ジョブ・デザインのポイント
じゃあ、何を押さえたらいいのかというと10ヶ条あるんですけれども(笑)、けっこうありますよね。(スライドを示して)こういう側面を、少なくともジョブ・デザイン、職務の設計や役割設計の時にきちんと整備してあげるのが大事だと言われています。
大きく分けると3つのカテゴリーですね。枠組みとイメージと学習環境です。
枠組みは、仕事の基本的な枠組みです。どういう目標に対して、どれぐらいの水準を達成すればいいのか。どういうスケジュール感で進めればいいのか。それを達成するとチームや部署のミッションがどう前に進むのかという大きな目標との連動性です。このあたりをしっかりと設計してあげる。これは多くの企業さんが、やられているかなと思います。
さらには、プロセスのイメージとか、進めるイメージですね。どういう順番で進めていくのかとか、どんなステップで進めていくのかとか、どんなツボを押さえなきゃいけないのかです。あとは、レファレンスですね。参照できる他社の事例や先輩の事例はあるかどうかということですね。こういうものを見える化させてあげる。
さらには、学習環境を設計することです。プラクティス・フィールドと言われるような失敗できる環境です。いきなり大事な顧客に対してプレゼンテーションさせるとかじゃなくて、まず社内の人たちに向かってプレゼンの機会を用意して、それでフィードバックを受けるとか、そういう、練習できて学べる機会を作ってあげます。
さらには利害関係者ですね。押さえておかなきゃいけない重要人物とか、あるいは困った時に助けてくれる人物とか、そういう人間関係も見える化させる。
ここまで見える化できていると、「あっ、この地図の上だったらけっこう自分の足で歩けそうだな」となって、自律レベルは高まりやすいと言われています。
ジョブ・デザインは上司が“つくって渡す”ではない
ここまで設計しても、上司が全部これを作り込んでトップダウンでこれをドンと部下に与えてしまうと、やはり自律レベルは下がってしまうんですね。ジョブ・デザインの診断的利用という誤った運用方法です。
これも、MBO(目標管理制度)とかでやってしまいがちな企業さんがあるんですけど、上司が全部作り込んで、「じゃあ、これ、やっておいて」と言って、あとはシステムで進捗管理して、アラートを出したり、リマインドを促したりしちゃうと、やはり義務感が加速されてしまいますから、自律レベルは下がっちゃうよと言われています。

「じゃあ、どうしたらいいんですか?」というと、ジョブ・デザインは大事なんですが、作る時に部下に相談するんです。
対話をして、部下がどうありたいのか、どうなりたいのか、今何を感じているのか、対話によって引き出して、本人の意向をしっかりと反映させた上で一緒にジョブ・デザインを進めるのが理想です。だから目標管理制度も、期初の面談が一番重要ですよと言われていたりするわけです。
きちんとここで深い対話をしてがっちりと信頼関係に紐づいて、目標を握り合えていれば、その後自律が促されやすくなる。ジョブ・デザインを設計するだけではなくて、部下と一緒に設計していくということです。
上司はサーバントになる、サポーターになる、黒子になる。部下を主人公にするためにいい脇役、いいプロデューサーになっていくことが必要です。
1on1とかをやられている企業さんはけっこういますが、ここの対話の質を問題視したほうがいい企業さんが多いなという印象があります。
けっこう高圧的な面談機会が多かったりするので、ジョブ・デザインの対話的利用を意識する時には、「対話がきちんとできているかな? どんなコミュニケーションを取っているかな?」という目線でも見ていただくと、自律レベルを効果的に高めるような促しはできるかなと思っています。

「表面」だけで終わらせない対話の深さをつくる
最後のスライドは参考までにですね。対話をする時は少なくともここまではアクセスできるようなコミュニケーションを取りましょう。本人の行動・態度や、本人が仕事をどうしたいかという要望など、表面に表れているところだけではなく、その背景にある、どんな感情があるのかというところ。
あるいは、その感情が湧き出ているのは、本人がどんなありたい姿を持っているのか、仕事をどう位置づけているのか、あるいはどんな価値観を大事にしているのか、そうした深い部分にしっかりアクセスするような対話が求められる、という話ですね。
リクエストではなくてニーズをきちんと捉えるというところを対話の中で意識していただくと、より良い上司・部下の面談の場が構成できるかなと思っています。

ということで、ちょうど30分ぐらいなので、私からは以上になります。かなり駆け足で説明をしてしまったんですが、簡単にまとめると、「自律レベルは高い、低いあるよ」と。高い自律レベルの時間を増やしていく必要があるよ。
自律レベルを高めるためには刺激や挑戦など、日常的な文脈からちょっと外れたものをつかみ取っていく、取り入れていく必要があるよ。
そのためにはジョブ・クラフティングとかジョブ・デザインとか、あとは対話的な利用ということで、対話を重視したジョブ・デザインの運用が求められるよという話をさせていただきました。
非常にショートだったので漠然とした理解の方もいらっしゃるかもしれません。この後の質疑応答で、またご意見をいただければと思います。私からのレクチャーはいったんここで区切りたいと思います。ご清聴いただきましてありがとうございました。