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【レポート返却で終わりにしない】360度フィードバックを行動につなげる3つのステップ ~質問設計・事前ガイダンス・結果共有の実践方法~(全3記事)

部下の評価コメントには「強み・課題・メッセージ」を書く 社員の行動を促す360度フィードバックのコツ [2/2]

設問の考え方のヒント

じゃあ、その網羅性をどうやっていくのかというところから入っていきます。これは1つのやりかたではあるのですが、担当者同士で、マネージャーに必要な行動特性をポストイットなどでどんどん出していくといいと思います。その中で(出てきたものを)「これってリーダーシップだよね」「これはチームビルディングだよね」とカテゴライズします。いわゆる親和図と言うものですけども。

これを大枠で見ていくと、どんな項目も「対人関係」「業務推進」のどちらかで括れると思うんですね。そのバランスが整えられているかをチェックしていくという進め方があるかと思います。

次は「階層特性」になります。この縦軸が時間軸、視座ですね。横軸が影響範囲。部下の人数と捉えていただいてもいいかなと思います。そうすると課長クラスは部下の人数もまだまだ少ないですから、視座もどちらかというと短期で、「売上利益をどう達成していくか」などがメインになってきます。

部長はもうちょっと上の軸になります。経営幹部になると中長期のビジョンやリスクマネジメントなど、かなり長期の視座になってきますし、管轄する部下も多く、直接的な部下も部長クラスになってくるので、課長とは違うマネジメントが求められます。これを頭に入れておきながら、対象となるマネージャー層がどこなのかというところで、設問を分けていくこともポイントです。

会社のビジョンを質問に反映させる

あとは3番目、会社の独自性ですね。会社のビジョンを質問に反映させることも、ぜひご検討いただくといいかなと思っています。

これはある大手企業の創業の精神ですが、「易きになじまず難きにつく」。求める人物像として「選択肢が2つあったら難しいほうを選択しましょう」ということを謳っている有名な言葉があります。こういうものを360度に反映させたりするといいのかなと思います。特にコアバリューをどう設問に反映して、マネジメント層に意識づけるかということもできると思います。

この3つの観点で設問設計していくといいんじゃないかというところですね。
事前準備のもう1つ、事前ガイダンスです。これは非常に重要な部分で、60分程度、回答者と対象者の全員を集めてやるのがいいと思います。目的は、回答者に360度フィードバックの目的をちゃんと理解してもらうことが重要です。

(つまり、)ふだん感じている課題や不満をぶつけるためのものではないということですね。特に部下が辛辣なコメントをぶつけて、ふだんの不満を解消するような機会に使ってしまうケースもあるんです。そうではなく、先ほどのフォロワーシップの話にもあった通り、組織を良くするために、対象者にどう変わってもらうといいのかという観点のレーティングや記述回答だと意識づけることがポイントです。

フリーコメントの書き方例も共有する

具体的にどういうふうに説明するのかも含めて説明していきます。

特にポイントとなるのがフリーコメントの聞き方です。聞き方というのは、質問の内容ですね。フリーコメントは対象者に大きな気づきを与える一方で、大きく自信を失わせてしまうこともあるので、聞き方を工夫する必要があります。推奨としては、大きく3つ聞くといいかなと思っています。「強み」「課題」「メッセージ」です。

「強み」は、対象者の強みと思われる行動は何か。「課題」は、「弱みを記述してください」と言うと辛辣なコメントになる可能性があるので、「今後挑戦してもらいたい行動は何ですか」みたいな聞き方がいいと思います。そうすると建設的なコメントが出てきやすいです。

最後に「メッセージ」として、ふだんの感謝や激励の言葉を記入してもらうと、先ほどの「ジョハリの窓」の話で、関係性が良くなるきっかけになる可能性があります。

事前説明会で、このフリーコメントの書き方も共有してあげるといいでしょう。まず「強み」は、ぜひいっぱい伝えてあげていただきたいです。

具体的に書いて、その強みによってどういう良い影響が出ているかも書いてあげるといいと思います。強みを伸ばすための提案なんかも書いてみるといいんじゃないかと、説明会ではよく言っています。

その方が自信を持ってさらに強みを発揮してもらうきっかけになりますし、その後の「課題」をきちんと受け入れてもらうための心の余裕を作ってもらう効果もあります。本丸は課題をちゃんと受け入れてもらうことなので、その前座として強みをちゃんと書いていただくことも重要です。

強みと提案をセットにして行動を促す

記入例をちょっとご紹介しますと、「社内の商品企画のプレゼンで、わかりやすく論理的に説明されています」と。具体的でいいですよね。

「持ち前の情報収集力を活かしながら質疑にも確実に答えられ、短時間で社内のコンセンサスを得ています」。これ、影響も書いてるのですばらしいですよね。

ここで終わらずに、さらに提案として、「今後は蓄積したプレゼン力のノウハウを使って、外部のセミナーなんかも開催していただくといいんじゃないか」と提案しています。

ここまで書くと、その方の強みが具体的にわかりますし、提案があると次の行動に移しやすくなるということですね。

(次に)事前説明会では「課題」の書き方についても説明されるといいと思います。目的は、周囲が気づいている、対象者にぜひ知ってほしい課題をどう効果的に伝えるかです。

組織をさらに良くするために、対象者に提案できる機会として使うことができます。部下にとってはフォロワーシップ発揮のいい機会です。これも具体的に伝えるのがポイントですし、「Iメッセージ」を使うといいと思います。

「あなたはここが課題なので直すべき」と書くと、いくら管理職でも「ウッ」ときますよね。そうではなく、アイ、私ですね。「私はあなたにこうしてもらうと非常にありがたいです」と書くと、同じことを言っても受け入れられやすくなります。

「ここが悪い」だけで終わらせないことが重要

(スライドで)記入例としてはこんな感じですね。「会議や打ち合わせでさまざまな情報を提供や指導いただき、大変参考になってます」。

非常に気を使って、良い部分をまず書いてますよね。「もう少しメンバーの発言をする機会を設けてもらうとありがたいです」。

これはIメッセージですね。「それによって会議が活性化しますし、メンバーが持っているアイデアも共有されて、業務改善につながっていくと思います」。効果も書いてるというところで、すばらしいかなと思います。

こうしたガイダンスをしないと、「ここが悪い」だけで終わってしまうケースがあるので、ここまで説明すると建設的なコメントが出て、対象者にとっても受け入れやすくなり、行動につながりやすくなります。

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