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従業員の心を動かす「経験」の作り方:ピーク・エンドの法則から学ぶ人事施策(全3記事)

5分間の丁寧な対応より一瞬の「不快な顔」がその人の印象を決める 職場の日常に現れる「ピーク・エンドの法則」の影響 [1/2]

【3行要約】
・ピーク・エンドの法則は、経験の最も感情が動いた瞬間と終わり方が記憶に強く残るという心理現象ですが、ビジネス現場での意思決定にも大きな影響を与えています。
・起業家のプレゼンや職場での短いやりとり、退職時の体験まで、感情のピークと終わり方が次の行動を決定づけることが明らかになっています。
・重要な場面では意識的にポジティブなピークとエンドを設計することで、ビジネス上の成果を高めることができるでしょう。

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ピーク・エンドの法則はどのように影響するのか

伊達洋駆氏:これを聞いたみなさんの中には、「そうした一時的な、半ば心理学的な話が、実際のビジネスとか人事の現場にどういうふうに関係してくるんだろうか?」と思われた方も、もしかするといるかもしれません。

ただ、私たちの仕事人生というのは、さまざまな経験の連続なわけですね。その経験が連続している。そしてその経験を記憶というかたちで参照することの連続なわけです。

そうなってくると、ピーク・エンドの効果というのは、非常にいろいろな場面で作用していて、顔をのぞかせているということが言えます。

ピッチにおける影響の例

いくつか研究や実践的な事例を紹介していきたいんですが、まず、こんな感じの研究があります。「ピッチ」ってみなさんご存じですか? 起業家の人が主に投資家に向けてプレゼンテーションを行うんですね。自分たちの事業に対して投資してほしい時、資金調達を行うために短いプレゼンテーションを行います。そのプレゼンテーションを分析した研究があるんですね。

起業家が示すような喜びの感情のピークが強いかどうかを、顔表情を分析するソフトウェアにかけて解析を行いました。そうすると、喜びの感情、ピークがドンと非常に高い人もいれば、無表情にしゃべり続ける人もいるわけですね。

この研究の中で分析して明らかになったのが、喜びの感情のピークが強いようなプレゼンテーションを行っている人のほうが、資金調達の金額が大きいということです。

内容というよりかは、そういった熱意や自信のようなもの、感情のピークを見せることによって、投資家に対して伝わったと解釈されています。こんな感じで影響を及ぼすんですよね。お金が動く状況でも影響を及ぼしてくるということです。

記憶や感情は重要な意思決定時にも影響がある

ただちょっと注意が必要で、なかなかおもしろいのが、喜びの表現のようなものが長くなると、今度は逆に不自然な印象を与えてしまうんですよね。「演技じゃないのか?」といった感じで思われてしまって、結果的に資金調達の金額が低下してしまうこともわかりました。

また、この喜びのピークが記憶に残りやすいような場面、例えば最初や最後で表現されると、よりいっそう資金調達の成功とつながっていくこともわかりました。

いずれにせよ、この研究から見えてくることは、例えばビジネスにおいてお金を投資するかどうかは非常に重要な意思決定なわけですね。その種の意思決定も、合理的な判断もあると思うんですが、それだけではなくて、記憶や感情みたいなものにも影響されているということを示した結果ではないかと思います。

こういうことを踏まえていくと、私たちの日常の働く現場では、いろいろなコミュニケーションやいろいろな経験がされているんですが、その種の場面で、ピーク・エンドの法則がいろいろなかたちで顔を出してくるということが推測できます。

短いやりとりの中のピークとエンドが人の印象を決めることも

こんな場面を少し想像してみてください。忙しい同僚に、みなさんが「5分だけ質問してもいいですか?」と依頼するような場面。そういうふうな場面、ありますよね。

そういう場面で、このピーク・エンドの法則を考慮に入れる。例えば、「質問していいですか?」と言われた時に、相手が最初にどんな反応をするのかが、もしかすると感情的なピークになる可能性があるわけですね。

ちょっと嫌そうな顔をしたとなると、「えっ、なんか嫌そうな顔をされた」と、ネガティブな気持ちがピークになってしまう可能性がありますよね。

あるいは、会話の最後にどんなやりとりをしたのか。「ありがとうございました」「どういたしまして」という、いいかたちで締めることができるかどうか。

こうしたピークやエンドみたいなところが、この短い時間におけるやりとりにおいて、その同僚に対する印象、例えば「この人は相談しやすい人だ」とか「相談しにくい人だ」とかを決定づけている可能性があるんですよね。

なので、相談をされたという時に、5分間ずっと丁寧に接していたとしても、最初の瞬間にすごく嫌そうな顔をしたことでネガティブ・ピークがドンと来て、最後にあまり良い終わり方をしなかったとなると、せっかくそれまで丁寧に答えていたのに、丁寧に答えている時間が長かったとしても、ピークとエンドの影響が強くて、「相談しにくい人だ」と思われてしまう可能性があるわけですね。

職場の日常的なコミュニケーションにおける影響

似たようなことはいろいろな場面であります。例えば、廊下でたまたま上司に会って、「あの件、どうなっていますか?」と聞かれたとします。それで2分ぐらいで簡単に進捗を報告するというような場面を想像してみてください。

その時に、みなさんから報告を受けた上司は、報告内容のすべてを覚えているわけではないんですね。報告の中で自分の感情がドンと高まったインパクトのある数値、例えば非常にポジティブな数値、もしくは非常にネガティブな数値みたいなものと、それから別れ際の言葉。そのやりとりに影響されて、進捗に対して安心とか不安みたいな印象を形成している可能性があるわけです。

例えば「順調ですね」というような終わり方をしていると、「あっ、順調だったんだ。安心だ」と思うかもしれませんし、「なんかちょっとまずいな」みたいなやりとりを最後にして別れたとすれば、「あの件って大丈夫なのかな?」と不安になってしまう可能性があるということです。

このように、日常の職場のコミュニケーションにおいても、ピーク・エンドの法則はけっこう機能しているわけですね。

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