能をどう高めていくかがわかると思うんですよね。

マネジメントの機能は、そのフィードバックをなかなかシャープに受け取れないところがあります。

マネジメントの改善策がわかる

マネージャーがマネジメントで職場システムにアプローチして、そこから部下とか同僚が影響を受けて行動に移って、組織の業績になっていくというフローがあるかなという風に思います。

営業であれば売上利益とか上司からのフィードバックで結果を知りますが、それを見ても具体的に自分をどう変えたらいいのか分からなかったり、上司の主観でしかない場合もあるので、正確に自分の課題として受け取りにくいことがあります。

ですから、そのもう少し前の、(対象者が与える)職場への影響。部下がどういう影響を受けているのかをきちんと把握して、自分のマネジメントアプローチを変えていくことが非常に重要です。

特に部下はリーダーシップの受け手ですので、そのマネージャーがどういう行動をとって、自分がどういう影響を受けているかを非常に敏感に察知しています。それをフィードバックしてあげることによって、マネージャーは成長にとって良い情報が得られます。

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