経営者を悩ませる、現場で「生成AI」を使う弊害
中原:今までよりもわからないといけない。なぜなら生成AIのほうがすげぇ答えを出してくるから。だからめっちゃ基礎力はつけなきゃならない一方で、生成AIをうまく使うためにはどうすりゃいいのということも教えなきゃならない。だから体感で言うと、教師としては1.3倍〜1.4倍ぐらい、本当はコンテンツ量が必要なの。だけど、給料は上がらないよね(笑)。でもそんな感じ。
安斎:でも教育的な意味で言うと、そこをどうやってグリップしてやるかはめっちゃ大事になると思うんですけど。最近知り合いの経営者とか人事の人が、繰り返し同じことを言うのが「生成AIを業務で使うようになって、すごくみんなバカになった感覚がある」みたいな。
要はAさんは生成AIを使ったアウトプットでコミュニケーションをする。Bさんはあまりよくわかっていないんだけれども、生成AIに要約させたり処理したりして、生成AIで返す、答える。とやっていった結果、2人ともあまりよくわかっていない会話が繰り広げられているみたいな。ちゃんとわかった上で対応しようとすると、たぶんコストがすごく上がるから、そこをもう手放したことが現場コミュニケーションで起きちゃっている。
中原:起きてるよねぇ。
安斎:納得感とか共感が薄いまま合意形成が行われていることを危惧している経営者の人が何人かいて。それもそれで今後、組織開発的な問題というか、何かプロジェクトを進めていく上で余計なモヤモヤが後になって噴出する原因になりそうだなみたいな。
中原:だからマスター(主人公)とスレイブ(奴隷)じゃないんだけど。自分の人生では、自分がマスター、主人公であること。自分が人生の主人公であることを手放したら、スレイブになるしかないよと。
安斎:はい、はい。
「自分が答えを出す存在」ということを忘れない
中原:だから自分が主人公であること、自分が答えを出す存在なんだということだけは、絶対に手放しちゃダメだなと思います。そうしないとスレイブに成り果てるよ。
安斎:なるほど。いやぁ「自分の人生のマスターであれ」「Enjoy yourself」とみなさんの本に、中原先生のサインが入っているので。
中原:「Enjoy yourself」「Be yourself」と書いてありますので。
井上:いい感じにまとまりましたね。ありがとうございました。大変有意義な公開1on1になったのではと思います。安斎さんも今後の参考になりそうなお話を聞けたのでは?
安斎:はいはい。でもMIMIGURIの中での役割とか、あと役割論的なところと、屋号的なところ、次の本で何を語るのか、次というかたぶん5年後ぐらいだと思うんですけど。そこのテーマ探しはちょっとしていきたいなと思いますね。
中原:だから今回、お会いできてよかったです。またもう1回ぐらいチャンスがあるといいなとは思いつつ。君は僕と同じように今度、ここに世代継承したい人を連れて来ればいいんじゃない?
安斎:なるほどね。連れてきて、そそのかしながら、尻たたきながら無茶ぶりをする。
中原:「大丈夫だよ、失敗しないよ」と言って。
安斎:そうですね。そうしていきたいですね。
中原:今日はどうもありがとうございました。
安斎:ありがとうございました。
イベントの内容まとめ
井上:ありがとうございました。あ、まだ終わりじゃないんですけれども。ここで、夏川(真里奈)さんに描いていただいたグラレコを鑑賞する会という感じで、ちょっと夏川さん、一言ご説明を。
夏川真里奈氏(以下、夏川):ありがとうございます。いや、ちょっとここまで何を書いて何を書いちゃいけないのか、けっこう神経をすり減らしながら書かせていただきました。
じゃあ、振り返っていけたらと思います。まず、モデレーターのみなさまの紹介から始まっており、テオリアさんにも挨拶していただきましたね。お互いの書籍の紹介をしていったかなと思います。2人とも学びをテーマにして、でも「安斎さんはやりたがり少年だったよね」とか「会社を起こしていたよね」という話から、2人の出会い(の話)もしつつ。
学びと組織、あとフィードバックみたいなことをテーマに、そこから話が少しずつ深まっていくようなQ&Aセッションに突入していきます。
質問として多かったのがやっぱりラーニングカルチャーの広げ方というのは、みなさん本当に関心を持っていることだったなと思っていて。安斎さんから、「学べる機会を気づかないうちに作っていくことが大事だよね」であったり、「リフレクション機会を作ることが重要だよね」みたいな話がありましたけども。
中原さんのキーワードだと、「学んだことは伝染するようにしていく」というお話が、私はけっこう印象的でしたね。なので中原さんも、総じて自分の学びの本を出すだけじゃなくて、こうやって学びを本にしていく人をどうやって増やせるんだろうかみたいなことにも関心があったので。そういった意味で、中原先生ご自身の学びをどうやって広げればいいんだろうと考えていらっしゃるんだなということが、私も伝わっておりました。
最後の最後、具体的なキャリアの話にひもづいていきました。安斎さんは「キャリアデザインは自分のアイデンティティが変容することだよね」とおっしゃっていて、そこをより具体的な話に分解していらしたのが中原先生だったかなと思うんですけども。
自分の役割は何なんだろうと問いかけ続けた中原先生の「リセットボタンがあるなら教えてくれ!」という、本当の心からの思いとか。(自分は)何屋なんだろうと考える時に、すごく参考になるお話をうかがえたんじゃないかなと思います。
技の探究から、そこからマネジメントする時のモヤモヤから、コンセプトへの悩みは、まさに安斎さんの抱えていることだったかなと思うので。よだれムーブメントの話もありましたけど、私もMIMIGURI社員として安斎さんを適度にいじりつつ探索していきたいなと思っております。
最後にAI時代のスキル。これはまさにこれからの時代を生き抜く私たちにとってもう外せないところかなと思います。最後に中原先生が語ってくださった、「自分が人生の答えを出す存在であることを絶対手放してはならない」。この意識を持ちながらAIを使う技術と共生していくことを、キャリアでも学びにおいても大事にしていけたらいいんじゃないかなと思っております。
ということで、以上をこれまでのあらすじといったかたちでまとめさせていただきました。ありがとうございます。
(会場拍手)
安斎氏が見据える今後のキャリア
井上:じゃあ、ここを受けて最後に一言ずつでクローズとさせていただきたいと思います。
安斎:そうですね。でもめちゃくちゃ楽しかったです。そういえば(中原先生と)久しくちゃんと話していなかった気がしたなという(笑)。博士論文のご指導はいただいたりしていたんですけれども。
でもさっきあんまりちゃんと話していなかったんですが、僕自身のキャリアの中の1つの指標として、これはハッキリ言いたくないんですが、(中原先生は)明らかにロールモデルのお一人なわけですよ。
やっぱり大学の教員になるといった時に、「大学の先生は研究室に閉じこもって論文を書いているんでしょ?」と学生の頃は思っていたんだけれども、そこからはみ出して、企業とか社会とつながりながらやるというのは、僕の師匠の山内(祐平)先生と中原先生がこの業界で先陣を切ってやっていたので。
「あ、こういうキャリアがあるのか」という、ある種ロールモデル的に背中を追いかけていました。領域とか役割とかそれこそ屋号とか、役割はそれぞれ僕の師匠も中原先生もぜんぜん違うので、あんまり参考にならないなと思っていて。
僕は、たまに自分のキャリアを見つめ直す時に、中原先生は僕の年齢の時に何をやっていたんだろうなというのを見ていて。だから35歳とか37歳とか、そのあたりで『職場学習論』とか『経営学習論』とか、わりと自分のわかりやすい代表作を単著で書いているなというのを見据えていました。
僕は35歳までに自分の代表作を書こうと思って、『問いのデザイン 創造的対話のファシリテーション』がちょうど35歳だったりとか、実はけっこうそういうマイルストーン的な意味では間接的に参照していたんですよ。だから(中原先生のことは)嫌いじゃないですよ。
(会場笑)

なので今、中原先生が40代の(頃の)仕事をたまに眺めたりして、「43歳でこの本か~」とかいろいろ見ていたりするんですけど。今日、根底のお話をいろいろうかがえたので、次の僕の10年も何をしていこうかということを考えて、みなさんにアウトプットを共有させていただいて、またこういう場ができるとうれしいなとあらためて思いました。今日はありがとうございました。
(会場拍手)
親子も弟子も「一時期ちゃんと別れること」がすごく大事
中原:はい。じゃあみなさん、今日はどうもありがとうございました。対話というか、こういうので1時間、2時間話すのは、よほどのパッションを持ってやらないと絶対無理だと思っていたけれど、安斎くんがここに立ってくれるので、できると思いました。
あんまり言うのは嫌なんですけれども、いつも思っていることがあって。例えば自分の指導した学生さんとかが活躍するじゃない? その時に、元指導教員があんまり近くにいすぎると学生さんが、活躍できないのよ。だから、指導した学生とは、一時期、うまくちゃんと別れてあげることが大事なんですよ。
安斎:おぉ(笑)。
中原:わかります? 「もうお前のことなんてぜんぜん気にしてないよ」みたいな感じで、ツンデレでやっているんだけども。でも見ていて「がんばってるな」という時は「がんばってる!」って言ってあげる。
何と言っていいかわかりませんけど、師匠と弟子もそうだし、親子もそうなんですけど、「一時期ちゃんと別れること」はすごく大事だと僕は思ってる。だから安斎君にもいろいろ声をかけたいとかあるんだけれども、あえて声をかけないでいた時もあると思います。
安斎:だから、パタリと誘われなくなったんですねぇ。
中原:(笑)。まぁ、そうなんですよ。そういう時がありつつ。でも「うまく別れる」と、今度は師と弟子とは違った新たな関係で、また「うまく出会うこと」ができるんですよ。
中原:1対1でこういうふうに出会えることは非常にうれしいなと思うし。これがあと10年後なのか5年後なのか、またそういう時期が来た時に「この間、ああ言っていたけどさ」みたいな話ができるとうれしいなと思います。
中原:あとは安斎くんが、今、ここに座っている。僕も座っている。僕らが今後やっていくべきことは、次の世代の人材で、「ここに座る人」をもっと増やすことだよね。ここに尽きると思っています。
そういう芽はもう出ていると思うので、ぜひがんばっていきたいと思います。みなさん、今日は来てくれて、本当にどうもありがとうございました。
井上:はい。みなさん本当にいい時間だったな~と思いますよね。自分のキャリアのこともいろいろ考えたりしながら、でも本当にいい師弟関係なんだなというのが伝わってくる、本当にいいイベントになったと思います。お二人にもう一度拍手をお願いいたします。
中原:どうもありがとうございました。
(会場拍手)
写真:©︎Kosuke Kiguch
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