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これでイイのか⁈ 「消去法な管理職選び」 webセミナー(全3記事)

“オールラウンダー幻想”が管理職育成を難しくしている 「あれも」「これも」と期待する前に考える、自社の管理職に必要な3つの問い

【3行要約】
・管理職には多くの能力が求められると思われがちですが、実際には企業ごとに必要な役割は大きく異なります。
・教育業や製造業の事例では、2030年以降の事業展開を想定し、管理職に求められる役割を7つの要素から3つに絞り込みました。
・未来の事業環境から逆算して管理職の役割を定義することで、オールラウンダーでなく専門性を持つ人材育成が可能になります。

前回の記事はこちら

管理職に求められる7つの要素

髙桑由樹氏:後任の管理職を選ぶ際は人ではなく「役割」を基準にするという考え方を踏まえて、セミナーでは参加者のみなさまに「自社の管理職の役割」について考えていただきました。その前に、少し整理として私なりに管理職の役割を分類してみました。

管理職の役割は大きく3つにまとめられます。1つ目は、組織をまとめる「まとめ役」であること。2つ目は、部下への「指示・指導」を担うこと。そして3つ目が、業績に対して「責任を持つ」こと。この3点が、管理職として求められる基本的な役割になります。

まず、1つ目の「まとめ役」についてです。これは、計画を立てたり、仕組みを設計したりといった業務が該当します。例えば、オペレーションの設計や仕組み作り、部門間や個人間の調整といった“調整業務”がここに含まれます。

次に「部下の指示・指導」です。これは人材育成やリソース管理が中心になります。ヒト・モノ・カネを最適に配置しなければ、社員が十分に力を発揮できません。そのため、リソースを有効活用することも管理職の重要な役割になります。

そして3つ目の「業績に対する責任」では、成果を残すこと、そして会社に対して説明責任を果たすことが求められます。業績の形成と報告、この2点を担うことが、この領域の中心になります。

これらを細かく整理すると、全部で7つの要素に分けられます。ただし、管理職がこの7つすべてを担う必要はありません。会社の方針によって必要な役割は異なりますし、3つほどに絞って設計するケースも多いです。重要なのは、「どの役割をどのように担ってもらうのか」を明確にすることです。

自社の管理職に必要な役割を見極める3つの問い

この考え方をもとに、セミナーではまず教育業を営むA社さまに整理を行っていただきました。

最初の問いは、「次の管理職が組織運営を担うのはいつか」というものです。未来を見据えた質問ですね。A社さまでは、2030年前後から次世代の管理職が中心的な役割を担うだろうという見立てでした。西暦で見ると少し先のようですが、実際にはもうすぐそこに迫ったタイミングです。

次に、「その頃、事業内容はどう変化しているか」をうかがいました。A社さまは教育業を展開しており、人口減少によって市場縮小が見込まれる中で、「経営基盤を維持するために事業領域を拡大していきたい」と考えておられました。具体的には、既存事業に関連する分野を増やし、ワンストップで教育サービスを提供できる体制を整えていくという方向性です。

それを踏まえて3つ目の問い、「その時点で求められるスキルや経験は何か」については、A社さまでは「学術的な裏付けを持つサービスの開発が重要になる」という見立てが出ました。そのため、大学との連携を通じた新しい教育サービスの開発力が、今後の管理職に求められるスキルになるだろうというお話でした。

この整理を踏まえて、2030年から2050年にかけて管理職を担う人たちに求められる役割をさらに具体化してもらいました。先ほどの7分類のうち、A社さまでは「人材育成」「調整業務」「オペレーション設計」の3つが特に重視されました。

企業によって異なる管理職とプレイヤーの線引き

ここから各役割を深掘りしていく中で、部長、課長、プレイヤーそれぞれがどの程度責任を持つのかを整理してもらいました。例えば「人材育成」であれば、部長は一応関わるものの主担当ではないため△、課長が主担当として○、プレイヤーは育成される立場なので×といった具合です。

同様に、3つの役割すべてについて丸・三角・バツで整理してもらい、さらに「課長が担う具体的な役割」を言語化してもらいました。A社さまでは「理念に沿った行動や思考ができるように社員教育を行う」といった内容が挙げられ、単なる抽象論ではなく実務レベルまで具体化されていました。

このように整理を進めていくと、次の管理職に求められる役割が明確になります。同時に、課長とプレイヤーを比較することで「管理職とプレイヤーの違い」もはっきりと見えてきました。

A社さまの場合、管理職は新しい事業や事業ノウハウの設計を担う存在であり、一方のプレイヤーは利用者へのサービス提供や地域との接点を深める役割を担う、いわば外向きの広報的な立場と定義されました。

管理職は“設計”、プレイヤーは“広報”。このように役割の性質が明確に分かれることで、両者に求められるスキルや視点がまったく異なることが浮き彫りになりました。

また、先ほど設定した「2030年から2050年の事業環境」という前提を踏まえたことで、自社の管理職が今後どんな業務を担うべきかもより具体的に見えてきた、というのが参加者の方々の感想でした。

整理することで見える本当に必要な役割

続いて、製造業のB社さんについても同じように整理を行いました。

こちらの会社では、「次の管理職は2030年から2045年ごろに中心的な役割を担ってもらいたい」という想定でした。

その頃の事業内容としては、海外工場の立ち上げを計画しており、それに伴って製造業務や輸出業務が拡大する見込みとのことでした。つまり、事業領域が国内完結型から国際展開型へと広がり、製造管理や設備立ち上げ、輸送管理といった新しい業務領域が増えるということです。

では、そのような事業環境の変化を踏まえたときに、自部署に求められるスキルや経験は何か。B社さんからは、「海外拠点との円滑なコミュニケーション力」や「グローバルな視点での製造管理力」といったスキルが挙げられました。これまで国内中心だった体制とは異なる、新しい適性が求められるようになるという認識が共有されました。

その上で、管理職の役割を整理してもらうと、「計画設計」「人材育成」「リソース管理」の3つが特に重要だという結論に至りました。

ここまでを洗い出すと、管理職とプレイヤーの違いが明確になります。B社さんでは、管理職はプレイヤーよりも一歩先を見据えて“レールを敷く人”、一方のプレイヤーは“与えられた計画を実行し、PDCAを回す人”という整理がなされました。

管理職は“オールラウンダーである必要はない”

このプロセスを経てB社さんから出てきた声として、「現在の管理職に求められている役割と、今後求められる役割がまったく異なることが明確になった」という実感がありました。また、プレイヤーとして優秀な人をそのまま管理職に昇格させて良いのかという、従来の選抜基準を見直す必要性も浮き彫りになりました。

このように、参加企業のみなさまに管理職の役割を具体的に考えていただくことで、「次に誰を管理職にするか」という人選の前に、そもそも「管理職とはどんな役割を担う人なのか」を明確にすることの重要性が見えてきます。役割を分解していくと、7項目すべてを求める必要はなく、自社では3つで十分だったというケースも多く見られました。

つまり、管理職は“オールラウンダーである必要はない”ということです。どうしても管理職に対して「あれもできなくてはいけない」「これも必要だ」と期待を膨らませがちですが、役割を丁寧に分解すると、実際には限られた機能を担う専門的な立場であることがわかります。この視点を持つことで、より現実的で再現性のある人材育成が可能になります。

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