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なぜ中小企業は2人に1人が辞めるのか?早期離職を防ぐ3ステップ(全2記事)

「最近どう?」「順調です」と答えた部下が突然会社に来なくなる 部下の悩み・本音を引き出す「スコア法」とは?

【3行要約】
・「最近どう?」と聞いて「順調です」と答えた部下が、1週間後に出社しなくなる……表面的な対話では離職を防げません。
・ 厚生労働省も心理的安全性の担保を求める中、管理職には部下育成からメンタルケアまで多様な役割が求められています。
・上司は部下7割・上司3割の比率で対話し、スコア法や理想と現実のギャップを聞く質問で、本音を引き出すことが重要です。

前回の記事はこちら

離職防止に効果的な第一歩

宮地尚貴氏:“離職サイン”を察知するためには、定期的に本人と対話する機会を設けることが重要です。多くのウェビナーなどでも強調されているように、面談は非常に効果的です。会話の機会を増やすことが、離職防止の第一歩になります。

社内でのコミュニケーションが不足していると、上司から見れば部下が「働いていないように」映り、部下から見れば上司が「横暴に」感じられるというすれ違いが起こります。こうした誤解を防ぐためにも、上司と部下の間で現状を共有するコミュニケーションの機会を確保することが大切です。

そして、面談を行う際の前提として何より大切なのは、相手が安心して話せる環境を整えることです。面談では、話す比率の目安として部下が7割、上司が3割くらいが理想とされています。

部下との対話を成功させる3つのポイント

ただ「よし、面談をやろう」と勢いで始めても、目的を明確に伝えないままでは成果が出にくいものです。

まず1つ目のポイントは、目的をしっかりと伝えることです。例えば「この面談で話す内容は評価には影響しません」「話した内容を許可なく他の人に共有することはありません。安心してください」「この時間は、〇〇さんの業務をより良くするための時間です」といったように、安心して話せる環境をつくることが大切です。

2つ目のポイントは、守秘義務の明確化です。「周りに話さないからね」「安心して話してほしい」というメッセージをはっきりと伝えることが重要です。

3つ目のポイントは、時間の確保です。あらかじめ15〜30分程度の時間を設定して臨むのが望ましいでしょう。「席が隣だから、いつでも話せる」とおっしゃる方もいますが、それでは表面的な会話にとどまることが多いです。きちんと会議室を取り、1対1で向き合う時間を確保することが必要です。

オープンスペースでは「周りに人がいるので話しにくい」と感じる部下も多くいます。ですから、個別で落ち着いて話せる環境をつくることが大切です。

上司と部下の対話は、理想的には毎日が望ましいですが、最低でも月1回は時間を取るようにしたいところです。定期的に対話の機会を持つことで、小さな変化や兆候を早い段階で察知し、未然に対策を打つことができます。このように、面談は離職防止や信頼関係の構築において欠かせない取り組みです。

「最近どう?」「順調です」と答えたのに1週間後から出社しなくなった部下

本音を引き出すための質問テクニックについても、資料の中にまとめています。いくつかピックアップしてお伝えすると、まずは一番下にあるスコア法です。

「最近どう?」と聞いても、たいていは「まぁ、いい感じです」とか「まぁまぁ、うまくやっています」といった曖昧な答えしか返ってきません。そこで、例えば「最近、仕事どう?」と聞いて「順調ですよ」と返ってきた場合、「今の仕事の出来度合いを10点満点で表すと何点くらい?」と聞いてみます。

「7点ですかね」と答えたら、「7点を付けた理由と、残り3点を引いた理由は何ですか?」と続けて聞くと、本音が出やすくなります。こうした深掘りによって、ようやく現状を正しく把握できるようになります。

上司の方に「部下と会話できていますか?」と聞くと、「昨日も『最近どう?』と聞いたら『順調です』って言っていましたよ」と答えるケースがあります。ところが、その1週間後に「急に来なくなってしまって」となることがよくあります。

これは典型的な「あるある」です。表面的な言葉をそのまま受け取るのは非常に危険です。面談の際には、言葉の裏にある感情や背景を深掘る意識が大切です。

次におすすめなのが「理想と現実の差を聞く」方法です。例えば「入社前に思い描いていた自分の理想像って、どんな感じ?」と質問し、「それを考えた時に、今の現状をどう感じている?」と聞いてみる。この“理想と現実のギャップ”に悩んでいる新入社員は少なくありません。

理想は何で、現実はどう感じているのか。その差を丁寧に聞き取ることで、悩みの根本を把握できます。こうした会話を通じて、離職の予兆を早めに察知することができると思います。

この離職チェックリストも、今回ご用意しています。

ぜひ社内の現状に照らし合わせて確認してみてください。正直、5個以上チェックが入っている場合は危険信号です。9個以上だと「リスク高」と言えます。5個を超える時点で、新入社員を十分に受け入れられる体制が整っていない可能性がありますので、注意が必要です。

明日から実践できる部下の離職対策

明日から取り組める対策として、まず重要なのは「現状把握」です。

今の新入社員の状態をしっかりと観察し、行動や姿勢に変化が出ていないかを確認します。特に、行動の変化、業務への取り組み姿勢の変化、コミュニケーションの変化、勤怠の変化。この4点は必ず見ておいたほうがいいと思います。

注意すべきサインとして、例えば必要な残業を避けるようになるケースがあります。以前は「今日のうちに終わらせなきゃ」と残っていた人が、「もう、いいか」と帰ってしまうようになる。これはかなり危険です。

2つ目は会話の変化。報連相がなくなるなど、コミュニケーションが減ってきた時も注意が必要です。3つ目は勤怠の変化で、有給をすべて消化しようとするなどの行動も見受けられます。特に1番目と2番目は、早期の離職兆候として強いサインになります。

また、すぐに実践できることとしては、上司から声をかける機会を増やすことが挙げられます。

最近では「報連相しやすい組織づくり」が上司の役割とされています。「あいつから報告が来ない」「相談してこない」と言うのは、上司側の怠慢とも言えます。上司や管理職が自責として「報連相しやすい環境をつくれていないのではないか」と考えることが必要です。

組織風土の改善や育成の文化づくりが進まない原因は、こうした意識の欠如にもあります。営業の世界でも、かつては「とにかく自分でテレアポ」「飛び込みだ」と言われていましたが、今ではマーケティングや仕組みづくりによって営業しやすい土台を整える方向へ変化しています。

これは組織づくりでも同じです。「報連相がないのは部下が悪い」と片づけてしまうと、企業の成長は止まります。時代の変化に合わせて、企業の土台づくりもアップデートしていく必要があります。

その中でも、中長期的に最も効果的なのは「月1回の面談」です。どのタイプの社員にも共通して必要な取り組みです。「面談を実施していない」という企業は、まずそこから始めていただくのが良いと思います。

上司ではなく会社が行うべき離職を減らす仕組みづくり

そして最後に、仕組み化の部分です。会社として仕組みづくりを行っていく。特に右下をご覧いただきたいのですが、「管理職のスキル向上」が必要だと思っています。

昨今は管理職の役割が多様化しています。目の前の売上を上げるだけではなく、中長期の事業戦略を描く、3年後・5年後を見据えた問題解決を進める、組織連携を強化する、部下を育成する、いわば「右腕を作る」といった役割が求められています。

加えてメンタルケアもあります。厚生労働省が定めているように、会社は従業員が心理的安全性を保って働ける状態を担保する必要があります。

管理職は会社に代わってメンタル状況を管理・監督する役割も負うことになります。これに対応するには、まず管理職側のスキル向上が欠かせません。今の組織環境や限られたリソースの中で、どう役割を遂行するかを学ぶ機会を設ける必要があります。

次に、入社前後の予防体制です。ギャップをいかに防ぐか。ギャップが生じると、配属先の管理職も頭を悩ませます。入社前や内定後にも面談を重ねる必要があります。

中途採用なら条件面談の場で「ここからは〇〇さんが就職先を選ぶタイミングです」と伝える。これまで良い点を伝えてきた一方で、どの会社にも課題があること、そして自社の現状の課題を具体的に示す。入社後に直面しうる困難も明確に共有しておかないと、対応できないケースが多いからです。

最後に「成長実感の仕組み化」です。成長を促す目標設定と、質の高い行動改善を会社としてどう促すか。個人のPDCAを後押しする施策が必要です。目標を成果だけ掲げて「では、がんばって」とし、半期に1回の面談だけでは、多くの人が目標に到達しません。

管理職や会社が、従業員が目標と向き合えるように細かな目標設定を行い、そのための振り返りを支援し、行動改善をサポートする。ここは日報・週報・月報といった仕組みの改善や改革が求められるところです。

率先して行動する若手が減少する時代に求められる育成法

ということで、いろいろお伝えしてきましたが、離職兆候にはさまざまなサインがあります。

前提としてコミュニケーションが取れていないと何もわからない、ここが一番のポイントです。コミュニケーション機会を担保する。会話できていないことが最大の問題です。

多くの企業さまがリモートをやめて出社を増やそうとしているのも、この点に気づかれているからだと思います。中小企業は比較的結束力を保ちやすいので、とにかくコミュニケーション機会をどう担保するかが重要です。あわせて、育成を推し進めるには管理職の育成が求められます。

「若手が育たない」。今の若手の働くニーズとして、「与えられた範囲内で仕事を全うしたい」があります。『就職白書』などを見ると、「仕事で何を大切にしたいか」という問いに対して「与えられた範囲で役割を全うしたい」が上位に来る。

10年前に比べて率先して行動することを大切にする若手が減っている。価値観の変化もありますし、直近の新入社員はコロナ禍で行動による成功体験を積めなかった方が多い。結果として、与えられた役割を全うしたいというニーズが強く、率先は苦手です。

だからこそ、どう引き出すかが今の若年層育成の論点です。まず役割を明確化する。そのうえで、役割の枠を越えた工夫・チャレンジを促す仕掛けとして、目標と振り返りの促進が重要になります。さらに役割の中に「創意工夫をする」「困っている人に手を差し伸べる」「手が空いたら自分なりの工夫をする」といった行動を組み込んでおけば、率先行動は実装できます。

昨今の若年層、特に2025年入社の方々は「与えられた役割の中で仕事を全うしたい」「率先して動くのが苦手」という傾向がデータでも出ています。どう引き上げていくかが、会社側のポイントになります。

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