【3行要約】
・自律の解釈は世代や立場で大きく異なり、経営者とZ世代では正反対の認識を持つことも多い現状があります。
・神谷俊氏は学術的視点から、自律には「セルフマネジメント型」と「セルフリーダーシップ型」の2つのレベルがあると整理。
・ビジネスパーソンは義務感だけの低い自律から脱却し、夢中になれる高い自律状態の時間を増やすことが重要です。
研究×ビジネスで見てきた“自律”のリアル
神谷俊氏:みなさんこんにちは。よろしくお願いします。神谷です。お忙しい中、セミナーにご参加いただきうれしく思います。
今日は、みなさんと一緒に自律というテーマで、考えを深めていきたいなと思っています。さっそくスライドを共有させていただきます。
私のレクチャーは30分を想定しております。けっこうショートなので、限られた時間ではありますが、私も精いっぱいわかりやすく、実践に反映できるような内容をお伝えしていきたいなと思っております。よろしくお願いします。
簡単に自己紹介をさせてください。エスノグラファーという会社をやっています。ビジネスリサーチの会社です。組織調査や採用系の調査、最近ですとエンゲージメントや心理的安全性、オンボーディングの調査、あるいは商品開発ですね。マーケティング関連の調査や地域開発の調査などをやっています。
もともとアカデミックな領域でキャリアを進めた人間で、経営学を学んできました。経営学でよりインパクトを起こすためには、研究だけずっとやっているよりも、ビジネスにそれをいかに反映できるかを考えたほうが、スピード感を持って研究的な知見を世に広めることができるだろうと考えて、2016年に起業しました。
それ以降は大手企業さん、あるいはメガベンチャーの企業さんに関わりながら、リサーチとコンサルティングを進めてきたので、半分はアカデミック、半分はビジネスというような、キャリアを歩んできております。

今日お話しする内容ですが、こちらにある『
遊ばせる技術 チームの成果をワンランク上げる仕組み』という書籍をまとめた内容になっております。より詳細に知りたいという方は、ぜひご購入いただけたらうれしいなと思います。
あとは無料のメルマガですね。毎週配信のメルマガもやっています。人事的な知見を定期的に発信しているので、興味がある方はご登録いただけたらうれしく思います。
「自律って何?」は人によってバラバラ
ということで自己紹介はこれぐらいにして、さっそく内容に入っていきたいなと思います。今日は、先ほど申し上げたとおり、自律というテーマについて話をしたいのですが、この自律というのが、けっこう人によって、解釈が異なるんですよね。
経営者の方に話を聞いたりすると、「自分を律することだ」と。「嫌なことでも積極的にやることだ」なんておっしゃる方もいます。
Z世代と言われるような若手社員の方に話を聞くと、「好きなことをやればいいじゃん」と。「自分のやりたいことをやるのが自律ということでしょう」という解釈をしていたりする。なので、自律とは何なのかという概念からスタートしたいなと思っています。
自律が大事だ。キャリア自律が大事だとかいろいろ言われたりしますが、自律を高めていくためには、強化していくためには何を刺激したらいいのかということですね。
さらに、それの実践的なアプローチとしてジョブ・マネジメントですね。ここでは仕事をどのようにハンドリングすると自律レベルが高まっていくのか。その要点についてお伝えしたいなと思います。

30分なのでけっこう駆け足でいく感じです。みなさん独自でメモを取って、聴いていただけたらうれしく思います。
また、質問があれば、Q&Aの機能が画面の下にございますので、こちらに記入ください。後ほど質疑応答の時間で取り上げて、解説をしたいなと思っています。
自律には“低いほう”と“高いほう”がある
それではさっそくチャプター1から始めてまいります。「自律という概念を理解する」というタイトルですね。
先ほど申し上げたとおり、自律に関してはさまざまな解釈があるんですね。なので、この解釈に関する幅広さみたいなものをちょっと縮小していきたいなと思います。
学術的に自律というものはどのように語られているのか。ここをまず整理したいなと思います。アカデミックな領域では、自律という概念は、レベルがあるんだと言われています。自律レベルというものが存在するんだということです。大きく分けて、低いレベルの自律と高いレベルの自律に分けられるわけです。
「やりたくないけどやる」は低い自律レベル
まず、低いレベルの自律はどういう状態なのか。先ほど経営者の方が「自分を律する」とおっしゃっていた、という話をしたのですが、要するに、自分自身の気持ちを抑えて、真面目に振る舞うことなんですよね。義務感、責任感、あるいはルール、そういう自分の外にある影響要因に突き動かされながら自分をコントロールする状態です。
就業規則に従って働くのもそうですし、社会人なので仕事をするのは当然だろうみたいな、常識に適応するところもそうです。あるいは「仕事で任されたんだから」、「周りの人に恥をかきたくないからやる」というのもそうです。「ToDoリストでタスクが定まっているのでやらざるを得ないです」というのもこのあたりになります。
あとは、大事だからやるということですね。仕事をしなきゃ給料はもらえないし生活できないから、大事だと思っている。本当はやりたくないんだけど、大事だと思っているからやるよという感じですね。受験勉強とかにちょっと似たようなモードで仕事をする。
こういう状態は低いレベルの自律です。言い換えると、これはセルフマネジメントと言われたりします。本当はやりたくない、気持ちがぜんぜん乗っかっていないし、欲求も乗っかっていないんだけれども、なんとかそれを抑え込んでコントロールしている状態です。
セルフマネジメントって、医療用語なんですよね。もともとはアルコールや薬物の中毒患者の方が、社会復帰を目指して自分自身の日常的な生活の行動を統制するために、自分を戒めて、自分の気持ちにむちを打って自分の行動を管理する状態。これが、セルフマネジメントという概念です。
だから、嫌々やる、真面目に世の中に適応するためにがんばる。これが低いレベルの自律というものです。