【3行要約】・次世代経営幹部育成は企業の持続的成長に不可欠ですが、多くの企業では実効性ある後継者育成ができていない現状があります。
・廣田文將氏は「役員の関与度の低さ」「現経営陣のミニチュア版育成」「候補者への過度な負荷」に注意する必要があると警告。
・効果的な次世代リーダー育成には、役員自身が当事者として関わり、評価項目に「後継者育成への貢献度」を盛り込むなど、組織全体での取り組みが求められます。
前回の記事はこちら 次期取締役候補のストックのために重要な3つのこと
廣田文將氏:(スライドを示して)それらを3つの事例の中でお話しします。まず冒頭に申し上げるのは、次期取締役候補のストックですね。特に重要なことは、この3点です。
サクセッションプラン・シナリオに沿って進める。この「シナリオに沿って進める」という意味は、7STEPストーリーの話です。このシナリオに沿って進め、くれぐれも「点」にはしないということですね。全体像を描いて進めていく。ここから脱皮しないといけません。

そして、現役員を後継者育成の当事者として巻き込むことです。現役員が候補者のメンターです。つまり、「後継者育成の責任は自分が担っている」「管轄の役員のこの方の責任なんだ」という自覚を持たせることです。そうすることによって、当事者、サクセッションプランに登場しているメンバーへの関わりを深めていくということです。
3番目が、参加者が描いた変革課題解決シナリオ。これを作りながら関わっていますから、現役員といろいろな場面で意見交換・ディスカッションをして検討していきます。
そして、最終的にはどこかの時点で、作り上げたものを役員にプレゼンします。そうした場合、役員の方々が投資価値があるかどうか判断して「これは投資するだけの価値があるな」と思ったら、新中計(中期経営計画)の中に折り込んでいき、やったことを実務につなげていく。
そして、その体制づくりに、今回活躍した方々を適材適所でどう配置していくかということまで考えるということでございます。
サクセッションプランの基本フロー
そういったサクセッションプランについて「でもどうやればステップがうまくいくのかな」と思われる方もいらっしゃるので、基本フローを整理しました。7STEPの途中、レビュー・見直しのところまでですが、具体的な流れを参考にしてみてください。
主な内容を挙げています。「こういった内容でやられるといいですよ」ということでございます。
特に育成計画の実行になりすぎたのが従来です。ここばっかりに目がいっているのが、従来のサクセッションプランの限界だったと私は思っております。
ですから「結局あのプラン、何の役に立つんだ?」という話が始まるんです。「経営者育成って結局難しいよね」となると、だいたいタフ・アサインメントと言って「やっぱり修羅場を経験させるしかないな」とか「こういうのはいろいろ人事ローテーションで幅広く視野を広げないとダメだな」とかの話が出ます。
また、「経営陣と1on1みたいな対話が必要だよな」とか「もちろん一部アクションラーニングも必要だな」とか「基礎的な理屈がわかってないとダメだな」とか言って、MBA講座のようなものを受けさせる。こういうのが多いんですよね。
経営者へのインタビューをすると日頃の人脈がよくわかる
もちろん我々はこういうことを否定しません。最低限の物事を組み立てるフレームは学んでもらいます。ただその中で、我々は社外の経営者へのインタビューを大切にしています。
これを設けると、日頃の人脈がよくわかります。また、どういう人脈を辿って経営者にたどり着くか、そしてどんな質問をするのか。そうすることで、経営者の心構えや発想を学んでいくというセッションです。
これは今までけっこうウケています(笑)。ご本人たちもこのインタビューで、けっこうな気づきがあるというフィードバックが多いです。
サクセッションプラン失敗の落とし穴
ただし、これには落とし穴があります。この落とし穴を並べてみましたので、参考にしてください。だいたいこういう落とし穴に陥っていることが多いです。
一番経営幹部育成の本気度が現れるのは、社長以外の役員の関与度です。従来は人事部任せ、本人任せで、こんな任せ方で本当に人は育つのかと。本気になって役員が関わらないと、次期役員候補なんて育ちません。
あとは、何か現経営陣のミニチュアみたいな方を推薦して、ミニチュアみたいな方を育ててしまう。伴走していろいろ指導していくと(なった場合)、ここは気をつけないといけないんですよ。
確かにサポートはするんですが、サポートの仕方に気をつけないと、ミニチュア版づくりになる。(本当にやりたいのは)あくまでも「これからの」経営幹部育成です。
あと、昨今気をつけていかないといけないのは候補者が潰れてしまうことです。なぜならば候補者は、かなり重要なテーマを現時点で担いながら、実際現場でやっている方々に学んでもらうことになりますから、相当な負荷がかかります。
周囲のご理解や環境を作っていくと同時に、役員の方に配慮してほしいのは、周囲の嫉妬です。こういったものに潰されてしまうんです。
また、現役員の方々も関わって育てていこうとする。現役員が目先の問題解決、短期成果を求めちゃうと本末転倒です。お気をつけください。
落とし穴の対策・回避策
(スライドを示して)対策、回避策として、例をここに挙げておきました。これはあくまでも「例えば」です。こういったものに対して個別に、一緒になって対策を考えていくということを我々はやっております。
(スライドを示して)ここに注目してください。役員の評価項目に「後継者育成への貢献度」を盛り込むことをお勧めします。こうなって本気度が伝わってくるかなという感じがします。