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(2025年再掲版)自分も相手もラクになる正しい“丸投げ” 『任せるコツ』(全1記事)

「自分が楽になるため」に仕事を振る上司の盲点 部下への「正しい丸投げ」の仕方 [1/2]

【3行要約】
・リーダーは「任せたほうがいい」と理解しながらも実行できず、多くの場合「自分でやったほうが早い」と考えてしまう現状があります。
・『任せるコツ』著者の山本渉氏は、現代のリーダー像が「オラオラ型」から「サーバント型」へと変化していると指摘します。
・自分が楽になるためではなく相手の成長を考え、目的や背景を伝えることで単なる作業からやりがいのある仕事に変えることが重要です。

本記事では、特に反響が多くあった同イベントの1記事目を再掲します。

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『任せるコツ』著者が登壇

鳥潟幸志氏(以下、鳥潟):山本さん、あらためて「読者が選ぶビジネス書グランプリ」のマネジメント部門の受賞、おめでとうございます。

山本渉氏(以下、山本):ありがとうございます。

鳥潟:本日は、書籍の内容に沿って私からいくつかご質問と、後半は参加者からの質問もおうかがいできればと思います。よろしくお願いします。

山本:お願いします。

鳥潟:まず、この書籍(『任せるコツ』)を読まれた方はご存じだと思うんですが、失敗体験というか、若い頃のことがかなり赤裸々に書いてあります。

山本:そうですね。いっぱい失敗してきましたので。

鳥潟:私も、読んでいてすごくうなずく内容が多かったです。ちなみに、ずっと任せられずに抱えてしまったところから、「任せよう」と思うことになったきっかけやタイミングがご自身の中であったんですか?

山本:そうですね。まず、自分自身がものすごくカリスマ性のあるスーパービジネスパーソンじゃないということを認識はしていました。

そういう(カリスマ性のある)人なら、自分自身のやり方で全部やるっていうのもあるのかもしれないんですが、それよりもチームプレイでいい結果を出していきたいなと自分の中でも思ったし、これからの時代にはそっちのほうが向いているんじゃないかなという思いもあって。

「自分だけが主役」という考えよりは、やってもらっているチームメンバーを主役と考えたほうがうまくいき始めたということで、書いていったものです。

鳥潟:なるほど、ありがとうございます。

“カリスマ的なリーダー”が引っ張るやり方は通用しなくなってきた

鳥潟:確かにリーダーとしての正しい自己認識はすごく大切です。自分がどういう実力を持っていて、カリスマがあるのか・ないのかという客観視をされた。あと、時代感という話ですね。一昔ですと、強いリーダーが「俺についてこい」とカリスマ性で引っ張るみたいな……。

山本:そういうタイプが多かったですね。

鳥潟:多かったですけどね。最近は世代の違いや外部環境の違いもあって、1人が全部を決めてピラミッドを動かしていくことが、なかなか難しくなってきていますからね。

山本:ハラスメントの問題や、多様性がなくなってしまうという問題もあって。カリスマ性のあるトップの人にみんなが盲信してついていったり、その人の考えだけが正しいとなってしまうと、多様性の問題でいろいろなほころびが出てきてしまうので。

「サーバントリーダーシップ」という言い方をしたりすると思うんですが、とにかくトップが偉くて引っ張るというんじゃなくて、下から支えるようなリーダーシップも1つのかたちになっていくんじゃないかなと思って(書籍を)書きました。

鳥潟:なるほど、ありがとうございます。「サーバント」って、直訳すると「サーブする」「奉仕する」という意味ですよね。

山本:そうですね。「奉仕する」。

鳥潟:リーダーが部下に対して「ついてこい。オラオラ」ではなくて、しっかりと活躍いただけるように後ろから支えて奉仕していく時には、任せ方が重要になってくるんじゃないかと。そんな時代感の中でこの本がハマって、ものすごくヒットしていると理解していますね。

山本:そうですね、うれしいことに。

鳥潟:ありがとうございます。

「自分でやったほうが早い」と考えてしまう

鳥潟:最初にあらためてという感じなんですが、「任せる」とか「丸投げする」ということで、恐らくリーダーとして多くの方が「もちろん任せたほうがいい」と思ってはいると思うんです。

でも、どうなんでしょうかね。ついつい自分でやってしまうとか、任せられないとか、わかっていても任せられないという方がけっこう多いです。書籍の中では「任せたほうがいいよ」と、いろんな背景を説明されてらっしゃいますが、あらためて「なんで任せたほうがいいのか?」ということについて、どういうふうにお考えなのかを聞いてもいいですか。

山本:そうですね。まず、任せられないという人の多くは、やはり「自分でやったほうが早い」というケースが多くて。スピードもクオリティもそうなんですが、確かにそれは間違っていないというか。優秀な方がマネージャーやリーダーをやっているケースが多いので、経験値から考えても、プロジェクト単体で見るとその人がやるほうが早いんです。

当然、仕事というのは1回で終わらずにその先も続いていくものなので、任せてどんどん成長して、自分と同じように活躍する。もしくは自分よりも活躍する人を育てていかないと、組織として強くなっていかないということで、任せることが重要かなと思っています。

鳥潟:組織として、組織力や生産性を高めるためにもメンバーを育てる必要があると。本当に「わかってはいる」という感じですけどね。

山本:大きい組織でもそうですし、2~3人のチームでもそうですし、まずは投資だと思っています。お願いして、翌日にはすぐに成長しているということでは当然ないと思うんですが、少し長い目で見て、任せていってしばらく経つと、かえって「自分が楽になっているな」「チーム全体のパフォーマンスが上がっているな」というのは実感できると思います。

鳥潟:確かにそうですよね。一度そういう経験をして、メンバーが成長したという瞬間に立ち会うことができれば、もうやめられないというか。「こうだよな」と(感覚を)つかめますが、そこに行くまでがなかなか難しいんですよね。

山本:そうですね。まずは1回目が重要です。

正しい「丸投げ」の仕方

山本:1回目にうまくいかないと、「やっぱり任せるのはやめちゃおう」とか、「任せられたけどうまくいかないんだ」と任せられたほうもトラウマになっちゃう。そうすると、リーダーとメンバーの関係も悪くなってしまうので、まず1回目にどういう任せ方をするのかは重要かなと思います。

鳥潟:だからこそ、「正しい丸投げの仕方」を今回の書籍でも提唱されていらっしゃいますが、少しずつ中身に入っていきたいと思います。

まず最初にシンプルにおうかがいしたいのは、書籍でも「正しい任せ方」と「正しくない任せ方」と書かれていらっしゃると思うんですが、どんなのが正しくて、どんなのが正しくないのかというあたりを教えていただいてもよろしいですか。

山本:いろんな要素があって、本の中だと6個、7個ぐらいを箇条書きにして差を書いています。一言でシンプルに言うと、「自分が楽になりたいから」とだけ考えているのが間違った丸投げで、「相手はどうやったらやる気になるのかな?」「これをやることによって、相手がどう成長するのかな?」と考えて任せるのが正しい丸投げです。

スタートがそこから始まっていると、その先でどういう依頼の仕方をしたらいいのかとか、誰に頼むかといったところまで影響が出てくるので、まずは前提として、ただ「自分のため」「自分が楽になりたい」だけじゃないところからスタートしていただけるといいかなと思います。

そういった正しい丸投げをしていると、相手も成長してチームのパフォーマンスも上がっていって、自分も楽になるとか、チームと仕事をするのが楽しくなる。結果としてメリットが出てくる分にはいいんですが、スタートの目的に気をつけていただくといいと思います。

鳥潟:お願いする動機ということですよね。リーダーとして、どういう動機を根本に持ちながら任せようとしているのか。究極は自己対話というか、自分の中でどういうふうに思って任せようとしているのかをちゃんと自分に問いかけて、それを確認して任せることから出発するべきだというお話ですかね。ありがとうございます。

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