承認欲求が高すぎる部下に苦戦……どう接すればいい？　上司に必要なのは「受け入れる」ではなく「受け止める」スタンス

相手を承認するための“3つのスキル”

橋本ゆり香氏（以下、橋本）：では、（参加者から）1つご質問をいただいていますので、読ませていただきたいなと思います。ありがとうございます。

平岡洋平氏（以下、平岡）：ありがとうございます。

橋本：「営業組織を見ている管理職です。年齢差のある年上部下に対して認めるスキルを活用してみたいのですが、本人のやっていることと組織の求めることが180度違う場合に、認めるスキルは有効になってきますか？　結果的には本人の行動を否定してこちらから指示することになり、本人が拗ねたり、結果として行動しなくなるのかなと思いましたが、いかがでしょうか？」。

平岡：ありがとうございます。当然ですが今回の事案で言うと、本人の行動を否定したり指示したり、説明したりする作業は必ず必要になるかと思います。やっぱり（本人のやっていることと）組織の求めることと180度違うわけなので。

その行動をメインのプロセスだとすると、その前段で本人が違うことを主張してきた時に、「君はそう思ってるんだね」と言ったり、あるいはリフレインを入れたりする。

つまり「受け止める」「うなずき」「リフレイン」という認めるスキルは、メインはどうあれメインプロセスの前にできることなんですよ。メインプロセスで指示・指導したり、否定するというのはしてもいいんです。なので、その前のプロセスで認めることを必ず設けてからメインに行く。

もっと言うと、その後のプロセスで「あ、でもね。そうやって言ってきてくれたこと自体はすごくいいことだから、今後も何かあったら言ってきて。ありがとう」という、フォローのサンドイッチをするとなおいいかなって私は思います。

この質問者の方がおっしゃられているように、組織の求めることと本人のやっていることが違う場合というのは絶対に生じるんです。ただ、その前後のプロセスを全部なくして「いや、それ違うよ」というメインプロセスだけになるから、部下は「もう（意見を）言わない」ってなっちゃうんですよね。

なので、メインプロセスの前後に認めるプロセスというエッセンスを入れていく、サンドイッチしていくのがすごく大事かなと私は思いますね。ありがとうございます。では、次に行きますか。

橋本：ありがとうございます。

「ありがとう」の言葉は最強の承認

橋本：（参加者からのコメントで）「対話の最初はまずは感謝の思いを伝える。ありがとうから伝えることにしていますが、この流れで大丈夫ですか？」。

平岡：もう、最強にいいです。

橋本：最強にいい（笑）。

平岡：「ありがとう」は最強の「認める」ですよね。だって、感謝ですからジャッジしてないですもん。もうこれは最強の認めるだと思いますけどね。

さっきの質問とのミックスになりますが、発言に対する判断やジャッジはその先で対応すればいいだけの話なので、最初にありがとうは絶対に言えるんですよね。否定せざるを得ない内容だとしても、違ったとしても、ありがとうは絶対に言えます。後にもありがとうは言えますから、グーです。

橋本：じゃあ逆に、ちょっと意地悪な質問だけど洋平さんに聞いてみたくなりました。「それ、ありがとうとは言えないな」みたいな時でも、認めることになるクッション言葉ってどんなものがありますか？

平岡：ありがとうとは言えない。

橋本：なんか「ありがたくはない」みたいな。

平岡：発言がありがたくはないやつね。

橋本：うん。なんかちょっと「ん？」って思うような時に、でも承認で返したい。どんなものがあるかなって思いました。

平岡：「○○と思ってるんだね」というふうに、（相手と同じ言葉を繰り返す）リフレインをすることじゃないですかね。それって、こっちを否定された時でも絶対にいけると思うんですよね。「平岡さん、ちょっと調子に乗りすぎじゃないですか？」って言われたとするじゃないですか。それでも、「調子に乗りすぎだと思ってるんだね」というのは絶対に言えるので。

橋本：そうですね。

平岡：その場合に「ありがとう」と言うのは、ちょっと違和感がありますので。

橋本：（笑）。

平岡：「調子に乗りすぎじゃないですか？」「ありがとうございます」はちょっと違うかもしれないけど（笑）、リフレインだったらなんでもいけるんちゃいますか。

橋本：確かにそうですね。「あ、そうかそうか。こう思ってるんだね」というふうにリフレインしてみるのは、使いやすいかもしれないですね。

平岡：使いやすいかと思います。ただ、（対話の最初に）「ありがとう」を言うのはすばらしい。

橋本：うん、本当。「ありがとう」から始まる会話ってうれしいですね。

平岡：うれしいです。

橋本：ありがとうございます。こうやってご自身がやってらっしゃることを書いてシェアしていただくと、みなさんにも学びになるので、とってもありがたいなと思っております。

平岡：まだ30分近くありますので、チャットもどしどし。

承認要求が高すぎる部下への接し方

橋本：今、質問をいただきましたね。ありがとうございます。「承認要求が高すぎる部下から『僕・私を受け入れてほしい』と言われます。一通りのスキルを使っていますが、なかなか苦戦」ということです。おぉ……。

平岡：そうですねぇ……。

橋本：承認してほしい、わかってほしい、受け入れてほしいと。

平岡：っていうパターンね。苦戦されていると言っていましたが、これはかなり難しいと思います。「意見が言えないよ」の逆パターンじゃないですが、「意見を言いたい。認めてくれ！」というパターンのメンバーの方ってことですよね。

橋本：うん。とはいえ、実は根っこは似ているなと思っていて。

平岡：ほうほう。

橋本：どうして人に認めてもらわないといられないのかというと、その方はどうかわからないけど、自分に自信がないんですよね。本当にただただ自信がありすぎるパターンもあるかもしれないんですが、一般的には他人に承認を求めるというのは、自己承認ができていないことが多いかなと見ています。

平岡：確かに。

橋本：なので、自信がないから出せない方と、自信がないから取りに行く方がいらっしゃるんですよね。そういう場合は一緒に認めるプロセスというか、今までもすでにスキルを使ってらっしゃるということなので、（メンバーが）自分自身を認められるサポートをもう一歩やってみられるといいかもしれないな、なんて思いました。

平岡：確かに。そのメンバーの方の自己肯定感が高かったらこういうアプローチにならないはずなので、自分自身で認めてないということだと思うんですよね。

橋本：認められないと、ここにいられない感覚があるのかもしれないです。

平岡：ただ、やっぱりすごく大事なのは、そこで受け入れちゃうのは違うってことですよね。受け止めるスタイルをしっかりキープすることです。

橋本：（質問者のコメントで）「『あなたの強みを一緒に引き出したい』という声かけをしていた」。素敵。

平岡：すばらしいですよね。

橋本：なんて素敵な。その後どうなったのか、ちょっと知りたすぎる感じじゃないですか。

平岡：本当ですね。

話し上手な人は使っている「リフレイン」のテクニック

平岡：まさにアドラー心理学の2つの本『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』でも、仲間であるという感覚を伝えるとすごくいいと言われているんですね。

どっちが上とかではまったくなくて、「仲間ですよ。一緒にやりましょう」という関わり方はおそらくすごく大事で、メンバーの方からすると有効な関わり方だと思いますね。

橋本：「リフレインの汎用性って広いんですね」というコメントもうれしいですね。ありがとうございます。

平岡：そうなんですよ。リフレインは営業でも使えますからね。リフレインをスキルとして活用しているスーパー営業マンはいっぱいいますし、注意して見るとインタビュアーとかでもリフレインをわざと使っていたりします。ちょっと話が外れちゃいますが、都市伝説のNaokiman（ナオキマン）という人を知ってますか？

橋本：お、知らない。

平岡：知らないですか？　Naokimanっていう都市伝説のYouTuberで有名な人がいて、都市伝説がけっこう好きで見るんですけど、リフレインを超使ってます。

橋本：へぇ。

平岡：Naokimanが有名かどうかはわからないですが、そういう有名人でも意識的に使ってる人はけっこういるんです。

橋本：うまい人は使ってますよね。（視聴者コメントで）「（リフレインのことを）ブーメラン魔法なんて言い方するんですよ」って。おもしろい。

平岡：営業的にはそういう言い方をするんですね。

橋本：確かに、ブーメランのように返したりする感じ。

部下との会話で使えるリフレインの活用術

橋本：リフレインがちょっと盛り上がっているので、少しプラスの情報を付け加えたくなったんですが。

平岡：どうぞどうぞ。

橋本：もしかしたら、もうふだんから使ってるよという方もいらっしゃるかもしれないですが、もう1個レベルの高いリフレインをするならどうするかというと、リフレインって“お話の方向指示器”みたいな役割もあるんですね。例えば「こっちに持っていきたいな」というところを拾うのも良いですし、単語だけ拾ってもいいんですね。

例えば、部下が「この企画を作ろうと思ったんですけど、やっぱり浮かばなくて。私、ぜんぜんできないんです」みたいなことを言ったとします。この部下を励ましたいと思っているのに、「あ、できないんだね」ってリフレインしてネガティブな話題ばっかり拾ってくると、「できないんですよ……」という話がそこから始まりますよね。

平岡：なるほど。

橋本：でも、「作ろうと思ったんだね」ってリフレインすると、「いや。実はやっぱりこういうのが必要だと思って……」とか、作ろうと思って話が展開していく。なので、どこを拾うかもけっこうポイントになるかなと思います。

平岡：確かに。そういう意味で言うと、相手も別にコーチの資格を持ってる人じゃないので、いろんなことを一文字で言うケースもありますもんね。

橋本：そうなんです。ネガティブとポジティブがぐっちゃぐちゃ、みたいな感じで。

平岡：なるほど。そこで、ポジティブな部分だとかを引き出す。

橋本：「ここ、もっと引き出したいな」っていうところをリフレインでアンダーラインしてあげるといいですね。

平岡：いいですね。さすが。私も今度それを使ってみます。

橋本：もうやってそうですけどね（笑）。

平岡：でも、それは知らなかったですね。すばらしい。さすがです。