【3行要約】・仕事に対して自律レベルを高めるには、自分に合わせた「ジョブ・クラフティング」が重要ですが、多くの人は仕事を与えられるままに受け身で行っています。
・神谷俊氏は、現代の働き方において刺激や挑戦を生み出すためには、仕事内容や関わる人、意味づけを自分で調整することが効果的だと説明します。
・新人には上司が「ジョブ・デザイン」で仕事を見える化し、対話を通じて共に設計することで、自律性を高め、主体的に成長できる環境を作るべきです。
前回の記事はこちら 仕事を自分に合わせるのがジョブ・クラフティング
神谷俊氏:これを、じゃあどうやって仕事の文脈で生み出していけばいいのかというところで、最後に実践的な話をして終了としたいと思います。本当にあっという間ですね。
まず、本人が仕事に対して刺激を生み出すために不可欠なアクションがあります。ジョブ・クラフティングですね。仕事内容を自分の気持ちや自分の能力レベルに合わせて、自分の持っているリソース量を調整していきます。
興味のない仕事量を増やすのではなくて、ちょっと興味が持てる仕事量にリソースを分配するとか、あるいはメインで手掛けている仕事に対していまいち刺激を感じられなくてやりがいを感じられないのであれば、サブの仕事でやりがいを見いだすとか、そのようなかたちで手掛ける仕事の内容を調整します。
興味のあることに対して率先して学んだ結果を基に勉強会とかを実施してもいいですね。本人がやりたいことをやれるようにしていく。それを自分で調整していくということです。
あとはリレーショナル・クラフティングですね。一緒に働く人を調整します。アプローチするお客さんを変えるとか、一緒に働く仲間を変える、パートナーを変えるというかたちで、自分にとって刺激的な仲間と一緒に働くことができれば、当然自律レベルは高まりやすくなります。
さらには、仕事の意味付けを変えるということですね。上司から指示された仕事という意味付けではどうしてもモチベーションは高まらないと思います。
ただ、例えば転職サイトに登録させて、自分の年収レベルを200万円上げるために必要な経験だという意味付けができたら、それに対して向き合う姿勢も変わってくるはずなんです。自分の仕事の意味付けを切り替えるだけで刺激が生まれる可能性はあります。
このようにして、本人が主人公になって、洋服を選ぶように自分にフィットするような仕事を調整する。こういう動きをジョブ・クラフティングと言います。
人事でジョブ・クラフティングをする例
例えば人事で、採用のプロモーションの業務をされている方がジョブ・クラフティングをしていくとすれば、いろいろな方向にアプローチを拡張させていくことができるわけです。
採用広報業務を手掛けている場合は、プロモーションの業務をやっているわけですから、より専門性を深めていくことによって刺激を生み出していく。そういうジョブ・クラフティングができるわけです。
マーケティングの要素をもっと採用業務に取り入れたり、ブランディングや採用母集団のコミュニティデザインの業務を自分の業務に含めていく。こういう専門性の割合をより強化していくことによって刺激を作るというやり方もあります。
あるいはバリューチェーンですね。採用のプロモーションだけではなくて、面接もやる。あるいはキャリアカウンセリングや意思決定、クロージングのプロセスにも関わる。あるいは入社後の適応だったり育成まで関わっていく。そういうふうに関わる範囲を広げることによって、刺激を作っていくというアプローチもあります。
そして、目線を変えるということですよね。チーム全体がパフォーマンスするためにはどうすればいいのかを考えさせたり、あるいは、例えば新卒採用は学業に対して問題を与えるという社会的な指摘がありますが、理想の就活は社会にとってどういうものなんだろうか、なんていうのを社会的な目線で考えるというのも1つ刺激を作り出す上では有用です。
また、時間軸もそうです。「これからの労働人口減少の中で、採用という業務はどのように変化させていったらいいだろうか?」なんていうことを考えるわけです。こういうふうにして、自由に自分の仕事を調整していく。こういうアプローチも自律レベルを高める上では有効です。
新人には“見える仕事”を用意する
ただ、このジョブ・クラフティングって、ある程度の経験や能力レベルがないと難しいです。せめて一人前の仕事ができるようになっている状態じゃないと、自分の仕事の調整は難しいですよね。
じゃあ、若手や新人たちはどうしたらいいのか。そこで必要になってくるのがジョブ・デザインです。職務の設計をしっかりとしてあげるということですね。
「あれ? 上司が挑戦をトップダウンで与えると(部下の)自律レベルは下がるって言っていなかったっけ?」って思われた方、いらっしゃると思います。そのとおりなんですけど、それとはまた別に、仕事内容を明確にしてあげることはすごく重要なんですね。仕事内容がわからないとか、どんな意味があるかがわからないとか、自分がどこまでできるかがわからないとか、そういうわからないだらけの中でやっていると、当然自律レベルは下がってきます。
やらなきゃいけない、やらなきゃいけないっていう気持ちが強くなっちゃうから、緊張して、どうしてもDriven to Workが促されやすくなっちゃう。
だから、どういう目的で何をやっていて、どれぐらいできるのかというのを全部見える化してあげれば、仕事の透明度を高めてあげることによって本人のオーナーシップっていうのが促されやすいと言われています。自分で判断できますからね。
自分でどこまでできるかが見えていれば調節もできるじゃないですか。そういう仕事の見える化をさせる上で、このジョブ・デザインはけっこう重要です。
ジョブ・デザインを適切にすることができれば、刺激や挑戦も生まれやすくなります。自分が「能力レベルはこれぐらいしかないな」というのがわかったら、次のレベルにちょっとステップアップしてみようかということもできると思います。
あるいは仕事の重要性が見えてくれば、「あっ、けっこう大事なんだな。がんばらなきゃな」というかたちで挑戦意欲も高まってきますよね。なので、仕事の見える化をまず促すというのは、実は新人・若手にとってはすごく重要なポイントです。