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これでイイのか⁈ 「消去法な管理職選び」 webセミナー(全3記事)

管理職候補を「性格」で選ぶ時代は終わった “将来的に伸びる人材”を見極めるポイント

【3行要約】
・「管理職っぽい性格」という曖昧な基準で昇進を決める企業がありますが、実は管理職に向く性格タイプは存在しません。
・心理学の研究から、管理職は状況に応じて求められる行動が異なるため、性格ではなく「影響力」や「行動特性」で判断すべきだと明らかになっています。
・企業は自社に必要なコンピテンシーを言語化し、評価基準に落とし込むことで、「動機」と「反応の柔軟性」を持つ人材を管理職候補として育成すべきです。

前回の記事はこちら

“管理職向きの性格タイプ”は存在しない

髙桑由樹氏:ここまでを踏まえて、次は2つ目の章「管理職候補者の見極め方」に入ります。最初にお伝えしたいのは、「性格で管理職を選ぶことはできない」ということです。

よく「次は誰を管理職にしようか」という話になると、「あの人は管理職っぽい性格じゃないよね」とか、「彼は性格的に合いそうだ」といった会話が出てきます。しかし、結論から言うと、性格は管理職選抜の判断材料にはなりません。

理由はシンプルで、管理職の役割は会社によって異なるからです。ただし共通して言えるのは、「目標の達成に向けて、相手や周囲に影響を与えること」が求められる点です。つまり、“影響力を発揮できるかどうか”が管理職の基礎的な適性になります。

この“影響を及ぼす力”については、心理学の分野でも古くから研究が続けられています。そこで明らかになっているのは、「管理職に向いている特定の性格タイプは存在しない」ということです。

なぜなら、管理職は状況や相手に応じて求められる行動がまったく異なるからです。ある場面では冷静な判断力が求められ、別の場面では積極的なリーダーシップが必要になる。1つの性格傾向ですべての状況に対応できるわけではありません。

実務の観点で言えば、管理職候補者を選ぶ際に性格を基準とすることは適切ではありません。あくまで、どのように影響を及ぼし、成果につなげられるか。その「行動特性」や「実際のパフォーマンス」をもとに見極めていく必要があるのです。

活躍している管理職に共通する「行動特性」

では「どうするのか」という話に移ります。性格では管理職を絞り込めませんが、実際に活躍している管理職には共通する“行動”があります。ここが登用や育成の出発点になります。優秀な管理職の行動特性をひもといていくと、登用基準や育成方法の設計につながっていきます。

この行動特性は、英語では「コンピテンシー(Competency)」とも呼ばれます。多くの会社の人事評価制度にも出てくる言葉で、耳にされたことのある方も多いと思います。ただし、「行動特性って何を指すのか」「どう見ればいいのか」が曖昧なまま使われていることも多いので、ここで整理します。

氷山の図を思い浮かべてください。

水面から上に出ている部分が、「目に見える言動」です。しかしその下には、“目に見えない層”が広がっています。例えば、知識やスキルといった理解の部分。さらに深い層には「自分はやればできる」といった自己イメージや自信があります。

加えて「物事を批判的に見がち」「楽観的に捉える」といった反応の癖もある。そして最も深い層には「成長したい」「評価されたい」「稼ぎたい」といった動機があります。

このように、行動はこれらの層が積み重なった結果として表に出てきます。目に見えるスキルや知識だけを真似しても、同じ成果は出せません。行動特性を理解するには、内面の構造まで見ていく必要があります。

また、「わかる」と「できる」は違います。知識を理解していても、自信がなければ行動に移せません。さらに「できる」ようになっても、必ずしも「やる」わけではありません。

実際にやるためには、前向きな反応の癖や、失われない動機が欠かせません。例えば、注意を受けた時に「ダメ出しされた」と受け取るか「伸びしろがある」と感じるかで行動は変わります。

したがって、行動特性を見極める際には、単に「知っている」「できる」ではなく、「実際に行動に移しているか」という点に注目する必要があります。目に見える行動の背後にある動機・癖・自信を含めて捉えることが、真に優れた管理職の行動特性を理解する第一歩になります。

管理職に適した行動特性とは

ここまでを踏まえると、「なるほど、行動特性で捉えるのか」というところまでは見えてきます。ただ、実際に行動特性とは何を指すのか、具体的にどう扱えばいいのかという疑問を持たれる方も多いと思います。

そこで参考までに、一般的に企業が社員に求めるコンピテンシー(行動特性)の例を紹介します。

達成志向、支援・育成、課題解決、創造性など、いくつも挙げられますが、注意が必要なのは、このコンピテンシーは組織によってまったく異なるという点です。事業内容や業界によって環境がぜんぜん違うため、求められる行動特性も当然違ってきます。

例えば、リモートワーク中心の会社であれば、誰にも見張られない中で成果を出すための自己管理が重要になります。一方、店舗で販売を行うような職場であれば、ホスピタリティや顧客対応力といった要素が欠かせません。

このように、すべての会社に共通するコンピテンシーというものは存在しません。自社にとって本当に大切な行動特性は何なのかを言語化していくことが、まず必要になります。

自社の人材から“未来の管理職”を育てるポイント

ここから3つ目の章、「未来の管理職をどう育てるか」に入ります。

これまでの話を整理すると、まず組織の方針があり、それに基づいて役割が決まり、役割に応じて求められる行動や適性が決まるという流れになります。つまり、「方針 → 役割 → 行動」という構造です。次は、それをどのようにして社員に身につけさせるか、という話です。結論から言えば、求める管理職の適性を「評価基準」に落とし込むことが重要になります。

人は「成長のためにやるべきだ」と頭ではわかっていても、なかなか行動には移せません。だからこそ、行動と評価を結びつける必要があります。「こういう行動を取れば評価される」という仕組みを明確にすることで、努力の方向性が定まり、行動が継続しやすくなります。

では、実際に自社のコンピテンシーを見つけたあと、それをどう評価基準に落とし込むのか。これは決して難しい話ではありません。3つのステップで整理することができます。

例えば、管理職の役割として「調整業務を担うこと」が自社では重要だとします。その場合、まず考えるべきは「調整業務を行ううえで、うちの会社ではどんな行動特性が求められるか」という点です。現時点で完璧にできていなくても、少なくとも登用の段階ではできるようになっていてほしい。この前提で必要なコンピテンシーを言語化していきます。

次に、そのコンピテンシーが備わっているかどうかを判断するための「行動」を定めます。例えば、問題解決力や交渉力を測るなら、どんな行動を取れていればその力があると見なせるのかを具体的に設定しておく。これが、体現度を推し量るための行動基準になります。

最後に、その行動基準をもとにA評価・B評価・C評価といった段階を設ける。これで1つの評価基準が完成します。

つまり、求める適性を評価に組み込み、育成と連動させる仕組みを作るということです。

職場における部下の「達成感」の測り方

ここで、先ほど登場した教育業のA社の事例を紹介します。

この会社では、管理職にとって「人材育成」が最も重要な役割だという結論に至りました。ただし、人材育成と一口に言っても、その内容によって求められるコンピテンシーは1つではありません。

A社ではまず「温情主義と厳格主義の使い分け」、つまりアメとムチの使い分けが必要だと定義しました。さらに、部下を伸ばすためには「達成感を与えること」も重要だと。

これを実現するには、育成計画をきちんと立て、実行していく力が求められるという結論になりました。結果として、この3つがA社における「人材育成」に必要な行動特性として整理されました。

例えば、この「達成感の体験」を評価基準に落とし込む場合を考えてみましょう。

達成感を部下に感じさせられているかどうかを測るために、まずどんな行動で判断するかを決めます。ここでは「到達可能な目標を設定し、部下に達成体験を多く積ませているか」という行動を指標にしました。これを上司と管理職候補者で事前にすり合わせ、日々の業務の中で実践してもらうというかたちです。

次に、評価基準を3段階で設定します。まずC評価「最低限」は、部下の課題にひもづいた業務をきちんと与えられているかどうか。伸ばしたいスキルを発揮できる業務を任せないと、部下は成長できません。

したがって、まずはその機会を提供できているかが最低限の基準です。B評価「及第点」は、部下が目標を達成し、成果を出し、自ら手応えを感じている状態です。そしてA評価「よくできている」は、部下が自らより高い目標を設定し、達成に向けて主体的に行動している状態です。部下が「もっとがんばりたい」と感じているかどうかがポイントになります。

このように、求めるコンピテンシーを具体的な行動と評価基準に落とし込むことで、評価の曖昧さをなくすことができます。「ここまでできていれば合格」「ここまで届いていなければ未達」といった判断軸を明確にすることが、育成と評価を結びつけるうえで重要です。

今スキルや知識が足りなくても管理職候補として問題ない理由

最後にまとめです。ここまで見てきたように、組織の方針から役割が決まり、それによって管理職に求められる適性も変わってきます。育成は評価基準に落とし込んで進めていくという流れでお話ししてきました。

ここで最後にお伝えしたいのは、管理職候補者を選ぶ時に「現時点の能力」で判断してしまうケースが多いということです。「あの人はまだ無理だろう」と今のスキルや知識だけで測ってしまうことがよくあります。

しかし、このコンピテンシーの構造で言えば、スキルや知識、あるいは自分に対するイメージは後から身につけていける要素です。ですから、現時点で足りていなくても、登用のタイミングやその後の育成で十分に伸ばしていけます。

この観点で見ると、今スキルが足りなくても管理職候補者として問題ないということになります。

一方で注目すべきは、動機と反応の癖です。まず動機の部分。見込みのある人材であっても、そもそも管理職になりたいと思っているのか、あるいは成長したいという意欲を持っているのかを確認することが大切です。

これは今の段階で「なりたくない」と言っている人でも、管理業務の内容を理解していないだけだったり、上司の姿を見て「大変そうだ」と感じているだけだったりします。実際に経験してみると見え方が変わることも多く、この動機も育っていく可能性があります。

そしてもう1つ、最も重要なのが「反応の癖」です。成長していくためには、「今の自分はまだ足りていない」と客観的に受け止め、あるべき姿に向かって自分を変えていける柔軟性が必要です。これがないと、アドバイスを素直に受け止められず、変化を拒んでしまう。結果として成長が止まり、管理職としては厳しくなります。

管理職候補者を見極める際には、まず「自分を変えられる柔軟性と素直さ」を最優先に見ることが大切です。この点を軸に選んでいけば、将来的に伸びる人材を適切に登用できるはずです。

以上で、今回のセミナーを終わります。ありがとうございました。

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