一部の部長を対象とした育成プログラムの例
それらをプログラムで言えば、例えばこういった流れです。事前課題。そしてこれらをやったあと、中計へのつなぎと同時に、組織への影響と共に個々人もディメンション評価します。これは我々第三者により評価されます。
そして、このプロセスに担当役員が関わっていきます。関わるというのは、実際にアドバイスをしたり、相談に乗ったりしていくことですね。
そしてこの間、いろいろなツールを使っていきます。このツールを元にコミュニケーションを取ることです。そうすると、だいたい社長から「このツールを使って書いている中身のどこを見て、どう指導すればいいのか」と(笑)。指導のポイントがわからない、みたいな感じのことも出ます。
当然意図はわかります。ですから我々としては、シートに現れる指導のポイントまで指導者にお伝えしながら、2人で進めてもらうというようなことをやっていきます。
大事にしたいのは評価結果の活用方法
個人評価はイメージで言います。(スライドを示して)こんなディメンション評価項目でやります。ただし一番大事にしてもらいたいのは評価結果の活用方法なんです。
評価の結果以上に大切なのは、評価の結果の奥にある、本人の本質的な傾向をあぶり出すことです。そしてご本人との関わり方を変えていったり、ご本人の指導の方法を検討していくことを一緒になってやることですね。
結果で一喜一憂しない。結果で偏ったレッテルを貼らないということです。このあたりのファシリテーションは我々でやることが多いです。
大課長は経営の定石・思考フレームを体系的に学ぶ
2つ目、これは大課長の場合のポイント。まずは視野を広げてもらうために、経営の定石、思考フレームを体系的に学んでもらいます。そうしながら共通言語を作り出して、組織に浸透していく。
ただし、インプットが目的化しないように注意することが大切です。いろいろなフレームを学んで「で、結局何なの?」と。我々実務家にとっては「で?」が重要です。
2番目。親会社や自社の中計の意図を読み解いていきます。読み解いた上で、我々の変革課題を設定し、シナリオを作り込んでいくかたち。このプロセスを通じて視座、視野、時間軸を拡張していく、養っていくことをやっていただきます。
また、財務の観点では先ほど申しましたように、レベル感(の差)がありました。財務三表を理解しつつやるためには、お客さまの会社の財務の特徴について、我々といろいろコラボして意見交換した上で、例えば「こういう項目で整理してください」とする。
整理のポイントがまた1つのノウハウでもあるんですが、これを整理して見せるとけっこうインパクトがあります。こういうものが整理されて初めて、全社の中計で言う財務的な指標の意図が、より深くわかっていくのが実態です。

(スライドを示して)視座・視野のイメージはこれです。先ほどは部長でしたが、経営層とは確かに顕著な溝があります。こういった視座を高めて視野を広げて、先々を見通す力というのをつけながら、部長にふさわしい行動をとっていただこうということがポイントです。
全部長を対象とした育成プログラムの例
その具体的なプログラムの例はこれです。これは各社さんによって変わりますけれども、大課長化しているパターンは、課長としての知識とかは豊富ではあるものの、部長としての知識は弱いものです。このあたりの回数はちょっと多く見えますが、経営フレームはある程度、最低限として学んでいただくことは多々あります。
こういった資料を作っては、上司とすり合わせをして意見交換していく。そうやって上司が関わっていく感じですかね。こういったフレームを参考にしながら最終回、プレゼンなんかをしてもらいます。
そういうかたちで視座・視野を広げていくことをやるんですけれども、1つ違いがあるのは、個人評価もやりますが、このクラスになりますと、組織診断というものの活用をかなりします。
あらかじめ現状の組織診断は、それぞれの会社さんにある組織診断を活用させていただきます。一番参考になるのがエンゲージメントサーベイで、現状の実態の分析、意見交換、考察をしたものです。
こういったものを最終回にやった上で、ある一定の期間実践しながら、組織診断がどう変化したか。新たにやるのは1年後、最低で半年ですね。だいたい1年後に再度取って、変化の意見交換をします。

サーベイ結果の活用方法、その変化の予兆、変化の兆しといったものをどう解釈するのか、上位層と我々で意見交換して、今後のエンゲージメント向上の打ち手を検討していきます。
これをやっていていつも思うんですが、この手のエンゲージメントの診断結果をクローズしている会社さんがあるんですよ。これはまずいなと思います。もっとオープンにして、意見交換する体質を作っていくことが必要だと思います。
大いに開示して、それをみんなで意見交換して、第一歩として我々はどうやって乗り越えるのかというようなことを、共通目標にしながらやることをお勧めします。
大課長化問題の予防
最後に課長クラスです。これは大課長化問題の予防に軸を置いたものです。(スライドを示して)左は実に短期発想ですね。これは今の課長としてはいいんです。(今の)役割分担としては当然こういうことになりがちです。
しかしこれだけでは困る。課長であれ、足元と先々を少しずつ考えていく発想を持ってほしいんですね。そうしないと、部長とのコミュニケーションがうまくいかないんです。
そういう意味で、このコースでは先々と足元をどう両立させていくかをかなり学んでいきます。特に先々の打ち手、先々の体制づくり。こういうことに力点を置きながらやります。
それは単なる育成だけじゃないですね。どうやって採用するかとか、調達と育成と定着の仕組みづくり。「こういったものもアイデアを出していこう」というような内容でございます。
課長を対象とした育成プログラムの例
(スライドを示して)その例がこれです。このようにストーリー性を持って進めていきます。ここでの特色は、課長は次期部長を狙ってということで「プレ部長研修」と銘打って、このあたりからある程度練習してもらうようなイメージですかね。
役職がついたからといって、発想が急に変わるわけではありません。ですからプレ部長研修と位置づけて、大課長化問題に陥らないようなことをやっていきます。
特に事前課題として、上司から受講者への期待を足元と先々に分け、かつ個人と組織、あなたの担当する組織に対する期待を上長に整理してもらいます。先々というのは中計を睨んでのことです。
こういうのを上長に整理してもらった上で参加していただきます。で、参加した時にこれをオープンにします。ご本人はご本人で、同じフォーマットで自分なりに足元・先々のことを「おそらく上司、会社はこういうことを私に期待しているはずだ」と書いてもらう。
これをその研修の中で突き合わせる。そうすることによってギャップや一致点を認識しながら、部長と課長がお互いに手を取り合いながら、前に進めていくことをやっていく。最初の第1歩のボタンの掛け違いをなくしたいんですね。
これ、実際にやるとすごくインパクトがあります。部長のコメントの質によって、ガッカリ感やワクワク感が変わります。「この部長が私にこんなことまで期待してくれていたのか」と感動する人もいます。そして「一致している」と自信を持つ方もいます。
非常に日頃のコミュニケーションが現れます。だからこそ、自分の課の運営も自信を持ってやっていらっしゃるんですよね。これらをうまく活用しながらやっていきます。要望のある場合、これもやはりディメンションがあります。
育成プログラムの前に自己診断を行う
そしてこのコースの前に、まずご自身で自己診断してもらいます。視座・視野・時間軸の観点で、あなた自身はどうですか? と。「しっかりできている」「まあまあできている」「あまりできていない」「ほとんどできていない」。これらをご自身でクリックして、各項目に点数を入れてもらうんです。
これは最初にやると1点、0点が多いです。これが実態です。これは無理もないことなんです。その方に能力がないんじゃなくて、そういう環境に置かれ、そういう育てられ方、そういうマネジメントを受けているからこそ、そうなってしまうんです。ここを脱皮しようという試みですね。
そしてこれはご本人もやるんですが、スタート時に上司の方にもやってもらいます。そうすることによって、スタート時期での認識のズレも自覚した上でスタートします。

これをやっていきますと、いっぺんには変わりませんが、一定の時間を置いて……。6ヶ月後にするか、8ヶ月後にするか、1年後にするか、いずれにせよ再度もう1度やります。こうすると、それぞれに変化が現れています。
着実に小さな変化が現れてきます。中には劇的に変化している方もいます。これはご自身の変化の認識と、外部、上司が認める変化です。これが非常に自信になります。
本来はこれも時間があれば「やってみてください」と言いたいところですが、今回はレジュメの一部として差し上げます。どうぞご参考にしてお使いになってみてください。以上ですべて終わりになります。
経営幹部候補の育成のために必要なことまとめ
これらをまとめると、まず問題意識の喚起が重要です。で、認識を揃えていくんです。
そして、プログラム発想というよりはストーリー発想ですね。ストーリーを描いて、その中にプログラムが点としてあるから、「こういうストーリーだからこそ中身もカスタマイズしないといけない」と思っています。
2番目、プログラムの参加当事者にとっての抵抗感は「そうは言っても現実はね……」です。経営層の育成ストックに関しては、こういう声と向き合いながら進めていかないとうまくいかないです。
これをどれだけ迫って、お互いにざっくばらんに議論ができるように持っていくか。このあたりが我々の関わるファシリテーションの腕の見せどころでもありますが、これをぜひみなさんもやってみていただくとよろしいかと思います。
3番目。個人も集団も心理の読みです。そしてその心理から生まれる感情。こういったものをどう現時点で整理しているか、それをどこまで変えていくのか、どういう状況を作りたいのか。こういうことを考えてステップを踏むことですね。
それを(事業)戦略と人材戦略と財務目標という3つのつながりを持ちながら進めていく。その時に抵抗感が出てきます。だからこそ変化の抵抗に関する過程、このプロセスを俯瞰しながら進めていく。
それがここにあるストーリー、そして「そうは言っても」をあぶり出すやり方。そして集団心理・感情を踏まえながら、変革の過程を踏まえた上で慌てない。腰を据えて変化の打ち手を打つ。そうしながら視座・視野を広げていこうという意味です。
そして視座を広げていく時にわりとインパクトがあるのが、財務の切り口です。なぜインパクトがあるか。このテーマはあまりにも各社に格差があります。
かつ、立場によって「うちの場合はもうこれで十分だ」といったかたちで部分的に理解させてしまう。部分的に理解して、予算計画が作れればよしとする。こんなレベルなのが実態です。
そうじゃなくて、経営戦略と人的資本、そして財務目標のつながりを描きながら、先々をどう作り込んでいくか。こういったことが経営層の育成において非常に重要ということでございます。

以上をもちまして、すべて終わりになります。長い時間、ご清聴ありがとうございました。