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ドラッカー思想の未来 「知識生態学とドラッカー思想」多摩大学大学院MBA特別公開講座(全4記事)

マネジメントの父・ドラッカーが50年続けた「思考のログ」 経営やリーダーシップの質を上げる方法

【3行要約】
・ドラッカーの名著『マネジメント』から50年、AI時代の不確実性に対応した経営フレームワークが求められています。
・欧州ドラッカー協会 シニアフェローの紺野登氏は、インド経営の勢いや長寿企業の知恵に注目し、知識生態学的アプローチで「Next Management」を構築中です。
・リーダーは企業の境界を超えた価値創造を設計し、ドラッカーが実践した「思考のログ」で自分自身を見失わないことが重要です。

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50年前の『マネジメント』を今の不確実性とAI時代に合わせて再設計する

紺野登氏:ここからが今日のテーマ、「未来へのドラッカー」という話になります。先ほど触れたドラッカー協会の活動の中で、最近新たに始まった取り組みが「Next Management(ネクスト・マネジメント)・イニシアティブ」です。

ドラッカーの代表作『マネジメント』は1973年の刊行からすでに50年が経ちました。『もしドラ』などで若い世代にも読み継がれているように、その知見は今も有効な部分が多くあります。けれども、やはり50年前の時代背景に基づいたものであり、当時とはまったく異なる経営環境の中で、現代に即したアップデートが求められています。

特に今の時代を特徴づけるのは、不確実性の極大化、環境・経済・社会課題のビジネス化、そしてAIの急速な進化です。ドラッカー自身はAIのようなテクノロジーの到来までは予見していなかったでしょう。だからこそ、いまあらためてドラッカーを見直す意義があるのだと思います。

つまり、20世紀の産業化社会を前提にした古いマネジメントモデルでは、現代の課題には対応できない。だからこそ、ドラッカーの思想をベースにしながら、21世紀のホリスティック(全体的)なマネジメントフレームワークとして「Next Management」を構築していこう、という流れです。

ドラッカー・フォーラムも関心を寄せるインドの経営

この取り組みは学術界とビジネス界が協働しながら進めており、2023年のドラッカー・フォーラムで構想を発表し、2028年の第20回フォーラムまでの5年間で成熟させる計画です。

もし関心があれば、ぜひドラッカー・フォーラムをチェックしてみてください。次回は11月5日から7日にかけて開催されます。6日、7日が本フォーラムで、今年のテーマは「Next Era Leadership(次の時代のリーダーシップ)」です。まさに次世代リーダーのあり方を問う内容になります。

欧州ドラッカー協会はグローバルにも視野を広げています。例えば、インドにも注目すべき動きがありました。私は先月現地に行きましたが、インドの経営は今、非常に勢いがあります。ドラッカー・フォーラムでも昨年「The India Way(インド的経営)」というテーマで、インドの経営思想を世界に発信するプログラムが行われました。

写真の左から2番目に写っているのが、タタ・グループ前副会長のR・ゴパラクリシュナン氏です。非常に興味深い見識を持った方で、直接お話ししました。こうした世界各地のリーダーが集まり、それぞれの地域や文化から「次のマネジメント」を構想していこうという動きが、今まさに起きています。

「我が社のエコシステム」という表現の矛盾

時間も限られてきましたので、少しまとめに入っていきます。この「Next Management」というのは、端的に言えばエコシステムやイノベーションを中心に据えた、経営学の再構築、あるいは再文脈化の試みだと考えています。

エコシステムの時代というのは、すでに私たちが現に生きている現実です。これはドラッカーとは関係なく、時代の必然として訪れた変化でもあります。

これまでのように、閉じられた企業という単位の中で価値を実現し、戦略や組織を考えることには、すでに限界が見えてきています。つまり、従来のビジネススクールで教えられてきた「我が社の戦略論」「我が社の組織論」は、閉じた枠組みの中でしか通用しないものでした。

ところが、エコシステムの時代になると、業界や企業の境界が溶け、互いに重なり合い、曖昧になっていきます。そのため、まったく新しい見方が求められるわけです。それが「エコシステム」という考え方です。

例えば、エコシステムというのは「エゴシステム」であってはいけません。つまり「我が社のエコシステム」という言い方自体が矛盾しているとも言えます。エコシステムは、他者やパートナー、社会と共に“共創的に”築いていくものだからです。

実は存在するエコシステムの「デザインルール」

これは少し皮肉ですが、よく「オープンイノベーション」という言葉が使われますよね。しかし「我が社のオープンイノベーションで研究開発の効率を上げよう!」と言われても、他の企業から見れば、それはオープンでも何でもなく、むしろエゴイスティックに聞こえてしまいます。

本来のエコシステムというのは、エゴよりもエコ、つまり利他的な精神により根ざした仕組みです。エコシステムが成立すれば、そこに参加する複数のプレイヤーが互いにどう連携し、どう補完し合うことで、1社だけでは実現できなかった新しい価値を生み出せるか。それを全体で考える視点が必要になります。

この時に重要になるのが、エコシステムには実は「デザインルール」が存在するという点です。どのように関係を設計すれば、各プレイヤーが公平に利益を得られ、全体として持続的な価値が生まれるのか。そこには設計思想があり、単なる偶発的な協働ではないのです。

そして、そうした「エコシステム時代」におけるマネジメントを考える上で、再びドラッカーの思想が登場します。知識生態学的アプローチは、野中理論(知識創造理論)に端を発する考え方ですが、これを「Next Management」の中核にインプットしていくことこそ、これからの世界のマネジメントの新しい方向性を形づくるものになると、私は考えています。

スタートアップがどんなに健闘してもGDPへの寄与はせいぜい3%

最後に、もう1つ大切なポイントとして、あらためてドラッカーの「人間性」について触れて締めくくりたいと思います。

先ほどインド企業の話をしましたが、実はインドの経営者たちは日本企業に強い関心を持っています。理由は、日本には長寿企業が多いからです。例えば、タタグループは150年以上続く企業ですが、長い歴史の中でも絶えずイノベーションを起こし続けています。

私の知人でフランスのイノベーション研究者でパリのCIO(チーフイノベーションオフィサー)クラブの総帥、マルク・ジジェ(Marc Giget)教授がこう言っています。

「どれだけスタートアップだけが健闘しても、GDPへの寄与はせいぜい3パーセントほどで、実際に経済全体を動かしているのは大企業だ。世界のイノベーションの最前線には、常に伝統的な大企業が存在している」と。

もちろん、伝統的企業だけで未来は築けません。だからこそ、エコシステムの中で伝統的企業とスタートアップが共存し、互いの強みを生かし合う。その関係性こそが、これからの答えの1つだと思います。

マネジメントの父・ドラッカーが50年続けた「思考のログ」

そして最後に、もう1つ大事なテーマが「個人としての人間性」です。

ドラッカーは、人生を通して「ジャーナリング」という習慣を続けていました。日記のようでいて、単なる記録ではありません。イエズス会の司祭やカルヴァン派の牧師の習慣から学び、何か重要なことに取り組む前に「期待する成果」を書き留め、9か月後に実際の成果と照らし合わせて自己評価を行っていたそうです。

自分はどうだったのか、何を学んだのか。この内省とフィードバックを、彼はおよそ50年続けたと言われています。

ですから私がみなさんにお伝えしたいのは、どれほど時代が変わっても、どれほど経営モデルが進化しても、「自分自身を見失わない」ことの大切さです。自分がなすべきことを見極め、日々それを言葉にし、振り返る。これこそがドラッカー思想の根幹だと思います。

私自身、このジャーナリングに関心を持ち、『構想力ジャーナリング入門』という本を何年か前に出しました。

リーダーのためのジャーナリングを紹介した入門書ですが、本を買わなくても構いませんよ。毎日1分でいいので、自分の目的や行動を観察し、内省する。その記録をiPhoneなどのアプリに残し、定期的にレビューしてみる。これを習慣にするだけで、経営やリーダーシップの質は大きく変わっていくはずです。

これは単なる日記ではありません。誰かの物語ではなく、自分自身のストーリーを語るための「思考のログ」です。ドラッカーが実践してきたのはまさにそのことでした。

ということで、今日は「ドラッカー思想の未来」と題して、過去を懐かしむのではなく、ドラッカーの思想の根幹に立ち戻り、そこから「知識生態学」という視点で新たなマネジメントを考えるというお話をしました。

ドラッカーの著作をただ学ぶだけではなく、その思想を未来にどう生かすか。そこに、次の時代の経営のヒントがあるのではないかと思います。

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