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ビジネスリーダーのための「部下の言いなりとは違う!」承認力セミナー(全5記事)

典型的な指示待ち部下を変えた“上司の接し方” 組織の心理的安全性も高める「承認」のテクニック

【3行要約】
・部下の自律性向上に効果的な「承認スキル」ですが、忙しい業務の中で継続するのは難しいという課題もあります。
・平岡洋平氏は、指示待ち部下を1年間で変えたという事例を挙げながら「認める」ことの重要性について指摘。
・承認スキルを定着させるには、既存習慣へのひもづけや否定と肯定のバランスなど、意識的な習慣化が重要です。

前回の記事はこちら

部下の自律性を高める「承認スキル」

平岡洋平氏(以下、平岡):今日は後半はパネルディスカッションという名で、質問にどんどん回答していくかたちで前回のセミナー同様バンバンやっていければと思っております。とは言っても考える時間もあると思うので、こちらでも4つぐらい質問は用意しております。

最初にそれを進めていきながら、今日参加されたメンバーの方からもコメントを入れていっていただいて、チャットが埋まってきたらそっちにシフトしていくような感じで進めていければと思います。じゃあ、ここからはゆり香さんと2人でいきますか。

橋本ゆり香氏(以下、橋本):そうですね。チャットを見ておきますので、拾っていきます。じゃあ、1つ目の質問にいきましょうか。「承認スキルを使って、どのくらいの期間で部下の自律性は高まりますか?」。よく聞かれるところかなと思うんですが、洋平さん、いかがですか。

平岡:これはなかなか難しいんですが、私の中で明らかな事例があるのでそれをお伝えすると、だいたい1年ぐらいで高まった経験があるんですね。私は独立する前に会社員をやっていて、その時にザ・指示待ちみたいな、「指示待ちとはこのようなことを指すのか」という方がいらっしゃったんですよ。もう絵に描いたような感じでした。

本当に今でも思い出すんですが、クライアントからメールが来た時に「どうすればいいですか? 平岡さんの指示をください」みたいな感じで、メールを全部転送してくるという感じの方がいらっしゃったんですよ。

もちろんやることはしっかりやる方なので優秀だったんですが、(自分が)コーチングのスクールに通った後に、その方に対して承認スキルを使い始めたら明らかに変わり始めたんです。その方は、そこからだいたい1年ぐらいで変わってきましたね。

具体的にどう変わったかというと、同じクライアントからの依頼メールが来た時に「平岡さん。私のほうでこれとこれをやっておきましたが、ここは判断ができないので指示をください」というレベルまで、徐々になんですが1年で行きましたね。

なので経験上、私の事例の方は相当な指示待ちの方だったので、1年間しっかりと承認スキルを根気よく部下やメンバーの方に使っていけば、だいたいの人はそれでだいぶ変わってくると思いますけどね。

橋本:1年間、よく根気強くやられたなぁと思いながら聞いています(笑)。

平岡:そうですね。最初の1ヶ月とかはもちろんぜんぜん変化もなかったんですが、ずーっとやってましたからね。

橋本:チームごと関わっていって、1on1とかで聞く時間を増やしたり、承認するスキルを使う時間を増やしていくと、メンバーによっては本当にすぐ反応してくれる方もいれば、長くて1年かかる方もいるという雰囲気かなと思っています。

平岡:うん、そうですね。人によってはもともと自律性が高めの人もいらっしゃるので、さらにすぐに上がったりもすると思うんですが、(承認スキルを使って部下の自律性を高めるためにかかる時間は)メンバーさんによってかな、というところではあります。相当手ごわい方で1年の経験はありますね。

橋本:なるほど。

主張をしないメンバーにはどう接すればいい?

平岡:じゃあ、次に行っちゃいますか。

橋本:みなさんも「こんなことを聞いてみたいな」というものがあれば、ぜひお気軽にチャットに入れていただけるとうれしいです。じゃあ、2つ目の質問ですね。「承認の前に、そもそも発信や主張をしないメンバーにはどう接すればいいですか?」。

平岡:要は、もともと発言しないということですね。発言しないんだから、認めるもくそも何もできないという感じ。

橋本:(笑)。うんうん。

平岡:1つ目の質問の方がこれだったんですよね。なので、これは承認スキルというよりは質問スキルになっちゃうので、今回のセミナーとは完全にひもづいてはいないんですが、「○○さんだったらどうする?」「○○さんはどうしたい?」とか、意識的にその人にずっと聞いてましたね。

当然なんですが、やっぱり組織なのでその回答を採用するかどうかはまちまちなんです。明らかにリスクがあったりとか、それはやめたほうがいいというものもあれば、「いいじゃん」みたいなのもあったので。その発言を最終的に採用するか・しないかはまちまちなんだけど、大事なのは認めるスキルを必ず入れることですね。

「なるほどね」「そういう意見もあるね」「そういうふうに考えてるんだ」というふうに、認めるスキルを必ず入れていました。この質問の任意の回答で言うと、問いかけや質問を入れることです。

承認力とはちょっと違う部分のスキルもあるんですが、「どうする?」とか「君ならどう思う?」という言葉を入れて、それに対してどんな回答であっても認めるスキルを使うことはできると思います。

橋本:そうですね。受け止めてもらえることで、「自分の意見はちゃんと求められているんだ」と感じてもらえるってことなのかなと思っていました。

平岡:そうそう。(1つ目の質問に出てきた、指示待ちが)すごい方に「どう思う?」って聞いたら、最初は「ないです」って言ってましたよ。

橋本:言いますよね。

平岡:そう言っていたんですが、私はやっぱり長期的な成長を見て接していたのでぜんぜん諦めなかったですね。ずーっとちょいちょい「これはどう思う?」とか聞いてました。

橋本:本人はどう思うのかっていうところを意識的に聞く。ありがとうございます。

そもそも「承認」することはなぜ必要なのか

橋本:今、2つ目の質問まで来ているんですが、ぜひここをシェアするといいんじゃないかというご質問をさんからいただきました。ちょっと読み上げますね。

「まず、そもそも承認力とは何か? という定義をあらためてご教示いただきたいです。話を聞いて、考え方的にはクライアントの主体性を向上、および心理的安全性を醸成するための求める・聞く・質問する、対話に関する総合的なスキルなのかどうかを確認したい」ということです。

平岡:なるほど。そういう意味で言うと、総合ではなくて一部になるんですね。今、投影しているものが総合的な傾聴やコーチングのスキルだとすると、その中の一部だと言えるかと思います。

橋本:そもそも「認める」という言葉の語源が「目で見て止める」みたいな。「ただそこにありますね」という、いいも悪いもなく認知することから来ているので、まずは「あなたがいるね」みたいな会話のキャッチボールのキャッチの部分ですよね。

平岡:そうですね。

質問者1:ありがとうございます。クリアになりました。

橋本:大丈夫ですか? ありがとうございます。

質問者1:1点、そもそもこれは何のためにするのか? というところに関して質問です。主体性という話や安心感というキーワードもありましたので、主体性の向上と心理的安全性の担保のためという2つの要素かなと思ったんですが、なぜ承認をするのかを教えていただいてよろしいでしょうか。

平岡:ありがとうございます。これはあくまで銀座コーチングスクールとしてはというところですが、何のために認めるのかというと、やはり相手に安心して話してもらうことが目的になります。相手が安心すると、その先で心理的安全性が担保されていきます。

(承認することが)心理的安全性や主体性、ここに書いてある自律性に結局はつながっていくので、認めるというプロセスを1つ入れるのは、相手に安心してもらうことが明らかな目的になるかと思います。

質問者1:ありがとうございます。クリアになりました。

平岡:ありがとうございます。

橋本:お恥ずかしいんですが、お父さんに詰められてる息子は「何を言ったら地雷を踏まないのか」って、自分の意見よりかは正解を探しにいっちゃうようなことが、うちの家族でもよく起きていたりします。(一方的に詰められると)とても安心できない場所になってしまうのでね。

忙しくても承認スキルを続けるための習慣化のコツ

橋本:では、次に行きますか?

平岡:じゃあ、次の質問へいきますか。

橋本:3つ目の質問です。「忙しい日常業務の中で、つい忘れてしまいそうな承認スキルを続けるコツはありますか?」。知りたいですね。洋平さん、どうですか?

平岡:これはやっぱり習慣化が大事だと思っています。習慣化にもいくつかテクニックがあるんですが、その中の1つに「もともとある何かにひもづける」というものがあるんですよ。

例えば私は自己啓発がけっこう好きなので、いろんな習慣を試してはやめちゃったり、瞑想をやめちゃったりしたこともあるんですが、ずーっと続いている習慣の中の1つが朝の冷水シャワー浴なんです。

なんでかというと、朝は絶対にあったかいシャワーを浴びるんです。これはもう絶対にするので、最後に風呂から出る時に給湯のボタンをオフにして冷水にする。何が言いたいかというと、既存の習慣や必ずやることに対してひもづけるというのは、習慣化のテクニックの1つとしてあるんですよ。なので、習慣化するのがオススメです。

もっと具体的に言うと、例えばクライアントから何か依頼があった時には、メンバーの誰かに意見を聞くという習慣をつける。田中さんとか鈴木さんとか、最初はターゲットを1人に絞ってやってもいいと思うんですが、必ず何かを問いかけるとか。そういう習慣化のテクニックを織り交ぜると続けやすいと思いますね。

私の実例に何度も出てくる(指示待ちの部下の)方にも、何かあったらその人に意見を聞くということを決めてやっていたので、そういうふうにやるとすごくいいかなと思います。あとは、染み込んでいくまでは意識的にやる。

(「認める」の)3つのスキルなんて知ってることだけに当たり前すぎて、「もうええわ」みたいな感じで、たぶん今日のセミナーが終わったら忘れちゃうというふうになりがちなんですよ。だからこそ、必ずこの3つのスキルを見てから出社したりすると、すごく続けられるかなぁと思いますね。

健全な関係性作りに重要な「否定」と「肯定」のバランス

橋本:私も1ついいですか?

平岡:はい、どうぞ。

橋本:私は関係性のコーチングをよくするんです。夫婦やチームだったりにコーチングをする中で大事にしているのが、肯定的な関わりと否定的な関わりの割合なんですね。否定がゼロっていうのも、あんまり関係は良くないんです。

夫婦だと5対1ぐらいで、肯定的な関わりが5、否定的な関わりが1ぐらい必要なんです。ただ、実は会社のチームであればもっと具体的に進めていける関係性なので、肯定的な関わりが3、否定的な関わりが1にできると、とても健全な関係が作っていけると言われているんです。

あいさつ1つとっても肯定的な関わりです。なので、部下に言いたいことはたくさんあると思うんですが、「これを言いたい。だからその3倍は『認める』を使おう」と、自分の中でタスク付けするのはいかがかなと思いました。

あいさつをいっぱいやって、ありがとうってお礼を言うという関わりがあるから、苦言を1つ呈しても受け止めてもらえる関係性が作れる。そんなイメージでいかがでしょうか? と思いました。

平岡:いいですね。それも既存の行動に対するにひもづけとも言えますよね。

橋本:そうです。ふだんから“貯金”をすることですね。

平岡:肉を食ったら野菜は3倍食べる、みたいな。

橋本:そう、そんな感じ。「肉の消化には3倍の野菜が必要だ」みたいなのと一緒です。

平岡:それはいいんじゃないですか。すばらしいですね。

橋本:ぜひ試してみてください。

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