【3行要約】・生成AIの活用が広がる中、単にAIに答えを求めるだけでは本質的な成長が得られません。
・安斎勇樹氏と中原淳氏は対談で、キャリアを考える上で欠かせない「AI」との付き合い方を語ります。
・ビジネスパーソンは「人生の主人公」としての自律性を保ちながら、AIをパートナーとして活用する姿勢を持つべきです。
前回の記事はこちら キャリアを考える上で欠かせない「AI」との付き合い方
井上佐保子氏(以下、井上):最後に聞いておきたいところとかありますか。
安斎勇樹氏(以下、安斎):どうしようかな。今日は一応大学生もいっぱいいるので、ちょっとおじさん臭い話ばっかりしていてもしょうがないなって。「40代どうするか」みたいな話を掘り下げたいところではあるんですけど。
今、スキルを習得するのが大事だというのは、僕の意見は変わらないんですよ。やっぱり20代のうちに技の探究の時間をどこかで作る。「あぁ、やっていなかったな」というんだったら20代じゃなくても、30代でも40代でもいいと思うんですけど。
どこかで技を探究する時間がないと、キャリアの中の軸足ができないなと思うんです。でもこの生成AI時代に知的労働の業界で、どの技を探究するか(を決めるの)はめちゃくちゃむずいよなぁと思っていて。
中原淳氏(以下、中原):むずいね。
安斎:さっきも上でサインをたくさん書きながら雑談している中で、やっぱり僕の時代に大学の教員になるという意味合いと、今の時代に大学の研究者になる意味合いはけっこう変わっているよねみたいな話をしていたじゃないですか。そのへんを若い人に向けて、もしくはこれから何かのスキルを磨こうと思っていた時に、どういう判断で選ぶといいでしょうか。
中原:まずその生成AIみたいなテクノロジーと向き合わないのは、ある種、詰むと思うんですよ。
だけど、生成AIに答えを求めるんじゃなくて、「答えを出すこと」は自分から手放さないほうがいいと思う。まず自分で考えて、それでAIを「道具」としてじゃなくて「パートナー」として使いながら、いろんなフィードバックをもらっていく。この生成AIとの付き合い方は絶対持ったほうがいいと思う。実際、我々研究者の世界ももう生成AIなしじゃやっていけないから。
安斎:まぁ、そうですよね。
AIだけでは"勝てない”人の戦略

中原:本当にそう。だからもう統計にしても、プログラミングにしても、データ分析にしても全部そうなんですよ。生成AIとうまく付き合う方法をみんな探しています。でも一方で、たぶんこっちの世界だけだと、俺は負けるなと思っていて。
安斎:うん。
中原:だから逆の逆よ。例えば人と関わるとか、コミュニケーションするとか、そういうヒューマンタッチな部分を、俺だったら絶対増やすなと。だって実際に今年、サバティカルな研究専念期間といって1年間いただいているんですけど。片手ではめっちゃ生成AIのこととか、データ分析とかを勉強しているんだよ。
安斎:そうなんですね。
中原:めっちゃ勉強しているよ。でも、それをやっているけど、もう一方の片手では、アナログなことやりまくってるの。ワークショップにめっちゃ行ってんの。
安斎:参加者として。
中原:参加者として。それはやっぱり人と付き合うとか、人と向き合うみたいな時間とか、そういう経験を持ちたいと思ってるの。ちなみに明日俺、山梨県の富士吉田市でワークショップで、朝の8時には、そこにいなきゃなんないの。
安斎:あ、そうなんだ(笑)。めちゃくちゃ早い。そのワークショップというリアルのコミュニケーションの場に身を投じるのはわかったんですけど、テーマは何なんですか?
中原:チームビルディングとか、そういう系。要するにもう1回学び直すに近いかもしれないですけど、そういう新しいチームビルディングの仕方とか、そういうものをもう1回自分の中に取り戻したいなと思って。
安斎:へー、それおもしろいですね。
テクノロジーと「人との付き合い」を両立させる
中原:安斎さん、自分でワークショップに出ないでしょ?
安斎:出ないですけど。でも、ホースローグってみなさん知ってます? 札幌で馬を引っ張ったりとかする、馬と一緒に過ごすやつがあるんですよ。それに僕も今月参加します。それに行くと自分が丸裸になるらしくて、すげぇ嫌だなと思っているんですけど(笑)。
中原:あ、そうなんだ。僕も2025年は、そういう研修とかワークショップにめっちゃ出てる。それは科学知と臨床知と言ったらまた違う言葉になるかもしれないんだけど、単純に言うと科学とかテクノロジーとうまく付き合う部分と、人とうまく付き合う部分を両立させたい。
安斎:なるほど。
中原:そうしないと俺、バランスが取れない。
安斎:いや、それめっちゃおもしろいですね。ディープリサーチとかeラーニングコンテンツとかですぐ情報が手に入るんだけど、そこには時間と体を使って投資して。
中原:めっちゃ体を使うよ。今日、ジャージを買いに行ったもん。明日着るジャージがなかったのよ。
安斎:知らないですけど(笑)。でも、ふだん持っている服装じゃ対応できない場に行くということ。確かに僕も、馬の時の靴をどうしようか迷ってて、買わないと。
(会場笑)
AI時代は学び直しが必須になる
安斎:いやでも、おもしろいですね。すごく参考になるというか。僕もその馬の研修に行くのって、やっぱり僕がすごくおもしろいなぁと思っている、めちゃくちゃ生成AIとかを使って知的生産性を爆上げしている人たちが、その研修に足しげく通っているからなんですよね。だからそういう知的生産を探究していった人が、何に今、時間投資しているのかみたいなことは常に見ていて。そこは何かヒントがありそうなところですよね。
中原:だから科学知と臨床知と言ってもいいし。もっと単純に言うんだったら二項対立の中に真実はないの。だから「A or B」という中に真実はないので、たいてい「A and B」なの。だからどっちもやらなきゃならない。だから生成AI時代はめっちゃ勉強しなきゃね。というか、めっちゃ学び直さなきゃならないね。
安斎:生成AIに食らいつきながら、2倍必要ということですもんね。
中原:この間、データ分析系の先生とも話していたんだけど、どう考えても生成AIの時代は教えることは楽にならないよね。なんでかと言うと、わからない人がいて、生成AIに聞いて、答えが出てくるじゃない。その時、その答えがわからない人は「本当にこの答えが○かどうか?」がわからないでしょ。ということは、まずは(教師側が)わからなきゃやらないのよ。
安斎:はい、はい。